御容子ごようす)” の例文
小間使が言った千破矢の若君という御容子ごようすはどこへやら、これならば、不可いけねえの、居やがるのと、いけぞんざいなことも言いそうな滝太郎。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御親子ごしんしの間がらでありながら、大殿様と若殿様との間くらい、御容子ごようすから御性質まで、うらうえなのもまれでございましょう。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あの御容子ごようすでは、なおってでも、殿をお止め申すつもりかも知れませんが、はや、これまでお出ましあった上は……」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊「貴方また其様そん御容子ごようすいことばかり御意遊ばします、わたくしのような此様こんなはしたない者がお酌をしては、御酒ごしゅもお旨くなかろうかと存じます」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
近頃、奥様の御容子ごようすが、何分どうも不審なので御座いますよ、先日旦那様が御帰京おかへりになりました晩、伊藤侯がはからずも媒酌人ばいしやくにんつて下ださるからとのお話で
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
身体を七分三分にヒネツタすこぶる「卓抜非凡」の御容子ごようすです。内容はその「新吉原改良論」より巻末の「脚本白拍子祇王」に至るまで、一々「独創の識見」に満ちた御作です。
寄贈書籍 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
べつにお怒りになった御容子ごようすも見えないですから、ついすると赦していただくことができますよ、すこし辛抱しているがいいのです、逃げ出したりなんかしてはいけないです
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「私、あんな女の方に、家のまはりを歩かれるのは厭です。何か、おありになるンぢやありませんの……。とても、貴方の御容子ごようすが以前とはまるきり違つて来てゐるンですもの」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
さんざんに相成るのではあるまいか——と、御一統、御心痛の御容子ごようす——出来ますことなら、あなたさまに、おかんがえ直しが願えたなら、八方、よろしかろう——と、おふくろも
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
いひしか譯もわからず忠兵衞不審ふしんに思ひながら障子をひらいて内に入るおと此方こなたは目をさませば忠兵衞ひざ摺寄すりよせて今日の事は旦那樣よりうかゞひまして折角せつかくのお花見にさへおいでがなしと聞て驚き御容子ごようす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『よし、さらば、詰問きつもんせん』王樣わうさま冱々さえ/″\しからぬ御容子ごようすにて、うでみ、まゆひそめ、兩眼りようがんほとんど茫乎ぼうツとなるまで料理人クツク凝視みつめてられましたが、やがてふとこゑで、『栗饅頭くりまんぢうなにからつくられるか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
御容子ごようすのいい、背のすらりとした、見立ての申し分のない、しかし奥様と申すには、どこかなまめかしさが過ぎております。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし御姫様は、命拾いをなすった嬉しさに、この声も聞えないような御容子ごようすでしたが、やがて髪長彦の方を向いて、心配そうに仰有おっしゃいますには
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
女院には、あなたの御出家のうわさを聞かれて、御自身も、仏門にはいりたいねがいを、しきりに、おもちになった御容子ごようすです——などとも、書いてあった。
皆さんが立派な奥様におなりなすつたり、阿母おつかさんにおなりなすつた御容子ごようすを拝見する程
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
世間のねたみを買うているわけゆえ、結局、どこまでわずらいがからまってゆくか、見当もつかぬ——それで、さすがの御隠居も、あらわにはお出しにならぬ、大分、御心配の御容子ごようすだが——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
呼掛よびかける者あり誰ぞと振返ふりかへり見れば古河にありとき召使ひし喜八と云ふ者にて吉之助がそばに來り貴君樣あなたさまには何時御當地へ御出おんいでありしや途中とちうながら御容子ごようすうかゞたしと申けるに此所は人立ひとだちしげければとて傍邊かたへの茶屋にともなひ吉之助は諸藝稽古しよげいけいこの爲め横山町の出店でだなへ來りしより多くの金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まあ、その銅壺どうこに、ちゃんとお銚子ちょうしがついているんじゃありませんか。踊のお師匠さんだったといいますから、お銚子をお持ちの御容子ごようすも嬉しい事。
「都のうわさでは御寂しいどころか、御歎きにもなさり兼ねない、御容子ごようすだったとか申していました。」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「戦いの大利に乗じ、余りにくみしやすしと敵を見るは不覚のもとと、よそながらお案じの御容子ごようすで」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老女は袖口にまぶたぬぐひつ「何ネ、——又た貴嬢あなた亡母おつかさんのこと思ひ出したのですよ、——斯様こんな立派な貴嬢の御容子ごようすを一目亡奥様せんのおくさんにお見せ申したい様な気がしましてネ、——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
けれども余りにいたわしい。ひとえに獣にとお思いなすって、玉のごときそのお身体からだを、砕いて切ってもてたいような御容子ごようすが、余りお可哀相かわいそうで見ておられん。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一目でも中の御容子ごようすを拝もうとしている人々が、にわかに何事が起ったのか、見る見るどっとどよみ立って、まるで風の吹き出した海のように、押しつ押されつし始めました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「汗におよごれの御容子ごようす。お湯殿でおぬぐい遊ばして、御服ぎょふくを召しかえられますように」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後で聞いて口惜くやしくって、今でもうらんでいるけれど、内証の苦しい事ったら、ちっとも伯母さんは聞かして下さらないし、あなたの御容子ごようすでも分りそうなものだったのに
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとその御容子ごようすにひき入れられたのか、しばらくの間は御姫様を始め、私までも口をつぐんで、しんとした御部屋の中には藤の花のにおいばかりが、一段と高くなったように思われましたが
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
実はの、昨夜、笑い話にいたすつもりで、ふと、印籠をお目にかけたところ、以てのほかな、お気色じゃ。——詮議中の女、縄打つと、仰せられ、断じて、法の外で済ます御容子ごようすは見えん。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御容子ごようすにも御身分にもお似合い遊ばさない、ぞんざいなことばっかし。不可いけねえだの、居やがるだのッて、そんなことは御邸の車夫だって、部屋へ下って下の者同士でなければ申しません。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何か、あらたまっての御容子ごようす。なんですか、これは」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……ともだちは、反感はんかん輕侮けいぶつ。精々せい/″\同情どうじやうのあるのが苦笑くせうする。とつた次第しだいだが……たゞくるまけてはかたがうまい、と——もつと御容子ごようすではない——いてる車夫わかいしゆめられた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おたわむれを。……ちときょうは御微酔の御容子ごようすで」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなこんなで村の者もかなくなり、爺様も夜は恐がって参りませんから、貴下の御容子ごようすが分らないに因って、家つきの仏を回向えこうかたがた、お見舞申してはくれまいか、と云うに就いて
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「常にもない御容子ごようす
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、茨城の方の田舎とやらに病院を建てた人が、もっともらしい御容子ごようすを取柄に副院長にという話がありましたそうで、早速家中うちじゅうそれへ引越すことになりますと、お米さんでございます。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
席をお立ちになった御容子ごようすを見れば、その時まで何事も御存じではなかったのが分って、お心遣いの時間が五分たりとも少なかった、のみならず、お身体からだの一箇処にもあかい点も着かなかった事を
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殊に靴までお隠しなさりますなぞは、ちと手重ておも過ぎまするで、どうも変でござりまするが、お年紀頃としごろ御容子ごようすは、先刻さっき申上げましたので、その方に相違ござりませぬか、お綺麗な、品のい、面長おもながな。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日頃のお話ぶり、行為おこない御容子ごようす
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
結綿ゆいわたの、御容子ごようすのいい。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)