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癇癖
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かんぺき
ふりがな文庫
“
癇癖
(
かんぺき
)” の例文
癇癖
(
かんぺき
)
の強い、とても残忍な性質の家老があって、人を殺すことなぞ、虫ケラ一匹ひねり
潰
(
つぶ
)
すほどにも感じてはいなかったというのです。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
世間には往々読まざる書物をれいれいと
殊更
(
ことさら
)
人の見る処に
飾立
(
かざりた
)
てて置く人さえあるのに、これはまた何という一風変った
癇癖
(
かんぺき
)
であろう。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
駒田紋太夫
(
こまだもんだゆう
)
は
癇癖
(
かんぺき
)
の強い理屈好きな老人であるが、酒がはいってるときはものわかりのよい人情家になる。そのときも程よく酔っていた。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
経之はなお手をあげようとした時、突然、
癇癖
(
かんぺき
)
に逆上した定明はやかたに飛びこむと、
小太刀
(
こだち
)
を携えて素足で庭石の上におりた。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
特
(
こと
)
に
癇癖
(
かんぺき
)
荒気
(
あらき
)
の大将というので、月卿雲客も怖れかつ
諂諛
(
てんゆ
)
して、あたかも
古
(
いにしえ
)
の木曾
義仲
(
よしなか
)
の都入りに出逢ったようなさまであった。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
酒もつよいが、
癇癖
(
かんぺき
)
もなお強いらしい。もっと強いのは、この男の腕ぶしであって、吉岡の次男坊といえば世間の通り者だった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
癇癖
(
かんぺき
)
の強い兄である。こんな場合は、目前の、間抜けた弟の一挙手一投足、ことごとくが気にいらなくなってしまうのである。
一灯
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
豊かの頬、二重にくくれた頤、本来の老武士の人相は、円満であり寛容であるのに、
額
(
ひたい
)
を
癇癖
(
かんぺき
)
の筋でうねらせ、眼を怒りに血ばしらせている。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いつもの
癇癖
(
かんぺき
)
がつのるようすだから、お側の者は、どうしたことかとサッパリわけが解らない……鳴りをしずめています。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そう思って見ると、
眉間
(
みけん
)
の少し下、
鼻梁
(
びりょう
)
の両側に静脈が青く透いていたりして、いかにも
癇癖
(
かんぺき
)
の強そうな相をしている。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自分はこの影と稲妻とを
綴
(
つづ
)
り合せて、もしや兄がこの
間中
(
あいだじゅう
)
癇癖
(
かんぺき
)
の
嵩
(
こう
)
じたあげく、嫂に対して今までにない手荒な事でもしたのではなかろうかと考えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
などとさゝやく言葉がちら/\若い侍の耳に入るから、グッと込み上げ、
癇癖
(
かんぺき
)
に
障
(
さわ
)
り、
満面
(
まんめん
)
朱
(
しゅ
)
を注いだる如くになり、額に青筋を
顕
(
あら
)
わし、きっと詰め寄り
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
こめかみにいつも浮んでゐる
癇癖
(
かんぺき
)
の筋、
炯々
(
けいけい
)
といふよりは寧ろ冷徹な眼光、とほりのいい幅のひろい声音、
独往無礙
(
どくおうむげ
)
なその
濶歩
(
かっぽ
)
ぶり、——小幡氏の話では
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
現実的の精力を
取籠
(
とりこ
)
められて行く人にありがちな、何となく世間に対しては
臆病
(
おくびょう
)
であり
乍
(
なが
)
ら、自己の好みに対しては
一克
(
いっこく
)
な
癇癖
(
かんぺき
)
のようなものを持っていた。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ところで、ロジオン・ロマーヌイチ、あなたは生まれつきどうもあまり
癇癖
(
かんぺき
)
が強くていらっしゃる。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その時はもう何時の間にか、兄の
癇癖
(
かんぺき
)
の強いことも忘れてしまつたのでございます。が、まだ挙げた手を下さない中に、兄はわたしの
横鬢
(
よこびん
)
へぴしやりと平手を飛ばせました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三島の社の放し
鰻
(
うなぎ
)
を見るやうに、ぬらりくらりと取止めのないことばかり申上げてゐたら、御
癇癖
(
かんぺき
)
がいよ/\募らうほどに、こなたも職人冥利、いつの頃までと日を限つて
