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枕頭
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まくらもと
ふりがな文庫
“
枕頭
(
まくらもと
)” の例文
それで、一般に町人の若い者たちは、心掛けの好いものは、
手鍵
(
てかぎ
)
、差し子、
草鞋
(
わらじ
)
、
長提灯
(
ながぢょうちん
)
に
蝋燭
(
ろうそく
)
を添えて
枕頭
(
まくらもと
)
に置いて寝たものです。
幕末維新懐古談:16 その頃の消防夫のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
夜具は申すまでもなく、
絹布
(
けんぷ
)
の上、
枕頭
(
まくらもと
)
の
火桶
(
ひおけ
)
へ
湯沸
(
ゆわかし
)
を掛けて、茶盆をそれへ、煙草盆に火を生ける、手当が行届くのでありまする。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、眠っているうちに何か
枕頭
(
まくらもと
)
で物の気配がするので、ふと気が
注
(
つ
)
いて眼をうすめに開けてみた。道家は
右枕
(
みぎまくら
)
になって寝ていた。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お庄があわてて
枕頭
(
まくらもと
)
へ顔を持って行くと、叔母は鈍いうっとりした目を開いて、一両日姿を見せない叔父のことを気にかけて訊いた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
愛兒の
枕頭
(
まくらもと
)
に立つて、其の寢顏に見入つてゐる母の爲めに、文吾はいつまでも狸寢入りをしてゐなければならないやうな氣がした。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
▼ もっと見る
其証拠とも云う
可
(
べ
)
きは寝床の用意既に整い、寝巻及び肌着ともに寝台の
傍
(
わき
)
に
出
(
いだ
)
しあり
猶
(
な
)
お
枕頭
(
まくらもと
)
なる
小卓
(
ていぶる
)
の上には
寝際
(
ねぎわ
)
に
飲
(
のま
)
ん為なるべく
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
と云つたが、急にニヤ/\と笑つて立戻つて来て、私の
枕頭
(
まくらもと
)
に膝をつく。また
戯
(
ぢや
)
れるなと思ふと、不恰好な赤い手で蒲団の襟を敲いて
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
危険の間、ジルノルマン氏は孫の
枕頭
(
まくらもと
)
につき添いながら
惘然
(
ぼうぜん
)
として、マリユスと同様に死んでるのか生きてるのかわからなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
の火鉢の上の鐵瓶の口から、さかんに立昇る湯氣を見てゐるところに、こまつちやくれの下宿の
小婢
(
ちび
)
が、來客のある事を告げに來た。
貝殻追放:013 先生の忠告
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
とにかく、数分の後、義夫は診察室の一隅にあるベッドの上に仰向きに寝かされ、
枕頭
(
まくらもと
)
に私と妻とが立って
創口
(
きずぐち
)
を検査しました。
安死術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
で
喚覚
(
よびさ
)
ます下女の声に見果てぬ夢を驚かされて、文三が
狼狽
(
うろたえ
)
た顔を振揚げて向うを見れば、はや障子には朝日影が斜めに
射
(
さ
)
している。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お房の
枕頭
(
まくらもと
)
には黒い布を掛けて、光を
遮
(
さえぎ
)
るようにしてあった。お房は半分夢中で、下口唇を突出すようにして、苦しそうな息づかいをした。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
主人の少女は小さな箱から氷の
片
(
かけ
)
を二ツ三ツ、皿に乗せて出して、少年の
枕頭
(
まくらもと
)
に
置
(
おい
)
て、「もう
此限
(
これぎり
)
ですよ、また
明日
(
あした
)
買ってあげましょうねエ」
二少女
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
には軍医や看護婦が居て、其外
彼得堡
(
ペテルブルグ
)
で有名な
某
(
ぼう
)
国手
(
こくしゅ
)
がおれの
傷
(
て
)
を負った足の上に
屈懸
(
こごみかか
)
っているソノ
馴染
(
なじみ
)
の顔も見える。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
あくる日の朝、目をぱっちりあけて見ますと、
破
(
こわ
)
れた船の中に自分は眠ていて、まりも
枕頭
(
まくらもと
)
でごろごろごろついています。
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
松村は、長い間の研究が、一段落を告げたと見えて、机の前から立上って私の
枕頭
(
まくらもと
)
へ坐った。そして少し言いにく
相
(
そう
)
に
