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垂籠
やよ聴水。
縦令ひわれ老いたりとて、
焉ンぞこれしきの雪を恐れん。かく洞にのみ
垂籠めしも、決して寒気を
厭ふにあらず、獲物あるまじと思へばなり。
今日は十一月四日、打続いての快晴で空は
余残なく晴渡ッてはいるが、
憂愁ある身の心は曇る。文三は朝から
一室に
垂籠めて、独り
屈托の
頭を
疾ましていた。
持ち花見に出で
積鬱を散じる中に
和君のみは
斯垂籠て御本をのみお
讀で有ては
身體の
毒またお目の毒に成ますれば
少は
戸外へお出なされ青い物でも
御覽じたらお氣も
晴やうお目にも能らうと夫で花見を