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腑甲斐
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ふがい
ふりがな文庫
“
腑甲斐
(
ふがい
)” の例文
その度毎に、神尾は自分を歯痒がったり、
腑甲斐
(
ふがい
)
ないと自奮してみたりする気になるが、さて面と向うと、どうにもならないのが
癪
(
しゃく
)
だ。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
吉兵衛の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさばかりではなく、染物屋などにとっては運の悪い
時世
(
じせい
)
で、天保十三年の水野の改革で着物の新織新型、羽二重、縮緬
顎十郎捕物帳:18 永代経
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「何んの、——拙者は天下無祿の浪人者、
土岐亥太郎
(
ときいたろう
)
と申す。山中にて賊に逢い、
腑甲斐
(
ふがい
)
なくも衣類両刀まで奪い盗られてござるが——」
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「朱王房のことばも、あまり過激すぎる。そんなに
腑甲斐
(
ふがい
)
のない叡山なら、自分から、さっさと山を下りたらいいじゃないか」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後
(
あと
)
で
神
(
かみ
)
さまから
伺
(
うかが
)
えば、
私
(
わたくし
)
はそれから十
年
(
ねん
)
近
(
ちか
)
くも
眠
(
ねむ
)
っていたとのことで、
自分
(
じぶん
)
ながらわが
身
(
み
)
の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさに
呆
(
あき
)
れたことでございました……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
君江はどうして昨夜はあんな矢田のような
碌
(
ろく
)
でもない男の言う事をきく気になったのだろうと、自分ながらその
腑甲斐
(
ふがい
)
なさに
厭
(
いや
)
な心持がした。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
美こそ彼をささえていた唯一のものであり、彼にとって一切は美の次元から照射されてはじめて
腑甲斐
(
ふがい
)
あるものとなった。
(私はさきごろ)
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
果
(
はて
)
は
腑甲斐
(
ふがい
)
なき此身
惜
(
おし
)
からずエヽ木曾川の
逆巻
(
さかまく
)
水に命を洗ってお辰見ざりし前に生れかわりたしと血相
変
(
かわ
)
る
夜半
(
よわ
)
もありし。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼は自分の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさに呆れるほどだった。市街のここかしこに立つ老いた
楡
(
にれ
)
の樹を見るごとに、彼はそれによって自分の心を励まそうとした。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
身を犠牲にして
天降
(
あまくだ
)
り式の決定に盲従するより外はなかったが、それにしても父のことをそう無念にも感じていないらしい兄を
腑甲斐
(
ふがい
)
なく思った。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
予はここに於て終に十年来の
素志
(
そし
)
を達する能わずして、下山の
止
(
や
)
むべからざるに至りたれば、
腑甲斐
(
ふがい
)
なくも一行に
扶
(
たす
)
けられて、吹雪の中を下山せり
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
(寂しき微笑)わたしのように
腑甲斐
(
ふがい
)
ないものは、大慈大悲の
観世音菩薩
(
かんぜおんぼさつ
)
も、お見放しなすったものかも知れません。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あるいは恐る、日ごろ心
猛
(
たけ
)
かりし父の、地下より
跳
(
おど
)
り
出
(
い
)
でて我を
笞
(
むちう
)
つこと三百、声を励まして我が
意気地
(
いくじ
)
なきを責め、わが
腑甲斐
(
ふがい
)
なきを
懲
(
こら
)
し給わんか。
父の墓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何のために? それは私の疲労が知っている。私は
腑甲斐
(
ふがい
)
ない一人の私を、人里離れた山中へ遺棄してしまったことに、気味のいい嘲笑を感じていた。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
綱もすなわち
幽霊
(
れこ
)
には恐れる。といわれて得右衛門大きに弱り、このまま帰らんは余り
腑甲斐
(
ふがい
)
無し、
何卒
(
なにとぞ
)
して引張り行かん。はて好い工夫はおっとある。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
岸本の
頭脳
(
あたま
)
の
内
(
なか
)
