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拳固
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げんこ
ふりがな文庫
“
拳固
(
げんこ
)” の例文
八五郎は、裏口へ寄り添ったまま、弥蔵の中から取っておきの
拳固
(
げんこ
)
を出して、そうッと撫でるように、二つ三つ雨戸へ触ってみました。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
馬鹿者の生命と俺の生命とを同じ価値だとするなんて、なんという平等さだ!
拳固
(
げんこ
)
と棒とで戦うんだったら! それこそ素敵だ。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
トクさんは塩辛くて喰べられないというし、ピロちゃんは鮎子さんがいつまでも
食卓
(
テーブル
)
にへばりついているといって
拳固
(
げんこ
)
で背中をこづいた。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
岡村は口をつぐみ、それから、ひそめた声で云った、「私はときどき貴方の顔を、
拳固
(
げんこ
)
で思うさま殴りつけたくなることがある」
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は、右手を、喰い込むようなガラスの割れ目へ威勢よくつっこみ、そして、その血みどろな
拳固
(
げんこ
)
でヴィオロオヌを
威嚇
(
いかく
)
した。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
と力を入れて新吉の手を逆に
把
(
と
)
って
捻
(
ねじ
)
り、
拳固
(
げんこ
)
を振り上げてコツ/\
撲
(
ぶ
)
ったから痛いの痛くないのって、眼から火の出るようでございます。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人の前でたけりたって
拳固
(
げんこ
)
をふりながらおどしつけているルバーシカに長靴ばき、赤髯の強慾そうなつらがまえの中親父。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
拳固
(
げんこ
)
……
抓
(
つね
)
り
餅
(
もち
)
、……
赤
(
あか
)
いお
團子
(
だんご
)
。……それが
可厭
(
いや
)
なら
蝦蛄
(
しやこ
)
の
天麩羅
(
てんぷら
)
。」と、
一
(
ひと
)
ツづゝ
句切
(
くぎ
)
つて
憎體
(
にくた
)
らしく
節
(
ふし
)
をつける。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
マルメラードフは、
拳固
(
げんこ
)
で一つ自分の額をこつんとたたき、歯をくいしばり目を閉じて、しっかとテーブルに
肘
(
ひじ
)
をついた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
それをきいたかぼちやの
怒
(
をこ
)
つたの
怒
(
をこ
)
らないのつて、
石
(
いし
)
のやうな
拳固
(
げんこ
)
をふりあげて
飛
(
と
)
び
懸
(
かか
)
らうとしましたが、
蔓
(
つる
)
が
足
(
あし
)
にひつ
絡
(
から
)
まつてゐて
動
(
うご
)
かれない。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
この、いわゆる真の鬼火を見たという人々の談によると、その大きさは
拳固
(
げんこ
)
あるいはろうそくの光ほどで、地面より二、三フィート上を
徘徊
(
はいかい
)
する。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
と云ううちに、右の手で岩のような
拳固
(
げんこ
)
を作って、お神さんの右の
横面
(
よこつら
)
をグワーンとなぐりつけました。お神さんは
豚吉とヒョロ子
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
三鳥山人
(著)
老人はしばらく身動きもせず、雷に打たれたようになり、口をきくことも息をすることもできず、あたかも
拳固
(
げんこ
)
で
喉
(
のど
)
をしめつけられてるがようだった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
始て
怖気付
(
おじけづ
)
いて
遁
(
に
)
げようとするところを、
誰家
(
どこ
)
のか小男、
平生
(
つね
)
なら持合せの黒い
拳固
(
げんこ
)
一撃
(
ひとうち
)
でツイ
埒
(
らち
)
が明きそうな小男が飛で来て、銃劒
翳
(
かざ
)
して胸板へグサと。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
見ると両方の手がもう半分ぐらい
拳固
(
げんこ
)
の形になっています。先日の手練のほどを思い出して、僕はすこし気持がひるみましたが、それでもなお元気を出して
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その大きな眼をむいて
拳固
(
げんこ
)
をふりかざしておきながら、すぐその手でやさしく児童たちの頭をなで、「これから気をつけるんだぞ。」と言って、それっきり
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
障子の影で自分も泣いている——
何卒
(
どうか
)
して子供を自然に育てたい、
拳固
(
げんこ
)
の一つも
食
(
くら
)
わせずに済むものならなるべくそんな手荒いことをせずに子供を育てたい
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は
拳固
(
げんこ
)
をこしらえると自分の頭をごつんと一撃してからそのトランクの口を
閉
(
し
)
めて再び店の一隅へ並べた。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
起きぬけに木の下で冷たい水蜜桃をもいでがぶりと喰いついたり、朝露に冷え切った
水瓜
(
すいか
)
を畑で
拳固
(
げんこ
)
で
破
(
わ
)
って食うたり、自然の子が自然に還る快味は言葉に尽せぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
赤い友禅の
袖
(
そで
)
の長いのを
著
(
き
)
ていましたが、誰かの黒っぽい羽織を上に引張って
手拭
(
てぬぐい
)
で
頬被
(
ほおかぶり
)
をし、遊び人とでもいうつもりでしょう、
拳固
(
げんこ
)
を
懐
(
ふところ
)
から
覗
(
のぞ
)
かせて歩くのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
「先生、おたあがおいらを
睨
(
にら
)
みました、帰りに覚えてろといって、
拳固
(
げんこ
)
をこしらえて見せました」
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その代りだ、見付けた者が一番威張るということにして、敗けた二人は仕方がない、お辞儀をする。そうして一つ
拳固
(
げんこ
)
で頭をこつん。これくらいの余興がないと面白くない
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
