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まへば
三四日前彼は
御米と
差向ひで、
夕飯の
膳に
着いて、
話しながら
箸を
取つてゐる
際に、
何うした
拍子か、
前齒を
逆にぎりゝと
噛んでから、それが
急に
痛み
出した。
指で
搖かすと、
根がぐら/\する。
片頬に
觸れた
柳の
葉先を、お
品は
其艶やかに
黒い
前齒で
銜へて、
扱くやうにして
引斷つた。
青い
葉を、カチ/\と
二ツばかり
噛むで
手に
取つて、
掌に
載せて
見た。
見る
端に、
前歯の
抜けた、
汚い
口でニヤリとした。