修禅寺物語
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
十分ばかり後、千種は夫人の素晴らしい魅力と
癇癖
(
かんぺき
)
から
遁
(
のが
)
れて、家の外へ飛出しました。
悪魔の顔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
かくばかり悠々閑々たる渡し舟の船頭のスロモぶりに
堪忍
(
かんにん
)
がなり難く、堪忍がなり難いと共に、その爆発した
癇癖
(
かんぺき
)
を、直線的に決行するだけの盲動力を持った男であるということだけは
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ふたたび何かの機会がありさえすれば、ますますひどく
疳癪
(
かんしゃく
)
を破裂さした。その極端な
癇癖
(
かんぺき
)
は、年とともにつのってきて、ついに彼の地位を困難ならしめた。彼はみずからそれに気付いた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
難関あるべしとは
期
(
ご
)
しながら思いしよりもはげしき抵抗に出会いし母は、例の
癇癖
(
かんぺき
)
のむらむらと
胸先
(
むなさき
)
にこみあげて、額のあたり筋立ち、こめかみ
顫
(
うご
)
き、煙管持つ手のわなわなと震わるるを
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
わたしは度を失ひながら、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
茶の間に上げた。「どうしてこんなに遅く来た? 何かあつたのか?」かう
訊
(
たづ
)
ねても、無感覚に黙つてゐる。わたしの
癇癖
(
かんぺき
)
の突発を恐れてゐる事が感ぜられた。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
ご三男様は
癇癖
(
かんぺき
)
がお強い。正三君は君命もだしがたく立ち上がった。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それが彼の性来の
癇癖
(
かんぺき
)
にきつく
障
(
さわ
)
ったらしい。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「聞けっ、
玄蕃
(
げんば
)
」語気に
癇癖
(
かんぺき
)
がほとばしっている。こういう癇癖は、戦いがあれば戦場で散じてしまうだろうが、もう世の中は泰平だった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
盗賊の道の附入りということを現在には為したのなれど、
癇癖
(
かんぺき
)
強くて
正
(
まさ
)
しく意地を張りそうにも見え、すべて何とも推量に余る人品であった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
が、恐ろしく
癇癖
(
かんぺき
)
が強いに相違ない。膝に構えた両手が
細
(
こま
)
かく顫えて、頭巾から窺いている鋭い眼も赤く濁っている。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
生真面目で、
癇癖
(
かんぺき
)
の強い兄を、私はこわくて仕様がないのだ。但馬守だの何だの、そんな
洒落
(
しゃれ
)
どころでは無いのだ。
帰去来
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼の
癇癖
(
かんぺき
)
は彼の身辺を
囲繞
(
いにょう
)
して無遠慮に起る音響を無心に聞き流して著作に
耽
(
ふけ
)
るの余裕を与えなかったと見える。
カーライル博物館
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
色白のふっくらした顔が酔いのために紅く
火照
(
ほて
)
っていて、
眉
(
まゆ
)
の附け根をとき/″\
癇癖
(
かんぺき
)
が強そうにふるわせるくせはあるけれども、笑うとひどく
愛嬌
(
あいきょう
)
があって
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一瞬ちらっと
狼狽
(
ろうばい
)
の色が頬を
掠
(
かす
)
めたが、それを掩い隠すように妻は大急ぎで叫んだ。たちまち
癇癖
(
かんぺき
)
が顔一杯に現れて、美しい顔は凄まじいまでに
蒼白
(
まっさお
)
になった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
痩せた肉の薄い躯つきで、おもながな顔に
尖
(
とが
)
った高い鼻と、両方から迫った濃い眉毛と、するどく光る大きな眼とが、いかにも
癇癖
(
かんぺき
)
の強い性格をあらわしている。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これは彼女もよく知つてゐる、甥の時たまの激しい
癇癖
(
かんぺき
)
の発作の徴しであつた。して見れば、彼が松原にかくれたのは、何か只事でない昂奮を抑へるためなのである。
垂水
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
殿様は上品で立派な男ぶりではあるが、これも
癇癖
(
かんぺき
)
の強そうな鋭い眼を光らせている。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
よくよく問い
質
(
ただ
)
して見ると、疑わしい事ばかりでしたから、
癇癖
(
かんぺき
)
