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臭
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にお
ふりがな文庫
“
臭
(
にお
)” の例文
彼等はその何処からでも、陸にある「
自家
(
うち
)
」の匂いをかぎ取ろうとした。乳臭い子供の匂いや、妻のムッとくる膚の
臭
(
にお
)
いを探がした。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
「名産だって東京にもそんなのは有りそうだぜ」と主人は一番大きな奴を一本取り上げて、鼻の先へ持って行って
臭
(
にお
)
いをかいで見る。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ははアん。じゃアいま先へ行った
輿轎
(
かご
)
は、やはりここの奉行だったのかい。……どうもそんな
臭
(
にお
)
いがと、思って
尾
(
つ
)
けて来たんだが」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
壁には油絵や、金縁の写真などが懸けられ、床には家具やピヤノが置いてあって、暖炉棚の下からは、燃え
滓
(
かす
)
や
煤
(
すす
)
の
臭
(
にお
)
いがぷんと来た。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「僕はそう思わない。こんなふうの国民なら、長くはつづくまい。もう腐った
臭
(
にお
)
いがしてるから。まだ他に何かあるに違いない。」
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
時々板前をやると見えて、どこか
腥
(
なまぐさ
)
い
臭
(
にお
)
いのするのも胸につかえるようであった。お庄は明け方までおちおち眠ることが出来なかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
どうも朝は、過ぎ去ったこと、もうせんの人たちの事が、いやに身近に、おタクワンの
臭
(
にお
)
いのように味気なく思い出されて、かなわない。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
やはり散らばっている型紙、あい変らずの虫よけ粉の
臭
(
にお
)
い、すみっこの欠けた例の肖像画。とはいえ変化は、やはりあったのだ。
嫁入り支度
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
糸蝋燭の光がとどくところだけはぼんやりと明るいが、それもせいぜい二三
間
(
げん
)
。前もうしろもまっ暗闇。埃くさい
臭
(
にお
)
いがムッと鼻を衝く。
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
室内の空気の
臭
(
にお
)
いが、すっかりちがってきた、薬品くさい。もちろん、それは
濾過層
(
ろかそう
)
を一杯にうずめている薬品の臭いであった。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
警視庁のスパイには往々意外の人があるという話から大杉もまたスパイであったように
臭
(
にお
)
わした或人の談話が某紙に載っておる。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
よく二人の仲が無事であった時分に私が手伝って西洋料理をこしらえて食べた時のパン粉やヘットの
臭
(
にお
)
いがして、戸棚の中に
溢
(
こぼ
)
れている。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
でも、こうして見ていると、まるで赤ん坊みてえに思えるだろう。だがお
前
(
めえ
)
は火薬の
臭
(
にお
)
いを嗅いだことがあるんだ、——そうだろ、船長?
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「うしろから、パッと、鼻と口をおさえられた。おそろしくいやな
臭
(
にお
)
いがしたと思うと、それっきり、なにもわからなくなってしまった。」
サーカスの怪人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、ふとんも
机
(
つくえ
)
も、
鎧
(
よろい
)
びつまでもここへもちこんできて、
馬糞
(
ばふん
)
の
臭
(
にお
)
いのプンプンする中に、平気で毎日毎日
寝起
(
ねお
)
きしていた。
三両清兵衛と名馬朝月
(新字新仮名)
/
安藤盛
(著)
雫
(
しずく
)
を切ると、雫まで
芬
(
ぷん
)
と
臭
(
にお
)
う。たとえば貴重なる香水の
薫
(
かおり
)
の一滴の散るように、洗えば洗うほど流せば流すほど香が広がる。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
車「
私
(
わし
)
だって元は百姓でがんすから、
肥
(
こい
)
の
臭
(
くさ
)
いのは知って居りやんすが、
此処
(
こゝ
)
は沼ばかりで
田畑
(
でんぱた
)
はねえから肥の
臭
(
にお
)
いはねえのだが、
酷
(
ひど
)
