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装
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よそおい
ふりがな文庫
“
装
(
よそおい
)” の例文
旧字:
裝
天衣、
瓔珞
(
ようらく
)
のおん
装
(
よそおい
)
でなくても、かかる場面へ、だしぬけの振袖は、狐の花嫁よりも、人界に遠いもののごとく、一層人を驚かす。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつ頃からこの不思議な
装
(
よそおい
)
をして、この不思議な
歩行
(
あゆみ
)
をつづけつつあるかも、余には解らぬ。その主意に至ってはもとより解らぬ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ガラッ八が飛込んで来たのは、もう日射しの秋らしくなって、縁側の朝顔も朝々の美しい
装
(
よそおい
)
が衰えかけた時分の事でした。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あるいは
阿多福
(
おたふく
)
が思をこらして
容
(
かたち
)
を
装
(
よそお
)
うたるに、
有心
(
うしん
)
の鏡はその
装
(
よそおい
)
を写さずして、
旧
(
もと
)
の醜容を反射することあらば、阿多福もまた不平ならざるをえず。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
風呂敷には、もう
一品
(
ひとしな
)
——小さな
袖姿見
(
てかがみ
)
があった。もっとも八つ花形でもなければ
柳鵲
(
りゅうじゃく
)
の
装
(
よそおい
)
があるのでもない。
単
(
ひとえ
)
に、円形の
姿見
(
かがみ
)
である。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
やさしく
咽喉
(
のど
)
に
滑
(
す
)
べり込む長い
顎
(
あご
)
を奥へ引いて、上眼に小野さんの姿を
眺
(
なが
)
めた小夜子は、変る眼鏡を見た。変る
髭
(
ひげ
)
を見た。変る髪の
風
(
ふう
)
と変る
装
(
よそおい
)
とを見た。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おのおの貧富にしたがって、
紅粉
(
こうふん
)
を装い、衣裳を着け、その
装
(
よそおい
)
潔
(
きよ
)
くして華ならず、粗にして汚れず、言語
嬌艶
(
きょうえん
)
、容貌温和、ものいわざる者も
臆
(
おく
)
する気なく、笑わざるも悦ぶ色あり。
京都学校の記
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
乳のふくらみを
卓子
(
テエブル
)
に近く寄せて朗かに
莞爾
(
にっこり
)
した。その
装
(
よそおい
)
は
四辺
(
あたり
)
を払って、泰西の物語に聞く、少年の
騎士
(
ナイト
)
の
爽
(
さわやか
)
に
鎧
(
よろ
)
ったようだ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
闥
(
たつ
)
を排して
眼
(
まなこ
)
を射れば——
黄金
(
こがね
)
の寝台に、位高き
装
(
よそおい
)
を今日と
凝
(
こ
)
らして、女王の
屍
(
しかばね
)
は是非なく
横
(
よこた
)
わる。アイリスと呼ぶは女王の足のあたりにこの世を捨てぬ。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その働くべき部分の内にありて自由に働をたくましゅうし、輿論にあえばすなわち
装
(
よそおい
)
を変ずべし。これすなわち聖教の聖教たるゆえんにして、尋常一様、
小儒輩
(
しょうじゅはい
)
の得て知るところに非ざるなり。
徳育如何
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
時に、
宮奴
(
みややっこ
)
の
装
(
よそおい
)
した
白丁
(
はくちょう
)
の下男が一人、露店の
飴屋
(
あめや
)
が張りそうな、渋の
大傘
(
おおからかさ
)
を畳んで肩にかついだのが、法壇の根に
顕
(
あらわ
)
れた。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金屏
(
きんびょう
)
を背に、
銀燭
(
ぎんしょく
)
を前に、春の宵の一刻を千金と、さざめき暮らしてこそしかるべきこの
装
(
よそおい
)
の、
厭
(
いと
)
う
景色
(
けしき
)
もなく、争う様子も見えず、
色相
(
しきそう
)
世界から薄れて行くのは
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すなわち公議輿論の一変したるものなれば、この際にあたりて徳教の働ももとより消滅するに非ずといえども、おのずから輿論に適するがために、大いにその
装
(
よそおい
)
を改めざるをえざるの時節なり。
徳育如何
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
時に、
宮奴
(
みやつこ
)
の
装
(
よそおい
)
した
白丁
(
はくちょう
)
の下男が一人、露店の
飴屋
(
あめや
)
が張りさうな、
渋
(
しぶ
)
の
大傘
(
おおからかさ
)
を
畳
(
たた
)
んで肩にかついだのが、法壇の根に
顕
(
あらわ
)
れた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
はらりと
沈
(
しず
)
んだ
衣
(
きぬ
)
の音で、
早
(
はや
)
入口へちゃんと両手を。肩がしなやかに袂の
尖
(
さき
)
、
揺
(
ゆ
)
れつつ
畳
(
たたみ
)
に敷いたのは、
藤
(
ふじ
)
の
房
(
ふさ
)
の
丈長
(
たけなが
)
く
末濃
(
すえご
)
に
靡
(
なび
)
いた
装
(
よそおい
)
である。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪で
束
(
つか
)
ねたようですが、いずれも演習行軍の
装
(
よそおい
)
して、
真先
(
まっさき
)
なのは
刀
(
とう
)
を取って、ぴたりと胸にあてている。それが長靴を高く踏んでずかりと入る。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すらすらと歩を移し、露を払った
篠懸
(
すずかけ
)
や、
兜巾
(
ときん
)
の
装
(
よそおい
)
は、弁慶よりも、
判官
(
ほうがん
)
に、むしろ新中納言が山伏に
出立
(
いでた
)
った
凄味
(
すごみ
)
があって、且つ色白に美しい。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
晃然と霜柱のごとく光って、銃には殺気紫に、
莟
(
つぼ
)
