前齒まへば)” の例文
新字:前歯
太綱ふとづな一端いつたん前齒まへばくはへてする/\と竿さをのぼりてたゞち龍頭りうづいたる。蒼空あをぞらひとてんあり、飄々へう/\としてかぜかる。これとするにらず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白紙しらがみ手頼たよみづ手頼たより、紙捻こより手頼たよりにい……」と巫女くちよせばあさんのこゑ前齒まへばすこけてため句切くきりやゝ不明ふめいであるがそれでも澁滯じふたいすることなくずん/\とうてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三四日前さんよつかぜんかれ御米およね差向さしむかひで、夕飯ゆふはんぜんいて、はなしながらはしつてゐるさいに、うした拍子ひやうしか、前齒まへばぎやくにぎりゝとんでから、それがきふいたした。ゆびうごかすと、がぐら/\する。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
片頬かたほれたやなぎ葉先はさきを、おしなそのつややかにくろ前齒まへばくはへて、くやうにして引斷ひつきつた。あをを、カチ/\とふたツばかりむでつて、てのひらせてた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
姿すがたかくれてれば、なにるまいとおもだろが、れはところへは、日日ひにち毎日まいにちついてるぞ、あめらねどみのり、かさりてよ……」と巫女くちよせこゑ前齒まへばすこけたにもかゝはらず
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗助そうすけ此朝このあさみがくために、わざといたところけて楊枝やうじ使つかひながら、くちなかかゞみらしてたら、廣島ひろしまぎんめた二まい奧齒おくばと、いだやうらした不揃ぶそろ前齒まへばとが、にはかにさむひかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんちふところや。」と二人ふたりばかり車夫わかいしゆつてる。たう親仁おやぢは、おほき前齒まへばで、たゞにや/\。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おつぎはあついふかしを蒸籠せいろうから杓子しやくしうすおとしながらそばつて與吉よきちすこつた。ほどよくしたそのふかしを與吉よきち甘相うまさうにたべた。おつぎもゆびいたのを前齒まへばむやうにしてくちれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
前齒まへばふたつてたとさ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)