どっ)” の例文
それを道庵が出て易々やすやすと解決をつけてしまったから、今まで黒山のように人だかりしていた連中が、ここで一度にどっ喝采かっさいしました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雲の内侍ないじと呼ぶ、雨しょぼを踊れ、と怒鳴る。水の輪の拡がり、嵐の狂うごとく、聞くも堪えない讒謗罵詈ざんぼうばりいかずちのごとくどっと沸く。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鞭声べんせい粛々夜河を渡ったの猛烈な謙信勢が暁の霧の晴間から雷火の落掛るようにどっと斬入った時には、先ず大抵な者なら見ると直に崩れ立つところだが
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と云うなり頭を一つ下げてボーイは飛んで降りたが、間もなく下の方で二三人どっと笑う声がした。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見物の中からこんなことを言い出すものがあったから、見物人一同がどっと吹き出しました。吹き出さないのは当人の米友一人だけです。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鐘も響かぬ山家やまがにさえ、寝覚ねざめ跫音あしおととどろいたが、どっと伊豆の国を襲ったので、熱海における大地震は、すなわち渠等かれらが予言の計略。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
場内にどっと大きな笑い声が起った。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
どっと笑いて、左右より立懸たちかかり、小稲と重子と手と手を組みつつ、下よりすくいて、足をからみて、われをば宙にいて乗せつ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして聞くに堪えない罵詈讒謗ばりざんぼうを加えてはどっときの声を揚げる有様は、まるで一揆いっきのような有様でありました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一同はどっと噴き出した。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
第一、しかじかであるからと、じいに聞いた伝説を、先祖の遺言のようにおごそかに言って聞かせると、村のものはどっと笑う。……若いものは無理もない。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
独言ひとりごとを言っている時に、与力同心の部屋にてられたところでどっと人の笑う声がしました。それと共に
どっと立上る多人数たにんずの影で、月の前を黒雲が走るような電車の中。大事に革鞄かばんを抱きながら、車掌が甲走った早口で
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次第によっては折助一統いっとうかおにかかわると思って博奕ばくち半ばで飛び出すと、かねて折助と懇意にしている遊び人連中がその加勢にと飛び出して、どっと女軽業の前へ押寄せて来ました。
ちょいと雛形みほんがこんなもの。三十余人の貧民等、暴言を並べ、気焔きえんを吐き、嵐、こがらし一斉いっときどっと荒れて吹捲ふきまくれば、花も、もみじも、ちりぢりばらばら。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広間の方でどっ喊声かんせいが起る。ここで二人の私話ささやきまぎれて聞えなかったが、暫くして
茶屋揚屋あげやの軒に余って、土足の泥波を店へどっと……津波の余残なごりは太左衛門橋、戒橋えびすばし相生橋あいおいばしあふれかかり、畳屋町、笠屋町、玉屋町を横筋に渦巻き落ちる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかしながら、招かれて来た米友の頭を見た時はどっと笑ってしまいました。
といまだ謂いもはてざるに、満堂たちまち黙を破りて、どっ諸声もろごえをぞ立てたりける、喧轟けんごう名状すべからず。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高楼にのぼせて、道庵先生の古屋敷を眼下に見下みくださせながら、そこでお化粧をさせたり、なまめかしい振舞ふるまいをさせたり、鼻をかんだ紙を投げさせてみたり、どっと声を上げて笑わせたりなどしていました。
酒半ばにしてどっ矢叫やさけびの声を立てて、突然いきなり梓の黒斜子くろななこに五ツ紋の羽織を奪って、これを蝶吉の肩にせた。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最切いとせめてなつかしく聞ゆ、とすれば、樹立こだちしげりどっと風、木の葉、緑の瀬を早み……横雲が、あの、横雲が。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といまだいひもはてざるに、満堂たちまち黙を破りて、どっ諸声もろごえをぞ立てたりける、喧轟けんごう名状すべからず。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、なおの事だ。今更ながら、一同のあきれたところを、ひさしまたいでさかしまのぞいてねらつた愚僧だ。つむじ風をどっと吹かせ、白洲しらす砂利じゃりをから/\と掻廻かきまわいて、パツと一斉に灯を消した。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
船のみよしの出たように、もう一座敷かさなって、そこにも三味線さみせんの音がしたが、時々どっと笑う声は、天狗てんぐこだまを返すように、崖下の庭は暮れるものを、いつまでも電燈がつかない。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
