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倅
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せがれ
ふりがな文庫
“
倅
(
せがれ
)” の例文
この晩庄吉は
泥酔
(
でいすい
)
したのが失敗のもとで、夢遊歩行に
倅
(
せがれ
)
の寝床を乗りこえ女房のバリケードをのりこえて女学生めがけて進撃に及ぶ。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
京屋の家族は、
倅
(
せがれ
)
の善太郎たった一人だけ。これは人間がだいぶ甘く、二十二にもなっているのに、
禿
(
ち
)
び
菷
(
ほうき
)
ほどの役にも立ちません。
銭形平次捕物控:134 仏師の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
髪の毛でも送って来なければ、
葬
(
ほうむ
)
りようがなかった。
倅
(
せがれ
)
が
夭死
(
ようし
)
して、頼みの綱の孫がまた、戦死した祖父の
家
(
うち
)
は、寂しそうであった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
朝落合の火葬場から持ってきたばかしの遺骨の前で、姉夫婦、弟夫婦、私と
倅
(
せがれ
)
——これだけの人数で、さびしい最後の通夜をした。
父の葬式
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
「己にも
倅
(
せがれ
)
が一人あるがね、」と彼は言った。「お
前
(
めえ
)
と瓜二つで、己の自慢の種よ。だが子供に大切なことは
躾
(
しつけ
)
だ、坊や、——躾だよ。 ...
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
▼ もっと見る
もう五十歳をいくつか出て元気も衰えたところから、御用の方は聞いていたが、賭場や乾児の世話などは、
倅
(
せがれ
)
に委かせて隠居していた。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
遅く出来た息子が豊津の中学に入れてある。この家を人に貸して、暮しを立てて
倅
(
せがれ
)
の学資を出さねばならないということである。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
仕事
(
しごと
)
の
都合
(
つごう
)
で
二電車
(
ふたでんしゃ
)
ばかりおくれた
父親
(
ちちおや
)
は、
黒
(
くろ
)
の
外套
(
がいとう
)
に、
鳥打帽
(
とりうちぼう
)
をかぶって
急
(
いそ
)
いできました。むかえに
出
(
で
)
ている
倅
(
せがれ
)
を
見
(
み
)
つけると
波荒くとも
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「わたくしは
一番
(
いちばん
)
ヶ
瀬
(
せ
)
半兵衛
(
はんべえ
)
の
後家
(
ごけ
)
、しのと申すものでございます。実はわたくしの
倅
(
せがれ
)
、
新之丞
(
しんのじょう
)
と申すものが大病なのでございますが……」
おしの
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
室長は一年の時同室だつた父親が県会議員の
佐伯
(
さへき
)
だつた。やはり一年の時同室だつた郵便局長の
倅
(
せがれ
)
は東寮に入れられて
業腹
(
ごふはら
)
な顔をしてゐた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「また
倅
(
せがれ
)
の道楽には親の意見あり、親の道楽には意見もならず、両人も困るなるべし」といひて
嘲
(
あざけ
)
りしなど、いづれも可笑し。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
倅
(
せがれ
)
どもはそちこち出てしまう。外に行く所もない。婆さまがいなくなったから、末の娘に飯を炊かせてエともって、婿をめっけたのでがす。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
うちの
倅
(
せがれ
)
がお恥かしいことに君枝さんに、……なんといってよいやら、……とにかく、まあ見染めたというのでしょうか……
わが町
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
五十に近い私が、お嬢さまに求婚するなどと笑い話にもなりません。実は、当人と申すのは私の
倅
(
せがれ
)
、今年二十五になります。亡妻の
遺児
(
わすれがたみ
)
です。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「東京の
倅
(
せがれ
)
の方から一昨日手紙が参りまして、冬子の婚礼に
就
(
つい
)
て来月初旬には
必然
(
きっと
)
帰って来ると云うことでした。」と、お政が
先
(
ま
)
ず口を切った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
帰りには町内の
飴屋
(
あめや
)
へ寄って、
薄荷入
(
はっかいり
)
の鉄砲玉を二袋買って来て、そら鉄砲玉と云って、小供にやる。
倅
(
せがれ
)
が晩婚なので小供は六つと四つである。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今日
(
きょう
)
は、兇悪な殺人者の
命
(
いのち
)
を取るかと思うと、
明日
(
あす
)
は、百姓の
倅
(
