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ほんもの
ふりがな文庫
“
真物
(
ほんもの
)” の例文
旧字:
眞物
冥府の役人からこういう
差紙
(
さしがみ
)
を貰って来たのだぞといって、眼のさきへ突き付けたら、先生もおそらく
真物
(
ほんもの
)
だと思って驚くでしょう。
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
真物
(
ほんもの
)
の山水のなかへ
浸
(
ひた
)
つて、自分も景物の一つになつて暮らす気持は、雪舟の名幅を見てるよりも、ずつと気が利いてるからな。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「わしは
真物
(
ほんもの
)
だ。——源八、わしはそこへ跳び降りようと思うのだが、おまえは、降りて来たらわしを真二つに斬ろうとしているな」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「写真では彼の玩具の鳥居が
真物
(
ほんもの
)
に見えるから余程巨大な岩だと思い込む。
比例尺
(
スケール
)
を普通の鳥居の
現寸大
(
アクチュアルサイズ
)
と考えさせるところが手だ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
今も昔も変らないのが
骨董
(
こっとう
)
の夜店であるが、銀座の夜店の骨董に
真物
(
ほんもの
)
なしといわれるまでに、イミテーション物が多いのは事実である。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
▼ もっと見る
第一に、この犯人は、機密書類の『
写し
(
コピー
)
』を取って、
真物
(
ほんもの
)
を返す積りで居るらしい。『暫らく借りて行く』と書いたのはその為だ。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「助さん、何を言うんだよ。お前さんこそ
真物
(
ほんもの
)
はちゃあんと隠しておいて独占めしようっていうんだろう。大方そんな量見だろうさ。」
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
世の中にはこの種類最も多けれども、あまり巧みにできたる分は、偽怪の化けの皮を現さずに、
真物
(
ほんもの
)
となりて伝わりております。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
考えてみると
似非物
(
にせもの
)
は
真物
(
ほんもの
)
のザックバランに優ることはない。そこでいっそのこと、辮子を廃し、洋服を
著
(
き
)
て、大手を振って往来を歩いた。
頭髪の故事
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
しかし、トム
吉
(
きち
)
が、
真物
(
ほんもの
)
どおりの
相場
(
そうば
)
で、
正直
(
しょうじき
)
に
買
(
か
)
ったと
知
(
し
)
ると、たちまち、
主人
(
しゅじん
)
の
顔
(
かお
)
は
不機嫌
(
ふきげん
)
に
変
(
か
)
わって、
怒
(
おこ
)
り
出
(
だ
)
しました。
トム吉と宝石
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
あとから聞きましたら、それは
真物
(
ほんもの
)
の「縫い
潰
(
つぶ
)
し」といって、今の人が誰も作り方を知らない昔の刺繍だったのだそうです。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「ちぇッ」彼は忌々しそうに舌打した「だが器用に出来てるなあ。俺は
真物
(
ほんもの
)
とばかり思っていた」そして彼は鉢を調べた。
赤い手
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ナニ
最早
(
もう
)
大概吐き尽したんですよ、
貴様
(
あなた
)
は我々俗物党と違がって
真物
(
ほんもの
)
なんだから、
幸
(
さいわい
)
貴様
(
あなた
)
のを聞きましょう、ね諸君!」
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
昔
罪人
(
ざいにん
)
を
石山
(
いしやま
)
の絶頂から生き
乍
(
なが
)
ら棄てた断崖も名所として
遺
(
のこ
)
つて居る
相
(
さう
)
だ。釈迦の歯の
真物
(
ほんもの
)
は異教徒に焼かれて今のは象牙で偽作した物だと聞いた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
千利久は茶器の新旧可否を鑑定して
分限者
(
ぶげんしゃ
)
になった男だが、
親疎異同
(
しんそいどう
)
によって、
贋物
(
にせもの
)
を
真物
(
ほんもの
)
、
新
(
しん
)
を
古
(
こ
)
と言い張って、よく人を欺いたということである。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大きい方も西瓜を除けばザボンかパインアップルであろう。椰子の実も大きいが
真物
(
ほんもの
)
を見た事がないから知らん。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
奴
(
やっこ
)
さん、宮岡警部に写真
酷似
(