峰から谷底へかけてどっと声がする。そこから夢中で駈け戻って、蚊帳かやに寝たわたくしすがりついて
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さて、飲もう。手酌でよし。ここで舞なぞは願い下げじゃ。せめてお題目の太鼓にさっしゃい。ふあはははは、」となぜか皺枯しわがれた高笑い、この時ばかり天井にどっと響いた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、親仁がもっともらしい顔色かおつきして、ニヤリともしないでほざくと、女どもはどっと笑って、線香の煙の黒い、吹上げのしぶきの白い、誰彼たそがれのような中へ、びしょびしょと入ってく。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々ひげのない顔が集り合っては、どっという笑語の声がかの士官の群から起るごとに、くだんの小男はちょいちょい額を上げて其方そなたを見返るのであるが、ちょうど背合せなかあわせになってるから
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どっ吶喊ときを上げて、小児がみんなそれを追懸けて、一団ひとかたまりに黒くなって駆出すと、その反対の方へ、誰にも見着けられないで、澄まして、すっと行ったと云うが、どうだ、これも変だろう。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
キャキャとする雛妓おしゃく甲走かんばしった声が聞えて、重く、ずっしりと、おっかぶさる風に、何を話すともなく多人数たにんずの物音のしていたのが、この時、洞穴ほらあなから風が抜けたようにどっ動揺どよめく。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御帰館おかえり——」と叫ぶにつれ、老婦人でて、式台に成らせたまえば、一同眼の覚めたる心地して、万歳をどっと唱え、左右にずらりと平伏するを、見向みむきもせで、足疾あしばや仏室ぶつまの内
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
荒いがこの風、五十鈴川いすずがわかぎられて、宇治橋の向うまでは吹くまいが、相の山の長坂を下からどっと吹上げる……これが悪く生温なまぬるくって、あかりの前じゃ砂が黄色い。月は雲の底にどんよりしている。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一人口火くちびを切つたからたまらない。練馬大根ねりまだいこんと言ふ、おかめとわめく。雲の内侍ないじと呼ぶ、あめしよぼを踊れ、と怒鳴どなる。水の輪の拡がり、嵐の狂ふ如く、聞くも堪へない讒謗ざんぼう罵詈ばりいかずちの如くどっく。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
歯の抜けた笑いに威勢の可い呵々からからが交ってどっとなると、くだん仕舞屋しもたやの月影の格子戸の処に立っていた、浴衣の上へちょいと袷羽織あわせばおり引掛ひっかけたえんなのも吻々ほほと遣る。実はこれなる御隠居の持物で。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうは言っても、小高い場所に雪が積ったのではありません、粉雪こゆき吹溜ふきだまりがこんもりと積ったのを、どっと吹く風が根こそぎにその吹く方へ吹飛ばして運ぶのであります。一つ二つのすうではない。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どっはやして、消えるように、残らず居なくなるのでござりますが。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あとがどっと笑いになって、陽気に片附けば、まだしもでござりますに、わめいたものより、転んだもの、転んだものより、落ちたもの、落ちたものよりゃ、またとんだもの、手まわり持参で駈出したわ
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
振返って、来た方を見れば、町の入口を、真暗まっくら隧道トンネル樹立こだちが塞いで、炎のように光線ひざしが透く。その上から、日のかげった大巌山が、そこは人の落ちた谷底ぞ、とそびえ立って峰からどっと吹き下した。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
声が一所で、同音に、もぐらもちが昇天しようと、水道の鉄管を躍り抜けそうな響きで、片側一条ひとすじ、夜が鳴って、どっと云う。時ならぬに、の葉が散って、霧の海に不知火しらぬいと見えるともしびの間を白く飛ぶ。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「わはは。」と浜の松が、枝を揺ってどっと笑う。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下階したではどっと笑う声、円輔はきっと見得をして
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乗合は喝采かっさいして、万歳の声がどっと起った。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一同 (どっと笑う)ははははははは。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
破鐘われがねのごときその大音、どっと響いた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船頭もどっと笑い、また
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どっと笑つた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どっと笑う。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)