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狼狽
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あわて
ふりがな文庫
“
狼狽
(
あわて
)” の例文
所
(
ところ
)
へ
顏
(
かほ
)
の
割
(
わり
)
に
頭
(
あたま
)
の
薄
(
うす
)
くなり
過
(
す
)
ぎた
肥
(
ふと
)
つた
男
(
をとこ
)
が
出
(
で
)
て
來
(
き
)
て、
大變
(
たいへん
)
丁寧
(
ていねい
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
をしたので、
宗助
(
そうすけ
)
は
少
(
すこ
)
し
椅子
(
いす
)
の
上
(
うへ
)
で
狼狽
(
あわて
)
た
樣
(
やう
)
に
首
(
くび
)
を
動
(
うご
)
かした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
河原から上がって、彼を追うと、お杉隠居も、もしお通が逃げる
心
(
つもり
)
ではないかと
狼狽
(
あわて
)
だしたように、すぐ後ろから駈け上がってゆく。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狼狽
(
あわて
)
て駈けつけたもんだから、鰡八大尽のためにも、道庵先生のためにも、悪い結果を
齎
(
もたら
)
すということを夢にも予想はしませんでした。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と云いながら
狼狽
(
あわて
)
て宇潮の傍へ走り寄ろうとしましたが、折から又もや雲の間を洩る月の光りに自分の姿がありありと鏡の中へ映りました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
大挙して突進すると鬼が誰をつかまえようかと
狼狽
(
あわて
)
る、それが
附目
(
つけめ
)
なのである。下駄が一ツ二ツ残ると、それからが
駈引
(
かけひ
)
きで面白く興じるのだ。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
昇はまず丸髷の婦人に一礼して次に束髪の令嬢に及ぶと、令嬢は
狼狽
(
あわて
)
て
卒方
(
そっぽう
)
を向いて礼を返えして、サット顔を
※
(
あから
)
めた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
細君は夜になってから初めて驚き、台所の板の
間
(
ま
)
に
蛙
(
かえる
)
の如くしゃがんで、今しも
狼狽
(
あわて
)
てランプへ油をついでいる
最中
(
さいちゅう
)
。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「まア!」と言って妻は
真蒼
(
まっさお
)
になった。自分は
狼狽
(
あわて
)
て
二
(
ふたつ
)
の抽斗を
抽
(
ぬ
)
き放って中を一々
験
(
あら
)
ためたけれど無いものは無い。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
今まで思ひ出しもせざりし
結城
(
ゆふき
)
の
朝之助
(
とものすけ
)
に不圖出合て、あれと驚きし顏つきの例に似合ぬ
狼狽
(
あわて
)
かたがをかしきとて、から/\と男の笑ふに少し恥かしく
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その訊き方はちょっと
狼狽
(
あわて
)
ていた。同時に梅三爺の顔には、さっと不安の表情が流れたようであった。「市平が、何か
悪
(
わり
)
ごどでもしたのであんめえがな?」
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
誰かが急病!——と、
咄嗟
(
とっさ
)
の職業的意識に
狼狽
(
あわて
)
て
撥
(
は
)
ね起きたドクタアと、今にも彼のベッドへ這入りこみそうな彼女とは、早速こんな
低声
(
こごえ
)
のやりとりを開始した。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
四方八方から寄せてくるという
噂
(
うわさ
)
が高く、泥棒を見て縄をなうというような腰抜けな
政府
(
おかみ
)
も、
狼狽
(
あわて
)
くさって、それ大砲、それ鉄砲と、えらい騒ぎをはじめたのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、呟きながら、膝の上に原稿紙を押しつけ、電灯の光の方へ身体を曲げながら、鉛筆を舐め舐め、大
狼狽
(
あわて
)
に走り書きをしだした。一種颯爽たる風格があったのである。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その時いちばん困ることは、何か調べものでもしている時には、書斎が書物でいっぱいになっているので、
狼狽
(
あわて
)
てそこらを片づけてからお客に通っていただいたのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
もしミンチン先生に、セエラがほんとうの
宮様
(
みやさま
)
だと解ったら、先生はどんなに
