とも)” の例文
我は日々汝らとともに宮にありて教えたりしに、我をとらえざりき、されどこれは聖書の言の成就せんためなり。(一四の四八、四九)
視よわれ戸の外に立ちて叩くもしわが声を聞きて戸を開く者あらば我その人のもといたらん而して我はその人とともにその人は我と偕に食せん
湖水と彼等 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
一たびとも嚢家なうか博奕場ばくえきぢやう)に往かずや、いかなる境界きやうがいをも詩人は知らざるべからずとは、吾友フエデリゴの曾て云ひしところなり。
彼はその夫とともに在るをはんやう無きわづらひなれど、又そのひとりを守りてこの家におかるるをもへ難くいぶせきものに思へるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
後梅は継父、生母、異父妹二人とともに江戸に来た。想ふに梅の外祖父母たる大坂の商賈夫妻は既に歿してゐたことであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ともれ文臣なりといえども、今武事の日に当り、目前に官軍のおおいに敗れて、賊威のさかんに張るを見る、感憤何ぞ極まらん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
寧ろ、そんなのは少数の例外で、多くは、良人は妻を扶け、妻は良人を扶けて相ともに生活している、と云いましょう。
男女交際より家庭生活へ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
斉明さいめい天皇の三年に大海人皇子の妃となり、皇子が東宮の頃はむろん壬申の乱のさ中に在っても、つねに御身近くたすけ、苦難をともにされし方であった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
鹿川先生といふは、抑々の創始はじめから此學校と運命をともにした、既に七十近い、徳望縣下に鳴る老儒者である。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
起きよ、我儕われら往くべし。我をわたすもの近づきたり、此如かくいへるとき十二の一人ひとりたるユダつるぎと棒とを持ちたる多くの人人とともに祭司のをさと民の長老としよりもとより来る。
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
前にもいった由井とか錦織とか籾山とかいう朋友と経書の研究をともにする外に、度々郊外の散歩を試みた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
言はば彼女は私とともにある者となり、私にとつての永遠なるものであるといふ実感の方が強くなつた。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
予はこの景色を打眺うちながめて何となく心をどりけるが、この刹那せつな忽然こつぜんとして、吾れは天地の神とともに、同時に、この森然たる眼前の景を観たりてふ一種の意識に打たれたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
俚謡にも「枯れて落ちても二人ふたりづれ」とあるようにこれを友白髪ともしらがまでともに老ゆる一の夫婦、それは人間の最も意義深くかつ最も大切なこの夫婦に比べる事が出来ます。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
これ児らの志なり。ここを以て児ら、まさに某日を以て同志とともに、益田行相こうしょうの門にいたり、故を告げて発せんとす。敢て許允きょいんを求めず、政府待つに逋亡ほぼうを以てするも可なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
一生の大難とも言ふべき運命の苦痛をともにしなかつたことが彼女の飽足りなさであつた。
余震の一夜 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その共同生活に必要なだけの費用を得ることに関しては夫婦はともに生産者となり、労働者となってそれを負担すべき義務者であり、一方にのみこの重荷を負わせる訳には行かない
平塚さんと私の論争 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ついに太子を説いてともに棲むところあるなど、竜も人間も閨情に二つなきを見るに足る。
予は少時より予が従妹たる今の本多子爵夫人(三人称を以て、呼ぶ事を許せ)往年の甘露寺明子かんろじあきこを愛したり。予の記憶にさかのぼりて、予が明子とともにしたる幸福なる時間を列記せんか。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
太初はじめことばあり。言は神とともにあり。言は神なりき。この言は太初に神とともに在り。よろずの物これにりて成り、成りたる物に一つとしてこれによらで成りたるはなし。之に生命いのちあり。
弘独リ走ツテ帰リ泣イテ家慈かじニ訴フ。家慈嗚咽おえつシテこたヘズ。はじメテ十歳家慈ニ従ツテ吉田ニ至ル。とも函嶺はこねユ。まさニ春寒シ。山雨衣袂いべいしたたル。つまずキカツたおルコトシバ/\ナリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僕はF君となら一つ家にともに暮らしても、気まずくなる心配はないと思っている。こんなことを云ったら可笑おかしいだろうが、若しもF君が女だったら、僕はお嫁にもらったかも知れない。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
明治二十四年四月十九日いわゆる『第一高等中学校不敬事件』ののちに、余のためにその生命をすてし余の先愛せんあい内村加寿子につつしんでこの著を献ず、願くは彼女のれいてんに在りて主とともに安かれ。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
