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淫
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みだ
ふりがな文庫
“
淫
(
みだ
)” の例文
その腕を広げて、あろうことか、私に
淫
(
みだ
)
らしい
挑
(
いど
)
みを見せてまいったのです。そして、その
獣物
(
けだもの
)
のような狂乱が、とうとう私に……
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
野卑
(
やひ
)
な凡下の投げることばのうちには、もっと露骨な、もっと深刻な、顔の紅くなるような
淫
(
みだ
)
らな
諷刺
(
ふうし
)
をすら、平気で投げる者がある。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さてはその
蝙蝠
(
かわほり
)
の翼、山羊の蹄、
蛇
(
くちなわ
)
の
鱗
(
うろこ
)
を備えしものが、目にこそ見えね、わが耳のほとりに
蹲
(
うずくま
)
りて、
淫
(
みだ
)
らなる恋を囁くにや」
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
雪之丞、
淫
(
みだ
)
らな
雌狼
(
めすおおかみ
)
にでもつけまわされているような怖れと、
煩
(
わずら
)
わしさとに、一生懸命おさえていた、殺気が、ジーンと
衝
(
つ
)
き上って来た。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
熟
(
う
)
れた
柘榴
(
ざくろ
)
の実のような、紅いネバネバしたあいつの口は、
淫
(
みだ
)
らなことばかりを語っている。それがまた女には好もしいらしい
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
遠い下町の、
華
(
はな
)
やかな
淫
(
みだ
)
らな街に売られて行くのを出世のように思って面白そうに嬉しそうにお鶴の話すのを私はどんなに悲しく聞いたろう。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
さうしてかの柳河のただ
外面
(
うはべ
)
に取すまして廢れた
面紗
(
おもぎぬ
)
のかげに
淫
(
みだ
)
らな秘密を
匿
(
かく
)
してゐるのに比ぶれば、凡てが
露
(
あらは
)
で、元氣で、また
華
(
はな
)
やかである。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
しかも僕の見て来た認識者とは、汚れた服装で、
淫
(
みだ
)
らな鼻歌を歌いながら、この戸口から中を覗きこむだけのものだった。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
珈琲店に入りびたって
淫
(
みだ
)
らな話にふけったり、一日の仕事に疲れはてていたり、知識階級の女に飽き飽きして
嫌悪
(
けんお
)
の念をいだいたりしています。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
きわめて薄手な色白の皮膚が
斑
(
まだ
)
らに紅くなった。斑らに紅くなるのはある女性においては、きわめて
醜
(
みにく
)
くそして
淫
(
みだ
)
らだ。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
燃え立つような長襦袢を裾も
露
(
あら
)
わに引きはえつつ、青白い光線をふり仰いで眼を細くした姿は
淫
(
みだ
)
りがましいと云おうか、
神々
(
こうごう
)
しいと形容しようか。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして山谷は、お君と安二郎にその絵を結びつけ、口に泡をためて
淫
(
みだ
)
らな話をした。いきなり、豹一はぎりぎり
歯軋
(
はぎし
)
りし、その絵を破ってしまった。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
どうやらあの十一人の
掠
(
かす
)
め取った女達をその左右にでも
侍
(
はべ
)
らせて、もう何か
淫
(
みだ
)
らな所業を始めているらしい容子です。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
彼等
(
かれら
)
が、勝手放題に、
淫
(
みだ
)
らな踊り方をしたり、または
木蔭
(
こかげ
)
で
抱擁
(
ほうよう
)
し合っているのをみると、急に
淋
(
さび
)
しく、あなたが
欲
(
ほ
)
しくてたまらなくなるのでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その頃の
結改場
(
けつかいば
)
は、裕福な町人達の樂しみ場で、矢取女に美しく若いのこそ置きましたが、決して
淫
(
みだ
)
らな場所ではなく、平次が盛んに働いてゐる頃は
銭形平次捕物控:123 矢取娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
年長の兄を差置いてと云ふ理由から、父が生きとつたら、こんな順序を心得ぬ
淫
(
みだ
)
らな真似はさせん、とよく云つた。
現代詩
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
彼は、ぱふりぱふりと煙草を
燻
