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やわらか
ふりがな文庫
“
軟
(
やわらか
)” の例文
干してある赤い布や並べた鉢物の
緑
(
みど
)
りが、光線の
軟
(
やわらか
)
な
薄曇
(
うすぐもり
)
の昼過ぎなどには、汚れた屋根と壁との間に驚くほど鮮かな色彩を輝かす。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
第十八
嫁菜
(
よめな
)
飯 春になって野へ嫁菜が出ましたら
軟
(
やわらか
)
い若芽を摘んで塩湯で
一旦
(
いったん
)
湯煮て水へ二、三時間漬けておくとアクが出ます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
水が
軟
(
やわらか
)
に綺麗で、
流
(
ながれ
)
が優しく、瀬も荒れないというので、——昔の人の心であろう——名の上へ女をつけて呼んだ川には、不思議である。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
電燈は
軟
(
やわらか
)
い明りを
湛
(
たた
)
え、火鉢の火が被った白い灰の下から、
羅
(
うすぎぬ
)
を漏る肌の光のように、優しい
温
(
あたた
)
まりを送る時、奥さんと己とは
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
遠くから見た時には、一望平滑の土地とのみ思いこんでいたが、きてみると、
僅
(
わず
)
かばかりの
軟
(
やわらか
)
いふくらみの連続になっていた。
ツンドラへの旅
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
奥様は暖い国に植えられて、
軟
(
やわらか
)
な風に吹かれて咲くという花なので。この荒い土地に移されても根深く
蔓
(
はびこ
)
る
雑草
(
くさ
)
では有ません。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
姫鱒
(
ひめます
)
も中禅寺湖名物で、私は美味しかったが、お母さんは初めてでどうもぞっとなさらなかった由。河魚は身が
軟
(
やわらか
)
い。それがおいやのようです。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
試に其言に従って松本君と味って見る。成程
軟
(
やわらか
)
で甘味があって香気が高い。
次手
(
ついで
)
に自分で採集した分まで食べてしまう。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
フッと気がついたときには、あの
凄惨
(
せいさん
)
な小田原の隧道の上かと思いの外、身はフワリと
軟
(
やわらか
)
いベッドの上に、長々と横になっているのでありました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
嗚呼彼の楓の下の
雪白
(
まっしろ
)
の布を
覆
(
おお
)
うた食卓、
其処
(
そこ
)
に朝々サモヷルが来り
喫
(
の
)
む人を待って
吟
(
ぎん
)
じ、其下の砂は白くて踏むに
軟
(
やわらか
)
なあの食卓! 先生は読み
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
桃色の絹の
蓋
(
おおい
)
を冠った、電気スタンドの
軟
(
やわらか
)
い光が、ダブルベッドの純白の敷布を、催情的に色づけてもいました。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
木の芽のような
軟
(
やわらか
)
い心と、火のような激情の性質をもった超現実的な娘が、これほど大きくなったむす子を持つまでに、この世に成長したのは不思議である。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
漸
(
ようよ
)
う口を開いて、「そうだ、
軟
(
やわらか
)
いが、なるほどすぐに脆くなる。」しばらくしてこれに附け加えて
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
生
(
お
)
い茂った
軟
(
やわらか
)
い
草叢
(
くさむら
)
が、かすかな音をたてて足の下にしなっていった。
榛
(
はんのき
)
の立木が半ば水に浸って、河の上に枝を垂れていた。
蝿
(
はえ
)
が雲のように群れて飛び回っていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
風は
軟
(
やわらか
)
に吹いてゐた。
五月
(
さつき
)
の空は少し濁ツて、眞ツ白な雲は、時々
宛然
(
さながら
)
大きな鳥のやうに
悠
(
ゆるやか
)
に飛んで行く。日光は薄らいだり輝いたり、都ての
陰影
(
いんえい
)
は絶えず變化する。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
いつもの道から崖の近道へ
這入
(
はい
)
った自分は、雨あがりで下の赤土が
軟
(
やわらか
)
くなっていることに気がついた。人の足跡もついていないようなその路は歩くたび少しずつ滑った。
路上
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
