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欄干
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てすり
ふりがな文庫
“
欄干
(
てすり
)” の例文
同夜は宿を頼んだ同好の士島醫學士の厚意に依つて、特に三條村から操座を招いて、同家二階座敷に
欄干
(
てすり
)
を急造して演出して貰つた。
淡路人形座訪問:其の現状と由来
(旧字旧仮名)
/
竹内勝太郎
(著)
酒倉のうちつゞく
濱端
(
はまばた
)
の一地點に建てられた二階家の
欄干
(
てすり
)
に近々と浪が寄せて、潮の香の鼻をつく座敷で、夜の更ける迄酒を飮んだ。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
私は甲板に出て
欄干
(
てすり
)
に凭つた。島の方角を見ると、闇の中に、ずつと低い所で、五つ六つの灯が微かにちらついて見える。空を仰いだ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
鍵を受取ってポケットに入れようとしたが、その一
刹那
(
せつな
)
に片手でデッキの
欄干
(
てすり
)
に掴まっていた中野学士が鮮やかな足払いをかけた。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
西洋的なものから採入れようとする一般の風潮は彼の後姿に向っては「
葵祭
(
あおいまつり
)
の竹の
欄干
(
てすり
)
で」青く
擦
(
す
)
れてなはると蔭口を利きながら
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
秋の
夕陽
(
ゆうひ
)
は
欄干
(
てすり
)
の上にさし込んでいて、吹き通う風の冷さに
蔽
(
おお
)
うものもなく
転寐
(
うたたね
)
した身体中は気味悪いほど
冷切
(
ひえき
)
っているのである。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
袖も
靡
(
なび
)
く。……山嵐
颯
(
さっ
)
として、白い雲は、その
黒髪
(
くろかみ
)
の
肩越
(
かたごし
)
に、裏座敷の崖の
欄干
(
てすり
)
に掛って、水の落つる如く、
千仭
(
せんじん
)
の谷へ流れた。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
象の背中には
欄干
(
てすり
)
の付いた
輿
(
こし
)
のようなものを乗せていた。輿の上には男と女が乗っていた。象のあとからも大勢の男や女がつづいて来た。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ふと気が付いてスパセニアは、振り返ってにっこりと
靨
(
えくぼ
)
をうかべましたが、
欄干
(
てすり
)
にからだを
凭
(
もた
)
せて、
悪戯
(
いたずら
)
っぽそうに、聞いてくるのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
お豊は、我を忘れて
欄干
(
てすり
)
の上から下の往来を見下ろした時に、薬屋の前を総勢十人ほどの旅の武士が隊を成して通り過ぐるのを認めました。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「なかなか冷えるね」と、西宮は小声に言いながら後向きになり、
背
(
せなか
)
を
欄干
(
てすり
)
にもたせ変えた時、
二上
(
にあが
)
り新内を
唄
(
うた
)
うのが
対面
(
むこう
)
の座敷から聞えた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
西中島
(
にしなかじま
)
の大川に臨む
旅籠屋
(
はたごや
)
半田屋九兵衛
(
はんだやくへえ
)
の奥二階。
欄干
(
てすり
)
に
凭
(
もた
)
れて朝日川の水の流れを眺めている若侍の一人が口を切った。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
私は私の背後に太いロップや金具の
緩
(
ゆる
)
く緩くきしめく音を絶えず感じながら、その船首に近い右舷の
欄干
(
てすり
)
にゆったりと両の
腕
(
かいな
)
をもたせかけている。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
ベランダの
欄干
(
てすり
)
の下から、はちすの咲き乱れた生垣の中から、池のふちの祠の裏手から、蛙のやうな、河童のやうな、盗人のやうな五体の人影が
まぼろし
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
波の荒い日で、さすがの諧謔作家も青い顔をして、何一つ物をいはないで、
欄干
(
てすり
)
にもたれたまゝ、泣き出しさうな目をしてじつと波を見つめてゐた。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
翌朝
(
あした
)
目のさめたころには、縁側の板戸がもう開けられてあった。
欄干
(
てすり
)
には、
昨夜
(
ゆうべ
)
のお増の着物などがかけられて、薄い冬の日影が、大分たけていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いつの間にか話声はぴたりと止んで、例の
吐
