牧場まきば)” の例文
すると、そこの牧場まきばの片隅の、大きな立木たちぎの二三本ある陰で、牡牛が一匹の熊を相手に、じっと睨み合いをしているじゃありませんか。
(新字新仮名) / 久米正雄(著)
「旦那様は、滅多に外へおいでになりませんけれど、どうかするとこの牧場まきばへおともを連れて出ておいでなさることがありますよ」
でも、そのうちにつかれきって、とうとう、はたけ牧場まきばをとりかこんでいる、枝をられたヤナギの木立こだちのほうへおりていきました。
おかの上に立って、うつくしい村をながめては、歌にうたい、牧場まきばにいって、やさしいひつじのむれをながめては、をかくのがつねでした。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
臨終いまわきわに、兼てより懇意こころやすくせし、裏の牧場まきばに飼はれたる、牡丹ぼたんといふ牝牛めうしをば、わが枕ひよせ。苦しき息をほっ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
我等これを渡ること堅き土に異ならず、我はなゝつの門を過ぎてひじりむれとともに入り、緑新しき牧場まきばにいたれば 一〇九—一一一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ガスパールはすでに二月以上も外の空気をすはなかつたので、先生は、ガスパールを私たちと一しよに、村のはづれの牧場まきばへつれていきました。
そして、それが出来上るとその翌日、七里も先方さき牧場まきばへ庄吉をつれて行つて、豚の一番ひとつがひ荷車に乗せて運んで来た。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
その島は、まるで牧場まきばのようで、その向うに青々とした海が見えていました。船長はみんなに、この島へ上って、少し休んでもいいと言いました。
乳牛うしは皆んな牧場まきばへ放してあるし、あれ等を牛舎こやへ入れるまでにはまだまだ間がある。おお、ここも暑くなって来たぞ。
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そういってあるいたあとに、すぐ王様は通りかかって、麦畠も、牧場まきばもみんなカラバ侯爵こうしゃくのものだときかされました。
彼の羊の方がつねに彼の想いよりも高い牧場まきばにさまようような羊飼いの生活のみじめさは何といったらよいものやら。
見ると牧場まきばの柵の様な低い木の門が其処そこにある。マロニエの木が隙間もなく青青あをあをと両側に立つて居た。しかし人の通ふ道の上には草が多く生へて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
時に、陽はゆらゆらと牧場まきばの朝露を離れて高く、木々には百鳥のさえずり、遠山には丹霞たんかのたなびきが美しい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つぐみの群れが、牧場まきばからかえりに、かしわ木立こだちの中で、ぱっとはじけるように散ると、彼は、眼を慣らすために、それを狙ってみる。銃身が水気すいきで曇ると、袖でこする。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
牛は又、非常に鋭敏な耳を持つもので、足音で主人を判別する。こんな話が出た後で私はこういう乳牛を休養させる為に西にしいり牧場まきばなぞが設けてあることを聞いた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
国道こくどうは日にらされて、きいろい綺麗きれいなリボンのように牧場まきばはたけ沿って先へとび、町や村を通りぬけ、人の話では、ふねの見える海までつづいているということです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
……もう、何千世紀というもの、地球は一つとして生き物を乗せず、あの哀れな月だけが、むなしく灯火あかりをともしている。今は牧場まきばに、寝ざめのつるも絶えた。
本当ほんとうだ、どんなものを歌う必要ひつようがあるか?……彼はやさしさとかなしみでむねが一ぱいになるのをかんじた。牧場まきばを、河を、空を、なつかしいほしを、むねきしめたかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「外へでて、あたしの牧場まきばってね、刈りとった草をほしておくれ」と言って、銀のものでは、(立っていて使う)大きな草刈鎌くさかりがまを、黄金きんのものでは砥石といしを一つわたして
それから船に乗る所まで逃げるにも道程みちのりが可なりある。牧場まきばや、森や、警戒線を通らなくては行かれない。己は動悸がする。あの海の音が不幸を予言してゐるやうでならない。
その農作地のうさくち牧場まきばとをつくるためには森林しんりん一部分いちぶぶんはらはらひしました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
この童が牧場まきばのいとまだにあれば、見えがくれにわがあとしたふを、姫これより知りて、人してものかづけなどはし玉ひしが、いかなる故にか、目通めどおりを許されず、童も姫がたまたま逢ひても
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