(
くゆ
)
らしながら、和尚の生活の
淫
(
みだ
)
らなことや、
吝
(
けち
)
で、彼には卵を食わせないこと、煙草も買ってくれないことなどを話した。
再度生老人
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
私は当時の姉の
淫
(
みだ
)
らな行為を聯想して、堪らなく憎悪を感じた。私自身の純な生活をも汚され、
蹂躙
(
じうりん
)
されたやうな、強い屈辱を感ぜざるを得なかつた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
ナオミをまん中に、浜田や熊谷が行儀の悪い居ずまいで、べちゃくちゃ冗談を云い合っている
淫
(
みだ
)
らなアトリエの光景が、まざまざと見えて来るのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
師が臣節を
汚
(
けが
)
すのを懼れるのではなく、ただこの
淫
(
みだ
)
らな
雰囲気
(
ふんいき
)
の中に師を置いて
眺
(
なが
)
めるのが
堪
(
たま
)
らないのである。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それだけで東京全体が、ひどく
穢
(
けがら
)
わしく
淫
(
みだ
)
らがましく、酸ッぱいものが
咽喉
(
のど
)
の奥にこみ上って来るのだ。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そして、そういう騒々しい噂のなかを、ひとりお浜だけが、下腹のつき出た、裾のあわない、はっきりと
淫
(
みだ
)
らな印象を与える異様な姿で、屈託もなく歩きまわっている。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
漁色漢
(
ぎょしょくかん
)
の望月王仁は、ああいう女はムッツリ助平と云って、冷めたく取り澄しているくせに内心は
淫
(
みだ
)
らなものだ、案外ウブなもんで変に情熱があって一晩はよろしいものだ
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
山椒
(
さんしょう
)
の豆太郎、どことなく
淫
(
みだ
)
らな眼をニヤつかせて、さすがに争われずふっくらと白い弥生の胸元をのぞきこむようにしているので、はッとした弥生、思わず立ちあがった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その微細なものまでが、感情と意志の喰い違いを現す不自然さに苦痛を快楽として諦め返そうとする
野狐
(
やこ
)
的な知性が
窺
(
うかが
)
がれると、それは
淫
(
みだ
)
らがましいものにさえ感じさせます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
棒縞お召の
袷
(
あわせ
)
に
黒繻子
(
くろじゅす
)
の帯、
衿
(
えり
)
のついた
袢纒
(
はんてん
)
をひっかけた伝法な姿、
水浅黄
(
みずあさぎ
)
の
蹴出
(
けだ
)
しの覗くのも構わず
淫
(
みだ
)
らがましく
立膝
(
たてひざ
)
をしている女の側に、辰次郎が寒そうな顔で笑っていた。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は古代の
希臘
(
ギリシャ
)
の風習を心のなかに思い出していた。死者を
納
(
い
)
れる
石棺
(
せっかん
)
のおもてへ、
淫
(
みだ
)
らな戯れをしている人の姿や、
牝羊
(
めひつじ
)
と交合している牧羊神を彫りつけたりした
希臘
(
ギリシャ
)
人の風習を。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
表には、ここの女たちが男を誘惑する
淫
(
みだ
)
らな嬌声が聞えていた。その嬌声に混って、胡弓の音がした。俺は何故ともなしにその弾き手を盲目の支那人であろうと思った。女は茶をいれた。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
そうしているうちに、博士が自分に好意をもつと同時に、
淫
(
みだ
)
らな葉子の熱病にも適当な診察が下されるであろうことも想像できるように思えた。何よりも博士には高い名誉と地位があった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鳴咽
(
おえつ
)
する柿丘の声と、
淫
(
みだ
)
らがましい
愛撫
(
あいぶ
)
の言葉をもって
慰
(
なぐさ
)
めはじめた雪子夫人の
艶語
(
えんご
)
とを
其
(
そ
)
の
儘
(
まま
)
、あとに残して、僕はその場をソッと滑るように逃げだすと、
跣足
(
はだし
)
で往来へ飛びだしたのだった。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼はそんな
淫
(
みだ
)
らな者の
対手
(
あいて
)
になりたくはなかった。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
(
卑
(
いや
)
しいニッケルの
粉
(
こな
)
だ。
淫
(
みだ
)
らな光だ。)
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
ここの家の娘たちの
淫
(
みだ
)
らな姿であった。
怪獣
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三角眼が