せがれ
)
から六ペンスを奪ったけちな小盗の
命
(
いのち
)
を取ったりした。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
モン長
予
(
わし
)
はもとより、
親
(
した
)
しい
誰
(
た
)
れ
彼
(
か
)
れにも
探
(
さぐ
)
らせたれども、
倅
(
せがれ
)
めは、
只
(
たゞ
)
もう
其
(
その
)
胸
(
むね
)
の
内
(
うち
)
に、
何事
(
なにごと
)
をも
祕
(
ひ
)
し
隱
(
かく
)
して、いっかな
餘人
(
よじん
)
には
知
(
し
)
らせぬゆゑ
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
自分がその大臣の
親戚
(
しんせき
)
か因縁の者かであることを——「大臣の
抱
(
かか
)
え医者の私生児」の
倅
(
せがれ
)
ででもあるらしいことを——おぼろげに発見したのだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
三百石ほどの家督を
倅
(
せがれ
)
に譲って隠居の身だけれども、若い時分から家の経済が上手でありました。それ故に、今の身分になっても裕福であります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
倅
(
せがれ
)
が丈夫でいたらどうにか力になるんだがね。おれがあっちへ行っている中に肺炎で死んでしまうし、
嚊
(
かかア
)
は娘と一緒に田舎へあずけてある始末だ。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「何事も天命です。誰も怨む者はありません。ただ
年端
(
としは
)
の行かぬ
倅
(
せがれ
)
にこの上の苦労をかけるのが
辛
(
つ
)
らさに死にます。どうぞよろしくお頼み申します」
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
僕は自分の
倅
(
せがれ
)
に毛の生えた程度の中尉や少尉、ひどい時には東北の、聞いたこともないような専門学校から学徒出陣をして来たという見習士官なんぞに
比島投降記:ある新聞記者の見た敗戦
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
わたしの
家
(
うち
)
には
忙月
(
マンユエ
)
が一人きりだから手廻りかね、祭器の見張番に
倅
(
せがれ
)
をよびたいと申出たので父はこれを許した。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「さア、お掛けなさい。
倅
(
せがれ
)
も今に帰るでしょう。倅が帰らないと、わしには何もわかりませんのでな。ごらんの通り、こんな研究に没頭しとりますので」
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
祖父は「馬鹿野郎。清はしょうばい人にするわけじゃない。親父に
倅
(
せがれ
)
が教わるというのも
鬱陶
(
うっとう
)
しいもんだ。」
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
彼は独り
跪
(
ひざまず
)
き、泣いて祈り、己の至らざる故に
倅
(
せがれ
)
を神の罪人としたことを自ら激しく責め、且つ神に
詫
(
わ
)
びた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
けれどまた一方には、死んだ者は永久に死んでしまったが、自分は幸いにまだ生きているという、一種の満足に似た感じを意識しながら、
倅
(
せがれ
)
の方へ話しかけた。
父
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
わたくしの
倅
(
せがれ
)
のアレクセイがここにお
籠
(
こも
)
りしておりますでな、父親としてあれの身の上が気がかりでございます。また心配するのがあたりまえでございますよ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「
倅
(
せがれ
)
をいつまでも籍なしで、置いといちゃいかんばい。お前たちの方は先になってもええが。とりあえず、息子はわしの方の籍にでも入れといたら、どうな?」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
その神官の
倅
(
せがれ
)
即
(
すなわ
)
ち宗太郎の
従兄
(
いとこ
)
に水戸学風の学者があって、宗太郎はその従兄を先生にして勉強したから中々エライ、その上に
増田
(
ますだ
)
の家は年来堅固なる家風で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
おめえが名主様のお
倅
(
せがれ
)
だとは今はじめて承知したが、何も、
双親
(
ふたおや
)
まで引ッぱり出して怒ることはあるまい。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やっと
三十間堀
(
さんじっけんぼり
)
の野口という旧友の
倅
(
せがれ
)
が、返済の道さえ立てば貸してやろうという事になり、きょう四時から五時までの間に先方で会うことになっているのです。
二老人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
倅
(
せがれ
)
の春吉と、孫の菊枝とが、毎日のように
日傭
(
ひでま
)
稼ぎに行くので、
僂麻質斯
(
リュウマチス
)
の婆さんに攻め立てられ、老衰した
身体
(
からだ
)
を、まるで曳きずるようにして、一日に二回ずつは
