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こころもち
ふりがな文庫
“
心地
(
こころもち
)” の例文
旅するものに取ってはこの上もない好い
日和
(
ひより
)
だった。汽車が国府津の方へ進むにつれて、
温暖
(
あたたか
)
い、
心地
(
こころもち
)
の好い日光が室内に
溢
(
あふ
)
れた。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それでも「池の
主
(
ぬし
)
になっているから、姿をかくしたが安心してくれ。」という
伝言
(
ことづけ
)
をせねば、自分の重い役が一生とれぬ
心地
(
こころもち
)
もするので
糸繰沼
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
市郎は散歩が
好
(
すき
)
であった。
加之
(
しか
)
も未来の妻たるべき冬子の家を訪問するのであるから、悪い
心地
(
こころもち
)
は
為
(
し
)
なかった。早速に帽子を被って家を出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
再び
帰
(
かえっ
)
て来はしないぞ、今日こそ
宜
(
い
)
い
心地
(
こころもち
)
だと
独
(
ひと
)
り心で喜び、
後向
(
うしろむ
)
て
唾
(
つばき
)
して
颯々
(
さっさつ
)
と
足早
(
あしばや
)
にかけ出したのは今でも覚えて居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ひょっとこれがさかさまで、わたしが肺病で、浪の
実家
(
さと
)
から肺病は
険呑
(
けんのん
)
だからッて浪を取り戻したら、
母
(
おっか
)
さんいい
心地
(
こころもち
)
がしますか。
同
(
おんな
)
じ事です
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
不図
(
ふつと
)
さう
思出
(
おもひだ
)
したら、毎日そんな事ばかり考へて、
可厭
(
いや
)
な
心地
(
こころもち
)
になつて、自分でもどうか
為
(
し
)
たのかしらんと思ふけれど、私病気のやうに見えて?
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
二人の形見の鏡を載せて、漕いで行く二人の両親の
心地
(
こころもち
)
はどんなでしたろう。又
彼
(
か
)
の鏡を車に載せて、都へ送る両方の村人の思いはどんなでしたろう。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
目指す的と捲藁を
狙
(
ねら
)
ッて矢数幾十本かを試したので、少し疲れを覚えて来たゆえ、しばし一息を入れていると冷や冷やとして
心地
(
こころもち
)
よい朝風が汗ばんで来た貌や、体や
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
「
皆様
(
みなさん
)
、これじゃ
耐
(
たま
)
らん。ちと
甲板
(
かんぱん
)
へお
出
(
い
)
でなさい。涼しくッてどんなに
心地
(
こころもち
)
が
快
(
いい
)
か知れん。」
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「小畑もそんなことを言っていたよ。僕だッて、君の
心地
(
こころもち
)
ぐらいは知っているさ」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
何卒
(
どうか
)
してお新を
往時
(
むかし
)
の
心地
(
こころもち
)
に返らせたいと思って、山本さんは熱海まで連れて行ったが、駄目だった。そこで今度は伊東の方へ誘った。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
四千何百トンの
艦
(
ふね
)
が三四十度ぐらいに傾いてさ、山のようなやつがドンドン
甲板
(
かんぱん
)
を打ち越してさ、
艦
(
ふね
)
がぎいぎい
響
(
な
)
るとあまりいい
心地
(
こころもち
)
はしないね
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
都
(
すべ
)
て
如斯
(
こん
)
な
訳
(
わ
)
けで私はどうも旅とは思われぬ、真実故郷に
帰
(
かえっ
)
た通りで誠に
宜
(
い
)
い
心地
(
こころもち
)
。それから兄が私に
如何
(
どう
)
して
貴様
(
きさま
)
は出し抜けに
此処
(
ここ
)
に来たのかという。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
雪風
(
ゆきかぜ
)
に熱い頬を吹かせながら、お葉は
快
(
いい
)
心地
(
こころもち
)
に
庭前
(
にわさき
)
を眺めていると、松の樹の下に何だか白い物の
蹲踞
(
しゃが
)
んでいるのを
不図
(
ふと
)
見付けた。どうやら人のようである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それを
怺
(
こら
)
へてお前を人に
奪
(
とら
)
れるのを手出しも
為
(
せ
)
ずに見てゐる僕の
心地
(
こころもち
)
は、どんなだと思ふ、どんなだと思ふよ! 自分さへ好ければ
他
(
ひと
)
はどうならうともお前はかまはんのかい。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
青森
(
あおもり
)
あたりだとききました、
越中
(
えっちゅう
)
から出る薬売りが、
蓴菜
(