色が白いので、
眉
(
まゆ
)
がいかにも判然していた。眼も
朗
(
ほがら
)
かであった。頬から
顎
(
あご
)
を包む
弧線
(
こせん
)
は春のように
軟
(
やわらか
)
かった。余が驚きながら、
見惚
(
みと
)
れているので、女は眼を
反
(
そ
)
らして、
空
(
くう
)
を見た。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
乍去
(
さりながら
)
強
(
しい
)
て注意して運動を怠らず、更に喰料にも成丈
軟
(
やわらか
)
きものを選み、且つ量に於ても三分一を※ずるとして、夕飯は必ず後四時として粥を用い、菜は淡泊なるものを用うるとせり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
食パン(食パンの
軟
(
やわらか
)
きを指で練り固めてゴムの代用とする)
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
軟
(
やわらか
)
い木の
薪
(
たきぎ
)
で炊いたものより
堅木
(
かたぎ
)
の方が良く出来ます。それに水車で
搗
(
つ
)
いたお米は水分を含んでいて味も
悪
(
わ
)
るし
殖
(
ふ
)
え方も
寡
(
すくの
)
うございます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
なるほどフライパンの上でラードを磨るような手触りとは、こういうのを言うのだと感心した。墨は
軟
(
やわらか
)
くしかも
硯
(
すずり
)
の
面
(
おもて
)
に吸いつくように動いた。
南画を描く話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
彼はそこをごまかすために、多田さんが唯今お持ちになったピストルを、
軟
(
やわらか
)
い地面に向けて射った後、土地を掘りかえして
弾丸
(
だんがん
)
を掘りだしたんです。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
どの家にも必ず付いている
物干台
(
ものほしだい
)
が、
小
(
ちいさ
)
な菓子折でも並べたように見え、干してある赤い
布
(
きれ
)
や並べた鉢物の
緑
(
みど
)
りが、光線の
軟
(
やわらか
)
な薄曇の昼過ぎなどには
銀座
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
どの車にも、
軟
(
やわらか
)
い
鼠色
(
ねずみいろ
)
の帽の、
鍔
(
つば
)
を下へ曲げたのを
被
(
かぶ
)
った男が、
馭者台
(
ぎょしゃだい
)
に乗って、
俯向
(
うつむ
)
き加減になっている。
沈黙の塔
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お絹が
柔順
(
すなお
)
に、もの
軟
(
やわらか
)
に取上げた、おでんの盆を、どういうものか、もう一度彦七がわざとやけに引取って
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
中
(
うち
)
に彼は眠くなった。そうして益々空腹になった。何より
現在
(
いま
)
の彼に執っては、
軟
(
やわらか
)
い
寝所
(
ねどこ
)
と温かい食物——何さ、冷でも結構であるが——この二つが必要であった。
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
時々は甘えて煙草をくれと云う。
此家
(
うち
)
では
喫
(
の
)
まぬと云っても、忘れてはまた煙草をくれと云う。正直の仙さんは
一剋
(
いっこく
)
で向張りが強く、
智慧者
(
ちえしゃ
)
の安さんは
狡獪
(
ずる
)
くて
軟
(
やわらか
)
な皮をかぶって居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ナポレオンはその後にも「鉛のように
軟
(
やわらか
)
くて、しかも鎔解しにくい合金は出来まいか。」という質問をよこしたこともある。「実験に入要な費用は別に払うから」ということまで、附記して来た。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
三分の二くらい行って、まだ
軟
(
やわらか
)
い部分が大分残っていたが、こういう高貴なものは、そう下品に食べては悪いと思って
止
(
よ
)
した。他の若い連中も皆そうした。
寺田先生と銀座
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
今更にそれを
悔
(
くや
)
んだとて何としよう。自分を育てた時代の空気は余りに
軟
(
やわらか
)
く余りに他愛がなさ過ぎたのだ。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
萌黄色
(
もえぎいろ
)
に長く
靡
(
なび
)
いて、房々と
重
(
かさな
)
って、その茂ったのが底まで澄んで、透通って、
軟
(
やわらか
)
な細い葉に
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
注射器を使って子宮の中に剥離剤を注入すれば、その薬品が皮膚を
蝕
(
おか
)
すため、胎児と子宮壁とをつないでいる部分の
軟
(
やわらか
)