く臭う」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わたくしも驚いて門の外まで出て見ますと、狭い横町の入口には大勢の人が集まって騒いでおりまして、石炭酸の
臭
(
にお
)
いが眼にしみるようです。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私
(
わたし
)
は、わかい
牝牛
(
めうし
)
の
腎臓脂肪
(
じんぞうしぼう
)
へチーズを交ぜ、それを
陶器皿
(
とうきざら
)
に入れてとろ火で
煮
(
に
)
た。
金物
(
かなもの
)
の
臭
(
にお
)
いを
避
(
さ
)
けるために、中の
骨
(
ほね
)
を小刀がわりに使った。
動物物語 狼の王ロボ
(新字新仮名)
/
アーネスト・トンプソン・シートン
(著)
間もなく眼の前に
屹立
(
きった
)
っている長崎随一の支那貿易商、
福昌号
(
ふくしょうごう
)
の裏口に在る地下室の小窓から
臭
(
にお
)
って来ることがわかった。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
殆ど空無であるその心理状態を
強
(
し
)
いていえば、ただ「暗い」という一言で足りよう。目に見えぬものにも
臭
(
にお
)
いはあろう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
看守
(
かんしゅ
)
さえ
今日
(
きょう
)
は歩いていない。その中にただ薄ら寒い
防虫剤
(
ぼうちゅうざい
)
の
臭
(
にお
)
いばかり
漂
(
ただよ
)
っている。中村は室内を見渡した
後
(
のち
)
、深呼吸をするように体を伸ばした。
早春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
気のせいか、この路地には、トロ(精液)の
臭
(
にお
)
いとそれから消毒液の臭いが、むーんと立ちこめているみたいだった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
そこには、獣油や、南京袋の
臭
(
にお
)
いのような毛唐の体臭が残っていた。栗本は、強く、
扉
(
ドア
)
を突きのけて這入って行った。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
重そうに立ち昇って来るその煙は、いやな、硫黄臭い、息のつまりそうな
臭
(
にお
)
いがして、ペガッサスは鼻を鳴らし、ビレラフォンはくさめをしました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
廐
(
うまや
)
の
臭
(
にお
)
いや牛乳の臭いや、枯れ草の臭い、及び汗の臭いが
相和
(
あいか
)
して、百姓に特有な半人半畜の臭気を放っている。
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
僕は変に不愉快な
悪寒
(
さむけ
)
がしたので、これは空気がしめっているせいであろうと思った。諸君は海水で
湿
(
しけ
)
ている
船室
(
キャビン
)
の一種特別な
臭
(
にお
)
いを知っているであろう。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
邪魔の入ったのを
気取
(
けど
)
って女はそこに隠れていたのだ。嗅ぎ慣れた女の
臭
(
にお
)
いが鼻を襲ったと仁右衛門は思った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
但しその新しき輸入当初に於ては、さすが
尚
(
なお
)
西洋バタの
臭
(
にお
)
いが強く、原物そのままの直訳的のものであった。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
土の
臭
(
にお
)
いのする洞窟の、薄暗い灯の下で、皆不機嫌の眼を光らせて、暗号を引いていた。ときどき電信室の方から、取次が眠そうな眼をして電報を持って来た。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
振返
(
ふりかえ
)
ると
熱柿
(
じゅくし
)
みたいな
臭
(
にお
)
いをぷんぷんさせたN子です。「聞いたわよ、坂本さん、船のなかで女のひとと
凄
(
すご
)
かったんですッてねエ」「ああ」とぼくは素直です。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
頭のなかには奇妙なナオミの幻ばかりが浮かんで来て、それが時々おくびのように胸をむかつかせ、彼女の
臭
(
にお
)
いや、汗や、
脂
(
あぶら
)
が、始終むうッと鼻についている。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それと同時に房内の
一隅
(
いちぐう
)
の
排泄物
(
はいせつぶつ
)
が
醗酵
(
はっこう
)
しきって、
饐
(
す
)
えたような汗の
臭
(
にお
)
いにまじり合ってムッとした悪臭を放つ時など、太田は時折封筒を張る作業の手をとどめ
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
私は、見当もつかない
夜更
(
よふ
)
けの町へ出た。波と風の音がして、町中、
腥
(
なまぐさ
)
い
臭
(
にお
)
いが流れていた。
小満
(
しょうまん
)
の季節らしく、
