きさま)” の例文
きさまは不孝不弟であるから、死期がもうせまっているのだ。僅かな田地も汝のものにならない。持っていてどうするつもりなのだ。」
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
馬鹿野郎、きさまは、もうおれのいったことを忘れてしまったか。汝が初め、師匠のお宅へ奉公に出る前の晩、俺は汝に何んといった。
「ふむ、豪勢なことを言わあ。平民も平民、きさまの内ゃ芸妓げいしゃ屋じゃあないか。芸妓も乞食も同一おんなじだい。だから乞食の蒲団になんか坐るんだ。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
胸の中には絶望の聲——「今度こそ眞當ほんたう代人かはりが來た。きさまの運命は今日限りだ! アト五時間だ、イヤ三時間だ、二時間だ、一時間だツ!」
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
情無い此我はよと、羨ましいがつひかうじて女房かゝにも口きかず泣きながら寐ました其夜の事、五重塔をきさま作れ今直つくれと怖しい人に吩咐いひつけられ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
三「コレ/\甚藏、きさまが云うと己が殺して死骸を引取って、葬りでもした様にうたぐって、おかしくそんな事を云うのか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そうか、奉公人として、きさまがそう云うのは、もっとものことだ、奉公人としては、主人のためにそうしなくてはならんが、いやしくも人の亀鑑てほんになる家のことだ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「これ稲造いなぞうきさまは近ごろ、何かバクテリアにかかりはせぬか、どこかで病いの種子たねを宿しはせぬか」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
きさまも懸賞小説なんぞとけち所為まねをするない。三文小説家になつて奈何どうする気ぢや。」
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「六波羅者ではないとな。然らばきさまは、どこより来た」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きさまなんかにまけて堪るものか。」
疳の虫 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
胸の中には絶望の声——「今度こそ真当ほんたう代人かはりが来た。きさまの運命は今日限りだ! アト五時間だ、イヤ三時間だ、二時間だ、一時間だツ!」
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
踏む気だな、いわ。踏むならば踏んで見ろ。おおそれながらとまかり出て、きさまの悪事を訴えて、首にしてやる覚悟しやあがれ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ういふお慈悲なさけぶか旦那様だんなさまがおありなさるから、八百膳やほぜん料理れうり無宿者やどなしくだされるのだ、おれいまうしていたゞけよ、おぜんいたゞくことは、きさま生涯しやうがい出来できないぞ。
情ないこのおれはよと、羨ましいがつい高じて女房かかにも口きかず泣きながら寝ましたその夜のこと、五重塔をきさま作れ今すぐつくれとおそろしい人にいいつけられ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「馬鹿、狂人きちがいきさまなんぞに負けるものかい、さあ勝負をしよう、おい、逃げるのか、ようやらないのかい」
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
俺には長男巳之助みのすけがありきさまは次男だが、母には汝は一人の児だによって母に免じて今度は許す。汝が一人前の人間になるまで、ドンナことがあっても俺は汝の腕を借せとはいわぬ。
「ウン、二人死ぬのはつまらぬ。二人が死ねば島津家は真っ暗になってしまう。一人残るがよい。おれは罪を得たから死ぬが、きさまは生き残って俺の代りに君公につかえ、二人前を働いてくれ」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「つんぼか! きさまは」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一、きさまのような間違った料簡りょうけんで、先生の心が解るのかよ! お前は不賛成でも己は賛成だか、お前は不服でも己は心服だか——知れるかい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先刻さっき富松とみまつをわざわざってこんなところに来てもらったは、何でもない、実は仲直りしてもらいたくてだ、どうかきさまとわっさり飲んで互いの胸を和熟させ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「そうか、きさまが主人のためを思うて、そう云うならいけないとも云えないが」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
晃 死ね、死ね、死ね、民のためにきさま死ね。見事に死んだら、俺も死んで、それから百合を渡してやる。死ね、しなないか。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしきさまの云うように思案しかえるはどうしても厭、十兵衛が仕事に手下は使おうが助言じょごんは頼むまい、人の仕事の手下になって使われはしょうが助言はすまい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きさまの処へ出入するお杉と云う婆さんだ、もっとも婆さんは、字が書けないと云うから、俺が書いてやったのだが、一つの山田稔と云うのは、本人が書いたのだ、品川にごろごろしてる馬の脚だ
