がく)” の例文
旧字:
さては今朝の明け方近く、がくの音が聞こえたのは、この人達であったのか、東国の勢、何万騎の内、ただ一騎でも、こんなやさしい心を
面白い会話「臨時の祭の調楽に、夜更けて、いみじうあられふる夜」の風流、「入りかたの日影さやかにさしたるに、がくの声まさり、物の面白き」
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
子、魯の大師にがくげて曰く、楽は其れ知るべきなり。始めておこすとき翕如きゅうじょたり。之をはなてば純如たり。皦如きょうじょたり。繹如えきじょたり。以て成ると。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
青いそらからかすかなかすかながくのひびき、光のなみ、かんばしくきよいかおり、すきとおった風のほめことばがおかいちめんにふりそそぎました。
孔夫子でさえも、その人によってそのがくを捨てず、とはまだ道破していなかった。自ら感ぜさせたものが、人を感ぜしめるところの烈しい魔力。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
実験室は、きちんと取片づけられ、そして五分置きに、どこからともなくオルゴールががくを響かせ、それについで
丁々坊は熊手をあつかい、巫女みこは手綱をさばきつつ——大空おおぞらに、しょう篳篥ひちりきゆうなるがく奥殿おくでんに再び雪ふる。まきおろして
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、豪奢ごうしゃをこらした城内の一室へ迎え入れたのです。多くの、後宮の女には、粉黛ふんたいをさせ、珠をかざらせ、がくそうし、ばんには、山海の珍味を盛って。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こわごわその上をあるいて行きますと、どこからともなくいいにおいがして、たのしいがくがきこえてきました。
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つまりがくといふ一種の美くしい世界には丸で足を踏み込まないで死んで仕舞はなくつちやならない。僕から云はせると、是程憐れな無経験はないと思ふ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ゆうよ。われ汝に告げん。君子がくを好むはおごるなきがためなり。小人楽を好むはおそるるなきがためなり。それだれの子ぞや。我を知らずして我に従う者は。」
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
大広間にはもうがくの音が漂い、舞踏がはじまっていた。官舎の生活になずんでいた身には、ここの燭火も色彩も音楽も物の響きもあまりに印象が烈しすぎた。
がくと動とを整合せしむるが為に、演者の自然的動作を損傷して、緩急をがくに待つの余義なきを致さしむ。
劇詩の前途如何 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
氏は又印度インド人の歌を評して「夷狄いてきがくです」とも日本語で云ふのであつた。自分達は次のも柏亭さんと小林萬吾さんとを誘つてこの酒場キヤバレエへ行つた。(七月四日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そこには、アーチ形の古めかしい墓穴ぼけつが出てきたり、竪琴たてごといた天使が現われたり、物を言う花だの、はるかにただよってくるがくだの、たいした道具だてだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
西洋の名手とまで行かぬ人でもがくの大切な面白い所へくると一切夢中になってしまうそうだ。
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ただ軽やかな夢ばかり、夏の麗わしい日に見られる聖母の糸(空中にかかって浮んでる蜘蛛の糸——訳者)のように太陽の光線の中に漂ってる、朗らかながくばかり……。
嵐の如くいよ/\たけなはにしていよ/\急激に、聞く人見る人、目もくらみ心もくつがへがくまひ、忽然として止む時はさながら美しき宝石の、砕け、飛び、散つたのを見る時の心地こゝちに等しく
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
鴎外の翻訳だと、「がくの音はたとやみぬ」とでも云いそうに、旋律は途絶えました。
ジンタジンタのがくに、楽しく廻るメリー・ゴー・ラウンド、など、など、など
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もうおもてをかけんとおかしいのう。面をかけると序の舞やらがくやら舞うけに面白いがのう。ハテ。何にしようか。今度一度だけ『小督こごう』にしようか。うむ、『小督』にしよう『小督』にしよう。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
守備隊の軍楽手が奏する悲しいがくが、夜の空に細々と消えて行った。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
それは八五郎が今まで聞いた、どんな経文よりも快適なひびきを持ったものでした。祈祷の続くうち、どこからともなくゆるやかながくが響いて、若い女の和讃が、静かに静かに聞えて来るのでした。
死骸が倒れると、怪しいがくの声もやんだ。彼は死骸を背負って帰った。
がくは、もう明らかにはっきりと彼の耳へ迫って来た。
教坊のがくと脂粉の香のまじる夏の夕に会へるものかな
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
するどにわかく、はた、にがく狂ひただるるがくの色。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あれがくの音がかすかに微かに浮んでくる
うし (新字旧仮名) / 濤音(著)
わが聞くがくはしほたれぬ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
迎えの灯と、列の灯とが合流して、目代もくだい邸のほうへ押流れた。寺でも神社でも、かがりいていた。どこかで、鈴や笛や鉦鼓しょうこなどのがくが遠く聞えていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「詩によって情意を刺戟し、礼によって行動に基準を与え、がくによって生活を完成する。これが修徳の道程だ。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その時南から吹く温かい風に誘われて、閑和のどかがくが、細く長く、遠くの波の上を渡って来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
がく六芸りくげいの一つに加えているのに、今の儒者共で、孔夫子のいわゆる楽を心得た奴が幾人ありますか……それはそれとして、今度はひとつ、その山陽流をやってみましょう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その火がだんだんうしろの方になるにつれて、みんなはなんともえずにぎやかな、さまざまのがくや草花のにおいのようなもの、口笛くちぶえや人々のざわざわう声やらを聞きました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
がくが空中に起こって、銀のような鈴の音のまわりに、はちの群みたいに飛び回っていた。そして規則的な馬車の響きの上に楽しくゆらめいていた。それは尽くることなき歌の泉だった。
「礼と云い礼と云う。玉帛ぎょくはくを云わんや。がくと云い楽と云う。鐘鼓しょうこを云わんや。」などというと大いによろこんで聞いているが、曲礼きょくれいの細則を説く段になるとにわかにまらなさそうな顔をする。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
管絃かんげんがくを奏する者もあった。当日の賓客は男ばかりではこちたくてきょうが薄いというので、なにがしの女房たちや、なにがしの姫たちもみな華やかなよそおいを凝らして、その莚につらなっていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たゞ、詩の神の箜篌くごの上、指をふるれば、わががく
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
なやみかすけき Chopinシオパンがくのしたたり
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
匂ひのがくジユエするなか
天地怪しきがくをかなで
をどりの、がくの、歌の月
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
賀莚がえんに歓迎のがくに、また新たな気勢を加えて梁山泊の山海はいた。しかしここにはしばらく語るべき事件もない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「礼だ、礼だ、と大さわぎしているが、礼とはいったい儀式用のぎょくはくのことだろうか。がくだ、がくだ、と大さわぎしているが、楽とはいったい鐘や太鼓のことだろうか。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
なるほど音楽はかかる時、かかる必要にせまられて生まれた自然の声であろう。がくくべきもの、習うべきものであると、始めて気がついたが、不幸にして、その辺の消息はまるで不案内である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は酔ったような心持で、そのがくの流れて来る方をそっと窺うと、日本にっぽん長柄ながえ唐傘からかさに似て、そのへりへ青や白の涼しげな瓔珞ようらくを長く垂れたものを、四人の痩せた男がめいめいに高くささげて来た。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
きずに悩める胸もどき、ヴィオロンがく清掻すががき
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
血のごともくもふるがくわななくなかに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
がくが裂ける……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
がくかなでよ。