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じょうろう
ふりがな文庫
“
上﨟
(
じょうろう
)” の例文
わしはあの
優雅
(
ゆうが
)
な
都
(
みやこ
)
の言葉がも一度聞きたい。あの
殿上人
(
てんじょうびと
)
の
礼容
(
れいよう
)
ただしい
衣冠
(
いかん
)
と、そして美しい
上﨟
(
じょうろう
)
の
品
(
ひん
)
のよい
装
(
よそお
)
いがも一度見たい。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
だから元より、和歌の道とか、香を聴き分ける事とか、そういう
上﨟
(
じょうろう
)
たちの
風雅
(
みやび
)
も知らねば、難しい
書
(
ふみ
)
読
(
よ
)
む知識も持たなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蠅
(
はえ
)
よ、蠅よ、
蒼蠅
(
あおばえ
)
よ。一つ
腸
(
はらわた
)
の中を
出
(
で
)
され、ボーンと。——やあ、殿、
上﨟
(
じょうろう
)
たち、
私
(
わし
)
がの、今ここを引取るついでに、蒼蠅を一ツ申そう。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「静御前」と云う一人の
上﨟
(
じょうろう
)
の
幻影
(
げんえい
)
の中に、「祖先」に対し、「主君」に対し、「
古
(
いにし
)
え」に対する
崇敬
(
すうけい
)
と
思慕
(
しぼ
)
の情とを寄せているのである。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
小野小町、和泉式部という類の
上﨟
(
じょうろう
)
までが、東西の諸国に同じ一つの物語の跡を止めているなどもこれを模倣または妄説と見る必要は少しもない。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
あの通りトテモ見識ばったお上品ずくめで、腰附きから眼づかい、足どりまでも
上
(
うえ
)
つ
方
(
がた
)
のお
上﨟
(
じょうろう
)
ソックリで御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
顔に
檜扇
(
ひおうぎ
)
を当てた、一人の
上﨟
(
じょうろう
)
が、丈なす髪を振り敷いて、
几帳
(
きちょう
)
の奥にいる図が描かれてあって、それに感じた
漠然
(
ばくぜん
)
としたあこがれが、いまも横蔵の
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何が笑うべきものか、何が憎むに値するものか、一切知らぬ
上﨟
(
じょうろう
)
には、唯常と変った皆の姿が、
羨
(
うらやま
)
しく思われた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「ははあさようでござりましたか。いや都の
上﨟
(
じょうろう
)
方には
下様
(
しもざま
)
のことが珍らしくあるいはそうかも知れませぬ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
此の日余烟
濛々
(
もうもう
)
として襲い、夫人
上﨟
(
じょうろう
)
達は恐れまどって居るのに、義政は自若として酒宴を続けて居たと云う。こうなれば、義政も図々しい愉快な男ではないか。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
すまし顔の女院や
上﨟
(
じょうろう
)
などは目もくれない。遊興はすべて
下司
(
げす
)
張った、刺戟の強いほうが好ましい。
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
美しい
上﨟
(
じょうろう
)
の
紅
(
べに
)
さいた口から、こうした問いを
露骨
(
むきつけ
)
に持ち出されて、さすがに世馴れた兼好も少し返事に困ったらしかった。忽ちに小さい身体をゆすって大きく笑い出した。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
茶瓶に湯が注がれて、名茶『一の森』の
上﨟
(
じょうろう
)
の
媚
(
こ
)
びのやうな淡いいろ気のある香気が立ちのぼつた。彼は茶瓶をむづと
掴
(
つか
)
んだ。茶瓶の口へ彼の
尖
(
と
)
がつた内曲りの鼻を突込んだ。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
上﨟
(
じょうろう
)
房子が女房奉書をかいた。これを立入左京亮に渡しながら、あゝ、大変なことになった、こまったこまった、と、まだ大納言はつぶやいていた。だから、その晩は一睡もできない。
織田信長
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
浪路は、
上﨟
(
じょうろう
)
に似げない性急さで、髪をかきつけ、顔を直すと、立ち上って
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
白河法皇の
女御
(
にょうご
)
で、最後は、
﨟
(
ろう
)
の
御方
(
おんかた
)
と呼ばれる、花山院の
上﨟
(
じょうろう
)
であった。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
此方
(
こなた
)
は鷹狩、もみじ山だが、いずれ
戦
(
いくさ
)
に負けた国の、
上﨟
(
じょうろう
)
、貴女、貴夫人たちの
落人
(
おちうど
)
だろう。絶世の美女だ。しゃつ
掴出
(
