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濫
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みだ
ふりがな文庫
“
濫
(
みだ
)” の例文
濫
(
みだ
)
りに他の階級の人に訴えるような芸術を心がけることの危険を感じ、自分の立場を明らかにしておく必要を見るに至ったものだ。
広津氏に答う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その事なれば及ばずながら、某一肢の力を添へん。われ彼の
金眸
(
きんぼう
)
に
意恨
(
うらみ
)
はなけれど、
彼奴
(
きゃつ
)
猛威を
逞
(
たくまし
)
うして、余の
獣類
(
けもの
)
を
濫
(
みだ
)
りに
虐
(
しいた
)
げ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
これはいわゆる別紙口伝で、これを受ける者は天地神明に誓い、
濫
(
みだ
)
りに他言しないという誓紙を入れて伝授を受けるしきたりとなった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
名門の女子深窓に養われて、
傍
(
かたわら
)
に夫無くしては、
濫
(
みだ
)
りに他と言葉さえ交えまじきが、今日朝からの心の
裡
(
うち
)
、
蓋
(
けだ
)
し察するに
余
(
あまり
)
あり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
御者は
先刻
(
さっき
)
から時間の遅くなるのを恐れるごとく、
止
(
よ
)
せばいいと思うのに、
濫
(
みだ
)
りなる
鞭
(
むち
)
を鳴らして、しきりに
痩馬
(
やせうま
)
の
尻
(
しり
)
を打った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
多くの本を
濫
(
みだ
)
りに読むことをしないで、一冊の本を繰り返して読むようにしなければならぬと教えている。それは、疑いもなく真理である。
如何に読書すべきか
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「茶は高貴の人に応接するが如し、
烹点
(
ほうてん
)
共に法を
濫
(
みだ
)
れば
其
(
その
)
悔かへるべからず」これが、彼の茶に対するときの心構へであつた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
「赤山など
濫
(
みだ
)
りに重罪にしては——家中の者が動揺して、軽輩共が、又、二の舞を起してはならんから——
蟄居
(
ちっきょ
)
か、謹慎ぐらいにして——」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
この人には主観から来る
歪
(
ゆが
)
みもなく、ロマンティックな
濫
(
みだ
)
りな燃焼もない。現存大家中、コルトーなどと対蹠的な存在と言ってもいいだろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
霊験の有無はひとえに仏心のこととして、これを人為の業にのせて
濫
(
みだ
)
りに公示教説せぬのが、信心の床しさであろうに。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
今回桜井書店主人の
需
(
もと
)
めを快諾してその中の興趣ありと
濫
(
みだ
)
りに自分勝手に認めるもの三十七題を択んで、ここにこれをこの一書に
纏
(
まと
)
め読書界に送った。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「君子も固より窮することがある。だが、小人と異るところは、窮しても
濫
(
みだ
)
れないことだ。」(陳蔡の野参照)
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
支倉の家に女中をしているうちに行方不明にでもなったのなら格別、病気の為に暇を取って帰ってからの事だとすると、
濫
(
みだ
)
りに支倉を疑う訳には行かない。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
その条項は
濫
(
みだ
)
りにこれを紛更するを許さない。また勝手に曲解してもならぬ。その規定するところの条文には最も忠実に従わねばならぬこともちろんである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
奉仕中の采女には厳しい規則があって
濫
(
みだ
)
りに娶ることなどは出来なかった、それをどういう機会にか娶ったのだから、「皆人の得がてにすとふ」の句がある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
それは長い間の代々の記憶の
堆積
(
たいせき
)
だともいえよう。
濫
(
みだ
)
りに図柄を工夫することは許されていない。否、その自由があったならむしろ筆は運ばなかったであろう。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
果して将校に準ずべきか。兵卒を以てこれを待つ者は礼を知らざるの
甚
(
はなは
)
だしきなり。果して兵卒に準ずべきか。将校を以てこれを待つ者は法を
濫
(
みだ
)
るの甚だしきなり。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
世間幾多の平坦なる真理を唱ふるものゝ中には、平坦を名として
濫
(
みだ
)
