沈默ちんもく)” の例文
新字:沈黙
言葉ことばはまたしばらく途切とぎれた。と、程近ほどちかくのイギリス人のいへでいつとなくりはじめたピヤノのが、その沈默ちんもくをくすぐるやうに間遠まとほこえて※た。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さうして、また廊下らうからしておくはうつた。宗助そうすけ沈默ちんもくあひだおこなはれるこの順序じゆんじよながら、ひざせて、自分じぶんばんるのをつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「おあつうござんすねどうも」おつぎはたすきをとつて時儀じぎべながらおつたへちやすゝめた。三にんしばら沈默ちんもくしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたくし武村兵曹たけむらへいそうじつこゝろいたよ。此時このとき吾等われら一同いちどう沈默ちんもくは、千萬言せんまんげんよりもふか意味ゐみいうしてるのであつた。
なが沈默ちんもくぐにわづかこれだけの言葉ことばでした、それも時々とき/″\グリフォンの『御尤ごもつとも!』と間投詞かんとうしや、えず海龜うみがめくるしさうな歔欷すゝりなきとにさまたげられてえ/″\に。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
が、そのこゑがついてれば、おれ自身じしんいてゐるこゑだつたではないか? (三度みたびなが沈默ちんもく
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
をんなすこひややかにいひはなつと、あをざめて俯向うつむいた。二人ふたりあひだに、しばら沈默ちんもくつゞいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
一寸ちよつと横顏よこがほ旦那だんなはう振向ふりむけて、ぐに返事へんじをした。細君さいくんが、またたゞちに良人をつとくちおうじたのは、けだめづらしいので。……西洋せいやうことわざにも、能辯のうべんぎんごとく、沈默ちんもくきんごとしとある。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
沈默ちんもくはうしろより啄みゆく
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
とほけた劃然かつきりこずゑひかつた。勘次かんじかほあをくなつてぐつたりとあたまれた。かれしばら沈默ちんもくたもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
當別岬たうべつみさきから再び小蒸汽船につて函館へかへる私は、深い感動をうけたあとの敬虔けいけん沈默ちんもくの中にあつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「あのをんなはどうするつもりだ? ころすか、それともたすけてやるか? 返事へんじただうなづけばい。ころすか?」——おれはこの言葉ことばだけでも、盜人ぬすびとつみゆるしてやりたい。(ふたたびなが沈默ちんもく
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
帽子屋ばうしや沈默ちんもくやぶりました。『何日いくにちだね?』とつてあいちやんのはう振向ふりむき、衣嚢ポケツトから時計とけいし、不安ふあんさうにそれをながめて、時々とき/″\つてはみゝところへそれをつてきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「そんだつて、おとつゝあそんなとこぢやねえから」勘次かんじはがつかりこゑおとしていつた。さうして沈默ちんもくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つまたしかにかうつた、——「では何處どこへでもつれてつてください。」(なが沈默ちんもく
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)