容色きりやう)” の例文
昔から優しい性質の女で、容色きりやうよしのお文さんは、私のために「ばい、蟹、いかの刺身」などこの国自慢の献立をして私を悦ばせた。
念仏の家 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
神田の惡戯者が娘番附を拵へて、東の關脇せきわけに据ゑた容色きりやう、疲れと怖れに、少し青くはなつて居りますが、誰が眼にも、これは美しい娘でした。
却説さて小助こすけは、いへあしで、おなむら山手やまてつた。こゝに九兵衞くへゑふもののむすめにおあきふ、とし十七になる野上一郡のがみいちぐん評判ひやうばん容色きりやうし。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少し容色きりやうの劣つた姉の方がしきりにまづ仏蘭西フランス語で僕に話し掛けて「日本はわが英国と兄弟の国だ」とか「ゼネラル乃木がうだ」とか愛嬌あいけういた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
うかゞへば女の化粧けしやうする動靜やうすなり何心なくのぞこめば年の頃は十八九の娘の容色きりやうすぐれ美麗うつくしきが服紗ふくさより一ツの金包かねつゝみを取出し中より四五りやうわけて紙に包み跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お母さんは若い時には容色きりやうのいゝ方でしたつてね。お醫者さんのお婆さんがよくさう云つてたつて、お米さんが何時か私に話してゐましたよ。私も屹度きつとさうだつたらうと思ひますよ。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
教育の大切な事が誰の頭脳あたまにも入つて来たから、さういふ下らぬ遊をるものも少くつたけれど、まだ私等の頃までは、随分それが盛んで、やれ平右衛門の二番娘は容色きりやうが好いの
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
いとなむがうへれは本家ほんけとてもちひもおもかるべくわれとて信用しんよううすきならねど彼方かなた七分しちぶえきあるときこゝにはわづかに三分さんぶのみいへ繁榮はんえい長久ちやうきうさく松澤まつざはきにしかずつはむすめ容色きりやうすぐれたればこれとてもまたひとつの金庫かねぐら芳之助よしのすけとのえにしえなばとほちやうかど地面ぢめん持參ぢさんむこもなきにはあらじ一擧兩得いつきよりやうとくとはこれなんめりとおもこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
靜かに一禮して上げた顏は、其邊の商賣人にも滅多にない容色きりやうで、髮形、銘仙の小袖、何となく唯の奉公人ではありません。
なにね、いまから、二三ねんうだねえ、れこれ四ねんにはるづらか。東京とうきやうからなさつたな、そりや、うも容子やうすたら、容色きりやうたら、そりやうもうつくしわか奥様おくさまがな。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ふゝむ、さうかね、容色きりやうはよし学問は出来るし、中々才女ぢやつたがね。ふゝむ。」
念仏の家 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
斯う噂をして居たが、和上に帰依きえして居る信者しんじやなかに、きやう室町錦小路むろまちにしきのこうぢ老舗しにせの呉服屋夫婦がたいした法義者はふぎしやで、十七に成る容色きりやうの好い姉娘あねむすめ是非ぜひ道珍和上どうちんわじやう奥方おくがた差上さしあいと言出いひだした。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
彼處あしこぢやまだ祕密ないしよにしてるやうだけど、おら、昨日きのふ確かなところから聞き込んだのさ。よつちやんがその息子さんに見染められたといふことだが、女は容色きりやうのいゝのが何よりだ。大した仕度金が出るつてことだよ。」
玉の輿 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
昔のお常の美しさを追ふ、若い男達は、お常の容色きりやうの變化などには氣も付かぬ樣子で、相變らず店を賑はして居ります。
夕間暮ゆふまぐれなるまゆかげびんもつれたが、目鼻立めはなだちも判明はつきりした、容色きりやうのいゝのを一目ひとめると、あつ、と其處そこ飛脚ひきやく尻餅しりもちいたも道理だうりこそ。一昨年をとゝしくなつた女房にようばうであつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
随分思ひ切つた厚化粧だが、仕上を見ると大分だいぶん容色きりやうを上げて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
蒼い月の光に照らされたところを見ると、年の頃は二十二三、少しふけては居りますが、素晴らしい容色きりやうです。
怪㤉をかしことには、まゆう、う、とおぼえはねえだが、なんともはれねえ、をんな容色きりやうだで……いろこひけれども、るやうで、なんともの、うつくしさがわすれられぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その間に平次も、友次郎の氣を惡くさせない程度に、二三度お常の茶屋を覗きましたが、一回毎に、お常の容色きりやうみにくくなるのに氣が付いただけで、あとは何にも掴めさうもありません。
わしも、はあ、うかしてるでなからうかとおもふだよ。いてくんろさ。女房にようばうがとふと、あの容色きりやうだ。まあ、へい、なんたら因縁いんねん一所いつしよつたづら、と斷念あきらめて、押瞑おツつぶつた祝言しうげんおもへ。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)