りに他の平坦ならざるものを罵り、自から
謂
(
おも
)
へらく、平坦なるものにあらざれば真理にあらずと。
国民と思想
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
この特色ある天然の持ち味を軽視して、
濫
(
みだ
)
りに人為を施し、味のカクテルをつくって得たりとするがごときは、けだし、自然の味を冒涜するものであるとせねばならぬ。
料理の妙味
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
上院議員も会社重役も大したことはないが、ただ厄介なのは高貴な血を引く相手だけに、民間探偵としてはその筋の諒解なしには、
濫
(
みだ
)
りに手をつけられぬことであった。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
既に彼を存するの風を
頽
(
おと
)
し俗を
濫
(
みだ
)
る
所以
(
ゆゑん
)
なるを知り、彼を除くの老を
扶
(
たす
)
け幼を憐む所以なるを知る。是に於て予が殺害の意志たりしものは、
徐
(
おもむろ
)
に殺害の計画と変化し来れり。
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
保安上
(
ほあんじやう
)
容易
(
ようい
)
ならぬ
問題
(
もんだい
)
であるといふので(それに
濫
(
みだ
)
りに
神社呼
(
じんじやよば
)
はりを
爲
(
す
)
る
事
(
こと
)
は
法律
(
はふりつ
)
の
許
(
ゆる
)
さぬ
處
(
ところ
)
でもあるので)
奉納
(
ほうのう
)
の
旗幟
(
はたのぼり
)
、
繪馬等
(
ゑまとう
)
を
撤
(
てつ
)
せしめ、
窟
(
いはや
)
から
流出
(
りうしゆつ
)
する
汚水
(
をすい
)
を
酌取
(
くみと
)
るを
禁
(
きん
)
じ
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
人類文化発達史上から見た人間の最大欠点は、物ごとを
濫
(
みだ
)
りに複雑にしたことでした。
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
須
(
すべか
)
らく原文の音調を呑み込んで、それを移すようにせねばならぬと、こう自分は信じたので、コンマ、ピリオドの一つをも
濫
(
みだ
)
りに棄てず、原文にコンマが三つ、ピリオドが一つあれば
余が翻訳の標準
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
老人ばかりがこんな
叱言
(
こごと
)
を云うのかと思うと、満更そうでもないとみえて、頃来大阪朝日の天声人語子は、府の役人が
箕面
(
みのお
)
公園にドライヴウェーを作ろうとして
濫
(
みだ
)
りに森林を伐り開き
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
幽明
(
ゆうめい
)
、
物心
(
ぶっしん
)
、
死生
(
しせい
)
、
神人
(
しんじん
)
の間を
隔
(
へだ
)
つる神秘の
一幕
(
いちまく
)
は、容易に
掲
(
かか
)
げぬ所に生活の
面白味
(
おもしろみ
)
も自由もあって、
濫
(
みだ
)
りに之を掲ぐるの
報
(
むくい
)
は
速
(
すみ
)
やかなる死或は盲目である場合があるのではあるまいか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
もって窮すとなさば、君子ももとより窮す。
但
(
ただ
)
、小人は窮すればここに
濫
(
みだ
)
る。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
これ
如何
(
いか
)
に其の方の荷物が
紛失
(
ふんじつ
)
したとて
濫
(
みだ
)
りに
他人
(
たにん
)
を賊といっては済まんぞ、
苟
(
いやし
)
くも
武士
(
ぶし
)
たる者が
他人
(
ひと
)
の荷物を持って
己
(
おのれ
)
の物とし賊なぞを働く様なる者と思うか、手前は拙者を賊に落すか
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
赤城
躑躅
(
つつじ
)
の俗称あるアカヤシオは、元は古木が多く、花時には頗る美観を呈したものであるが、
濫
(
みだ
)
りに伐採した結果今は岩崖などの到り易からぬ所に残存するのみで、昔の面影は失われてしまった。
那須、尾瀬、赤城、志賀高原
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
もしまた当地滞留中いささかも行いを
濫
(
みだ
)
さなんだら、
和女
(
そなた
)
われに五百金銭を持って来なと
賭
(
かけ
)
をした。それからちゅうものは前に倍して
繁
(
しげ
)
く来り媚び
諂
(
へつら
)
うに付けて、商主ますます心を守って傾く事なし。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
政論上においては
濫
(
みだ
)
りに英国の風を学ばざるの傾きあり。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
「
立
(
た
)
ち
譟
(
さわ
)
ぐな。
濫
(
みだ
)
りに私語するな」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒次第に廻りて、席
漸
(
やうや
)
く
濫
(
みだ
)
る
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
