トップ
>
柔和
>
にゅうわ
ふりがな文庫
“
柔和
(
にゅうわ
)” の例文
また
南洲
(
なんしゅう
)
自身についていえば、
見
(
み
)
ようによりては
外貌
(
がいぼう
)
が
怖
(
おそ
)
ろしい人のようにも思われ、あるいは子供も
馴染
(
なじ
)
むような
柔和
(
にゅうわ
)
な点もあった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そう思えば、あるじの僧は見るところ
柔和
(
にゅうわ
)
で
賢
(
さか
)
しげであるが、その青ざめた顔になんとなく一種の暗い影をおびているようにも見られる。
くろん坊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると——その声が止むと程なく、納戸方の小侍を指図して、いつもに変らない
柔和
(
にゅうわ
)
な顔をにこにこさせながら伝右衛門がそこへ入って来て
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
秀造さんは私の
老母
(
はは
)
にいわせると、
伊井蓉峰
(
いいようほう
)
の顔を、もっと優しく——優しくの意味は美男を鼻にかけない——
柔和
(
にゅうわ
)
にしたようなと言っている。
旧聞日本橋:16 最初の外国保険詐欺
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
義人の
妝飾
(
そうしょく
)
は「髪を
辮
(
あ
)
み金を掛けまた衣〔を着〕るがごとき外面の妝飾にあらず、ただ心の内の
隠
(
かくれ
)
たる人すなわち
壊
(
やぶ
)
ることなき
柔和
(
にゅうわ
)
恬静
(
おだやか
)
なる霊」
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
▼ もっと見る
見兼ねたか、
縁側
(
えんがわ
)
から
摺
(
ず
)
って
下
(
お
)
り、ごつごつ転がった
石塊
(
いしころ
)
を
跨
(
また
)
いで、藤棚を
潜
(
くぐ
)
って顔を出したが、
柔和
(
にゅうわ
)
な
面相
(
おもざし
)
、色が白い。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
平生僕が
目
(
ま
)
のあたりに見ているあの
柔和
(
にゅうわ
)
な母が、どうしてこう
真面目
(
まじめ
)
になれるだろうと驚ろくくらい、厳粛な
気象
(
きしょう
)
で僕を打ち
据
(
す
)
える事さえあった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
少し茶色がかった静かな瞳、きちんと結んだ唇、どっちかというと
柔和
(
にゅうわ
)
な顔立だったが、眉のあたりに負けぬ気が見えて、顔全体を引き締めていた。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
年の頃は五十あまり、眉と眉の間に、一線、刻んだような深い傷のあるのが、たださえあんまり
柔和
(
にゅうわ
)
でない先生の顔を、ことごとく
険悪
(
けんあく
)
に見せている。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
高
(
たか
)
い
空
(
そら
)
のあなたから、
太陽
(
たいよう
)
は、
柔和
(
にゅうわ
)
な
目
(
め
)
つきをして、
働
(
はたら
)
いている
人々
(
ひとびと
)
を
見守
(
みまも
)
っているようでありました。
天下一品
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
婆さんは
柔和
(
にゅうわ
)
な微笑を浮かべて、こう述べたてながら二つの包みをほどいた。
素樸
(
じみ
)
なメリンスの単衣であった。濃い水色に、白い二つの蝶を
刺繍
(
ししゅう
)
したパラソルだった。
駈落
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
和尚様
(
おしょうさま
)
と申そうよりも、尼君様と申しました方が、いっそう似つかわしく思われるような、端麗
柔和
(
にゅうわ
)
の上品のお顔へ、微笑をさえも含ませて、争いを聞いておられました。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
声も扉ごしにふと耳にしたことがありましたが、それは一言々々尾をひくやうな物静かな
柔和
(
にゅうわ
)
な
声音
(
こわね
)
で、しかもその底に妙にはつきりした物に動じない気勢が感じられました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
おとよは心はどこまでも強固であれど、父に対する態度はまたどこまでも
柔和
(
にゅうわ
)
だ。ただ
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
少し
脹
(
は
)
れっぽい顔には、
微塵
(
みじん
)
も又六の
柔和
(
にゅうわ
)
なおもかげが残ってはおりません。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
句意は
余所
(
よそ
)
で腹の立つ事ありてむつとしながら内に帰れば、庭に柳のおとなしく
垂
(
た
)
れたるを見て、この柳の如く風にもさからはず、ただ
柔和
(
にゅうわ
)
にしてこそ世の中も渡るべけれと
悟
(
さと
)
りたるなり。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、
曲眉
(
きょくび
)
豊頬
(
ほうきょう
)
ゆったりとした
柔和
(
にゅうわ
)
の
相好
(
そうごう
)
、少しも近代生活の
齷齪
(
あくせく
)
したさまがなく、大分ふるいものと見えて
日苔
(
ひごけ
)
が真白について居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
気負い立つ紀昌を
迎
(
むか
)
えたのは、羊のような
柔和
(
にゅうわ
)
な目をした、しかし
酷
(
ひど
)
くよぼよぼの
爺
(
じい
)
さんである。年齢は百歳をも
超
(
こ
)
えていよう。
腰
(
こし
)
の曲っているせいもあって、
白髯
(
はくぜん
)
は歩く時も地に
曳
(
ひ
)
きずっている。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そこにはムク犬が
柔和
(
にゅうわ
)
にして威容のある大きな
面
(
おもて
)
を見せていました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
