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谿谷
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けいこく
ふりがな文庫
“
谿谷
(
けいこく
)” の例文
男子なる方は、
五月蠅
(
うるさ
)
きことに思ったのであろう。われわれはこれから、コルシカはタラノの
谿谷
(
けいこく
)
へ虎狩りにゆくつもりであること。
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
まだ明け切らぬ朝靄の木立のなかを縫うように、京子の姿が温泉村の
谿谷
(
けいこく
)
へと急いでいた。山荘の人々は誰も起き出でてはいなかった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
谿谷
(
けいこく
)
をはさんだ峰々は墨絵のおぼろに似て、あるいはゆるやかな、あるいはけわしい線を描きつつ酢川岳のほうへ夢のように
霞
(
かす
)
んでいく。
峠の手毬唄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
上流の
谿谷
(
けいこく
)
の山崩れのために、生きながら埋められたおびただしい樹木が、豪雨のために洗い流され、押し流されて、ここまで来るうちに
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一日は一日より、白さ、寒さ、深さを増す
恵那山
(
えなさん
)
連峰の
谿谷
(
けいこく
)
を右手に望みながら、やがて半蔵は連れと一緒に峠の上を離れた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
時には二十余丈の
岩盤
(
がんばん
)
を掘り下げたり、或いは一水を得るために、千
仭
(
じん
)
の
谿谷
(
けいこく
)
へ水汲みの決死隊を募って汲ませたこともある。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
木賀から、宮城野まで、六七町の間、早川の
谿谷
(
けいこく
)
に沿うた道を歩いている
裡
(
うち
)
に、二人は
漸
(
ようや
)
く打ち解けて、いろ/\な問を
訊
(
き
)
いたり訊かれたりした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
考えていたより何百倍か大きいものであった。月面は青白く輝き、くっきり黒い影でふちをとられた
山岳
(
さんがく
)
や
谿谷
(
けいこく
)
が手にとるようにありありと見えた。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「左様——
谿谷
(
けいこく
)
の水と、河川の水とは、東洋画の領分かも知れませんが、海洋の水は、色を以て現わした方が、という気分がしないでもありません」
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
考えることも深かった上に
突兀
(
とっこつ
)
した
谿谷
(
けいこく
)
は相当な登りにかかっていた。おいおいと肩の荷が骨にこたえて来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
だが地図で見るなら如何に衣川村の
谿谷
(
けいこく
)
の、一番奥の小さな村だかを知られるであろう。この増沢は五十戸ほどよりなく、人々を集めても四百人に足りない。
陸中雑記
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
熔岩
(
ラバー
)
を
以
(
もっ
)
て閉じた
為
(
た
)
めに、ここに
秋元湖
(
しゅうげんこ
)
檜原湖と称する、数里にわたる新らしい湖を
谿谷
(
けいこく
)
の間に現出した、その一年後のことであるから、吾々の眼にふるる
処
(
ところ
)
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
大森林、大
谿谷
(
けいこく
)
、
奔湍
(
ほんたん
)
、風の音、雨、山をつんざく雷、
時雨
(
しぐれ
)
、無心の空の雲、数箇月に渡る雪の世界。
仙術修業
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
道了と猿山の森を分つ
鋸型
(
のこぎりがた
)
の
谿谷
(
けいこく
)
に従って
径
(
みち
)
を見出し、登ること三里、ヤグラ嶽の麓に
蹲
(
うずくま
)
る針葉樹の密林に囲まれた山峡の龍巻と称ばるる、五十戸から成る小部落で
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
芝石
(
しばいし
)
温泉という、湯滝のある、
谿谷
(
けいこく
)
に臨んだ温泉を過ぎて、
紺屋
(
こうや
)
地獄を見た。これは紺色をした泥池の底から、同じく怒るが
如
(
ごと
)
くつぶやくが如く熱気を吐いておるのである。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
また、海岸地方や
谿谷
(
けいこく
)
の多くは、熱病の巣と云つてもよいほどであります。それから、猛獣や毒虫がはびこつてゐますし、奥地の方には、
獰猛
(
だうまう
)
で危険な土人たちが住んでゐます。
アフリカのスタンレー
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
谿谷
(
けいこく
)
は赤くいろどられ樹木は震え、雲間にまで狂暴なものがひろがり、そして暗夜のうちに、モン・サン・ジャン、ウーゴモン、フリシュモン、パプロット、プランスノアなど
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし……何しろ人跡絶えた山奥の
谿谷
(
けいこく
)
で、水の音ばかり聞こえる