河添かわぞいの牧場まきばを歩いておりました時、乙女等の摘み残した忘れな草があったのを、私がそっと摘み取って、貴女あなたの髪へさしました所、貴女はいつの間にか取り棄てておしまいなされました。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さういふ時は草の上や、又は数奇すきを凝した休憩所で辨当を食べて帰る。帰り道に馬車をゆるゆるかせて通ると、道の両側から、鳩の群に取り巻かれた、牧場まきば帰りの男や女が礼をするのである。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
鉄の鎖や、石箱、鉄箱。袖無襯衣そでなしシャツなぞ一切使わず。ありとあらゆる精神病者を。広い処へ追い放しにして。一番自然な正しい治療を。しようというのが解放治療じゃ。いわば精神病者の牧場まきばじゃ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おらが娘聟ちふのは、二週間前に結婚しただがね、そのあくる朝馬車に乗つて牧場まきばに出かけたもんだ。毎日毎晩持地のなかをとつぱしつて、やつと牧場まきばに着いた頃には、もう子供二人が生れとつただよ。」
くちぶえに小羊こひつじよびて鞭ふりて牧場まきばに成りし歌のふしとる
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
牧場まきばより千頭の山羊と仔羊約したり。 245
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
又は牧場まきばなかに立つ数ある街の一つなれば
とっちめるにはどうしてもあの牧場まきばだな。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
牧場まきばがいきいきした緑で笑い
笑いの歌 (新字新仮名) / ウィリアム・ブレイク(著)
牛の牧場まきばに日は暮れぬ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
森のうへにも牧場まきばにも
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
夕暮ゆふぐれの古き牧場まきば
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いまでは、いちばん東の岸にそって古い牧羊場ぼくようじょうがありますが、それは長さが四分の一マイルもあって、エーランド島一の大きな牧場まきばです。
そして大抵の牧場まきばには、逞しい牡牛が飼ってあります。この牡牛の強いのになると、熊と喧嘩をしても負けないのです。
(新字新仮名) / 久米正雄(著)
こゝ天上より眺むれば、牧者の衣を着たるあらき狼隨處いたるところ牧場まきばに見ゆ、あゝ神の擁護みまもりよ、何ぞ今もたざるや 五五—五七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
牧場まきばにある様な粗末な木戸を押してはひると中門ちゆうもんの前まで真直まつすぐに一ちやう程細いみちの両側に繁つたマロニエの木立こだちが続く。その木蔭の涼しいので生き返つた心地がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
ムクが牧場まきばをめがけて歩を運び出すと、群犬がそれに従って足並みを揃えて繰出すようになりました。
村の人たちは、その銅像どうぞうを見あげては、生きてたときのハンスが、牧場まきばのさくのそばで、ひつじのむれをいつまでも、じっと見つめているすがたを思い出すのでした。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
……もう、何千世紀というもの、地球は一つとして生き物を乗せず、あの哀れな月だけが、むなしく灯火あかりをともしている。今は牧場まきばに、寝ざめのつるも絶えた。
牧場まきばの中には、美しい調子ちょうしふえのようながまのなく声が聞えていた。蟋蟀こおろぎするどふるえ声は、星のきらめきにこたえてるかのようだった。かぜしずかにはんえだをそよがしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
この土地の一段と人跡稀な部分——「新しき森、新たなる牧場まきば」にさまよったり、あるいは夕日がしずむころ、フェア・ヘーヴンヒルでコケモモや青莓ブルーベリーをつんで夕食とし
翌日は、私はB君と二人ぎりで、烏帽子ヶ岳のふもとを指して出掛けた。私が牧場まきばのことを尋ねたら、B君も写生かたがた一緒に行こうと言出したので、到頭私は一晩厄介に成った。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鞭拍子むちびやうしやうやく慣れて南国なんごく牧場まきばの春の草に歌よき
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
山、森、畑、寺、遠き牧場まきば
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
馬のいない牧場まきば
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牧場まきばで 笛吹く
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
ガンたちは、牧場まきばへいって、たべものをひろいましたが、ニールスははまべへいってかいを集めました。そこには、貝がたくさんありました。