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鉤
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かぎ
ふりがな文庫
“
鉤
(
かぎ
)” の例文
すると、投げ上げた網の上の方で
鉤
(
かぎ
)
か何かに引っかかりでもしたように、もう下へ降りて来ないのです。それどころではありません。
梨の実
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
鉤
(
かぎ
)
の手に曲るところを、そのままそれればまたもとの茶の
間
(
ま
)
あたりへ入るのだが、そこへ行っては、いよいよ袋詰めにされてしまう。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
七月というのに、馬鹿に寒かったので、僕は頭をむけて窓のほうを見ると、驚いたことには、窓は
鉤
(
かぎ
)
がはずれてあいているではないか。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
今の人には何でもない木の小枝の
鉤
(
かぎ
)
になったものなどが、昔は非常に重要にみられていたということは、必ずしも小さな発見ではない。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ニッケル
鍍金
(
めっき
)
のバネつきの
鉤
(
かぎ
)
が取りつけてありますが、この麻縄が引き上げた、天才少女、狩屋愛子の姿は見えなかったのです。
九つの鍵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
右手に持った針は尖端が少し
鉤
(
かぎ
)
なりに曲っており、めど(針穴)には二本よりの絹糸がとおしてある。布をとりのけると、傷口が見えた。
赤ひげ診療譚:02 駈込み訴え
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夕べをもまたず冷えてゆく朴の枝が教えるであろう、無慈悲な
鉤
(
かぎ
)
に捕えられたのは淵にすむ
鱒
(
ます
)
の子ではなくて私みずからであったことを。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
「人間が
鉤
(
かぎ
)
を恐れている内に、魚は遠慮なく鉤を呑んで、楽々と一思いに死んでしまう。私は魚が羨しいような気がしますよ。」
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ラスコーリニコフは
慄然
(
りつぜん
)
として、枘の中でおどり回る栓の
鉤
(
かぎ
)
を見つめながら、今にも栓がはずれるかと、鈍い恐怖をいだいて待っていた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
鉤
(
かぎ
)
鼻。スラブの赤い口髭。歯並のいい白すぎる歯。光のある鋭い眼。……その眼が、さっきから、博士の顔のうえにじっと据えられている。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
京子は走って潜戸まで行く。幻影はまた逃げる。潜戸を出て左へ走り、
鉤
(
かぎ
)
の手に右に曲った。京子は口惜しさに立ち止まった。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
波田はともの
鉤
(
かぎ
)
をはずした。とその時に「スライキ、スライキ、レッコ」と怒鳴った。「延ばせ、延ばせ、打っちゃれ」という意味である。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
伸子には
鉤
(
かぎ
)
のように感じられるその手でエレーナは伸子をリードして、黒いスカートをひるがえしながら、頭をたかくもたげ
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
かれ
鉤
(
かぎ
)
を以ちて、その沈みし處を探りしかば、その衣の中なる
甲
(
よろひ
)
に
繋
(
か
)
かりて、かわらと鳴りき。かれ
其所
(
そこ
)
に名づけて訶和羅の前といふなり。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
以前変らぬ蝮捕り姿、腰には
畚
(
びく
)
、手には
鉤
(
かぎ
)
、紺ずくめの裳束で、人を掻き分け境内を出たが、ションボリとして寂しそうだ。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鉤
(
かぎ
)
なりに
曲
(
まが
)
った
縁先
(
えんさき
)
では、
師匠
(
ししょう
)
の
春信
(
はるのぶ
)
とおせんとが、
既
(
すで
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
を
済
(
す
)
ませて、
池
(
いけ
)
の
鯉
(
こい
)
に
眼
(
め
)
をやりながら、
何事
(
なにごと
)
かを、
声
(
こえ
)
をひそめて
話
(
はな
)
し
合
(
あ
)
っていた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
あるいは幾つかの材木を樺の小枝でいっしょにくくり、それからはじに
鉤
(
かぎ
)
をつけた長めの樺またはカワラハンノキをつかってそれを引きずった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
むずかし屋を表明する「
碇
(
いかり
)
鼻」(「怒り鼻」?)、分別を見せる「