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
術無
(
じゆつな
)
き声は
謂知
(
いひし
)
らず母の胸を刺せり。彼はこの子の幼くて善く病める
枕頭
(
まくらもと
)
に居たりし心地をそのままに覚えて、ほとほとつと寄らんとしたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
寢轉
(
ねころ
)
んで
讀書
(
どくしよ
)
してゐる
枕頭
(
まくらもと
)
にお
行儀
(
げうぎ
)
よくおちんをしてゐる、
叱
(
しか
)
つても
逃
(
に
)
げない、
庭
(
には
)
へつまみ
出
(
だ
)
す、また
這入
(
はい
)
つてくる、
汚物
(
をぶつ
)
をたれ
流
(
なが
)
す、
下女
(
げぢよ
)
が
怒
(
おこ
)
る。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
まだ幼い時分に、母が目覚しを
枕頭
(
まくらもと
)
に置いていて、「これッこれッ。」と呼び覚していたと同じような気がしていた。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
眞夜中頃に、
枕頭
(
まくらもと
)
の違棚に据ゑてある、四角の
紫檀
(
したん
)
製の枠に嵌め込まれた十八世紀の置時計が、チーンと銀椀を象牙の箸で打つ樣な音を立てゝ鳴つた。
京に着ける夕
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女は、頻りに地質もよさそうだと、
枕頭
(
まくらもと
)
で呟いたりしていた。子供がほしいものはまた彼女のほしいものだった。
窃む女
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
その身は静に男の羽織着物を畳んで
角帯
(
かくおび
)
をその上に載せ、
枕頭
(
まくらもと
)
の煙草盆の火をしらべ、
行燈
(
あんどう
)
の
燈心
(
とうしん
)
を少しく引込め、引廻した
屏風
(
びょうぶ
)
の
端
(
はし
)
を引直してから
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
これが恐ろしく
小笠原流
(
おがさわらりゅう
)
で——それで何をするのかと思うと、
枕頭
(
まくらもと
)
に
蒔絵
(
まきえ
)
の
煙草盆
(
たばこぼん
)
を置きに来たに過ぎなかった。
丹那山の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
竹田は今更茶でもないので、
枕頭
(
まくらもと
)
に坐つて看病してゐると、
暁方
(
あけがた
)
に広樹は重さうな頭をもち上げて竹田を見た。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「何を言う! 現に余がこの眼で見、この手にとり、その壺を
枕頭
(
まくらもと
)
にひきすえて、やっとのことでお蓮を遠ざけ、
離室
(
はなれ
)
で一人寝についたのだが、すると——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
には新聞が投げ込まれていた。彼は眼をこすりながら、その新聞を取ろうとした。すると、新聞の上から疊へぱたりと落ちたものがあった。一枚の絵葉書だった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それでも、彼れは
枕頭
(
まくらもと
)
の手文庫をかゝへて走り出しましたが、入口でしたゝか足を払はれて転んだ拍子に、飛び出して来た人間にその文庫は奪はれてしまつたのでした。
火つけ彦七
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
私がお抱き申して
枕頭
(
まくらもと
)
へ参りますとネ、細ウいお手に、
楓
(
もみぢ
)
の様な可愛いお手をお取りなすつて、梅ちやんと一と声遊ばしましたがネ、お嬢様が
平生
(
いつも
)
の様に未だ
片言交
(
かたことまじ
)
りに
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
美妙は大変喜んだので、家人も厚く感謝して大切にし、病人の外は子供にさえも手をつけさせなかったそうで、
黴
(
かび
)
の
生
(
は
)
えたシュークリームが臨終の
枕頭
(
まくらもと
)
に残っていたそうだ。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
死ぬる前日は、父に負われて屋敷内を廻ってもらって喜んだ。其翌日も父は負って出た。父が唯一房咲いた藤の花を折ってやったら、彼女は
枕頭
(
まくらもと
)
の土瓶に插して眺めて喜んだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
手紙でも書くのに夢中になっていたらしい若い看護婦が、愕いて彼の
枕頭
(
まくらもと
)
に
馳
(
は
)
せよった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして落ち着き払って、
枕頭
(
まくらもと
)
の煙草盆をひきよせて、一服ふかして
ある遊郭での出来事:公娼存廃論者への参考資料としての実例
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
の烟草盆を間に置いて二人は坐りぬ、姉さんがさう
仰
(
おっし
)
やるからは定めてわけがございませうが、お迎の時からこの