狼狽
(
あわて
)
るでしょう。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「玉月、あ、秋太郎です。」といったが我にもあらず
狼狽
(
あわて
)
たのである。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は、
狼狽
(
あわて
)
たやうに瑠璃子の顔を見直した。再び青年の顔を見た。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
大奥の腰元や老女たちも、その後から
狼狽
(
あわて
)
て走って来た。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ば
持
(
もつ
)
身
(
み
)
なれば
返
(
かへ
)
つて親に話せし上
否々
(
いや/\
)
夫も
自身
(
じぶん
)
の口から斯々なりとは
言惡
(
いひにく
)
し如何はせんと
取
(
と
)
つ
置
(
おい
)
つ思ひ
廻
(
まは
)
せば廻すほど我身ながらにもどかしく
最早
(
もはや
)
花見に行可く氣もあらねば此方へ歸り
掛
(
かゝ
)
るに和吉は
狼狽
(
あわて
)
て袖を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ところへ顔の割に頭の薄くなり過ぎた
肥
(
ふと
)
った男が出て来て、大変
丁寧
(
ていねい
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
をしたので、宗助は少し椅子の上で
狼狽
(
あわて
)
たように首を動かした。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今まで思ひ出しもせざりし結城の朝之助に
不図
(
ふと
)
出合
(
であひ
)
て、あれと驚きし顔つきの例に似合ぬ
狼狽
(
あわて
)
かたがをかしきとて、からからと男の笑ふに少し恥かしく
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
湧上
(
わきあが
)
った笑い声に気がついて見ると、あにはからんやの有様、舞台監督は
狼狽
(
あわて
)
て
緞帳
(
どんちょう
)
をおろしてしまったが——
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
夢心地にも
狼狽
(
あわて
)
て又吸付いて、一しきり吸立てるが、
直
(
じき
)
に又他愛なく
昏々
(
うとうと
)
となって、乳首が遂に口を脱ける。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と、
狼狽
(
あわて
)
ぎみに、声を出して、お通の縄尻を引っ張ったのは又八で、大それたことをやるくせに、何か事にぶつかると、臆病な持ち前はすぐ体に出してしまう。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『
母上
(
おっかさん
)
が僕を離婚すると
云
(
い
)
ったのだろう。』と僕は思わず怒鳴りました。すると里子は
狼狽
(
あわて
)
て
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それからまた、お気がついたら、先生はどんなに驚いて、お
狼狽
(
あわて
)
になるだろうと——
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「そうだろう、そうなくっちゃならねえのだ……先生、そいつはがんりきの奴の道具でございます、あいつ、何かに
狼狽
(
あわて
)
たと見えて、ここへこんなボロを出して行ったのが運の尽きですな」
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
近くにいた誰かがその
背後
(
うしろ
)
に廻ろうとしたが、巡査は
狼狽
(
あわて
)
て制服を脱いだ。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「大丈夫だよ。まだ、死んでやしない。……
狼狽
(
あわて
)
ちゃいけないんだ。ゆっくり持ってこう、ゆっくりね。……筏にのっけたら、あとは、岸まで筏を押していけばいいんだから、わけはないや」
キャラコさん:07 海の刷画
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼は、
狼狽
(
あわて
)
たように瑠璃子の顔を見直した。再び青年の顔を見た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
騒動
(
さわぎ
)
に気を取られて、文三が覚えず立止りて
後方
(
うしろ
)
を振向く途端に、バタバタと
跫音
(
あしおと
)
がして、避ける間もなく誰だかトンと文三に
衝当
(
つきあた
)
ッた。
狼狽
(
あわて
)
た声でお政の声で
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「それでは
此
(
これ
)
で失礼します。」と自分は
起上
(
たちあが
)
った、すると彼は
狼狽
(
あわて
)
て自分を引止め、「ま、ま、貴様怒ったのですか。
若
(
も
)
し僕の言った事がお気に触ったら御勘弁を願います。 ...