鉤
(
かぎ
)
鼻」、又は物々しい「二段鼻」、安っぽい「
抓
(
つま
)
み鼻」なぞいうのがあります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
刑吏達は容赦もなく寄つてたかつて二人をつかまへ、火焔の中へ投げ入れて、上から
鉤
(
かぎ
)
で抑へつけて、殺してしまつた。
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
穴を抜けたように
鉤
(
かぎ
)
の手に一つ曲って、暗い処をふっと出ると、
上框
(
あがりかまち
)
に
縁
(
えん
)
がついた、
吃驚
(
びっくり
)
するほど広々とした茶の間。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
娘たちの後からついていった部屋は廊下を
鉤
(
かぎ
)
の手に回った奥の西洋間らしい階段の下の、スグ取っ付きの部屋でした。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
マニ※ジイの磁石が或る見えざる力に因つて、音もなくありともわかぬ
鉤
(
かぎ
)
もて寄する、かの鉄環の如くであつた。
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
プラトンは奮然として受話器を
鉤
(
かぎ
)
に掛けて、席に
復
(
かへ
)
つた。それから五分も立たないうちに、又ちりん/\と鳴る。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
いっそ、頭を前へ突き出し、鶏小舎めがけて、いいかげんに
駈
(
か
)
け出したほうがましだ。そこには、隠れるところがあるからだ。
手探
(
てさぐ
)
りで、戸の
鉤
(
かぎ
)
をつかむ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
二人の目がそそがれるあたりに立った人影は、年のころ、五十あまり、
鬢髪
(
びんぱつ
)
はそそげ、肩先は
削
(
そ
)
げおとろえ、指先が
鉤
(
かぎ
)
のように曲った、亡霊にも似た男——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
北側の
空地
(
あきち
)
に彼等が遊弋している状態は、木戸をあけて反対の方角から
鉤
(
かぎ
)
の手に曲って見るか、または
後架
(
こうか
)
の窓から垣根越しに
眺
(
なが
)
めるよりほかに仕方がない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兵隊は一列になって、崖をなゝめに下り、中にはさきに黒い
鉤
(
かぎ
)
のついた長い
竿
(
さを
)
を持った人もありました。
イギリス海岸
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
わかった、わかった、その棒は、
伸縮自在
(
しんしゅくじざい
)
の
魔法棒
(
まほうぼう
)
なのだ。それにしても、そんな棒を何に使うのかと見ていると、小男はその
先端
(
せんたん
)
に
鉤
(
かぎ
)
のようなものをとりつけた。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ボンの家々の石やクロイツベルクやゴーデスベルクや
養樹園
(
バウムシュール
)
やは君のためにはたくさんの
鉤
(
かぎ
)
を持っている——悦んで君が君の思いをそこへ引っ掛けることのできる鉤を。
ベートーヴェンの生涯:04 ベートーヴェンの手紙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
、
フランツ・ゲルハルト・ヴェーゲラー
、
エレオノーレ・フォン・ブロイニング
(著)
行者が室内で睡眠剤を呑むように段取りをつけておいて、熟睡したころを見はからい、先に
鉤
(
かぎ
)
のついた長い綱を四本用意して、四人がギムナジウムの高い屋根にのぼる。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
後に聞けば、勝手では朝起きて戸を閉めるまで、
提灯
(
ちょうちん
)
に火を附けることにしている。提灯の
柄
(
え
)
の先に
鉤
(
かぎ
)
が附いているのを、春はいつも
長押
(
なげし
)
の
釘
(
くぎ
)
に懸けていたのだそうだ。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
簀框の底についた
鉤
(
かぎ
)
で、槽に渡した二本の台木をかき寄せながら乗せる時には、繊維を残した水の大部分は濾出している、
框
(
けた
)
の上枠をはねのけ、簀をはずして両手で持つと
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
碧
(
みどり
)
の
箔
(
すだれ
)
を銀の
鉤
(
かぎ
)
でかけた所に美しい女がいた。それが王妃であった。陳を伴れて往った女は
西湖主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
店先の低い天井には様々なものがぶらさげてある。
錠
(
じょう
)
、
鍵
(
かぎ
)
、
蝶番
(
ちょうつがい
)
、
提柄
(
さげえ
)
、
鉤
(
かぎ
)
、
座金
(
ざがね
)
、屋号や
紋入
(
もんいり
)
の金具等々。どれもこれも埃だらけで何年も手に触れる者がなかったと見える。
思い出す職人
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
あちこちで
