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弄
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もてあそ
ふりがな文庫
“
弄
(
もてあそ
)” の例文
身も魂も投げ出して追憶の甘き
愁
(
うれ
)
いに
耽
(
ふけ
)
りたいというはかない
慰藉
(
なぐさめ
)
を
弄
(
もてあそ
)
ぶようになってから、私は私にいつもこう尋ねるのであった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
それから頭の上に
胡桃
(
くるみ
)
の実がなつてゐる。さういふものを
弄
(
もてあそ
)
んで時を過ごすに、彼等の銘々は赤い顔をして帰つて来て車房に入つた。
ヴエスヴイオ山
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
譬えば日本の子供に対しては、このコップを見せて、「お前がこのコップを
弄
(
もてあそ
)
んではならぬ、もし
過
(
あやま
)
って壊したら、人に笑われるぞ」
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
さて私の結婚
後
(
ご
)
の
生活
(
せいくわつ
)
は、
渦
(
うづ
)
のやうにぐる/\と私どもを
弄
(
もてあそ
)
ばうとしました、今猶
多少
(
たせう
)
の渦はこの
身邊
(
しんぺん
)
を取り
圍
(
かこ
)
みつゝあるけれども
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
物質上の生活などは、いくら金をかけても、
直
(
す
)
ぐ尽きるのだ。金で、自由になる芸妓などを、
弄
(
もてあそ
)
んでいて、よく飽きないものですね。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
さて母屋の方は、葉越に映る
燈
(
ともしび
)
にも景気づいて、小さいのが
弄
(
もてあそ
)
ぶ花火の音、松の
梢
(
こずえ
)
に富士より高く流星も上ったが、今は
静
(
しずか
)
になった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
読者を
弄
(
もてあそ
)
ぶ探偵小説は嫌いである。探偵小説を書くなら正々堂々と玄関から、お座敷、台所、雪隠まで見せてまわらなくてはいけない。
探偵小説漫想
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
余計な文字を
弄
(
もてあそ
)
んでいる
余裕
(
ゆとり
)
が、まったくありませんから、
切迫
(
せっぱ
)
詰まった書き方になって、読みにくいでしょうが勘弁して下さい。
仁王門
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
これに比ぶれば謝恵連が擣衣の篇のごとき徒らに美辞を
弄
(
もてあそ
)
ぶものといふべし。われは三誦して秋夜の寡居に感はことのほか深かり。
我が一九二二年:02 我が一九二二年
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
で、非常な乱暴をやっ
了
(
ちま
)
った。こうなると人間は
獣的嗜慾
(
アニマルアペタイト
)
だけだから、喰うか、飲むか、女でも
弄
(
もてあそ
)
ぶか、そんな事よりしかしない。
予が半生の懺悔
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
観念内の遊戯として
弄
(
もてあそ
)
ぶぶんには一向無難であるが、実行に移した場合のことをかんがえると
倫理
(
りんり
)
感情は一種不快な圧迫を受ける。
黒い手帳
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その男がよくいうのは、“青年は理想を
抱
(
いだ
)
いておる処に本領があるべきだ。その青年が
諦観
(
ていかん
)
に住する俳句を
弄
(
もてあそ
)
ぶことは意外である。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
貞操を
弄
(
もてあそ
)
ばれがちな、この社会の女に特有な男性への
嫌悪
(
けんお
)
や反抗も彼女には強く、性格がしばしば男の子のように見えるのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼はそうして、仇敵の娘を
弄
(
もてあそ
)
び、復讐事業の材料として指紋を盗み、その上に、竜子のアリバイを悉く抹殺することに成功したのです。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
弄
(
もてあそ
)
ぶにも足らない木村を近づけておくには当たらない事だ。何もかも明らかにして気分だけでもさっぱりしたいとそう思う事もあった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
判事は
鼠
(
ねずみ
)
を生け捕った猫が、それを味わうまえに十分
弄
(
もてあそ
)
ぶときのように、ゆっくりと、落ちつきはらって、まるで
他人事
(
ひとごと
)
