トップ
>
杭
>
くい
ふりがな文庫
“
杭
(
くい
)” の例文
いや、
一旦
(
いったん
)
はもう
杭
(
くい
)
を打つたんですが、近所が去年焼けたもんですから、又なんだかごた
付
(
つ
)
いて……。一体どうなるんでせうかねえ。
赤い杭
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
雪が屋根よりも高く積まれた上を黒いマントを着た子供たちが
杭
(
くい
)
から杭へ渡された縄につかまって歩いている絵はがきをもらったとき
赤いステッキ
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
ただ疑の積もりて
証拠
(
あかし
)
と凝らん時——ギニヴィアの捕われて
杭
(
くい
)
に焼かるる時——この時を思えばランスロットの夢はいまだ成らず。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
のんきなやつで、チョビ安、手に一本の小さな焼け棒ッ
杭
(
くい
)
をひろって、包囲する伊賀勢の剣輪をもぐってかこみの
外
(
そと
)
へ走りぬけた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
埠頭の
杭
(
くい
)
が朝霧の中にふうーっと溶けてしまうと、もう一面にまっ白で、外輪車のゆるく波を切るより外に、眼をなぐさめるものはない。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
▼ もっと見る
で、老武士はゆるゆると、
不忍池
(
しのばずのいけ
)
に沿いながら、北の方へあるいて行った。二町余りもあるいたであろうか、彼は
杭
(
くい
)
のように突っ立った。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、書いた
杭
(
くい
)
が打ってある。ここでは今、十数
艘
(
そう
)
の兵船が造られていた。新しい船底や
肋骨
(
ろっこつ
)
を組みかけた
巨船
(
おおぶね
)
が
渚
(
なぎさ
)
に沿って並列している。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「柵の
杭
(
くい
)
はかく打つもの、結び様はこの様にするもの」と云い
乍
(
なが
)
ら立ち働いて居るのを見て、昌景、「
彼奴
(
かやつ
)
は尋常の士ではない、打ち取れ」
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ふと気がつくと、岸から三メートルほどの池の中に、黒い
杭
(
くい
)
のようなものが立っている。水面から二尺ほどもつき出している。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
こんどはそんなことのないようにと、水際を十尺以上も掘り、杉丸太の
杭
(
くい
)
を深く打ち込んで、地固めから頑丈に工事を進めた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
最も
愚鈍
(
ぐどん
)
なるもの最も
賢
(
かしこ
)
きものなり、という白い
杭
(
くい
)
が立っている。これより赤道に至る八千六百ベスターというような標もあちこちにある。
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
三方崩れかかった窪地の、どこが境というほどの
杭
(
くい
)
一つあるのでなく、
折朽
(
おれく
)
ちた
古卒都婆
(
ふるそとば
)
は、
黍殻
(
きびがら
)
同然に
薙伏
(
なぎふ
)
して、薄暗いと白骨に紛れよう。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
百本
杭
(
くい
)
の
角
(
かど
)
で、
駒止橋
(
こまどめばし
)
の前にあって、後には
二洲楼
(
にしゅうろう
)
とよばれ、さびれてしまったが、その当時は格式も高く、柳橋の
亀清
(
かめせい
)
よりきこえていたのだ。
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ふと葉子は目の下の枯れ
葦
(
あし
)
の中に動くものがあるのに気が付いて見ると、大きな
麦桿
(
むぎわら
)
の海水帽をかぶって、
杭
(
くい
)
に腰かけて、
釣
(
つ
)
り
竿
(
ざお
)
を握った男が
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と云って、学童が遊戯を抛って校門の
杭
(
くい
)
に首を突き並べて騒いだものだ、今日では、いかなる貧農でも自転車の一輛や二輛備えていない家は無い。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
察するところ、造船工廠の先端の
杭
(
くい
)
の間にからまったものであろう。その男の在監番号は九四三〇号で、ジャン・ヴァルジャンという名前である。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
わたしは
牢屋
(
ろうや
)
のうらをぶらぶら歩きながら、がっしりした
監獄
(
かんごく
)
の
杭
(
くい
)
を一本一本かんじょうしながらながめていました。
百姓マレイ
