かま)” の例文
身綺麗みぎれいにはしていても髪容かみかたちかまわない。それなのにあの円顔の目と口とには、複製図で見た Monnaモンナ Lisaリイザこびがある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
中がらすの障子のうちには今様いまやう按察あぜち後室こうしつ珠数じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやと思はるる、その一トかまへが大黒屋の寮なり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
由「これで宜しいたって、言いかけてめてはいけません、かまわないからあとをお聞かせなさい是非……まアお坐りなさい」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わしの留守でもかまはずづんづん上るものがあるといふ事ぢやが、これからはそんな事があつたら、親類でも何でも構はぬ、とつとといんで貰ふがよい。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
しかし楓江を知る者は皆その胸襟きょうきんの歴落たるを喜び、目するに奇士を以てしたという。楓江は嘉永二年『海外新話』を著したため江戸かまいの刑に処せられた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
人の噂を聞くに、この貴人はボルゲエゼのうからにて、アルバノとフラスカアチとの間に、大なる別墅べつしよかまへ、そこのそのにはめづらしき草花を植ゑてたのしみとせりとなり。
悠然いうぜん車上しやじようかまんで四方しはう睥睨へいげいしつゝけさせる時は往来わうらいやつ邪魔じやまでならない右へけ左へけ、ひよろひよろもので往来わうらい叱咜しつたされつゝ歩く時は車上しやじようの奴やつ癇癪かんしやくでならない。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
なんゆえにこの裝飾品そうしよくひんうばふはたん斬取強盜きりどりごうとう所爲しよいにしていやしくも理論りろんかまへたる大學生だいがくせいすべからざるところなるをわすれしか、是等の凡ての撞着、是等の凡ての調子はづれ、是等の凡ての錯亂
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
なかがらすの障子しようじのうちには今樣いまやう按察あぜち後室こうしつ珠數じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやとおもはるゝ、その一ツかまへが大黒屋だいこくやりようなり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
われは此俗を歌ふ一曲の人口に膾炙くわいしやするものあるを知れど、急にこれに依りて思をかまふること能はず
何か書き掛けていたらしいので「お邪魔なら又参ります」と云うと「かまわないよ、器械的に書いているのだから、いつでもめて、いつでも続けられる。重宝な作品だ」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それにしても今時分、ここらをその姿で、ムム分りしさては浅木君はやはりそなたにかまはぬな。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
伊「ナニ結構でもかまやア致しません」
見得をかまはず豆なり栗なり気に入つたを喰べて見せておくれ、いつでも父様ととさんうわさすること、出世は出世に相違なく、人の見る目も立派なほど
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かまひませんよ、どうせ私は捨ものですから、と花子はいつしか涙声になり、それで分りました、式を挙げるまでは誰にもいはないやうに、そして君子さんには決して僕の名前を告げちやアいけない
当世二人娘 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
かまうものか」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
見得みえかまはずまめなりくりなりつたをべてせておれ、いつでも父樣とゝさんうわさすること、出世しゆつせ出世しゆつせ相違さうゐなく、ひと立派りつぱなほど
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでもお前寒からうでは無いか風を引くといけないと気を付ければ、引いても宜いやね、かまはずに置いておくれと下を向いてゐるに、お前はどうかおしか
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白粉おしろいつけて衣類きものきて迷ふて来る人をれかれなしに丸めるがあの人達が商売、ああれが貧乏に成つたからかまいつけてくれぬなと思へば何の事なくすみましよう
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白粉おしろいつけて衣類きものきてまよふてひとれかれなしにまるめるが人達ひとたち商買しやうばい、あゝれが貧乏びんぼうつたからかまいつけてれぬなとおもへばなんことなくすみましよう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かまふ事はない呼出しており、私しのなぞといつたら野郎が根から心替りがして顔を見てさへ逃げ出すのだから仕方がない、どうであきらめ物で別口へかかるのだがお前のはそれとは違ふ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白粉おしろいをつけぬがめつけものなれど丸髷まるまげおほきさ、ねこなでごゑしてひとぬをもかまはず、大方おほかた臨終おしまいかね情死しんじうなさるやら、れでも此方こちどものつむりあがらぬはもの御威光ごいくわう、さりとはしや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兩親りやうしんおくれし以來いらいびし背丈せたけたれ庇護かげかは、幼稚えうちをりこゝろならひに、つゝしみもなくれまつはりて、鈇石てつせきこゝろうごかせしは、かまへて松野まつのとがならずこゝろのいたらねばなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
如是我聞によぜがもん佛説阿彌陀經ぶつせつあみだけうこゑ松風まつかぜくわしてこゝろのちりも吹拂ふきはらはるべき御寺樣おんてらさま庫裏くりより生魚なまうをあぶるけぶなびきて、卵塔塲らんたうば嬰兒やゝ襁褓むつきほしたるなど、お宗旨しうしによりてかまひなきことなれども
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何と御覧じたか田中屋の後家さまがいやらしさを、あれで年は六十四、白粉おしろいをつけぬがめつけ物なれど丸髷まるまげの大きさ、猫なで声して人の死ぬをもかまはず、大方臨終おしまいは金と情死しんじうなさるやら
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本当だぜ彼奴あいつはきつと怒るよ、真青に成つて怒るよ、にゑ肝だからね、赤くはならない、それとも笑ふかしら、笑はれてもかまはない、大きく取つて看板に出たらいな、お前は嫌やかへ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
奧樣おくさま立上たちあがつて、わたし大層たいそう邪魔じやまをしました、それならばるべくはややすむやうにおわたしつてるばかりの身體からだやへあいだことさむいとても仔細しさいはなきに、かまひませぬかられをておいで
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私が少しもお前の身なら非人でも乞食でもかまひはない、親が無からうが兄弟がどうだらうが身一つ出世をしたらばからう、何故そんな意気地なしをお言ひだと励ませば、己れはどうしても駄目だよ
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)