そっくり
)
に変装してやがった。二人宮岡警部が出来ちゃって、どっちが
真物
(
ほんもの
)
だか分らなかった。そのために遂々捕え損ったんだそうだよ
黒猫十三
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
ただマイダス王も、この時ばかりは、こんな手の込んだ、高価な魚の模型よりも、
真物
(
ほんもの
)
の川鱒がお皿に乗っていた方がどんなにいいか知れないと思いました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
こいつだけが
真物
(
ほんもの
)
だ、と言はなければならないやうな、のつぴきならない力で迫つてくるものがあるね。かりに愛や憎しみや嫉妬といふものを挙げてをかう。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
伊「師匠、
彼
(
あ
)
れは
葮簀張
(
よしずっぱり
)
の茶見世に居た道具屋のハタ師が持っていたんだが、
彼
(
あれ
)
が
真物
(
ほんもの
)
なら
強気
(
ごうき
)
と儲かるぜ」
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
天井にへばりついていたために、下からは本当の蠅としか見えなかったのだ。だが誰が天井にへばりついている一匹の蠅を、
真物
(
ほんもの
)
か
偽物
(
にせもの
)
かと疑うものがあろうか。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
扱いだけじゃないんだ、僕らを
真物
(
ほんもの
)
の泥棒猫か、もっと適切にいえば、去勢した馬車馬と考えてるんだ。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
車を横に押し
親父
(
おやじ
)
を勘当しても女房に持つ覚悟
極
(
き
)
めて
目出度
(
めでたく
)
婚礼して見ると自分の
妄像
(
もうぞう
)
ほど
真物
(
ほんもの
)
は面白からず、
領脚
(
えりあし
)
が
坊主
(
ぼうず
)
で、乳の下に焼芋の
焦
(
こげ
)
た
様
(
よう
)
の
痣
(
あざ
)
あらわれ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
夫から森主水の繩を解いて遣ると彼は至急に運動せねば可けぬとて、其の夜の中から昨日へ掛け一生懸命に奔走して、其の反証が全く
真物
(
ほんもの
)
で有る事を夫々突き留め
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
老獪
(
ろうかい
)
なA——氏は私達の計画に
誑
(
たぶらか
)
されはしたが、
尚
(
なお
)
幾分の疑を抱いて一方木村探偵に相談すると共に、上下に一枚
宛
(
ずつ
)
真物
(
ほんもの
)
の百円紙幣を挟んだ紙束を私に呉れたのだった。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
別に何んにもありませんので、
親仁殿
(
おやじどの
)
は
惜気
(
おしげ
)
もなく
打覆
(
ぶっかえ
)
して、もう
一箇
(
ひとつ
)
あった、それも甕で、奥の方へ
縦
(
たて
)
に二ツ並んでいたと申します——さあ、この方が
真物
(
ほんもの
)
でござった。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
中
(
うち
)
で臼川のが一番劣り候。あれは少々イカサマの分子加わり居候。他は皆
真物
(
ほんもの
)
に候。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ヹルレーヌの認めて最も
真物
(
ほんもの
)
の詩人となした五人の詩人中に加へられてゐるのである。
デボルド―ヷルモオル
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
ただ一枚の板で
真物
(
ほんもの
)
同様の色彩が写されるというのがこの種板の優れた特色である。
天然色写真新法
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
三色版で変な機械的なよくある図でなしに、みな
真物
(
ほんもの
)
をうつしたんですからね。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「実に面白い、帽子が二個ある……一個は我々の唯一の証拠であった
真物
(
ほんもの
)
で、馭者の頭に乗って飛んでいった他の一個は偽物で、それが君の手にある。やあ!こいつは一杯喰わされたね。」
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
それから、この実験に用いた
真物
(
ほんもの
)
の環も、王立協会になお保存されてある。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
去年は月に十日
宛
(
ずつ
)
きまった作男を入れたが、美的百姓と
真物
(
ほんもの
)
の百姓とは
反
(
そ
)
りが合わぬ所から半歳足らずで
解雇
(
かいこ
)
してしまい、時々近所の人を傭ったり、毎日仕事に来る片眼のおかみを使って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その中の一枚を拾い取って見ると、疑う方なき正徳判の
真物
(
ほんもの
)
……