寂寞
(
せきばく
)
境ですからね。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
谿谷
(
けいこく
)
と大空とがぐる/\𢌞つた。丘が
盛
(
も
)
り上つた! 幻の使者、一人のマケドニア人が「來りて我等を助けよ!」とポオロに
告
(
つ
)
げたやうに、私は天からの呼び聲を聞いたかと思つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
この家のすぐ裏がやや深い
谿谷
(
けいこく
)
になっていて——この頃など夜の明け切らないうちから
其処
(
そこ
)
で
雉子
(
きじ
)
がけたたましく啼き立てるので、いつも私達はまだ眠いのに目を覚ましてしまう程だが
卜居:津村信夫に
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
神を
斎
(
いつ
)
き
祀
(
まつ
)
ってある奥深い三輪山の
檜原
(
ひはら
)
を見ると、
谿谷
(
けいこく
)
ふかく同じく繁っておる初瀬の檜原をおもい出す、というので、三輪の檜原、初瀬の檜原といって、檜樹の密林が
欝蒼
(
うっそう
)
として居り
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
ヨルダンの
谿谷
(
けいこく
)
を隔ててはるかにモアブの連峰が紫に霞むのが望まれます。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
天外の故郷を去って他界にうつるのだからと抱き合ったり、
跳
(
おど
)
り上ったりして、歓楽と栄華をきわめている、この狭い、浅い、
谿谷
(
けいこく
)
も、穂高の大岳、眉を圧して荒海の気魄、先ず動くのである。
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
その
谿谷
(
けいこく
)
をもみじの中へ入って行く、
残
(
のこ
)
ンの桔梗と、うら
寂
(
さび
)
しい
刈萱
(
かるかや
)
のような、二人の姿の、窓あかりに、暗くせまったのを見つつ、
乗放
(
のりはな
)
して
下
(
お
)
りた、おなじ処に、しばらく、とぼんと
踞
(
しゃが
)
んでいた。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
深く迫った
谿谷
(
けいこく
)
は、あらあらしい川の音にやかましく反響していた。この手取川の上流は、いま雪解けの水でいっぱいだった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
東ざかいの桜沢から、西の
十曲峠
(
じっきょくとうげ
)
まで、木曾十一
宿
(
しゅく
)
はこの街道に添うて、二十二里余にわたる長い
谿谷
(
けいこく
)
の間に散在していた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
地獄谷というのは、S市を訪ずれた人は一度は見物に行く名所で、S市の南を流れるG川の上流、都会近くには珍らしい、深山の趣きある
谿谷
(
けいこく
)
だ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
姉川の水は三尺、その広い河幅も、
脛
(
すね
)
をもって
渉
(
わた
)
ることができるが、その
清冽
(
せいれつ
)
は、夏なお身を切るように冷たくて、水源の東浅井の
谿谷
(
けいこく
)
を思わせる。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その幕の一部を左右に引きしぼったように
梓川
(
あずさがわ
)
の
谿谷
(
けいこく
)
が口を開いている。それが、まだ見ぬ遠い
彼方
(
かなた
)
の別世界へこれから分けのぼる途中の
嶮
(
けわ
)
しさを想わせるのであった。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あの
狭隘
(
きょうあい
)
な
蹉跌
(
さてつ
)
の多い
谿谷
(
けいこく
)
が、美の都への唯一の道であったなら、いかに呪わしき命数であろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
早川の
谿谷
(
けいこく
)
の底
遥
(
はる
)
かに、岩に激している水は、
夕闇
(
ゆうやみ
)
を透してほのじろく見えていた。その水から
湧
(
わ
)
き上って来る涼気は、
浴衣
(
ゆかた
)
を着ている美奈子には、肌寒く感ぜられるほどだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
とばかり、士気を励まして、山地を脱しようとしたが、行けども行けども、山は尽きず、かえって、いよいよ狭い
谿谷
(
けいこく
)
へ迷いこんでしまった気がする。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼にはまた、久しぶりで山地に近い温泉場まで行き、
榛名
(
はるな
)
妙義
(
みょうぎ
)
の山岳を汽車の窓から望み、山気に包まれた高原や深い
谿谷
(
けいこく
)
に接するという楽みがあった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
とりわけ温泉津の如きせまい
谿谷
(
けいこく
)
にそれが集る時、どのカメラも
画筆
(
えふで
)
も休んではいられまい。
雲石紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
……辛夷が散り桃が咲き、やがて桜も葉に変る頃が来ると、高原はいっぺんに初夏の光と色とに包まれる、
時鳥
(
ほととぎす
)
や
郭公
(
かっこう
)
の声が朝から森に
木魂
(
こだま
)
し、
谿谷
(
けいこく
)