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「へいじゃあない、小六さんたあ何だ。客の前を何と心得てるんだ。けだものめ、乞食芸人の癖に様づけに呼ぶやつがあるもんか。きさまあ何だい、馬鹿め!」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
興世王もこれには憤然ふんぜんとせざるを得なかつたが、根が負け嫌ひの、恐ろしいところの有る人とて、それならきさまも勝手にしろ、乃公おれも勝手にするといつた調子なのだらう
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
きさまが臆病だから、そんな夢を見たのだ、しっかりしろ」
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あれ、摺拔すりぬけようともがきますときとびらけて、醫師いしやかほしました。なにをじたばたする、のお仙人せんにんきさまくのだ、と睨付にらみつけてまをすのです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
親方がのつそりきさまやつて見ろよと譲つて呉れゝば好いけれどものうとの馬鹿に虫の好い答へ、ハヽヽ憶ひ出しても、心配相に大真面目くさく云つた其面が可笑くて堪りませぬ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
きさまのような奴は、もう許さん、今日限り離縁する」
地獄の使 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「今聞いた、何か、いかす法もあるとったな、なろう事ならいかして戻せ。きさまも無事じゃ、我等も満足、自他の幸福というものじゃ。さ、どうじゃ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
斯様打解けて仕舞ふた上は互に不妙まづいことも無く、上人様の思召にも叶ひ我等おれたちの一分も皆立つといふもの、嗚呼何にせよ好い心持、十兵衞きさまも過してくれ、我も充分今日こそ酔はう
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「やい、小平、よくもよくもきさまは、お岩を殺したな」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「何じゃな、きさまは一体、」と大人うしは正面に腕を組む。令夫人はものもいわずと後向きになりたまう。後室は声鋭く
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きさまはまだ悪い心がうせないのか」
劉海石 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
きさまの母親はな。顔も気質きだてきさまて、やっぱりおれの言うことを聞かなかったから、毒を飲まして得三が殺したのだ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
俺もきさまの家を焼いて讐をうってやる
青蛙神 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
鯉七 はあ、いかさまきさまのせいでもあるまい。助けてやろう——そりゃ行け。やい、稲が実ったら案山子かかしになれ!
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「恐ろしい奴だ、きさまはそんな奴か」
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
きさまとても、少しは分つてらう。分つて居て、其の主人が旅行と云ふ隙間すきまねらふ。わざと安心して大胆な不埒ふらちを働く。うむ、耳をおおうてすずを盗むと云ふのぢや。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「で、わしがその請求をかんけりゃ、きさま、どうすッとか言うんじゃのう。」と、太息をいたのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
唯今ただいまも、途中で言聞かした通りじゃ。きさまに白羽の矢が立ったで、否応いやおうはないわ。六ヶ村の水切れじゃ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紳士 うむ、(重くうなずく)聞えた。とにかく、きさまの声は聞えた。——こりゃ、俺の声が分るか。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ざまあ見ろ、きさま先刻さっきは威張ったけれど、ふ、大きな口よウたたくなあ、蒲団ふとんに坐ってる時ばかりだ。うつくしい蒲団に坐ってる乞食ゃそんなものか。つまらないもんだなあ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紳士 うむ、(重くうなずく)聞えた。とにかくきさまの声は聞えた。——こりや、俺の声が分るか。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これが風説うわさの心中仕損しそこない。言訳をして、世間が信ずるくらいなら、黙っていても自然おのずから明りは立つ。面と向ってきさまが、と云うものがないのは、君が何にも言わないと同一おんなじなんだ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こりゃ、無茶だ。」「何でございますと。」「考えてみい、世が世なら、きさま達が拝むと即座に眼がつぶれるような御夫人方だ、何だって汚らわしい乞食風情に御言語おことばを下さるものか。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はあ、うそふまい、馬鹿野郎ばかやらうきさまおやぢと、おれ兄弟分きやうだいぶんだぞ。これ。」
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
又、汝等きさまらとても、う云ふ事件の最後の際には、其の家の主人か、良人おっとか、えか、俺がぢや、ある手段として旅行するにきまつとる事を知つてる。きさまは知らいでも、怜悧りこうあれは知つてる。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)