じゅんさい
)
が
一
(
いっ
)
ぱい浮いて、まっ
蒼
(
さお
)
に
水銹
(
みずさび
)
の深い湖のほとりで
午寐
(
ひるね
)
をしていると、急に水の中へ沈んでゆくような
心地
(
こころもち
)
がしだしたので
糸繰沼
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そのまま横になッたが,いつ眠ッたかそれも知らず
心地
(
こころもち
)
よく
眠入
(
ねい
)
ッてしまッた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
耶蘇教
(
やそきょう
)
の信者の女房が、
主
(
しゅ
)
キリストと抱かれて寝た夢を見たと言うのを聞いた時の
心地
(
こころもち
)
と、
回々教
(
フイフイきょう
)
の
魔神
(
ましん
)
になぐさまれた夢を見たと言うのを聞いた時の
心地
(
こころもち
)
とは、きっとそれは違いましょう。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何となく頭の上から押しつけられるような、ハッキリと物を考えられない
心地
(
こころもち
)
で、山本さんは礼を言って車に乗って行くお新に別れた。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こう妙に胸に響くような
心地
(
こころもち
)
がしましてね——それはこの
書
(
ほん
)
にも
符号
(
しるし
)
をつけて置きましたが——それから
知己
(
しるべ
)
の
宅
(
うち
)
に越しましても、時々読んでいました。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
人に金を借用してその催促に逢うて返すことが出来ないと云うときの心配は、
恰
(
あたか
)
も
白刃
(
はくじん
)
を
以
(
もっ
)
て後ろから
追蒐
(
おっか
)
けられるような
心地
(
こころもち
)
がするだろうと思います。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その時になつて、お前の
心地
(
こころもち
)
を考へて御覧、あの富山の財産がその
苦
(
くるしみ
)
を
拯
(
すく
)
ふかい。家に沢山の財が在れば、夫に棄てられて床の置物になつてゐても、お前はそれで
楽
(
たのしみ
)
かい、満足かい。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「ええ、もうなんともかとも
謂
(
い
)
えないいやな
心地
(
こころもち
)
だ。この水を飲んだら、さぞ胸が清々するだろう! ああ死にたい。こんな思いをするくらいなら死んだほうがましだ。死のう! 死のう!」
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
堅い地を割って、草の芽も青々とした頭を
擡
(
もちあ
)
げる時だ。彼は自分の
内部
(
なか
)
の方から何となく
心地
(
こころもち
)
の好い
温熱
(
あたたかさ
)
が
湧
(
わ
)
き上って来ることを感じた。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何だか寝台の
周囲
(
まわり
)
を
歩行
(
ある
)
いたんだが、そう、どっちにしても
婦
(
おんな
)
らしく思われた——それがすぐに、息の詰るほど
厭
(
いや
)
な
心地
(
こころもち
)
だったんではないけれども、こう、じとじとして、湿っぽくッて、陰気で
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その人はそよそよとした
心地
(
こころもち
)
の好い風が顔を
撫
(
な
)
でて通るような草原に寝そべって岸本の旧詩を吟じている若者を想像して見よとも言った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
自分は田舎で
埋木
(
うもれぎ
)
のような
心地
(
こころもち
)
で心細くってならない処。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お房が父の背中に頭をつけて、
心地
(
こころもち
)
好
(
よ
)
さそうに寝入った頃、下婢は勝手口から上って来た。子供の臥床が
胡燵
(
こたつ
)
の側に敷かれた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
いい
心地
(
こころもち
)
になって
睡
(
ね
)
こんでしまった
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まあ僕は
哭
(
な
)
きたいような気が起る。
真実
(
ほんとう
)
に苦しんで見たものでなければ、苦しんで居る人の
心地
(
こころもち
)
は解らないからね。そこだ。
朝飯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あるいはこのあたりに多い羊の群の飼われる牧場の方へ歩き廻りに行っても、彼は旅らしい
心地
(
こころもち
)
を
味
(
あじわ
)
うに事を欠かなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
旦那の
心地
(
こころもち
)
は私によく解る。真実に、その方の
失敗
(
しくじり
)
さえなかったら、旦那にせよ、正太にせよ……私は惜しいと思いますよ
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
叔父達が夏羽織を引掛けて、
起
(
た
)
ち上った頃は、対岸の灯も
幽
