潔白けつぱく)” の例文
天下てんか役人やくにんが、みな其方そちのやうに潔白けつぱくだと、なにふことがないのだが。‥‥』と、但馬守たじまのかみは、感慨かんがいへぬといふ樣子やうすをした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「よし/\、惡い事をする奴に限つて、自分の居た場所などを、念入りに人に知らせて置くものだ。傳之助は、馬鹿でなきア、潔白けつぱくだらう」
れほどの物好ものずきなれば手出てだしを仕樣しやうぞ、邪推じやすゐ大底たいていにしていてれ、あのことならば清淨しようじよう無垢むく潔白けつぱくものだと微笑びようふくんで口髭くちひげひねらせたまふ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
眞白まつしろ薔薇ばらの花、乳色ちゝいろで、無邪氣むじやき眞白まつしろ薔薇ばらの花、あまりの潔白けつぱくにはひとおどろく、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あなた方と同じやうにまつたく潔白けつぱくでございます。私は今みじめなのです、暫くはかうなのだらうと思ひます。
はやくせし以來このかたは何にも彼にも只二人さて我口わがくちより此樣な事を申すは自負じふたれど吾儕おのれ性來せいらい潔白けつぱくにて只正直を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「平次、春日邦之助殿の潔白けつぱくはそれで相解つたが——本多右馬之丞殿をあやめた下手人は何者だ。それが解らぬうちは——」
こゝろ變化へんくわするものなり、雪三せつざう徃昔そのかみ心裏しんりうかゞはゞ、糸子いとこたいする觀念くわんねん潔白けつぱくなること、其名そのなゆきはものかは、主人しゆじん大事だいじ筋道すぢみちふりむくかたもかりしもの
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
美濃守殿みののかみどののことから、其方そち潔白けつぱくいて、ひどく感心かんしんしたのだつたな。まつた其方そち卑劣ひれつな、強慾がうよくな、恥知はぢしらずの人間にんげんばかりおほ土地とちで、めづらしい潔白けつぱく高尚かうしやう人間にんげんだ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其所へ引据させ一通り吟味ぎんみに及びし處文右衞門は元より潔白けつぱく武士さぶらひゆゑいさゝかもつゝかくさず新藤市之丞より返濟へんさいしたる金子のわけ又久兵衞が百兩の云懸いひがかりをなし盜賊たうぞくの惡名をおはせんとしたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
若しも私たちが潔白けつぱくであるのなら。
石見いはみ銀山と血染の匕首あひくちを、仙之助の行李かうりに隱したのは、賢いやうでも女の猿智慧さ。あんな事をしたので、いよ/\俺は仙之助が潔白けつぱくだと思つたよ。
さりとてれにもしたがひがたきを、なにとしてにとせば松野まつのこゝろまよひもめ、竹村たけむらきみ潔白けつぱくをもあかされん、何方いづれにまれくきひと一人ひとりあらば、くまでむねはなやまじを
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
但馬守たじまのかみ玄竹げんちくあいしたのは、玄竹げんちく岡部美濃守をかべみののかみ頓死とんし披露ひろうするにもつと必要ひつえう診斷書しんだんしよを、なんもとむるところもなく、淡白たんぱくあたへたといふこゝろ潔白けつぱくつたのがだい一の原因げんいんである。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「按摩さん、腹を立てるのも尤もだが、俺達は人を縛るばかりが役目ぢやねえ。お前の息子の勇三郎の潔白けつぱくな證據だつてあるだらう。暫らく辛抱してくれ」
なにもおまへ女口をんなぐちひと針仕事はりしごととほせないこともなからう、あれほどつてながら何故なぜつまらない其樣そんことはじめたのか、あんまりなさけないではないかときち我身わがみ潔白けつぱくくらべて、おしよ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たつた一人の御跡取時之助樣の御壽命をのろはれ、殿御腹立ちももつとも至極だが、まゝしき仲を疑はれて生害して身の潔白けつぱくを示された、奧樣の御心中もおいたはしい。
さりとてへつらひの草履ざうりとりもあまりほめたはなしではなけれど开處そこ工合ぐあいものにて、清淨せいじようなり無垢むくなり潔白けつぱくなりのお前樣まへさまなどが、みぎをむくともひだりくともくむひとはづなれどれではわたられず
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
娘筆は潔白けつぱくで何んにも知る筈はない。證據となつた石見銀山も身に覺えがないからこそ手に持つて居たのだ。血染の袷も天井に隱してわざとらしく端だけ出して置いたのは不思議ではないか。
お前さんの潔白けつぱくもよくわかるだらうと——お杉さんが教へてくれました。
それにつけても、お前の考への間違つてゐることだけは言はなきやなるまい。番頭は何と言つたか知らないが、三百八十兩の金は、たしかに巾着切にやられたに違ひない。二人の樣子で、この平次は潔白けつぱく
「三人とも潔白けつぱくだとすると、あとは二つしか考へやうがない」