亭主はほんとうに、ほとんど髯のない
柔和
(
にゅうわ
)
な顔をした若者だった。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
そして、
柔和
(
にゅうわ
)
で子供ずきな宮内の
手当
(
てあて
)
が
厚
(
あつ
)
かったために、こうしてふたりとも、もとのからだに近いまでに、健康をとりもどしてきたのだろう。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかるに『新約聖書』を見ると、その説くところはなはだ
柔和
(
にゅうわ
)
にして強みがさらになきにかかわらず、読んで行くあいだに犯すべからざる力を感ずる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
教師
(
きょうし
)
も
K
(
ケー
)
にたいしては、
秀吉
(
ひできち
)
とは
反対
(
はんたい
)
で、
彼
(
かれ
)
を
見
(
み
)
る
目
(
め
)
つきは、いつも
柔和
(
にゅうわ
)
であり、ときには、こびるように、やさしい
言葉
(
ことば
)
をかけるとさえ
思
(
おも
)
われることもありました。
天女とお化け
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
くちびるには、さも
満足
(
まんぞく
)
げなほおえみがうかび、
柔和
(
にゅうわ
)
な目には、深い
喜
(
よろこ
)
びの色があった。
美しき元旦
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
第二小隊の鮎川丈次郎は武州大宮在の農家の次男で、年は二十三歳で、歩兵仲間にはめずらしい色白の
柔和
(
にゅうわ
)
な人間であるが、同じ隊中の者に誘われて此の頃は随分そこらを飲み歩くらしい。
半七捕物帳:62 歩兵の髪切り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
カッと大眼を見開いて彼は人丸を睨むようにしたが、
俄然
(
がぜん
)
柔和
(
にゅうわ
)
の表情に返り
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かれは
高野山
(
こうやさん
)
に
籍
(
せき
)
を置くものだといった、年配四十五六、
柔和
(
にゅうわ
)
ななんらの
奇
(
き
)
も見えぬ、
懐
(
なつか
)
しい、おとなしやかな
風采
(
とりなり
)
で、
羅紗
(
らしゃ
)
の
角袖
(
かくそで
)
の
外套
(
がいとう
)
を着て、白のふらんねるの
襟巻
(
えりまき
)
をしめ、
土耳古形
(
トルコがた
)
の
帽
(
ぼう
)
を
冠
(
かぶ
)
り
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
柔和
(
にゅうわ
)
なる寺の老住持が言いました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
五十前後の
柔和
(
にゅうわ
)
な男です。
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
基督
(
キリスト
)
教のごとく、
柔和
(
にゅうわ
)
を
旨
(
むね
)
とする宗教にては、はでなことがはなはだ少ない、
喧嘩
(
けんか
)
も少なければ、議論も少ない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
かれはふと、そこへ
蹴飛
(
けと
)
ばされてきた
地蔵菩薩
(
じぞうぼさつ
)
のお
像
(
すがた
)
に目をとめた。
蹴
(
け
)
られても、足にかけられても、みじん、つねの
柔和
(
にゅうわ
)
なニコやかさとかわりのない愛のお顔。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老社長
(
ろうしゃちょう
)
の
柔和
(
にゅうわ
)
な、二つの
目
(
め
)
は、
眼鏡
(
めがね
)
の
内
(
うち
)
からレンズをとおして、じっと
幸三
(
こうぞう
)
の
上
(
うえ
)
に
注
(
そそ
)
がれていましたが、
少年
(
しょうねん
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
くと、さも
深
(
ふか
)
く
感動
(
かんどう
)
したようにうなずきながら
新しい町
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
南
(
みなみ
)
の
方
(
ほう
)
から
吹
(
ふ
)
いてくるやさしい
風
(
かぜ
)
は、どの
木
(
き
)
にも
草
(
くさ
)
にもしんせつで、
柔和
(
にゅうわ
)
でありましたけれど、
北
(
きた
)
の
方
(
ほう
)
から
吹
(
ふ
)
いてくる
風
(
かぜ
)
は、
小
(
ちい
)
さいのでも
大
(
おお
)
きなのでも、
冷酷
(
れいこく
)
で、
無情
(
むじょう
)
で
大きなかしの木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
おそれげもなく、そばへかけよってきた
忍剣
(
にんけん
)
の手になでられると、
鷲
(
わし
)
は、かれの肩に
嘴
(
くちばし
)
をすりつけて、あたかも、なつかしい
旧友
(
きゅうゆう
)
にでも会ったかのような表情をして、
柔和
(
にゅうわ
)
であった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
目
(
め
)
から
口
(
くち
)
もとへかけて、
柔和
(
にゅうわ
)
な
顔
(
かお
)
つきが、どこかお
父
(
とう
)
さんに
似
(
に
)
ているように
思
(
おも
)
いました。
汽車は走る
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と、
柔和
(
にゅうわ
)
な笑顔を送った。
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おじいさんの
顔
(
かお
)
は、いつも
笑
(
わら
)
っているように
柔和
(
にゅうわ
)
に
見
(
み
)
えました。
赤い船のお客
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
柔
常用漢字
中学
部首:⽊
9画
和
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“柔和”で始まる語句
柔和忍辱
柔和顏
柔和仮面