間
(
ま
)
に来るまで、何だか知れぬ事だらけで、夢を見るやうな気がしてなりませぬ
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
衝突
現場
(
げんじょう
)
附近の
烏頭
(
うとう
)
外科医院に入院していた
乳搾
(
ちちしぼり
)
少年、山口猿夫は左脚に巨大な
石膏型
(
ギプス
)
をはめたまま意識を回復していた。
枕頭
(
まくらもと
)
には妹田農場の牧場主任と園芸主任が突立ってヒソヒソ話をしていた。
衝突心理
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
奥さんでなければ開けられないので、あたしが
枕頭
(
まくらもと
)
に持って行って開けたの。中にはいろいろ細かい事が書いてあったけれども、別に一枚の紙があって、思いがけない大変なことが書いてあったの。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
の一刀を手早く手元に引付けながら、
慄
(
ふる
)
える声を出して
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
張鎰は驚いて
自個
(
じぶん
)
の家で寝ている倩娘の
枕頭
(
まくらもと
)
へ往った。
倩娘
(新字新仮名)
/
陳玄祐
(著)
女は着物をしあげるとたたんで
枕頭
(
まくらもと
)
へ置いていった。
翩翩
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
先代の幽霊が血だらけになって私の
枕頭
(
まくらもと
)
に現われ
銭形平次捕物控:056 地獄から来た男
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
遠い港の情婦の写真なども
枕頭
(
まくらもと
)
に飾ってあった。
海妖
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
小親
行
(
ゆ
)
きて、泣く泣く小六の
枕頭
(
まくらもと
)
にその恐しきこと語りし時、
渠
(
かれ
)
の
剛愎
(
ごうふく
)
なる、ただ
冷
(
ひやや
)
かに笑いしが、われわれはいかに悲しかりしぞ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜叉の鼾は林の中へ響きわたるように聞えていた。大異は跫音のしないように夜叉の
枕頭
(
まくらもと
)
を通って、すこし往ったところで走りだした。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
寝直そうと手燭を
枕頭
(
まくらもと
)
の台の上へ置いたが、流石の余もゾッとする事がある、余の新しい白い枕の上へ、二三点血が落ちて居る
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
病人の
枕頭
(
まくらもと
)
などで、おそろしいお増の顔と面と、向き合っている時ですら、お今はやるせない思いに、胸を
唆
(
そそ
)
られるのであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
は僕の
枕頭
(
まくらもと
)
へも来た。
慣
(
な
)
れなければ、鼠だつて気味が悪いぢやないか。あまり不思議だから、今朝其話をしたら、奥様の言草が面白い。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
司教の室のうちには、寝台の
枕頭
(
まくらもと
)
に小さな戸棚が一つあった。マグロアールはその中に毎晩六組みの銀の食器と一本の大きな匙とをしまった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
の障子には、わづかに水を
撒
(
ま
)
いた許りの
薄光
(
うすひかり
)
が聲もなく動いて居る。前夜お苑さんが、物語に氣を取られて雨戸を閉めるのを忘れたのだ。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一時過ぎてから門を
潜
(
くぐ
)
って庭から廻り四畳半の
老母
(
ばあ
)
さんに聞えぬようにお前の
枕頭
(
まくらもと
)
と思う六畳の縁側の戸を叩くと
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
真夜中頃に、
枕頭
(
まくらもと
)
の
違棚
(
ちがいだな
)
に
据
(
す
)
えてある、四角の
紫檀製
(
したんせい
)
の
枠
(
わく
)
に
嵌
(
は
)
め
込
(
こ
)
まれた十八世紀の置時計が、チーンと
銀椀
(
ぎんわん
)
を
象牙
(
ぞうげ
)
の
箸
(
はし
)
で打つような音を立てて鳴った。
京に着ける夕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は一つ大きく伸びをして、下宿の
主婦
(
おかみ
)
が置いて行ってくれた、
枕頭
(
まくらもと
)
の新聞を拡げると、彼の癖として
先
(
ま
)
ず社会面に眼を通した。別に面白い記事も見当らぬ。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“枕頭”の意味
《名詞》
枕頭(ちんとう)
枕元。
(出典:Wiktionary)
枕
常用漢字
中学
部首:⽊
8画
頭
常用漢字
小2
部首:⾴
16画
“枕頭”で始まる語句
枕頭鳥不啼