つかみいだ
)
いて奉れ、とある。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
後で聞けば、輿の
上﨟
(
じょうろう
)
は、吉野の仮宮に仕える内侍所の女性で、何かのお使いで東条の城へ見えた途中であったという。
日本名婦伝:大楠公夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
キミとも
上﨟
(
じょうろう
)
とも彼らを呼んだのは、常の日に化粧し色ある衣を着ることが、民間では甚だ目に立ったからであろう。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
左大臣の肩にあるものは、よく見ると一人の
上﨟
(
じょうろう
)
、———此の館の主が「宝物」だと云ったその人に違いなかった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一時
(
イツトキ
)
上﨟
(
じょうろう
)
などと言って、女の神人を、祭りのために、臨時に民家から択び出すような風が、方々にあったことを思えば、神
来
(
きた
)
って、家々を訪問する夜には
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
そのゆえ、遊女には
上﨟
(
じょうろう
)
風の
粧
(
よそお
)
いをさせて、
太夫
(
だゆう
)
様、
此君
(
このきみ
)
様などともいい、客よりも上座にすえるのです。それも、一つには、客としての見識だろうと思いますがのう。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
膝
(
ひざ
)
のある所と思われる辺へ、
蜒
(
うね
)
りをつくり
襞
(
ひだ
)
をつくり、しずしずと先へ
辷
(
すべ
)
って行く様子は、白衣を頭からスッポリとかずいた、
上﨟
(
じょうろう
)
が歩いて行くのと変わりがなかった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
(平家没落の後、官女は零落してこの海浜にさまよい、いやしき
業
(
わざ
)
して世を送るも哀れなり。呉羽の局、綾の局、いずれも三十歳前後にて花のさかりを過ぎたる
上﨟
(
じょうろう
)
、磯による
藻屑
(
もくず
)
を籠に拾う。)
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
めがものお
上﨟
(
じょうろう
)
とであわしゃる。
まざあ・ぐうす
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
鎌倉時代の
上﨟
(
じょうろう
)
にや、
小挂
(
こうちぎ
)
しゃんと着こなして、
練衣
(
ねりぎぬ
)
の
被
(
かずき
)
を深く
被
(
かぶ
)
りたる、人の大きさの立姿。
溢
(
こぼ
)
るる黒髪小袖の
褄
(
つま
)
、色も香もある人形なり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遠くの
高欄
(
こうらん
)
をちらと行く侍女やら
上﨟
(
じょうろう
)
の美しさも、都振りそッくりを、この伊吹の
山城
(
やまじろ
)
へ移し植えたとしか思えない。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それよりももう一層粗いというのだから、いかに上古の
上﨟
(
じょうろう
)
の生活が、柔弱ということの反対であったかもわかる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
当麻語部
(
たぎまのかたりべ
)
の
嫗
(
おむな
)
なども、都の
上﨟
(
じょうろう
)
の、もの疑いせぬ清い心に、知る限りの事を語りかけようとした。だが、
忽
(
たちまち
)
違った氏の語部なるが故に、追い
退
(
の
)
けられたのであった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
一方を貴族の女の
児
(
こ
)
にし、一方を馬方の男の児にして、その間に、
乳母
(
うば
)
であり母である
上﨟
(
じょうろう
)
の婦人を配したところは、表面親子の情愛を
扱
(
あつか
)
ったものに違いないけれども
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
めがものお
上﨟
(
じょうろう
)
に、かえるどの
まざあ・ぐうす
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
おともだちの
上﨟
(
じょうろう
)
たちが、ふと一人見着けると、にわかに天楽の
音
(
ね
)
を
留
(
とど
)
めて、はらはらと
立
(
たち
)
かかって、上へ桂を繰り上げる。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
飢
(
う
)
えにふるえている二児の手を曳き、乳呑みを抱いて路頭の霜にうずくまったまま、起つ力もなげな
上﨟
(
じょうろう
)
を励まして、ここへ連れて来たものだった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
素朴なる村の住民は、これを目して
上﨟
(
じょうろう
)
と呼んでいた。上﨟はただ貴女の別名で、もと尊敬すべき婦人を意味したことは、
辻君
(
つじぎみ
)
・
立君
(
たちぎみ
)
のキミも同じである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
なれども、このとうとい
上﨟