それはおのずから、神とともにある世界、仏に融け入る境地へみちびく。
物を大切にする心 (新字新仮名) / 種田山頭火(著)
太初はじめにあり、神とともにあり、そしてすなわち神であるロゴスこそ彼がすべてのものを棄ててまでも求め出そうとするところのものである。しからばこれらの三つの道に共通なるものは何であるか。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
たのしく起居おきふしともにした時代じだい現世げんせらしい気分きぶん復活ふっかつしてたのでした。
またイエスの栄光の中にともに住むという希望もあった。しかし他の朋輩ほうばいを出し抜いて名誉の地位に坐ろうと企んだ心は、愛ではありません。
既にして幾勢は再び黒田家の奥に入り、さきの主に仕へ、祐筆を勤め、又京都うまれの女中二人とともに、常に夫人の詠歌の相手に召されたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
未だ寓目ぐうもくせずと雖も、けだ藻鑑そうかんの道を説く也。珙と忠徹と、ともに明史方伎伝ほうぎでんに見ゆ。珙の燕王にまみゆるや、ひげ長じてへそぎなば宝位に登らんという。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鹿川先生といふは、抑々そもそも創始はじめから此学校と運命をともにした、既に七十近い、徳望県下に鳴る老儒者である。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
われは羅馬ロオマの七寺を巡りて、行者ぎやうじやともに歌ひぬ。吾情は眞にして且深かりき。然るをこれに出で逢ひたるベルナルドオは、刻薄なる語氣もて我に耳語していふやう。
それ吾が見たる神は、常に吾れとともまして、其の見えざるの手を常に打添へたまふにあらずや。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
我々は彼とともに肩を組んでオリムポスの峰々を歩むことが出来る。そういう親しさが仏像にはない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ともに生きるものの大切さ、二つとないと思う心、自分をとおして或存在、周囲など明るく、立派に、一歩でもよくするに非らざれば、人間生存の意味がないと思うようになって来た。
得たり賢し善は急げと、術士得意の左道を以て自ら蛇に化けて一夜を后とともに過ごし、同時に陣中にある王に蛇となって后に遇う夢を見せた。いくさ果て王いよいよ還ると后既にはらめり。
老人は進の如き乖戻かいれいな男と好んで苦楽をともにしているような女が、言わばそのしゅうとめに当るものの忌日きにちを知って墓参りをするとは、そもそもどうしたわけであろう。そんな訳のあろうはずがない。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
智恵子はその個的存在を失う事によってかえって私にとっては普遍的存在となったのである事を痛感し、それ以来智恵子の息吹を常に身近かに感ずる事が出来、言わば彼女は私とともにある者となり
智恵子の半生 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
ああ信なき代なるかな、我いつまで汝らとともに居らん、いつまで汝らを忍ばん。その子をわが許に連れ来たれ。(九の一九)
たま/\韓凹巷かんあふこうが伊勢国から来て此行をともにした。山陽は「学成、一藩侯欲聘致之、会聯玉来偕遊奥、以避之」と云つてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
君若し妻をめとり給はゞ、ともに我家に來給へ、我は君が物語の中なる彼亡人なきひとを愛する如く、君の伴ひ來給はん其人をも愛せんといひ、マリアは唯だ、すこやかに樂しげにて
いわんや又鄭和は宦官かんがんにして、胡濙こえいともにせるの朱祥しゅしょう内侍ないしたるをや。秘意察す可きあるなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
史學研究の大望を起して、上京を思立つた自分は、父母の家を辭した日の夕方、この伯母が家に著いて、れ行く秋の三日四日、あかぬ別れを第二の故郷とともに惜まれたのであつた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
どんな心持で、私は、愛する者とともに棲み、偕に仕事をする自分を見る事だろう。
日記・書簡 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ここに一言するは同姓婚と母系統は必ずしもともに行われず、しかしフレザーが言った通り、母統を重んずるよりやむをえず同姓婚を行う場合もあるにちなんで、一緒にその事どもを述べたので
「秋峰瀟洒質。子肇豪宕才。文郁齢猶弱。清詩絶点埃。子寿交最旧。辛勤十載偕。姓字馳海内。吟壇推雄魁。」〔秋峰瀟洒ノ質/子肇豪宕ノ才/文郁齢猶わかシトイヘドモ/清詩点埃ヲ絶ツ/子寿交リ最モふるク/辛勤十載ヲともニス/姓字海内ニ馳セ/吟壇雄魁ニ推ス〕と言っている。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
史学研究の大望を起して、上京を思立つた自分は、父母の家を辞した日の夕方、この伯母が家に着いて、れゆく秋の三日みつか四日よつか、あかぬ別れを第二の故郷とともに惜み惜まれたのであつた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
とも輦轂れんこくもとに住んで、親しく政府の施設を見ようと云ふのである。二人の心底には、秕政ひせいの根本をきはめて、君側くんそくかんを発見したら、たゞちにこれを除かうと云ふ企図が、早くも此時からきざしてゐた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)