(
もど
)
すうめきが起り出した。
階下
(
した
)
の船室から這い出して来て
欄干
(
てすり
)
にしがみつきながら吐いている若者もあった。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
その晩八五郎は、お琴に
教
(
をそ
)
はつた通り、柳屋の庭木戸を押して、石燈籠を踏み臺に、二階の
欄干
(
てすり
)
をまたぎました。
銭形平次捕物控:294 井戸端の逢引
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
かの女は、
洋服
(
ドレス
)
のひだをピタピタたたくと、姉に背を向けて、縁の方に歩いて行き、
欄干
(
てすり
)
にもたれて、ぼんやりと晴れている空に、眼を向けてしまった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
私は二階の
欄干
(
てすり
)
に
凭
(
もた
)
れて、この病人船が
埠頭場
(
はとば
)
の
纜
(
ともづな
)
を解いて、油を流したやうな靜かな初秋の海を辷つて行くのを、恐しい思ひを寄せて見たことがあつた。
避病院
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
障子
(
しょうじ
)
、
欄間
(
らんま
)
、
床柱
(
とこばしら
)
などは
黒塗
(
くろぬり
)
り、
又
(
また
)
縁
(
えん
)
の
欄干
(
てすり
)
、
庇
(
ひさし
)
、その
他
(
た
)
造作
(
ぞうさく
)
の一
部
(
ぶ
)
は
丹塗
(
にぬ
)
り、と
言
(
い
)
った
具合
(
ぐあい
)
に、とてもその
色彩
(
いろどり
)
が
複雑
(
ふくざつ
)
で、そして
濃艶
(
のうえん
)
なのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ここの
縁
(
えん
)
の
欄干
(
てすり
)
には、まるで花見でもしているように、二階の客が揃いも揃って、
階下
(
した
)
の奥座敷を見おろしながら、何やらわいわい騒いでいるのであった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
都市美術社の若い装飾工の一人は、五階の
欄干
(
てすり
)
に足を一本からげ、他の一本は
小天使
(
エンゼル
)
の彫像の肩に載せて、猿の身軽さを保ち、彼に分担された仕事をやっていた。
扉は語らず:(又は二直線の延長に就て)
(新字新仮名)
/
小舟勝二
(著)
そして時々
欄干
(
てすり
)
の所へ行つて下の街を眺めました。それは竹中はんの影が見えないかと思ふからでした。そのうちに私はだん/\淋しい、心持になつて来ました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ロープは甲板の上に飛んで行き、先の釣が、ガチャッと、音を立てて、デッキの
欄干
(
てすり
)
に引っかかった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
幽霊は廊下の
欄干
(
てすり
)
に腰をおろして片足をあげ、柱に背中を寄せかけて片足をぶらりと垂れていた。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
初太郎と宇之吉は、首吊をそのままに、申し合わせたように縁の
欄干
(
てすり
)
へ駈け寄って下を覗いた。
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
二階の
欄干
(
てすり
)
越しに三つ五つ見えて、こんもり黒んだ向河岸の森に、物思いは春の夜と知られた。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
降ることをばれると、仲間の符喋でいいながらスッと圓朝は立ち上がっていって
欄干
(
てすり
)
へ寄った。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
つい鼻先の
庇
(
ひさし
)
に止まっている。御安い御用だ。僕は縁側の
欄干
(
てすり
)
を
跨
(
また
)
ぎ越して、ジリ/\近寄った。奴さん、首を傾げた丈けで逃げようともしない。難なく取っ捉えて、ハッハヽヽ
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「なに世の中が皮肉なのさ。今の世のなかは冷酷の
競進会
(
きょうしんかい
)
見たようなものだ」と云いながら呑みかけの「敷島」を二階の
欄干
(
てすり
)
から、下へ
抛
(
な
)
げる
途端
(
とたん
)
に、ありがとうと云う声がして
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そのうへ、二階の廊下にあるらしい
燈火
(
あかり
)
が極く薄く階段の
欄干
(
てすり
)
を、それも下部は全く闇で上部だけをボンヤリ照らし出してゐた。奥の方にその部分の階段だけが浮いて見えたのである。
群集の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
いや
彼塔
(
あれ
)
を作つた十兵衞といふは何とえらいものではござらぬ歟、彼塔倒れたら生きては居ぬ覚悟であつたさうな、すでの事に鑿
啣
(
ふく
)
んで十六間真逆しまに飛ぶところ、
欄干
(
てすり
)
を斯う踏み