(
じょうろう
)
のおみのうえもおしろがらくじょうするときはどうなるだろうか。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
(殿、ふと
気紛
(
きまぐ
)
れて出て、
思懸
(
おもいがけ
)
のう
懇
(
ねんごろ
)
申した
験
(
しるし
)
じゃ、の、殿、望ましいは
婦人
(
おなご
)
どもじゃ、何と
上﨟
(
じょうろう
)
を奪ろうかの。)
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
惣蔵はつかつかと起って行って、
上﨟
(
じょうろう
)
たちの中にいるわが妻の側へ寄った。突然、そこで「きゃッ」と
魂切
(
たまぎ
)
る
児
(
こ
)
のさけびがしたので、勝頼が、遠くから
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これなども
飛鳥井姫
(
あすかいひめ
)
という美しい
上﨟
(
じょうろう
)
の着物が、遠くから飛んで来て引っ掛かったといういい伝えもあるのですが、土地の人たちは、またこんな風にもいっている。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
此の時代の彼は既に武士ではなくなって、思いは日夜かの不仕合わせな
上﨟
(
じょうろう
)
母子の身の上に馳せながら、なお内心に何故とも知れざる自責の念と
慚愧
(
ざんき
)
の情とが往来していた。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
少し心安くなると、蛇の目の陣に
恐
(
おそれ
)
をなし、山の
端
(
は
)
の霧に落ちて行く——
上﨟
(
じょうろう
)
のような
優姿
(
やさすがた
)
に、
野声
(
のごえ
)
を放って
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
〔少納言信西入道〕美福門院の
上﨟
(
じょうろう
)
紀伊ノ局の良人。才学兼備で、表面には余り出ないが、野望測り知れぬ人物。頼長の師ではあるが、頼長とは以前から合わない。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いきな女よりも品のよい
上﨟
(
じょうろう
)
型の人、
裲襠
(
うちかけ
)
を着せて、
几帳
(
きちょう
)
のかげにでもすわらせて
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
オイランスイコもまた同じ意味で、虎杖は確かにスイコ中の
上﨟
(
じょうろう
)
である。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
三人奇異の思いをなすうち、
誰
(
た
)
が手を触れしということ無きに人形の
被
(
かずき
)
すらりと脱け落ちて、
上﨟
(
じょうろう
)
の
顔
(
かんばせ
)
顕
(
あら
)
われぬ。
啊呀
(
あなや
)
と顔を見合す処に、いと物凄き女の声あり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
被衣
(
かずき
)
を脱ぐ二人の
上﨟
(
じょうろう
)
めいたしなやかな手から
霰
(
あられ
)
がこぼれた。——住蓮も安楽も、その
匂
(
にお
)
わしい
麗姿
(
れいし
)
に眼をそむけた。見ているには、あまりに美し過ぎるからである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此れは身分のある
上﨟
(
じょうろう
)
が我が名を秘して目下の者へ申し送ったものゝようである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
愛宕
(
あたご
)
、清水をすぐ下に望む
大廂
(
おおびさし
)
の
彼方
(
かなた
)
に、夕富士の暮れる頃になると、百間廊下の
龕
(
がん
)
には見わたす限りの
燈
(
あかし
)
が連なり、御所の
上﨟
(
じょうろう
)
かと
紛
(
まご
)
う風俗の美女たちが、琴を抱いて通り
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それ、その三条の橋の下に、関白殿のお首が懸けられておりましたが、そこへ御一族のお子様がたや
上﨟
(
じょうろう
)
様がたをお引き出しなされて、何の
罪科
(
つみとが
)
もない者を一人々々お斬りなされたのじゃ。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼
(
か
)
の古戦場を
過
(
よぎ
)
つて、
矢叫
(
やさけび
)
の音を風に聞き、
浅茅
(
あさじ
)
が
原
(
はら
)
の月影に、
古
(
いにしえ
)
の都を忍ぶたぐひの、心ある人は、此の
媼
(
おうな
)
が六十年の昔を
推
(
すい
)
して、世にも
希
(
まれ
)
なる、
容色
(
みめ
)
よき
上﨟
(
じょうろう
)
としても
差支
(
さしつかえ
)
はないと思ふ
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
何かの仔細で、たとえ夜を
冒
(
おか
)
して来たにしても、供の者や
輦
(
くるま
)
を待たせてあるのであろうと想像していたのに、
裸足
(
はだし
)
で来たとは? ——しかも——
内裏
(
だいり
)
の奥ふかくに住む
上﨟
(
じょうろう
)
が。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
﨟
部首:⾋
16画
“上﨟”で始まる語句
上﨟共
上﨟塚
上﨟笠