のように語った。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
鶴見が止めどなく長談議をつぶやいていたうちに、娘の静代は梅の枝を
剪
(
き
)
って来て、しばらく
弄
(
もてあそ
)
んでいて、話の終るのを待ち構えていた。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
舟は桃花村のある方へ白い水脈をひいて、目ぐるわしく
迸
(
はし
)
った。眠元朗の目は
湿
(
うるお
)
うてその
弄
(
もてあそ
)
ぶ砂は手のひらを力なげにこぼれた。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この疑は仮に故意に起して見て、それを
弄
(
もてあそ
)
んでいるとでも云うべき、極めて淡いもので、疑いは疑いながら、どうも娘を憎く思われない。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
泥公一心これを手早く掻き込むに取り忙ぎ、銭の多寡を論じたり、凶器を
弄
(
もてあそ
)
ぶに暇なく、集めおわりてヘイさようならで
慌
(
あわ
)
て去るものだ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
かう云ふ考へは僕のペンを
鈍
(
にぶ
)
らせることは確かである。けれども僕の立ち場を明らかにする為に暫く
想念
(
イデエ
)
のピンポンを
弄
(
もてあそ
)
ぶとすれば、——
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
滝人は、そうして勝利の確信を
決
(
き
)
め、眼前に動けなくなった獲物があるのを見ると、それを
弄
(
もてあそ
)
びたいような快感がつのってきた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
夜になると、わたしは夢の中で——さいなまれ、いじめられ、
弄
(
もてあそ
)
ばれ、——ああ、それは言いますまい、思い出すさえ浅ましい。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また卑しい仕方に私を
弄
(
もてあそ
)
ぼうとした一人の少女にも、少しの怒りをも漏らさずに、かえって彼女に赦しの徳を説くこともできた。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「それで」と阿賀妻は刀のさげ緒を
弄
(
もてあそ
)
び、ちッと舌を鳴らして云った、「貴殿らがその代表に頼まれて見えられたというわけか」
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
決して、ただ
悪
(
あ
)
しざまに申したり、
戯
(
ざ
)
れ
口
(
ぐち
)
を
弄
(
もてあそ
)
んだ次第ではありませぬ。どうぞ、
烏滸
(
おこ
)
がましい女の取越し苦労と、お聞き流し下さいませ
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえば「雀の毛槍」などは、私等が
抽
(
ぬ
)
いて
弄
(
もてあそ
)
んだのは、もっと茎が長々として花の
総
(
ふさ
)
が大きく、絵にある行列のお供の槍とよく似ていた。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
翌日、一年F組の教室で、楢雄は教科書のかげで実におびただしい数の蠅を
弄
(
もてあそ
)
んでゐたといふかどで、廊下に立たされてゐた。
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
其結果から論じたら、わたくしは処世の経験に乏しい彼の
女
(
おんな
)
を欺き、其
身体
(
しんたい
)
のみならず其の真情をも
弄
(
もてあそ
)
んだ事になるであろう。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
君のするように僕を運命の
弄
(
もてあそ
)
ぶがままにして置くのは、実に冷酷極まるのだ。僕は是非南の方へ行って見たい。春のある方へ行って見たい。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
骰子
(
さい
)
転ばしをするもあれば花を
弄
(
もてあそ
)
ぶもあり、随分立派な人でも
喰物
(
くいもの
)
の
賭
(
か
)
け位はやって居る。それが非常に愉快なものと見える。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
小松は妹の手からすぐにその風鈴をとりあげ、なんの積りもなく両手で
弄
(
もてあそ
)
びながら、ここへ来る途中からの続きらしい妹との会話をつづけた。
日本婦道記:風鈴
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これほど、豊かな鶴岡藩であったから藩士は遊惰に流れ、釣りなど道楽半分に
弄
(
もてあそ
)
ぶのかと思うと、それは大間違いであった。
姫柚子の讃
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
娘の
膝
(
ひざ
)
の前に置かれ、その手に
弄
(
もてあそ
)