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
聖
(
サン
)
モリッツは
贋
(
にせ
)
と
真物
(
ほんもの
)
の
振酒器
(
ミックサア
)
なのだ。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「
真物
(
ほんもの
)
じゃあございませんねえ……」
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
狸
(
たぬき
)
が
真物
(
ほんもの
)
になって、ツイ、うとうととした平次、ガバと飛起きて行って見ると、お静は流し元に
崩折
(
くずお
)
れて、
顳顬
(
こめかみ
)
を押えております。
銭形平次捕物控:019 永楽銭の謎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「野郎。——よくもおれの名を
騙
(
かた
)
って、しかもおれの故郷で、
追剥
(
おいは
)
ぎなどしていやがったな。さあ、
偽名代
(
かたりだい
)
を支払え、
真物
(
ほんもの
)
のおれ様へ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あの日本一太郎を
真物
(
ほんもの
)
の相良寛十郎とは知らずに、すっかり
贋
(
にせ
)
ものを仕立てた気で出してよこしたのだから、笑わせるじゃあございませんか」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
右
(
みぎ
)
の
方
(
ほう
)
に
置
(
お
)
きましたのは、
真物
(
ほんもの
)
で、
左
(
ひだり
)
の
方
(
ほう
)
に
置
(
お
)
きましたのは
贋物
(
にせもの
)
であります。」と、おじいさんは、
申
(
もう
)
しあげました。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
していても子供がもう四人出来たぜ。これ丈けは模擬じゃない。
真物
(
ほんもの
)
の証拠に一番小さいのが一昨日から病気になって模擬看護婦に来て貰っている
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
鯨はとどこおりなく由兵衛の手に渡って、十三日からいよいよ奥山の観世物小屋に
晒
(
さら
)
されることになったが、これはインチキでなく、確かに
真物
(
ほんもの
)
だ。
虎
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或
(
あるい
)
は呉一郎と瓜二つなのを利用して、
真物
(
ほんもの
)
の呉一郎に覚られないように絡み合って、奇抜巧妙な二人一役を演じながら
所在
(
ありか
)
を
晦
(
くら
)
ましていたものかも知れない。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
寛蓮
巧
(
たくみ
)
に帝の御いたづらの裏をかき、かねて別の枕を用意しておいて井戸へ投げこみ、自分はそつと引返してまんまと
真物
(
ほんもの
)
は我家へ持帰つてしまつたのである。
醍醐の里
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
これは博多の神屋宗湛から借りた
真壺
(
まつぼ
)
だ。よく似せてあるが、呂宋ではない。
真物
(
ほんもの
)
の
真壺
(
まつぼ
)
は、もうすこし茶の色が深く、いちめんに鶉斑が出て、
揚底
(
あげぞこ
)
になっている。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
あゝ
彼
(
あ
)
の人は双児のようだと申しますから、
真物
(
ほんもの
)
の双児は似る筈ではございますが、男と女のお印が違っているばかり、
一寸
(
ちょっと
)
見ると
何方
(
どちら
)
が何方かさっぱり分りかねるくらい
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
捕ったのは
真物
(
ほんもの
)
の犯人だったのか、あるいは義賊と云われるほどの人ですから、自分の身代りに斬首される人間まで出て来ては申訳ないという考えから善心に立ち還ったものか
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
真物
(
ほんもの
)
かにせ物か知らないが、名に聞こえた五本の刀、ズラリと並んだものである。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その女用文章の中の
挿画
(
さしえ
)
が
真物
(
ほんもの
)
だか、真物が絵なんだか分らないくらいだった。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君の来るのを待っていた。どうだい、うまいだろう。しかし
真物
(
ほんもの
)
のマッシバン博士はちゃんとあるんだよ。何ならお目に掛けてもいいよ。どうだい、一緒に俺の自動車で帰らないかい?」
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
“真物”の意味
《名詞》
偽物でない本物。
(出典:Wiktionary)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
“真”で始まる語句
真
真似
真面目
真実
真直
真中
真紅
真暗
真赤
真鍮