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
揉あげは
起
(
た
)
って
欄干
(
てすり
)
の傍へ往って手を叩いた。上の方で
甲高
(
かんだか
)
い女の声が応じた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
横が石の道で、左手の窓際にも木や草花が
植
(
うわ
)
つて居る。
欄干
(
てすり
)
の附いた石段が二つある。
此
(
この
)
二つの
上
(
あが
)
り口の
間
(
あひだ
)
が半円形に突き出て居て、右と左の曲り目に二つの窓が一階
毎
(
ごと
)
に附けられてある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
欄干
(
てすり
)
にあらわれたるは
五十路
(
いそじ
)
に近き満丸顔の、打見にも元気よき老人なり。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
彼はよろよろと橋の
欄干
(
てすり
)
に
凭
(
もた
)
れかかって、両手に
頭髪
(
かみ
)
の毛を
引掴
(
ひっつか
)
んだまま
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
座敷からすぐ瓦屋根に続いて、縁側も
欄干
(
てすり
)
もない。古い崩れがけた
黒塀
(
くろべい
)
が隣とのしきりをしては
居
(
ゐ
)
るが、隣の庭にある
百日紅
(
さるすべり
)
は
丁度
(
てうど
)
此方
(
こちら
)
の庭木であるかのやうに
鮮
(
あざや
)
かにすぐ眼の前に咲いて
居
(
ゐ
)
る。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
蓋
(
おおい
)
はふたたび落ちて以前のごとく昇降口を閉ざせしならん、されど海賊が鉄槌にて打ち砕きし入口の破れ目はそのままにて、そこより海水は船内に打ち込みしなり、鉄の
欄干
(
てすり
)
も梯子も皆濡れて
南極の怪事
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
お種が部屋を出て、二階の
欄干
(
てすり
)
から温泉場の空を眺めていると、こんな
串談
(
じょうだん
)
を言いながら長い廊下を通る人が有った。隣室の客だ。林夫婦は
師走
(
しわす
)
の末に近くなって復た東京から入湯に来ていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そして首をのばして家の二階の
欄干
(
てすり
)
の所を見たが、誰れも見えなかった。朝子は、なんとなく寂しい心持がした。誰か知った人にでも、誰れでも顔見知りの人に逢って、笑ひたいやうな気がした。
秋は淋しい
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
そして、大きく
呼吸
(
いき
)
を吸ひ込むと、もうぢつとしてはゐられずに、
欄干
(
てすり
)
の上へいきなり、俯伏せになつてしまつたんでございますよ……。しばらく、さうして、波の裂ける音を聞いてをりました。
顔
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
延享二年竹本座の盆興行に、浪花鑑は初めて
欄干
(
てすり
)
にかけられた。
夏芝居
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
中窓
(
ちうまど
)
の
欄干
(
てすり
)
にもたれて
雨
(
あま
)
だれをみてゐるムスメがあつた。
桜さく島:見知らぬ世界
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
腰の
屈
(
かが
)
んだ丁爺は改札口の
欄干
(
てすり
)
に伸び上り伸び上り
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
欄干
(
てすり
)
に
最一度
(
もいちど
)
我を
倚
(
よ
)
らしめ
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
橋の
欄干
(
てすり
)
をまつすぐに
短歌集 日まはり
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
見よ、
金色
(
こんじき
)
の
欄干
(
てすり
)
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
私は甲板に出て
欄干
(
てすり
)
に
凭
(
よ
)
った。島の方角を見ると、闇の中に、ずっと低い所で、五つ六つの灯が微かにちらついて見える。空を仰いだ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
欄干
(
てすり
)
に近く遙々と見渡される澄み渡つた星空の下を、靜に下る川船の艪の音が、ぎいと冴えて聞えて消えて行く。秋の感じが深かつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
“欄干”の意味
《名詞》
欄干(らんかん)
転落を防ぐために橋やベランダの外側に設置された手すり高の柵。
(出典:Wiktionary)
欄
常用漢字
中学
部首:⽊
20画
干
常用漢字
小6
部首:⼲
3画
“欄干”で始まる語句
欄干越
欄干橋
欄干下
欄干外
欄干摺
欄干近