の奥から野猿が下りて来る。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
物凄いばかりの大
谿谷
(
けいこく
)
が横わり、両岸は空を打つかと見える絶壁が、眉を圧して打続き、その間に微動もしない
深碧
(
しんぺき
)
の水が、約半町程の幅で、眼も遙かに
湛
(
たた
)
えられているのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
河の流れをたどって行く鉛筆の尖端が平野から次第に
谿谷
(
けいこく
)
を
遡上
(
さかのぼ
)
って行くに随って温泉にぶつかり滝に行当りしているうちに
幽邃
(
ゆうすい
)
な自然の幻影がおのずから眼前に展開されて行く。
夏
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
赤城山が利根川の
谿谷
(
けいこく
)
へと、
緩
(
ゆる
)
い
勾配
(
こうばい
)
を作っている一帯の高原には、彼の故郷の国定村も、彼が売出しの当時、島村伊三郎を斬った境の町も、彼が一月前に代官を斬った岩鼻の町もあった。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
のみならず、水門には、
頑丈
(
がんじょう
)
な
鉄柵
(
てつさく
)
が二重になっているうえ、
足場
(
あしば
)
のわるい
狭隘
(
きょうあい
)
な
谿谷
(
けいこく
)
である。おまけに、全身水しぶきをあびての苦戦は
一通
(
ひととお
)
りでない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わずかに
美濃境
(
みのざかい
)
の
恵那山
(
えなさん
)
の方に、その高い
山間
(
やまあい
)
の
谿谷
(
けいこく
)
に残った雪が矢の根の形に白く望まれるころである。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
酢川岳
(
すがわだけ
)
の山々が北に走っていくつかにわかれ、その
谿谷
(
けいこく
)
が深く切込んだところに
雄物川
(
おものがわ
)
の上流が白い
飛沫
(
しぶき
)
をあげている。峠道はその谿流にそって、断崖の上を曲り曲り南北に走っているのだ。
峠の手毬唄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
東方、早川の
谿谷
(
けいこく
)
が、群峰の間にたゞ一筋、開かれている末
遥
(
はるか
)
に、地平線に雲のいぬ晴れた日の折節には、いぶした銀の如く、ほのかに、雲とも付かず空とも付かず、光っている
相模灘
(
さがみなだ
)
が見えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
恵那山
(
えなさん
)
の
谿谷
(
けいこく
)
の方に起こるさかんな
雪崩
(
なだれ
)
は半蔵が家あたりの位置から望まれないまでも、雪どけの水の音は軒をつたって、毎日のようにわびしく単調に聞こえている。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
道は
嶮岨
(
けんそ
)
だし、具足着ではあるし、追う方も追うほうだったが、逃げまわる天蔵の同勢も、逃げつかれて来たものとみえ、道々、荷を捨て、馬を捨て、だんだん身軽になって
百月川
(
どうづきがわ
)
の
谿谷
(
けいこく
)
で
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
場所は尾花沢から暗闇谷といわれる
谿谷
(
けいこく
)
へさがったところで、三百尺もある
断崖
(
だんがい
)
に、
蔓
(
つた
)
かずらで猿のかようほどの桟を渡し、それを伝ってなお谷へ下るという、まったく孤絶した位置にあった。
おばな沢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人はそこに、常なく定めなき
流転
(
るてん
)
の力に対抗する偉大な
山嶽
(
さんがく
)
の
相貌
(
そうぼう
)
を仰ぎ見ることができる。
覚明行者
(
かくみょうぎょうじゃ
)
のような早い登山者が自ら骨を
埋
(
うず
)
めたと言い伝えらるるのもその頂上にある
谿谷
(
けいこく
)
のほとりだ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
洞窟
(
どうくつ
)
は
谿谷
(
けいこく
)
にのぞむ
断崖
(
だんがい
)
の上にあった。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
百月川
(
どうづきがわ
)
の
谿谷
(
けいこく
)
は、一瞬でまっ赤になった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はまた、わずかに
栂
(
つが
)
の実なぞの
紅
(
あか
)
い
珠
(
たま
)
のように枝に残った郷里の家の庭を想像し、木小屋の裏につづく
竹藪
(
たけやぶ
)
を想像し、その想像を毎年の雪に隠れひそむ
恵那山
(
えなさん
)
連峰の
谿谷
(
けいこく
)
にまで持って行って見た。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
翌日は朝霧の
籠
(
こも
)
った
谿谷
(
けいこく
)
に朝の光が満ちて、近い山も遠く、家々から立登る煙は霧よりも白く見えた。浅間は隠れた。山のかなたは青がかった灰色に光った。白い雲が山脈に添うて起るのも望まれた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“谿谷”の意味
《名詞》
谿谷(けいこく)
谷。「谿」は「渓」の異体字で、「たに」「たにがわ」の意。
(出典:Wiktionary)
谿
漢検1級
部首:⾕
17画
谷
常用漢字
小2
部首:⾕
7画
“谿”で始まる語句
谿
谿間
谿流
谿河
谿川
谿底
谿水
谿々
谿合
谿壑