三味線
(
しゃみせん
)
の音のようなものが遠くから聞えて来る。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
泣くのとも笑うのとも分からぬ声を振立ててわめく女の影法師が
障子
(
しょうじ
)
に映っている。外は夕闇がこめて、煙の
臭
(
にお
)
いとも土の臭いともわかちがたき香りが
淀
(
よど
)
んでいる。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
気持のわるい黄色の
臭
(
にお
)
う液体がこぼれてきて、それを避けようとして
鼠
(
ねずみ
)
が一匹近くの
溝
(
みぞ
)
へ逃げこんだ。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
異臭鼻を
撲
(
う
)
つ これはチベットのどこの寺に行ってもこういう
臭
(
にお
)
いがするので、とても日本人が始めて入った時分には鼻持ちのならぬ臭いであろうと思われたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
はちは
石炭
(
せきたん
)
の
臭
(
にお
)
いをかいだり、また
小
(
ちい
)
さな
口
(
くち
)
でなめてみたり、どこからきたかを
自分
(
じぶん
)
の
小
(
ちい
)
さな
感覚
(
かんかく
)
で
知
(
し
)
ろうとしました。しかし、それはわかるはずがなかったのです。
雪くる前の高原の話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
は
一壜
(
ひとびん
)
きりで、それも
怪
(
あや
)
しげな、
頸
(
くび
)
のところがふくれ返ったどす黒い
代物
(
しろもの
)
で、中身はプーンと
桃色
(
ももいろ
)
のペンキの
臭
(
にお
)
いがした。もっとも、誰一人それは飲まなかった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
その
臭
(
にお
)
いが、彼より先ににおって来る。彼の姿はまだ見えないのに、臭いはとっくに来ている。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
野菜の「すえ」た
臭
(
にお
)
いと、屋根の梁の鶏の巣から来る臭いが入りまじって気味悪く鼻をつく。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それはまあいいとして、この有尾人からは、
山羊
(
やぎ
)
くさいといわれる黒人の
臭
(
にお
)
いの、おそらく数倍かと思われるような
堪
(
たま
)
らない体臭が、むんむん湿熱にむれて発散されてくる。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その夜、
睡
(
ねむ
)
ろうとすると、
鼻腔
(
びこう
)
にものの
臭
(
にお
)
いがまだしつこく残っているのを彼は感じたが、たしかそれは今日の昼間、小使室で弁当を食べた時
嗅
(
か
)
いだものに
他
(
ほか
)
ならなかった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
いつも髪の毛を洗ったあとのような、いやな
臭
(
にお
)
いをさせていた。しかしいかにも気立てのやさしい、つつましそうな様子をしていた。そして一日中、英吉利語を勉強していた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「もし、皆様、火薬の
臭
(
にお
)
いが致しまする、このお部屋の中に
烟硝
(
えんしょう
)
の臭いが致しまする」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「いや野ら番ばかりァ酒が無えじゃやりきれねえナ。
彼
(
あの
)
臭
(
にお
)
いがな」と誰やらが云う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
臭
(
にお
)
いの跡づけが失われた。わたしは犬どもがピーターバラ・ヒルのうしろで吠えているのが、グリーン・マウンテンズの西の斜面で
喘
(
あえ
)
ぎ
喘
(
あえ
)
ぎのぼっているのが、聞こえるような気がする。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
期待した血なまぐさい
臭
(
にお
)
ひなんか、これつぱかしも残つてはゐませんでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
私は、その白い乳くさい
臭
(
にお
)
いのする肌をさわって、感傷的にさえなった。
灰色の記憶
(新字新仮名)
/
久坂葉子
(著)
元来やせてはいるし、顔色は青白いし、冷たいし、
硬
(
こわ
)
ばってるし、変な
臭
(
にお
)
いがするし、死んだところで大した変わりはないだろう。そこで僕はこう言ってやろう。——
爾
(
なんじ
)
地を裁く者よ思い知れ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
臭
常用漢字
中学
部首:⾃
9画
“臭”を含む語句
臭気
面倒臭
臭味
異臭
魚臭
臭氣
乳臭
惡臭
肥桶臭
水臭
脂臭
物臭
悪臭
体臭
汗臭
黴臭
胡散臭
生臭
乳臭児
土臭
...