花壇かだん)” の例文
けれど、そのときの自然しぜんと、いまの自然しぜんとどこにちがいがあろう。そうおもってふりくと、花壇かだんには平和へいわひかりちていました。
黒いちょうとお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
あまあがりや、風の次の日、そうでなくてもお天気のいい日に、畑の中や花壇かだんのかげでこんなようなさらさらさらさら云う声を聞きませんか。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
四隅よすみ花壇かだんがあって、ゆすらうめ、鉄線蓮てっせんれん、おんじ、あざみ、ルピナス、躑躅つつじ、いちはつ、などのようなものが植えてあった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ひいさまたちは、めいめい、花園のなかに、ちいさい花壇かだんをもっていて、そこでは、すき自由に、掘りかえすことも植えかえることもできました。
また、にも美しい草花や、おいしいくだものの木のうわっている、大きなすばらしい花壇かだんもありました。
そこは秋のけしきで花壇かだんのなかには、黄ぎく、しらぎくが咲き乱れて、ぷんといいかおりを立てました。
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
房枝は、外に見えるうつくしい花壇かだんにながめ入っていたので、ニーナの近づいたのを知らなかった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あなたの葵紋あおいもんまくのうちに、花壇かだんのように、りあがっていたお小姓こしょうとんぼぐみの一たいが、とんぼ模様もようそろいの小袖こそでをひるがえし、サッと試合場の一方に走りくずれてきて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまでもおもいだす、なつかしいみちは、合宿裏の花壇かだんにかこまれた鋪道ほどうのことです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
庭園には、きれいにりこまれた生垣いけがきや、あずまやや、池や、噴水ふんすいや、めずらしい大木や、短く刈りこんだ芝生しばふが見えます。その芝生には花壇かだんがあって、色とりどりの春の花が、きみだれています。
そのから、このはな生活せいかつは、一ぺんしたのでした。花壇かだんには、あかや、や、むらさきや、しろや、さまざまな色彩しきさいはなが、いっぱいにいていました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見れば、王子は、どことなく、海の底の小さな花壇かだんにある、あの大理石の像に似ているような気がします。
赤と青と黄、それから紫に桃色に水色に緑というような強烈な色彩の蝋紙ろうがみが、あたりに散ばっていた。何のことはない、陽春ようしゅん四月頃の花壇かだんの中に坐ったような光景だった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
向うのあおい花壇かだんから悪魔あくまが小さなかえるにばけて、ベートーベンの着たような青いフロックコートを羽織りそれに新月よりもけだかいばらむすめに仕立てた自分の弟子でしの手を引いて
ひのきとひなげし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
女ばかりはおびえがちな寮に、魁偉かいい優婆塞うばそくと美男の浪人が、果し合いの白刃を抜き交わしたので、老女や多くの侍女こしもとは唯あれあれと、一所ひとところに群れ寄って、廊下は時ならぬ花壇かだんとなる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、三にんの、おとうさんや、おかあさんはいないので、かえしてさらにあちらの花壇かだんのほうへいって、やすらかなねむりに、つこうとしました。
すももの花の国から (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところが、スカンポのほうは、死にたえるどころか、ふえにふえて、道という道、花壇かだんという花壇にまで、ひろがっていました。もう、どうしようもありません。
汽船の前には、美しい花壇かだんがあった。又汽船の後には道路があって、自動車がひっくりかえっていた。右舷うげんを見れば、町であった。左舷さげんを見ればこれも町であった。これは変だ。
ところが、ある勇吉ゆうきちは、にわくさをむしったり、肥料ひりょうをほどこしたりするうち、あやまって、花壇かだんのやまゆりを、ふみつけてしまいました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
小さなお姫さまたちは、お庭の中に、自分々々の小さい花壇かだんを持っていました。そこでは、自分の好きなように、土をほったり、お花を植えたりすることができました。
そして、一つおおきいほうを花壇かだんに、もう一つを、小高こだかくなっている、つつじのはえたところへ、うえたのであります。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは、お城の中でにぎやかにうたったり、踊ったりしているというのに、お姫さまだけは、たったひとりで、自分の小さな花壇かだんの中に、悲しみにしずんですわっていました。
はなは、をまわしていました。小鳥ことりは、ながあいだんで、その晩方ばんがた、にぎやかなまちいて、公園こうえんりると、はな花壇かだんのすみにえたのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえさんは、どうおもう。そんなにちょうがたくさんいて、どのたんぼにも、どの花壇かだんにも、いっぱいで、みつをうばかりでなくたまごみつけたとしたら。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
この花壇かだんにきて、自分じぶんのみすぼらしい、いじけた姿すがたが、ほとんどはいらないほど、きれいなはなあいだじっているのをかなしく、ずかしくかんじました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「うちの花壇かだんのが、いたからいってみましょうよ。」と、光子みつこさんは、きよをつれて、おにわました。
気にいらない鉛筆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このごろ毎日まいにちのように昼過ひるすぎになると、くろいちょうがにわ花壇かだんいているゆりのはなへやってきます。
黒いちょうとお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
公園こうえん花壇かだん霜枯しもがれがしていて、いまはあかいているはなもありませんでした。けれど、くろいやわらかなつちからは、来年らいねんさく草花くさばなが、もうぷつぷつとみどりいろあたませていたのです。
朝の公園 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、あねのほうのは、おともだちと公園こうえんへいって、みちあるいているゆめています。はるなので、いろいろの草花くさばなが、花壇かだんなかいています。そのはななどを、二人ふたりはなっています。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちいさなもんがあって、けると、二、三にん子供こども花壇かだんのところで、あそんでいました。みなみうみからかぜあたたかなせいか、もう、ヒヤシンスがき、すいせんや、フリージアなどがいていました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)