(
かす
)
かに成った。混雑した
心地
(
こころもち
)
で、一同は互に別れを告げた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
仕事が済んで、いよいよそこへ筆を投出した時は——その
心地
(
こころもち
)
は、君、何とも言えませんでした。部屋中ゴロゴロ
転
(
ころ
)
がって歩きたいような気がしました
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
岸本は先ずそれを子供に言って聞かせたが、兄弟の幼いものが互いに呼びかわす声を新しい住居の方で聞いたばかりでも、彼には別の
心地
(
こころもち
)
を起させた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この人達を宿の二階に迎えた時のお種の
心地
(
こころもち
)
は、丁度吾子を乗せた救い舟にでも
遭遇
(
であ
)
ったようで、破船同様の母には何から
尋
(
たず
)
ねて可いか解らなかった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「しかし、阿爺さん」と三吉は老人の前に居て、「あの自分で
御建築
(
おたて
)
に成った大きな家が、火事で焼けるのを御覧なすった時は——どんな
心地
(
こころもち
)
がしましたか」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
旦那様は口を
噤
(
つぐ
)
んで了いました。御互に物を仰らないのは、仰るよりも
猶
(
なお
)
か冷い
心地
(
こころもち
)
がしましたのです。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし、この野辺山が原へ上って来て、
冷々
(
ひやひや
)
とした
清
(
すず
)
しい秋の空気を吸うと、もう
蘇生
(
いきかえ
)
ったようになりましたのです。高原の朝風はどの位
心地
(
こころもち
)
のよいものでしょう。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これが私には一番自然なことで、又たあの当時の生活の一番好い記念に成るような
心地
(
こころもち
)
がする。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「私はどうしても平沢へ行きたくないような
心地
(
こころもち
)
がして……気が
咎
(
とが
)
めてなりゃせん」
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
沸し湯ではあるが、鉱泉に身を浸して、
浴槽
(
よくそう
)
の中から
外部
(
そと
)
の景色を
眺
(
なが
)
めるのも
心地
(
こころもち
)
が好かった。湯から上っても、皆の楽みは茶でも飲みながら、書生らしい雑談に
耽
(
ふけ
)
ることであった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この
平素
(
ふだん
)
信じていたことを——そうだ、よく彼女に向って、
誰某
(
だれそれ
)
は女でもなかなかのシッカリものだなどと言って
褒
(
ほ
)
めて聞かせたことを、根から底から
転倒
(
ひっくりかえ
)
されたような
心地
(
こころもち
)
に成った。
刺繍
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あれほど山里に住む
心地
(
こころもち
)
を引き出されたことも、吉左衛門らにはめずらしかった。金兵衛はまた石屋に渡した仕事もほぼできたと言って、その
都度
(
つど
)
句碑の工事を見に吉左衛門を誘った。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
旧
(
ふる
)
い
馴染
(
なじみ
)
の看護婦が二人までもまだ勤めていること、それに一度入院して全快した経験のあること——それらが一緒になって、おげんはこの病院に移った翌日から何となく別な
心地
(
こころもち
)
を起した。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
世間を見るに、
美
(
い
)
い声が
醜
(
まず
)
い
口唇
(
くちびる
)
から出るのは
稀
(
めずら
)
しくも有ません。然し、この女のようなのも
鮮
(
すくな
)
いと思いました。一節歌われると、もう私は泣きたいような
心地
(
こころもち
)
になって、胸が込上げて来ました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
男や女が仕事しかけた手を休めて、
屋外
(
そと
)
へ出て見るとか、空を仰ぐとかする時は、きっと浅間の方に非常に大きな煙の
団
(
かたまり
)
が望まれる。そういう時だけ火山の
麓
(
ふもと
)
に住んでいるような
心地
(
こころもち
)
を起させる。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
先生は自然と出て来る楽しい
溜息
(
ためいき
)
を
制
(
おさ
)
えきれないという風に、
心地
(
こころもち
)
の好い沸かし湯の中へ身を浸しながら、久し振で一緒に成った高瀬を
眺
(
なが
)
めたり、田舎風な
浅黄
(
あさぎ
)
の
手拭
(
てぬぐい
)
で自分の顔の汗を
拭
(
ふ
)
いたりした。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
心
常用漢字
小2
部首:⼼
4画
地
常用漢字
小2
部首:⼟
6画
“心地”で始まる語句
心地好
心地快
心地悪
心地惡
心地観経