ばれることを無上の幸福であるかのように夢みたのであったが、今や自分に最も
馴染
(
なじ
)
みのある一人の男子が
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もしクリストフに自信の念がなかったら、幻影に
弄
(
もてあそ
)
ばれたのだと思ったであろう。しかし彼は何を見たかを知っていた……。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「言葉」を
弄
(
もてあそ
)
ぶといふことは、一つの文化的遊戯には違ひないが、これは火遊びに類するもので、怪我をすることがある。
言葉の魅力[第一稿]
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
これを実際に行わないで、文字そのものを美術的に
弄
(
もてあそ
)
んで、儒教の精神そのものは
頓
(
とん
)
と
閑却
(
かんきゃく
)
されるようになったのである。
日支親善策如何:――我輩の日支親善論
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
故に俳句は一般に
弄
(
もてあそ
)
ばるるが故に美ならず、下等社会に行はるるが故に不美ならず。自己の作なるが故に美ならず、
今人
(
こんじん
)
の作が故に不美ならず。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼は誰もいない処でよく地球儀を
弄
(
もてあそ
)
んだ。グルグルとできるだけ早く回転さすのがおもしろかった。そして夢中になって
地球儀
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
実はこんな土地へ、運命の手に
弄
(
もてあそ
)
ばれて来たものは、補助でも受けなくては、飢ゑ凍えて死ぬるか、盗賊になるかより外に
為方
(
しかた
)
がないのである。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
人目をぬすんで火薬を
弄
(
もてあそ
)
び、大怪我をして苦しんでいた時ですら、周囲の人々の驚きや、心配や、同情の程度をひそかに測定することを忘れず
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
我が国においてはいわゆる
瀆職
(
とくしょく
)
問題という事が毎度やかましい。これ皆政治を秘密の中に
弄
(
もてあそ
)
ぶところより来る弊害である。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
その赤樫と云ふ奴は貸金の督促を利用しては女を
弄
(
もてあそ
)
ぶのが道楽で、
此奴
(
こいつ
)
の為に
汚
(
けが
)
された者は随分意外の
辺
(
へん
)
にも在るさうな。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
茲
(
ここ
)
に第二の誓願を起して、
扨
(
さて
)
身に叶う仕事は三寸の舌、一本の筆より
外
(
ほか
)
に何もないから、身体の健康を頼みにして
専
(
もっぱ
)
ら塾務を務め、又筆を
弄
(
もてあそ
)
び
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
と、このような調子の歌となり、梶はしばらくそのメロディを胸中ひとり
弄
(
もてあそ
)
んでみているうち、実地にそこを走っている自分のことをもう忘れた。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかしそれがもし一狂人の手に
弄
(
もてあそ
)
ばれるようになったならば、この地球は、いつ、幾億の人類とともに、木ッ葉微塵に粉砕されるか知れないのだ。
宇宙爆撃
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
反射映像を
弄
(
もてあそ
)
んだりちっともしていないところ、やはり自然のよさがあります、ヴォルフ夫人も実によくとれているわ。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
暇ある時に
玩具
(
おもちや
)
を
弄
(
もてあそ
)
ぶやうな心を以て詩を書き且つ読む所謂愛詩家、及び自己の神経組織の不健全な事を心に誇る偽患者、乃至は其等の模倣者等
弓町より
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
室町も末になって、乱世の間に連歌なんという閑文字が
弄
(
もてあそ
)
ばれたということも面白いことですが、これが東国の武士の間に
流行
(
はや
)
ったのは妙ですよ。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
われは忽ち乘る所の舟の、木葉の旋風に
弄
(
もてあそ
)
ばるる如きを覺え、暗黒なる物の左舷に迫るを視、舟は高く高く登り行けり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
弄
常用漢字
中学
部首:⼶
7画
“弄”を含む語句
嘲弄
玩弄
玩弄物
手弄
翻弄
玩弄品
翫弄
飜弄
戯弄
調弄
翫弄物
愚弄
弄花
弄斎節
弄殺
弄戯
弄物
弄品
如法玩弄
御弄
...