い皮が腐蝕して脱落し、堕胎の目的を達するのだった。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
予は人の葬を送って墓穴に臨んだ時、遺族の少年男女の優しい手が、
浄
(
きよ
)
い
赭土
(
あかつち
)
をぼろぼろと穴の中に
翻
(
こぼ
)
すのを見て、地下の客がいかにも
軟
(
やわらか
)
な暖な感を作すであろうと思ったことがある。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
狭い額の人間など、往々例外はあるにしても、
先
(
ま
)
ず滅多に博士には成れない。眼は全く微妙である、
瞶
(
みつめ
)
る時には充分に鋭く、瞶めない時には
軟
(
やわらか
)
い。だが最も特色的なのは、笑われる時の鼻皺であろう。
小酒井不木氏スケッチ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
氷層と氷層との間のコンクリート状に凍った粘土部分は意外に
軟
(
やわらか
)
く、未凍結水を多量に含んでいるように見えた。それも凍上実験で知られている通りである。
永久凍土地帯
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
幸い
四辺
(
あたり
)
は静で、もう
此処
(
ここ
)
までは追掛けて来るものもないらしい。朧月の光が
軟
(
やわらか
)
に夜の
流
(
ながれ
)
を照している。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
可
(
か
)
なり
上背
(
うわぜい
)
のある婦人で、クッションのように
軟
(
やわらか
)
くて弾力のある肉付の所有者だった。銃丸は心臓の丁度真上にあたる部分を射って、
大動脈
(
だいどうみゃく
)
を破壊してしまったものらしい。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
羽織も、着ものも、おさすりらしいが、
柔
(
やわらか
)
ずくめで、
前垂
(
まえだれ
)
の膝も、しんなりと
軟
(
やわらか
)
い。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「旦那。こいつは肉が
軟
(
やわらか
)
ですぜ。」
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「そんなことかも知れん。天井の壁さえ抜けば、あとは
軟
(
やわらか
)
い土ばかりだったのかも知れない」
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昼過の
軟
(
やわらか
)
な日光に、冬枯れした庭木の影が
婆娑
(
ばさ
)
として白い紙の上に描かれる風趣。春の夜に梅の枝の影を窓の障子に見る時の心持。それはすでに清元浄瑠璃の
外題
(
げだい
)
にも取入れられている。
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こちこちと寂しいが、土地がら、今時はお
定
(
さだま
)
りの俗に
称
(
とな
)
うる坊さん花、
薊
(
あざみ
)
の
軟
(
やわらか
)
いような
樺紫
(
かばむらさき
)
の
小鶏頭
(
こげいとう
)
を、一束にして添えたのと、ちょっと色紙の二本たばねの線香、
一銭蝋燭
(
いちもんろうそく
)
を添えて持った
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その証拠には、怪物の身体は、雨後の
軟
(
やわらか
)
い土を上から押しています。よく見てごらんなさい
宇宙戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
路傍の新樹は風にもまれ、
軟
(
やわらか
)
なその若葉は吹き
裂
(
さか
)
れて
路
(
みち
)
の
面
(
おもて
)
に散乱している。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と鋳掛屋は、肩を
軟
(
やわらか
)
に、胸を低うして、
更
(
あらた
)
めて私たち二人を
視
(
み
)
たが
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なぜなら彼の丸い身体が、急にどしんと
軟
(
やわらか
)
い白いものに当ったからである。それに落下傘の綱がうまくひっかかったものだから、それ以上、氷原を転がらなくてもいいことになった。
大空魔艦
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
浮雲の
引幕
(
ひきまく
)
から屈折して落ちて来る
薄明
(
うすあかる
)
い光線は
黄昏
(
たそがれ
)
の如く
軟
(
やわらか
)
いので、
眩
(
まばゆ
)
く照り輝く日の光では見る事
味
(
あじわ
)
う事の出来ない物の
陰影
(
かげ
)
と物の
色彩
(
いろ
)
までが、かえって鮮明に
見透
(
みとお
)
されるように思われます。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
軟
常用漢字
中学
部首:⾞
11画
“軟”を含む語句
柔軟
軟弱
軟風
御柔軟
軟文学
軟柔
軟泥
軟化
軟禁
軟打
軟体
海軟風
軟毛
手軟
軟禁程度
軟派
軟派青年
軟水
軟玉
軽軟
...