める青い
竜胆
(
りんどう
)
の
装
(
よそおい
)
を凝らした。筆者は、これを記すのに張合がない。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
棟
(
むね
)
に咲いた
紫羅傘
(
いちはつ
)
の花の紫も手に取るばかり、峰のみどりの
黒髪
(
くろかみ
)
にさしかざされた
装
(
よそおい
)
の、それが
久能谷
(
くのや
)
の
観音堂
(
かんおんどう
)
。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
当時、美術、絵画の天地に、気
昂
(
あが
)
り、意熱して、麦のごとく燃え、雲雀のごとく
翔
(
かけ
)
った、青雲社の同人は他にまた幾人か、すべておなじ
装
(
よそおい
)
をしたのであった。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
実家
(
さと
)
から附属の化粧料があるから、天のなせる麗質に、紅粉の
装
(
よそおい
)
をもってして、小遣が自由になる。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二人を前に、
銚子
(
ちょうし
)
を控えて、人交ぜもしなかった……その時お珊の
装
(
よそおい
)
は、また
立勝
(
たちまさ
)
って目覚しや。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上段の十畳、一点の
汚
(
よごれ
)
もない、月夜のような青畳、
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
ふッくりとある
蒲団
(
ふとん
)
に、あたかもその雲に乗ったるがごとく、
菫
(
すみれ
)
の中から抜けたような、
装
(
よそおい
)
を
凝
(
こら
)
した貴夫人一人。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
装
(
よそおい
)
は違った、が、幻の目にも、面影は、浦安の宮、石の
手水鉢
(
ちょうずばち
)
の稚児に、寸分のかわりはない。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
装
(
よそおい
)
は違つた、が、幻の目にも、
面影
(
おもかげ
)
は、
浦安
(
うらやす
)
の
宮
(
みや
)
、石の
手水鉢
(
ちょうずばち
)
の
稚児
(
ちご
)
に、寸分のかはりはない。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と思い案ずる目を
半
(
なか
)
ば閉じて、
屈託
(
くったく
)
らしく、
盲目
(
めくら
)
が
歎息
(
たんそく
)
をするように、ものあわれな
装
(
よそおい
)
して
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
装
(
よそおい
)
を凝らした貴婦人令嬢の顔へ、ヌッと突出し、べたり、ぐしゃッ、どろり、と塗る……と話す頃は、円髷が
腹筋
(
はらすじ
)
を横によるやら、娘が拝むようにのめって
俯向
(
うつむ
)
いて笑うやら。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたくし
)
たちこの玉のような
皆
(
みんな
)
の
膚
(
はだ
)
は、白い尾花の穂を散らした、山々の秋の
錦
(
にしき
)
が水に映ると
同
(
おんな
)
じに、こうと思えば、ついそれなりに、思うまま、身の
装
(
よそおい
)
の出来ます体でおりますものを。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その裲襠、帯、小袖の
綾
(
あや
)
、
錦
(
にしき
)
。腰元の
装
(
よそおい
)
の、藤、つつじ、あやめと咲きかさなった中に、きらきらと玉虫の、
金高蒔絵
(
きんだかまきえ
)
の
膳椀
(
ぜんわん
)
が透いて、
緞子
(
どんす
)
の
裀
(
しとね
)
が
大揚羽
(
おおあげは
)
の蝶のように対に並んだ。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
勿論、ここへお誓が、天女の
装
(
よそおい
)
で、雲に白足袋で出て来るような待遇では決してない。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、陸軍病院の慰安のための見物がえりの、四五十人の一行が、白い
装
(
よそおい
)
でよぎったが、霜の
使者
(
つかい
)
が通るようで、宵過ぎのうそ寒さの再び春に返ったのも、更に
寂然
(
せきぜん
)
としたのであった。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうだろう、題字は
颯爽
(
さっそう
)
として、輝かしい。行と、かなと、
珊瑚灑
(
さんごそそ
)
ぎ、
碧樹
(
へきじゅ
)
梳
(
くしけず
)
って、触るものも
自
(
おのず
)
から気を附けよう。厚紙の白さにまだ
汚点
(
しみ
)
のない、筆の姿は、雪に
珠琳
(
じゅりん
)
の
装
(
よそおい
)
であった。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
清らかな
衣
(
きもの
)
を着、
新
(
あらた
)
に
梳
(
くしけず
)
って、花に露の
点滴
(
したた
)
る
装
(
よそおい
)
して、馬に騎した姿は、かの国の花野の
丈
(
たけ
)
を、錦の山の懐に
抽
(
ぬ
)
く……
歩行
(
あるく
)
より、車より、
駕籠
(
かご
)
に乗ったより、一層
鮮麗
(
あざやか
)
なものだと思う。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けだし光は旦那方の持つ懐中電燈であった。が、その時の鳥旦那の
装
(
よそおい
)
は、杉の葉を、頭や、腰のまわりに結びつけた、
面
(
つら
)
まで青い、森の悪魔のように見えて、猟夫を息を引いて驚倒せしめた。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
如意自在
(
にょいじざい
)
心のまま、たちどころに身の
装
(
よそおい
)
の成る事を忘れていました。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鼓草
(
たんぽぽ
)
の花に浮べる
状
(
さま
)
、虚空にかかった
装
(
よそおい
)
である。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“装”の意味
《名詞》
(ソウ)装い。
(ソウ)書物の体裁。
(出典:Wiktionary)
装
常用漢字
小6
部首:⾐
12画
“装”を含む語句
扮装
服装
装束
装飾
身装
衣装
行装
旅装
装填
装置
偽装
盛装
黒装束
形装
仮装
装立
装幀
艤装
装上
装釘
...