見ろ、あの竜宮に在る珠は、悪竜が
絡
(
まと
)
い
繞
(
めぐ
)
って、その器に非ずして
濫
(
みだ
)
りに近づく者があると、呪殺すと云うじゃないか。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
儒学
(
じゅがく
)
最盛期
(
さいせいき
)
の
荻生徂徠
(
おぎゅうそらい
)
が
濫
(
みだ
)
りに外来の思想を
生嚼
(
なまかじ
)
りして、それを自己という人間にまで還元することなく、思いあがった態度で
吹聴
(
ふいちょう
)
しているのに比べると
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
又五郎を討つなら
濫
(
みだ
)
りに、私闘を行った罪として、処分されなくてはならぬし、この明白な事を知りながら、助太刀に出たわしも、処分されなくてはならぬ。
寛永武道鑑
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
日本の学者がまずこれを取り上げてその斉墩樹を
濫
(
みだ
)
りに我がエゴノキだと考定したのはかの小野蘭山で、すなわち彼れの著『本草綱目啓蒙』にそう書いてある。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
されども漢語の必要ありとのみにて
濫
(
みだ
)
りに漢語を用ゐ、ために一句の調和を欠かば佳句とは言はれじ。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
我々如きが
濫
(
みだ
)
りに批評するなどは、僭越に過ぎるかも知れぬが、常々良寛様に親しみと尊敬とを持っている一人として、感ずるところを、一応述べさせて貰うことにする。
魅力と親しみと美に優れた良寛の書
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
「紫野」は染色の原料として
紫草
(
むらさき
)
を栽培している野。「標野」は御料地として
濫
(
みだ
)
りに人の出入を禁じた野で即ち蒲生野を指す。「野守」はその御料地の
守部
(
もりべ
)
即ち番人である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
濫
(
みだ
)
りに道法を劃出して、この境を出づれば劣なり、この界を入れば聖なりと言ふは何事ぞ。
「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
向うの好意を
享
(
う
)
けて、相当の満足を先方に与えるのは、こちらも
悦
(
よろこ
)
ばしいが、受けるべき理由がないのに、
濫
(
みだ
)
りに自己の利得のみを
標準
(
めやす
)
に置くのは、乞食と同程度の人間である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
訊ねて來た男があつた——が、南部兵粮丸は天下知名の祕藥ぢや。臣下と
雖
(
いへ
)
ども
濫
(
みだ
)
りに知ることは相成らぬ。殊に、泰平の今日、兵粮丸などはまづ世に出ぬ方が宜いとしたものであらう
銭形平次捕物控:025 兵粮丸秘聞
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
然し、いくら警察でも、犯人嫌疑者を、
濫
(
みだ
)
りに作ることは出来ません。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
また
濫
(
みだ
)
りに予の動くことは、
巷間
(
こうかん
)
徒
(
いたず
)
らに噂と新聞紙上を
賑
(
にぎわ
)
せて、そなたのためにあらぬ
揣摩
(
しま
)
臆測を増させるのみであろう。よってすべてを、この書信に託する。この書信を、予と語るものと思われよ。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「それは無論君子にだってある。しかし君子は
濫
(
みだ
)
れることがない。濫れないところに、おのずからまた道があるのじゃ。これに反して、小人が行詰ると必ず濫れる。濫れればもう道は絶対にない。それが本当の行詰りじゃ。」
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
もし
濫
(
みだ
)
りに斬込んで、奉行の手で邪魔が入ったり、討ったとしても後で不利益だったりしてもつまらぬし
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
訊ねて来た男があった——が、南部兵糧丸は天下知名の秘薬じゃ。臣下といえども
濫
(
みだ
)
りに知ることは相成らぬ。
殊
(
こと
)
に、泰平の今日、兵糧丸などはまず世に出ぬ方がよいとしたものであろう
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「無論、串戯ではないがね、女言
濫
(
みだ
)
りに信ずべからず、半分は嘘だろう。」
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれども彼は
濫
(
みだ
)
りなさし出口はしなかった。いささかでも監督に対する父の理解を補おうとする言葉が彼の口から漏れると、父は彼に向かって悪意をさえ持ちかねないけんまくを示したからだ。
親子
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
濫
常用漢字
中学
部首:⽔
18画
“濫”を含む語句
氾濫
濫觴
濫行
濫僧供
濫費
濫用
汎濫
濫発
濫造
濫伐
濫僧
濫読
濫作
濫出
大氾濫
粗製濫造
濫妨
濫糜
興福寺濫觴記
濫訳
...