たび)” の例文
折しも弥生やよいの桜時、庭前にわさき桜花おうかは一円に咲揃い、そよ/\春風の吹くたびに、一二輪ずつチラリ/\とちっる処は得も云われざる風情。
……たびに、銀杏返いてふがへしくろあたまが、縦横たてよこはげしくれて、まんまるかほのふら/\とせはしくまはるのが、おほき影法師かげばうしつて、障子しやうじうつる……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
車は交叉点を横切ると、速力を緩急するたびに乗客を投付けたり、錐揉きりもみの様にしたりしては走り続けた。恰度ちょうど険阻けんそを行く様に波打ったり傾いたりした。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
硝子窓にさらさらと落葉が当って轟々ごうごうと北風が家をゆすって、そのたびに、かたんかたんと窓の障子が鳴るのであった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
夕方三人で又一君宅の風呂ふろをもらいに行く。実は過日来往返おうへんたび斗満橋とまむばしの上から見てうらやましく思って居たのだ。風呂は直ぐ川端かわばたで、露天ろてんえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「本当にねエ、阿母おつかさん」と、お花はブル/\と身をふるはしつ「何と云ふ御親切な方でせう、——私、考へるたびに——」と、かほたちまちサとあからめ「の様にお忙しい中で、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そのしたうたがひもなき大洞窟おほほらあなで、逆浪ぎやくらう怒濤どたう隙間すきまもなく四邊しへん打寄うちよするにかゝはらず、洞窟ほらあななかきわめて靜謐せいひつ樣子やうすで、吾等われらあゆたびに、その跫音あしおとはボーン、ボーン、と物凄ものすごひゞわたつた。
十二の年より十七まで明暮れ顏を合せるたびに行々は彼の店の彼處へ座つて新聞見ながら商ひするのと思ふても居たれど、量らぬ人に縁の定まり、親々の言ふ事なれば何の異存を入れられやう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手紙を書けば、伝右衛門が帰宅のたびに、何処へも取次いでくれたし、返辞も持って来てくれた。市中の風聞なども居ながらに皆知った。それにつけても内蔵助は、こうしている間の冥加みょうがおそれた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大親分になるとこうして一度開堂するたびに少くも千元の収入を見る。馬徳坊の如き顔の広い親分の開堂する時は、外省の游民が船車でやって来て馬師を拝しその乾児実に万人余まんにんよに及んだそうである。
たびに、あツとこゑげて、へば、はやこと、ちよろ/\とはしつてえて、すぐに、のろりとあらはれる。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのたびに高窓を見上げていると、一日こうやって怠屈たいくつに送るのが物憂ものうかった。何かして遊びたいと思ったが、誰も訪ねて来るものがない。時計が三時を打った。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此の画を見るたびに、彼はおけいさんと其恋人葛城かつらぎ勝郎かつおおもい出さぬことは無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
婿むこの松方何とか云ふ奴の為に煉瓦れんぐわの建築をはじめたのだ、僕は其前を通るたびに、オヽ国民の膏血かうけつわたくしせる赤き煉瓦の家よ、汝が其いしずえの一つだにのこらざる時のきたることを思へよと言つてのろつてやるンだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
十二の年より十七まで明暮れ顔を合せるたび行々ゆくゆくはあの店の彼処あすこへ座つて、新聞見ながら商ひするのと思ふてもゐたれど、はからぬ人に縁の定まりて、親々の言ふ事なれば何の異存を入られやう
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
顔を見るさえ許さざれば垂籠たれこめたるの内に、下枝の泣く声聞くたびに我ははらわたを断つばかりなりし。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日暮方から鳴出なりだした雷は益々ますますすさまじくなって、一天いってん墨を流したようで、篠突しのつく大雨、ぴかりぴかりといなずまが目のくらむばかり障子にうつって、そのたびに天地もくつがえるようにいかずちが鳴り渡る
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今宵こよひれば如何いかにもあさましい有樣ありさま木賃泊きちんどまりになさんすやうにらうとはおもひもらぬ、わたし此人このひとおもはれて、十二のとしより十七まで明暮あけくかほあはせるたび行々ゆく/\みせ彼處あすこすわつて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
主人夫妻はおもたびに斯く云い合った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私が時々うかがうたびに、駒下駄を直さして、ああ、勿体ない、そう思う、思う心は、口へは出ず、手も足も固くなるから、突張つっぱって、ツンツンして、さぞ高慢に見えたでしょう。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折々おりおりぴしりぴしりと生木の刎返はねかえる音がして、そのたびに赤い火花が散った。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
盛返す景気がそのたびに、遅く重っくるしくなって来る。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)