の強い日錚和尚は、ほとんど腕力を振わないばかりに、さんざん毒舌を加えた
揚句
(
あげく
)
、即座に追い払ってしまいました。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
物言ひが少し
吃
(
ども
)
つて、額に靜脈のうねるのは、並々ならぬ
癇癖
(
かんぺき
)
の證據でもあります。
銭形平次捕物控:195 若党の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
こう
癇癖
(
かんぺき
)
に云ったのは、やっと前髪を取ったばかりの、寺侍の戸島粂之介であった。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と云ったぎり、ぐいと
癇癖
(
かんぺき
)
に障りました、これが奧州屋新助の大難と相成ります。
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
学者にして
斯
(
か
)
くの如き性行を有するものは往々誤って
辺幅
(
へんぷく
)
を
修
(
おさむ
)
るものと見なされやすい。毅堂はまた甚しく
癇癖
(
かんぺき
)
の強い人であったので、
動
(
やや
)
もすると家人に対しても温辞を
闕
(
か
)
くことがあった。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さすがの
癇癖
(
かんぺき
)
おやぢも
我
(
が
)
を折つたかと意外に人が集つて来た。恥をかかせてやつたので怒つて居るといふ
噂
(
うわさ
)
の若い儒者まで機嫌よく
挨拶
(
あいさつ
)
に来た。役に立たないやうなものをたくさん人が
呉
(
く
)
れた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
お袖は、自分の体へ
纏
(
まつわ
)
ってくる男の手を、心にもなく、
癇癖
(
かんぺき
)
に振り払いながら、いってもいってもまだ罵り足らないように
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
呼吸して生きていることに疲れて、窓から顔を出すと、隣りの宿の娘さんは、部屋のカアテンを
颯
(
さ
)
っと
癇癖
(
かんぺき
)
らしく閉めて、私の視線を切断することさえあった。
俗天使
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
惣七の
癇癖
(
かんぺき
)
らしい。眼の不自由な人のつねで、指さきの感触が発達している。いいながら、畳をなでた。風が土砂を運んできてざらざらしている。顔をしかめた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
おそらくこのままでは済まないだろう、わがままで
癇癖
(
かんぺき
)
の強い性質のようだ。必ずまたなにか仕掛けて来るにちがいない、必ず。甲斐は眼をつむったまま、微笑した。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
内心は老母にあうのが、気がとがめていたのかもしれませんが、うわべは虚勢をはって、召使たちの手前、頭から湯けむりたてて
癇癖
(
かんぺき
)
をつのらせたような顔をしているのです。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
長男は
表徳
(
へうとく
)
を
文室
(
ぶんしつ
)
と云ふ、
癇癖
(
かんぺき
)
の強い男だつた。病身な妻や弟たちは勿論、隠居さへ彼には
憚
(
はば
)
かつてゐた。唯その頃この宿にゐた、乞食宗匠の
井月
(
せいげつ
)
ばかりは、度々彼の所へ遊びに来た。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかるにさすがのお師匠さんも
己
(
おれ
)
には
一目
(
いちもく
)
置いているなどと云い
触
(
ふ
)
らし
殊
(
こと
)
に佐助を
軽蔑
(
けいべつ
)
して彼の代稽古を嫌いお師匠さんの教授でなければ治まらずだんだん増長する様子に春琴も
癇癖
(
かんぺき
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と云いながら職人で
癇癖
(
かんぺき
)
に障ったから握り
拳
(
こぶし
)
を
以
(
もっ
)
て番頭を
撲
(
なぐ
)
りましたが、右の腕に十人力、左の手に十二人力あります、
何
(
ど
)
うして左の手に余計力があるかと云うに、これは左官のせいで
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
去歳
(
さるとし
)
わが
病伏
(
やみふ
)
しける折
日々
(
にちにち
)
看護に
来
(
きた
)
りしより追々に言葉もかけ給ふやうになりて
窃
(
ひそか
)
にその
立居
(
たちい
)
振舞を見たまひけるが、
癇癖
(
かんぺき
)
強く我儘なるわれに
事
(
つか
)
へて何事も意にさからはぬ
心立
(
こころだて
)
の殊勝なるに加へて
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
怒った冬次郎いつもの
癇癖
(
かんぺき
)
、足で床板踏み鳴らしたが
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“癇癖”の意味
《名詞》
癇癖(かんぺき)
怒りっぽい性質。
(出典:Wiktionary)
癇
漢検1級
部首:⽧
17画
癖
常用漢字
中学
部首:⽧
18画
“癇”で始まる語句
癇癪
癇
癇性
癇高
癇癪持
癇癪玉
癇走
癇持
癇癪筋
癇症