はシーンとして来た。二度結ばれるように成った節子との関係は彼自身の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさを思わせた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして、一番若い、一番無智無能な自分が何にも出来ずに家の中でぐず/\してゐるのだ、と思ふと、何とも云へない情なさ
腑甲斐
(
ふがい
)
なさを感ずるのであつた。
乞食の名誉
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
眠りこけているのでなかったら、どうして人々はかれらの一日をかくも
腑甲斐
(
ふがい
)
ないものにするのだろうか? かれらはそれほどへまな打算家ではないはずだ。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
彼は、その場合にそれほど大切な品物をぼんやり忘れてしまう自分の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさがしみじみと情なかった。
出世
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この、お別れの言葉を、姉さんに直接言ってあげるほどの勇気が僕に無いのは、
腑甲斐
(
ふがい
)
なく、悲しい事だ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
トルストイの妻は
其
(
その
)
夫
(
おっと
)
をルーブルにして置かねばならぬ程貧しい者でしょう乎。トルストイの子女は、其父を食わねば生きられぬ
程
(
ほど
)
腑甲斐
(
ふがい
)
ないものでしょう乎。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
代助は知らず知らずの間に、安全にして無能力な方針を取って、平岡に接していた事を
腑甲斐
(
ふがい
)
なく思った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし慧鶴は
兼
(
かね
)
て覚悟のことでもあるし、また、ともすれば清水のことが想い出される
腑甲斐
(
ふがい
)
ない心を何かの強い
刺戟
(
しげき
)
で眼の前の境遇に釘付けにして
貰
(
もら
)
うことは
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
船長は直江津の
艀船
(
はしけ
)
の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさを、冷やかす意味において、水火夫全体へ向かって、当番を除いたほかの者は、ボートと
伝馬
(
てんま
)
とをおろして、練習していいという
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
父と私とは気象の上で、いちじるしく相違しておりまして、父は私を
腑甲斐
(
ふがい
)
ない者に思い、私は父を
権謀
(
けんぼう
)
に過ぎた、鋭さ余る性質として、好もしく思っておりませぬ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
してみると和女の身に取ってこれほどありがたい幸福な事はないでないか、世中に何が役に立たんといって何事にも自分の責任を遁れたがる人位
腑甲斐
(
ふがい
)
ないものはない
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それをなんで自分が気にするのか。なんと云う
腑甲斐
(
ふがい
)
ない事だろうと思うと、憤慨に
堪
(
た
)
えない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私はそうした
腑甲斐
(
ふがい
)
ないような自分に照れ、池の彼方に「びっくりぜんざい」と「大善」のネオンが河にかかった仕掛花火のように大きく美しく輝いているのに眼をやって
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
冷たい涙が
腑甲斐
(
ふがい
)
なく流れて、泣くまいと思ってもせぐりあげる涙をどうする事も出来ない。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
けれどこのまま帰るのは——目的をはたさずに帰るのは
腑甲斐
(
ふがい
)
ないようにも思われる。せっかくあの長い暑い二里の土手を歩いて来て、無意味に帰って行くのもばかばかしい。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
……しかし夫人が
折角
(
せっかく
)
その肯定するところまで乗りだしながら、愛の肯定は即ち情死であるというより以上の思案を
見出
(
みいだ
)
されなかったことは何より残念な、
腑甲斐
(
ふがい
)
ないことでした。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一般の生徒の中には、委員会の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさを真剣になって怒っているものもあった。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
人間て実に
腑甲斐
(
ふがい
)
ないもんですね。多寡がこんな小さな島じゃないか、端から端まで歩いたって知れたものです。又僕達の頭のすぐ上には、太陽が輝いて、家もあれば人もいるんだ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
腑甲斐
(
ふがい
)
ないことに、犯人の神経繊維の上を歩いていたものであることは確かだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