駈落
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「
旦那
(
だんな
)
、」と婆さんは言った、「
倅
(
せがれ
)
が申しますには、旦那は馬車を借りたいそうでございますね。」
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
鋭い声がしたので、その方を見ると、近藤
勇
(
いさみ
)
の
倅
(
せがれ
)
、周平が、白い鉢巻をして、土方を睨んでいた。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
二人の苦しい
遣繰
(
やりくり
)
を少しも知らない父親は、来るとすぐ
倅
(
せがれ
)
夫婦につれられて、会場を見せられて感激したが、これまで何一つ面白いものを見たこともない哀れな
老人
(
としより
)
を
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
華燭
(
かしょく
)
の典を挙げたと報じ、
米国
(
アメリカ
)
トラスト大王の
倅
(
せがれ
)
モルガン氏は、その恋花嫁のお雪夫人をつれて、昨日の午前九時五十二分新橋着の列車で横浜から上京したと書いているが
モルガンお雪
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「ゴム靴だって?」父親は顔を
硬
(
こわ
)
ばらせた「
鼻緒屋
(
はなおや
)
の
倅
(
せがれ
)
が、ゴム靴を作る時代になったか」
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二、ところがそれに、
倅
(
せがれ
)
のクルトは
鯨狼
(
アー・ペラー
)
の捕獲位置から、一脈の真実性があるという。まず、その地の緯度をいい次いで経度をいおうとしたとき、飛びきたった銃弾に
斃
(
たお
)
された。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それですから、今年の十二月で満三十三年になる。私なんぞよりはほとんど二十年も若い。
倅
(
せがれ
)
に持っても
好
(
い
)
いような男です。
家
(
うち
)
はケルンテンに代々土着していたということです。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
老母は、これをよろこびむかえて、「
倅
(
せがれ
)
は才能もなく、その学問も時勢にあわず、そのため世に出る機会を失っております。どうかお見捨てなく、兄として指導してやって下さい」
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「ありません。
倅
(
せがれ
)
や嫁が一緒におりましたから、この二人が、よく知っております」
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私
(
わっし
)
はこんなやくざものの事ですから、母親も別に話さないでいたのがその時知れまして、そうか、そんな
倅
(
せがれ
)
があるのか、床屋が家業と聞きゃちょうど可い、奉公人も大勢居るこッた
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
現在は長者町の場末にささやかな家を借りて細君と
倅
(
せがれ
)
とが青物商を営んでいる。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
大変不幸な人で、私の祖父が余り気立がいいので見込んで
倅
(
せがれ
)
の嫁にと話をし、半ば母を助ける意味で父のところに来ることになったらしい。だから母は父にそういう境遇から救われたわけだ。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
現今
(
いま
)
私の
家
(
うち
)
に
居
(
い
)
る門弟の
実見談
(
じっけんだん
)
だが、所は
越後国西頸城郡市振村
(
えちごのくににしくびきぐんいちふりむら
)
というところ、その男がまだ十二三の頃だそうだ、自分の
家
(
うち
)
の
直
(
じ
)
き近所に、
勘太郎
(
かんたろう
)
という
樵夫
(
きこり
)
の
老爺
(
おやじ
)
が住んでいたが、
倅
(
せがれ
)
は漁夫で
千ヶ寺詣
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
『思いとまるんだね、手後れにならんうちにな! あれがお前の手に合う女かい? あれは甘やかされ放題のわがまま娘で、昼の二時までも寝る女なのに、お前と来たら番僧の
倅
(
せがれ
)
で、たかが田舎医者じゃないか……』
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
つんぼの親父が、つんぼの
倅
(
せがれ
)
に向かって
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
菊枝
倅
(
せがれ
)
の常丸どのもおぢやるかいのう。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
“倅(
息子
)”の解説
息子(むすこ)は、男性の子供、即ち本人の1親等直系卑属のうち男性である者。対義語は娘または父。
実子または養子の場合がある。また配偶者の息子も「(義理の)息子」と表現する場合が多い。自分の息子を卑下して言う場合には、倅(せがれ:他人の息子をぞんざいに言う場合もある)、愚息(ぐそく)などともいう。
娘の夫(婿)を義理の息子ともいう。
(出典:Wikipedia)
倅
漢検1級
部首:⼈
10画
“倅”を含む語句
小倅
倅夫婦
倅殿