塵埃塚
(
ちり
)
のなかからパンの皮を掘り出し、それをふいてから食べ、終日
鉤
(
かぎ
)
で溝をかきまわしては一文二文を
漁
(
あさ
)
り、楽しみとしてはただ、国王の祝日の無料の見世物と
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
カギカズラは茎に
鉤
(
かぎ
)
が出来るので、日本ではカギカズラ、支那では鉤藤といって居ります。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
飛行の詩神を畫ける
仰塵
(
プラフオン
)
、オリユムポスの圖を寫したる幕、黄金を
鏤
(
ちりば
)
めたる
觀棚
(
さじき
)
など、當時は猶新なりき。
棚
(
さじき
)
ごとに壁に
鉤
(
かぎ
)
して燭を立てたれば、場内には光の波を湧かしたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
防禦
(
ぼうぎょ
)
ともにこれを用いるゆえ、蜂の団体は多くの敵に勝って繁栄している次第であるが、この針には逆に向いた
鉤
(
かぎ
)
があって、いったんこれで人などを
刺
(
さ
)
すとそのままになって抜けない。
進化論と衛生
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
家の前を上野広小路の方から流れて来る細い溝が
鉤
(
かぎ
)
の手になって三味線堀に流れていた。少し行ったところが
佐竹原
(
さたけっぱら
)
という原っぱになっていて、長屋の裏手は紺屋の干場になっていた。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
娘はそれにすぐ気づいて、Kの元気を回復させるために、壁に立てかけてあった
鉤
(
かぎ
)
付きの
竿
(
さお
)
をとり、ちょうどKの頭上に備えつけられた、戸外に通じる小さな通風窓をつついてあけた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
鉤
(
かぎ
)
の手に曲がっている路地の奥で、隣りの
空地
(
あきち
)
には、稲荷の
社
(
やしろ
)
が
祀
(
まつ
)
られていた。
半七捕物帳:17 三河万歳
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
当三月下旬その大きさを計るに、頭より尾元に至るまで、長さ一尺二寸五分、高さ六寸、方言「ゴンボウ」と称し、尾の長さわずかに一寸三分、
尾端
(
びたん
)
右方に曲がりてあたかも
鉤
(
かぎ
)
のごとし。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
犬歯を
歯齦
(
はぐき
)
まで
鉤
(
かぎ
)
のようにむきだして、瞳は充血で金色にひかっている。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鉤
(
かぎ
)
形に百余坪の平家建て、入口の作り庭に件の貝類をことごとく飾りつけ、館内はすべて岩組の海底のさま、当時
漆喰
(
しっくい
)
細工の名人と知られた伊豆の長八が
鏝
(
こて
)
先の腕を
揮
(
ふる
)
って、さながら真物の岩窟
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
しかし、柔らかい
蹠
(
あしのうら
)
の、鞘のなかに隠された、
鉤
(
かぎ
)
のように曲った、
匕首
(
あいくち
)
のように鋭い爪! これがこの動物の活力であり、
智慧
(
ちえ
)
であり、精霊であり、一切であることを私は信じて疑わないのである。
愛撫
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
人夫が、先に
鉤
(
かぎ
)
の附いた
竿
(
さお
)
で、
屍体
(
したい
)
の衣類をでも、引掛けたらしい。
死者を嗤う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
裏面の青い雲紋などツマキ蝶によく似ているが、あのように翅の先端が
鉤
(
かぎ
)
状にとがらず、円味をおびて橙黄の部分が広く、全体も大きく強い。こんな美しい蝶が今まで人に知られなかったとは……。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
広い宮殿の廻廊からは人影が消えてただ裸像の彫刻だけが黙然と立っていた。すると、突然ナポレオンの腹の上で、彼の太い十本の指が固まった
鉤
(
かぎ
)
のように動き出した。指は彼の寝巻を
掻
(
か
)
きむしった。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
船の者共は面白半分
鉤
(
かぎ
)
をかけて、引上げてしまひました。
動く海底
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
そこで手探に
鉤
(
かぎ
)
のある所を捜して鉤をいぢつてゐた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
“鉤”の解説
鍵
鉤・鈎(かぎ、こ、こう、はり、ち、はぜ、つる)は、先が曲がった棒状の、もっぱら金属製の器具である。曲がった部分を何かに引っ掛けて使う。フック(en: hook)。もっぱら「かぎ」と読むが、分野によっては他の読みをする。
(出典:Wikipedia)
鉤
漢検準1級
部首:⾦
13画
“鉤”を含む語句
鉤形
自在鉤
釣鉤
鉤裂
鉤金
鉄鉤
鉤鼻
鉤縄
鉤爪
鉤穴
鉤曳
手鉤
鉤手
蚊鉤
鉤索
銀鉤
鉤繩
鉤針
鉤素
鉤殿
...