とうとう
喧嘩
(
けんか
)
をした。ドリスは喧嘩が大嫌いである。喧嘩で、一たび失ったこの女の歓心を取り戻すことは出来ない。それはポルジイにも分かっているから、我ながら
腑甲斐
(
ふがい
)
なく思う。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
おせい様、わたしは、おまえさまの
腑甲斐
(
ふがい
)
ないのが、歯がゆくてたまりませんよ。とにかく、あしたの朝早く、伊万里のほうへ行きますからね、また帰ったら、寄せていただきますよ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そう思うと、そんな事は出来ない、いつまで立っても出来ないと、つくづく自分の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさを感ぜずにはいられない。そんならどうしたら好かろう。その日は
厭
(
いや
)
でも来るに違いない。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
その
度毎
(
たびごと
)
に、おせんの
首
(
くび
)
は
横
(
よこ
)
に
振
(
ふ
)
られて、あったら
玉
(
たま
)
の
輿
(
こし
)
に
乗
(
の
)
りそこねるかと
人々
(
ひとびと
)
を
惜
(
お
)
しがらせて
来
(
き
)
た
腑甲斐
(
ふがい
)
なさ、しかも
胸
(
むね
)
に
秘
(
ひ
)
めた
菊之丞
(
きくのじょう
)
への
切
(
せつ
)
なる
思
(
おも
)
いを、
知
(
し
)
る
人
(
ひと
)
とては
一人
(
ひとり
)
もなかった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
妾
(
しょう
)
をして常にこの心を失わざらしめば、
不束
(
ふつつか
)
ながらも大きなる過失は、なかりしならんに、
志
(
こころざし
)
薄く行い弱くして、
竜頭蛇尾
(
りゅうとうだび
)
に終りたること、わが身ながら
腑甲斐
(
ふがい
)
なくて、
口惜
(
くちお
)
しさの限り知られず。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
彼は毎日のように支倉からの嘲弄の手紙を受取って、彼の行方を突留ることの出来ない
腑甲斐
(
ふがい
)
なさに歯ぎしりをしながら、方々を駆け廻って、それからそれへと溯って、支倉の昔の跡を嗅ぎ廻った。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
僕は旅芸者の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさをつくづく思いやったのである。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
掻きむしらるゝの思い、武士の家に生れながら
腑甲斐
(
ふがい
)
なし
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
腑甲斐
(
ふがい
)
ない話と言わねばならぬ。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「兄さん、後生だから、そんな事は
止
(
よ
)
して下さい。捨てられたのは私の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさで、お駒に少しも悪いことはありません」
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「なるほど、この
腑甲斐
(
ふがい
)
ない自分というものの持って行き場は、身投げあたりが相当だろう、腹を切るという
代物
(
しろもの
)
ではない」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
則重がおめ/\捕われの身となって生き耻を
曝
(
さら
)
しながら、敵の城中に
憂
(
う
)
き年月を送っていた心事については、あまり
腑甲斐
(
ふがい
)
なく思われるけれども
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
吾ながら、
腑甲斐
(
ふがい
)
なしとは思うが、ここ
千載一遇
(
せんざいいちぐう
)
の大事と思えば、新九郎の五体はおのずからブルッと
顫
(
ふる
)
えてやまぬ。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お父様、あんな男に起訴されて、泣寝入りになさるような、
腑甲斐
(
ふがい
)
ないことをして下さいますな。飽くまでも
戦
(
たたか
)
って、相手の悪意を
懲
(
こら
)
しめてやって下さいませ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
時には自分で
腑甲斐
(
ふがい
)
無いと思えば思うほど「ええ、何もかもおしまいだ、姫と
駆落
(
かけおち
)
でもしてしまおう」
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は彼自身の
腑甲斐
(
ふがい
)
なさに驚きながら、いつか顔中に
笑
(
えみ
)
を浮べて、彼等の近づくのを待ちうけていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
腑
漢検1級
部首:⾁
12画
甲
常用漢字
中学
部首:⽥
5画
斐
漢検準1級
部首:⽂
12画
“腑”で始まる語句
腑
腑抜
腑分
腑効
腑伏
腑分図
腑脱
腑抜声
腑分指示書