淫
(
みだ
)
らに光っている。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
錦出
(
にしきで
)
の皿にも、あくどい色の食物が、あたりの空気にふさわしく盛ってあった。朱塗の燭台には、ひとつひとつ
淫
(
みだ
)
らな灯があがっている。
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その間も、あの女の
淫
(
みだ
)
りがましい、
凋
(
しお
)
れた容色の厭らしさが、絶えず己を
虐
(
さいな
)
んでいた事は、元よりわざわざ云う必要もない。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
決して
淫
(
みだ
)
らな場所ではなく、平次が盛んに働いている頃は、今日では想像されないほどの繁昌を見ていたのでした。
銭形平次捕物控:123 矢取娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
獣的な魂が彼のうちにあばれていた。熱く燃えたち、汗に浸って、彼はおのれを嫌忌の情でながめた。狂気じみた
淫
(
みだ
)
らな考えを振り落そうとつとめた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は朋輩の丁稚等と
巫山戯
(
ふざけ
)
たり、年長の事務員達の間に交つて、
淫
(
みだ
)
らな話を聞いたり、暇な時には、自由に雑誌や小説などを読んで楽しむことが出来た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
(間)幸福たらんとする乙女、既に幸福なる人妻を、思わぬ邪道に導き行くこのFなる魔法使いの、銀の竪琴の
淫
(
みだ
)
らの音が、あの清き音に敗けてはならぬ。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さらにそれにも増していやらしかったのは旦那様の
淫
(
みだ
)
らなことだった。奥さんの
目褄
(
めづま
)
を忍んでその老人のしかけるいたずらはまるで蛇に巻かれるようだった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
宵からずっと今の先迄わたくしを一室にとじこめて、
淫
(
みだ
)
らがましいことばかりおっしゃるのでござります。
旗本退屈男:06 第六話 身延に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
闇太郎は、そういうお初の、
淫
(
みだ
)
らな、あでやかな笑いを見ると、あやしい
悪寒
(
さむけ
)
のようなものを覚えた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
風俗の
淫
(
みだ
)
らなのにひきかへて遊女屋のひとつも残らず廃れたのは哀れふかい趣のひとつであるが
水郷柳河
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
はすっぱな下町娘や色気たっぷりの
後家
(
ごけ
)
などが、ゆきずりに投げてゆくこうした
淫
(
みだ
)
らがましい言葉、それにさえ慣れて、はじめのような憤りや自嘲を感じなくなった栄三郎であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あまり単調で気が
狂
(
くる
)
おう(⁉)そして日本の桜花の層が、
程
(
ほど
)
よく、ほどほどにあしらう春のなま温い
風手
(
かざて
)
は、
徒
(
いたずら
)
に人の
面
(
おもて
)
にうちつけに触り
淫
(
みだ
)
れよう。桜よ、咲け咲け、うるさいまでに咲き
満
(
み
)
てよ。
病房にたわむ花
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして形勢が悪くなると
淫
(
みだ
)
りがわしく居ずまいを崩して、
襟
(
えり
)
をはだけたり、足を突き出したり、それでも駄目だと私の
膝
(
ひざ
)
へ靠れかかって頬ッぺたを
撫
(
な
)
でたり、口の端を摘まんでぶるぶると振ったり
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
突然に
淫
(
みだ
)
らなことを言い出したんです。
怪獣
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
殊に、
後宮
(
こうきゅう
)
生活の女性群のうちには、自然、それを助ける上品な
淫
(
みだ
)
らの香が濃厚であった。深窓は、その意味では、未開花の温室だった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つまらない問題やかなり
淫
(
みだ
)
らな問題へいつもわたってゆく、不謹慎で
饒舌
(
じょうぜつ
)
な彼女らの好奇心、すべてそういう
曖昧
(
あいまい
)
な多少獣的な
雰囲気
(
ふんいき
)
に、彼は恐ろしく困らされた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
淫
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“淫”を含む語句
淫売婦
淫蕩
淫奔
淫婦
淫売
淫猥
売淫
淫売屋
淫靡
淫祠
淫乱
誨淫
淫亂
淫佚
淫卑
淫魔
淫縦
淫奔者
淫褻
淫奔女
...