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
十六日は
必
(
かな
)
らず
待
(
まち
)
まする
來
(
き
)
て
下
(
くだ
)
されと
言
(
い
)
ひしをも
何
(
なに
)
も
忘
(
わす
)
れて、
今
(
いま
)
まで
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しもせざりし
結城
(
ゆふき
)
の
朝
(
とも
)
之
助
(
すけ
)
に
不圖
(
ふと
)
出合
(
であひ
)
て、あれと
驚
(
おどろ
)
きし
顏
(
かほ
)
つきの
例
(
れい
)
に
似合
(
にあは
)
ぬ
狼狽
(
あわて
)
かたがをかしきとて
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
けれども彼女の周囲の人たちは
驚愕
(
きょうがく
)
のあまり
狼狽
(
あわて
)
てしまって、目の前に展開された恥辱に
顫
(
ふる
)
い怒って、彼女から何も知り得ぬさきに、彼女を許すべからざるもののように
述
(
のべ
)
立ててしまった。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「本もお読みになるでしょう」と中途半端に答えた彼女は、津田の質問があまり
煩瑣
(
はんさ
)
にわたるので、とうとうあははと笑い出した。津田はようやく気がついて、少し
狼狽
(
あわて
)
たように話を
外
(
そ
)
らせた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
佐平は巡査の
背後
(
うしろ
)
から一間ばかりも、
大狼狽
(
おおあわて
)
に
狼狽
(
あわて
)
て
後
(
あと
)
に
退去
(
しさ
)
った。顔は驚きの表情で緊張していた。皆が一斉に佐平の方を見た。佐平は眼をむいて巡査の背中に視線をやった。若い巡査は
訝
(
いぶか
)
った。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
狼狽
(
あわて
)
てゐる
故
(
せゐ
)
か、電燈がなか/\手に触れなかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
又ヨチヨチと
這
(
は
)
い寄って、ポッチリと黒い鼻面でお
腹
(
なか
)
を探り
廻
(
まわ
)
り、漸く思う柔かな
乳首
(
ちくび
)
を探り当て、
狼狽
(
あわて
)
てチュウと吸付いて、小さな両手で
揉
(
も
)
み
立
(
た
)
て揉み立て吸出すと
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
路
(
みち
)
は野原の
薄
(
すすき
)
を分けてやや
爪先上
(
つまさきあがり
)
の処まで来ると、ちらと自分の眼に映ったのは草の間から現われている紙包。自分は
駈
(
か
)
け寄って拾いあげて見ると
内
(
なか
)
に百円束が
一個
(
ひとつ
)
。自分は
狼狽
(
あわて
)
て
懐中
(
ふところ
)
にねじこんだ。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「なんてまあ、
狼狽
(
あわて
)
たお客さんなのか。ねえおじいさん。」
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
狼狽
(
あわて
)
ている
故
(
せい
)
か、電燈がなか/\手に触れなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と
狼狽
(
あわて
)
て打消てから、始めて木村の賢ちゃんという児と話をしている事が分った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ト
笑顔
(
えがお
)
を
擡
(
もた
)
げて文三の顔を
窺
(
のぞ
)
くと、文三は
狼狽
(
あわて
)
て
彼方
(
あちら
)
を向いてしまい
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
“狼狽”の意味
《名詞》
狼 狽(ろうばい)
思わぬ出来事に遭い、慌てること。
(出典:Wiktionary)
狼
漢検準1級
部首:⽝
10画
狽
漢検準1級
部首:⽝
10画
“狼狽”で始まる語句
狼狽者
狼狽方
狼狽気味
狼狽敷
狼狽眼
狼狽居士
狼狽驚愕