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そして向う河岸一帯は百本
杭
(
くい
)
の方から掛けて、ずっとこう
薄気味
(
うすぎみ
)
の悪いような所で、物の本や、講釈などの舞台に
能
(
よ
)
くありそうな淋しい所であった。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
年
(
とし
)
とったからすは、
長
(
なが
)
い
旅
(
たび
)
に
疲
(
つか
)
れて、
杭
(
くい
)
に
止
(
と
)
まって
居眠
(
いねむ
)
りをしていました。
姉
(
あね
)
は、
黒
(
くろ
)
い
河
(
かわ
)
からへびのような
長
(
なが
)
い
魚
(
さかな
)
をとって、からすに
食
(
く
)
わせました。
消えた美しい不思議なにじ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
葉子は幼少のころ、澄んだその流れの底に、あまり遠く押し流されないように
紐
(
ひも
)
で体を岸の
杭
(
くい
)
に結わえつけた祖母の死体を見た時の話をしたりした。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それを禅では
繋驢橛
(
けろけつ
)
という言葉があるそうであります。
杭
(
くい
)
にロバをつないでおきますと、ぐるぐる回りますと綱が短くってどうすることもできない。
生活と一枚の宗教
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
高直
(
たかね
)
で買い取った馬は初め四の
杭
(
くい
)
に登り立ち、数日後には四足を縮めて一の杭に立ち、よく主人を乗せ走りて毎日午前は筑紫午後は都で勤務せしめ
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
彼女はかがんで棧の
杭
(
くい
)
につかまった。えびのように腰をまげて一足々々を順ぐりに踏み板のうえに上げるのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
薪の束のように、鎖と
杭
(
くい
)
とでしっかりと留め、都合のよい冬の空気のなかを、冬の穴蔵にまではこび、そこに横たわって夏までもたせるわけである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
巨体を地上の
杭
(
くい
)
に結びつけられて、風にゆらゆら動いていたこと、工場の中窓には灯がついていないようだった。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ちょうどその甲虫の落ちた地点に、すこぶる精確に
杭
(
くい
)
を打ちこむと、友は今度はポケットから巻尺を取り出した。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
... 小さき人物は広重と同時の英国大画家タアナアの如くしばしば
杭
(
くい
)
の並べる如き観あれどこれまた風景中の諸点を強むる力あり。」また永代橋の図につきては
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
家の前には水の中に
杭
(
くい
)
打って板をわたし、霜の
朝
(
あした
)
に顔洗うも、米洗い、洗濯、あと仕舞い、または夕立に網あらい、ただしは月の夕に泥鍬を洗うのも、皆
此処
(
ここ
)
だ。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
平次の指さしたのはこの辺の川を渡すのに使う舟で、何の変哲もなく、岸の
杭
(
くい
)
に
繋
(
つな
)
いであるのでした。
銭形平次捕物控:112 狐の嫁入
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
今
謂
(
い
)
う
無精鬚
(
ぶしょうひげ
)
というのを
捉
(
とら
)
えて、それを「剃杭」といって、その
杭
(
くい
)
に馬を
繋
(
つな
)
いでも、ひどく引っぱるなよ、法師が半分になってしまうだろうから、というのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
またたとえば
芭蕉
(
ばしょう
)
は
時鳥
(
ほととぎす
)
の声により、
漱石
(
そうせき
)
は
杭
(
くい
)
打つ音によって広々とした江上の空間を描写した。
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鰻ネ、大きい鰻がね、おとっさん、あの垣根の
杭
(
くい
)
のわきへ口を出してパクパク水を飲んでいるのさ。それからどうして
捕
(
と
)
ろうかって、みんなが相談してもしようがないの。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そこは、
杭
(
くい
)
が多く海流が狭められて、漕ぐにも繋ぐにもはなはだ危険な場所である。水は、はげしく奔騰して、石垣に逆巻き、わずか、西よりの一角以外には、船着場所もない。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
真上からタタキのめされて、下の漁夫の首が胸の中に、
杭
(
くい
)
のように入り込んでしまった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
岸に
著
(
つ
)
いて船頭が船を
杭
(
くい
)
に
繋
(
つな
)
ぐのを待って、桟橋めいたものを伝わって地面に出ます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
こしかけといってもそれはきわめて
幅
(
はば
)
のせまい板を
杭
(
くい
)
にうちつけたもので、どうかすると
尻
(
しり
)
がはずれて地にすべりこみそうになる、それを支えているのはなかなか容易なことではない
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
孤立であったかれは、
譬
(
たと
)
えば支えるものもない一本の
杭
(
くい
)
のごときものであった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
それは、まったく
翡翠
(
かわせみ
)
が
杭
(
くい
)
の上から魚影を
覗
(
うかが
)
う
敏捷
(
びんしょう
)
でしかも
瀟洒
(
しょうしゃ
)
な姿態である。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
どんな巧妙な加減乗除をしても、この僕の
一・〇
(
いちこんまれい
)
という存在は流れの中に立っている
杭
(
くい
)
のように動かない。ひどく、しらじらしい。けさの僕は、じっと立っている杭のように厳粛だった。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
正勝は馬を下りると路傍の馬
繋
(
つな
)
ぎ
杭
(
くい
)
に馬を繋いで、吾助茶屋に入っていった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
俺にはしかし、その舟に乗り移るときに、ちらと眼に映った、貝殻がいっぱいくっついた
杭
(
くい
)
が——やわらかい触感よりも、眼で見ただけの固いカサブタだらけの杭のほうが気味悪く思い出された。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
櫨
(
はぜ
)
の木で作った
杭
(
くい
)
を六本ずつ二度、合せて二十四本打ちこむ。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
二つの簗の
杭
(
くい
)
が流れにあたってグラグラ動いているのを
アイヌ神謡集
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
敵の
杭
(
くい
)
につなぎとめて置くということになるのだ。
国際無産婦人デーに際して:作家同盟各支部に婦人委員会をつくれ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
蜻蛉
(
とんぼう
)
の逆立ち
杭
(
くい
)
の笑ひをり
六百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
柵の
杭
(
くい
)
にひっかけたが、ちょっと考えてから、誰でもいい、力のありそうな者を三人ばかり呼んで来てくれ、と岡村に云った。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
明朝、そちの身を、大きな十字の
杭
(
くい
)
に
縛
(
しば
)
りつけ、城下の
濠際
(
ほりぎわ
)
まで、兵どもに
担
(
かつ
)
がせて参るゆえ、そちは十字架の上より、大音にてこう申せ。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
橋を渡って、シュタンスシュタットの船つきに行く、桟橋の
杭
(
くい
)
の上にのっかって煙草をふかしはじめる、船は
中々
(
なかなか
)
見えない。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
ところが、その蝋燭が馬鹿に重いので、こいつは変だなと云って、人足のひとりがその一本をそこらの
杭
(
くい
)
に叩き付けてみると、なるほど重い筈だ。
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
刀を握って走り寄り二人の
傍
(
そば
)
へ近寄るや否や
杭
(
くい
)
へ
繋
(
つな
)
いだ縄を切り二人へ刀を突き附け、社殿の中へ連れ込もうとした。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“杭”の意味
《名詞》
(くい)地面に打ち込んで支柱・目印にする棒。
(くい、くいぜ)切り株。
(出典:Wiktionary)
“杭”の解説
杭(杙、くい、en: pile)は、建築物の固定や目印のために地中に打ち込む棒状のものである。古くは木製であったが、現代では条件によって金属製やプラスチック製のものを用いることもある。
杭を埋設することを杭打ち、その機械を杭打ち機という。
(出典:Wikipedia)
杭
漢検準1級
部首:⽊
8画
“杭”を含む語句
棒杭
橋杭
杭州
木杭
杭打
乱杭
百本杭
焼棒杭
立杭
標杭
杭瀬
剃杭
乱杭歯
焼木杭
浪除杭
余杭
亂杭
石杭
榜杭
地杭
...