やあ火の玉の親分か、わけがある、
打捨
(
うっちゃ
)
っておいてくれ、と力を限り払い
除
(
の
)
けんと
踠
(
もが
)
き
焦燥
(
あせ
)
るを、
栄螺
(
さざえ
)
のごとき
拳固
(
げんこ
)
で
鎮圧
(
しず
)
め、ええ、じたばたすれば
拳
(
は
)
り殺すぞ、馬鹿め。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
新井田氏の玄関によろけこむと、渡瀬は
拳固
(
げんこ
)
で涙と鼻水とをめちゃくちゃに押しぬぐいながら
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
但し演壇をあちこち歩き廻ったり、
拳固
(
げんこ
)
を振りまわす労力はこの外であるのは勿論の事だ。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「立てるか、ウム?」そう言って、いきなり横ッ面を
拳固
(
げんこ
)
でなぐりつけた。逃亡者はまるで芝居の型そっくりにフラフラッとした。頭がガックリ前にさがった。そして
唾
(
つば
)
をはいた。
人を殺す犬
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
それは玄関の戸の
蝶番
(
ちょうつがい
)
の音らしいものでした。——私は寝台の上に起き上がって、自分が本当に目を覚ましているのかどうかを確かめるため、
拳固
(
げんこ
)
で、寝台のフチをたたいてみました。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
テンコツさんのいわれは知らない。一度何のことかと父に
訊
(
き
)
いたら、
拳固
(
げんこ
)
をかためて頭のところへもっていったようなことをしたが、私にはなんのことなのか分ったようで
訳
(
わか
)
らなかった。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
千登世が、さういふのを待つてゐたやうに、深水は、ポンと
拳固
(
げんこ
)
で膝を叩いた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
続いて第二発目のストキの
拳固
(
げんこ
)
がボースンの横っ腹へ飛んで来た。と同時に
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
そのとたんにぽかんと
拳固
(
げんこ
)
がとんできそうな気がするし、一度などは与吉が道路にしゃがんでわらじを結びなおすと、泰軒は平然とそばに立って待っている始末で、駒形名うてのつづみの与吉
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ワーリャ (涙ごえで)ええ、こうしてやりたい……(
拳固
(
げんこ
)
でおどす)
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
闇太郎も、法印も、むこうを向くようにして、
拳固
(
げんこ
)
で、目を引っこすっていた——苦労を積んだ男たちだから、恋に狂い、恋に死ぬおんなの、世にもあわれな気持は十分にわかるに相違なかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
すると女は、いきなり僕の胸を力一杯の
拳固
(
げんこ
)
で突き
飛
(
とば
)
した。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
「酒を
振舞
(
ふるま
)
はなきや、
此方
(
こつち
)
から
拳固
(
げんこ
)
を振舞つてやら。」
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
再び坐れば、汚ないカフスに半ば隠れた
拳固
(
げんこ
)
して
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
「約束を破れば
拳固
(
げんこ
)
で一万たたくんです」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
拳固
(
げんこ
)
で
背中
(
せなか
)
をどやしつけられた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
八五郎は、裏口へ寄り沿つたまゝ、彌造の中から取つて置きの
拳固
(
げんこ
)
を出して、そうツと撫でるやうに、二つ三つ雨戸へ
觸
(
さは
)
つて見ました。
銭形平次捕物控:015 怪伝白い鼠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
壁に向かって
拳固
(
げんこ
)
や足や頭でぶつかってゆき、わめきたて、
痙攣
(
けいれん
)
に襲われ、家具に突き当って怪我しながら下に倒れてしまった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それからどこかへ行って、
尻尾
(
しっぽ
)
で輪を作ってその中に
坐
(
すわ
)
り、
拳固
(
げんこ
)
のように格好よく引き締った頭で、余念なく夢想に
耽
(
ふけ
)
る。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「それだってかまわないさ。とにかく救い出してやらなくちゃ」とラズーミヒンは
拳固
(
げんこ
)
でテーブルをたたいて叫んだ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
両方の眼を
拳固
(
げんこ
)
で力一パイこすりまわした。寝台の足の先の処をジイッと
凝視
(
みつめ
)
たまま、石像のように固くなった。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
拳固
(
げんこ
)
を食わせることも、かなり尊敬さるる方法である。浮浪少年が最も好んで言う一事は、「おれはすてきに強いんだぞ、いいか!」ということである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「弱い野郎でね、二つ三つ
拳固
(
げんこ
)
をくらわしてから、松島町の番所へ突き出してやりました」と芳造は云った
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金博士が、醤に負けないような大きな声を出し、
怒
(
おこ
)
った
蟷螂
(
かまきり
)
のような
恰好
(
かっこう
)
で、
拳固
(
げんこ
)
で天をつきあげた。
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
長い事、煙草をふかして居た甚五郎は「やっこらさ」と立ちあがって、祖母の居る茶の間の入口に小山の様に大きく膝をついて
拳固
(
げんこ
)
にした両手の間に頽げて寒そうな頭を落す。
農村
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
拳固
(
げんこ
)
で、前の円い頭をコツンと
敲
(
たた
)
く真似して、宗吉を
流眄
(
ながしめ
)
で、ニヤリとして続いたのは、
頭毛
(
かみのけ
)
の
真中
(
まんなか
)
に皿に似た
禿
(
はげ
)
のある、色の黒い、目の
窪
(
くぼ
)
んだ、口の
大
(
おおき
)
な男で、近頃まで政治家だったが
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
隠居が熊を憎むのは、みんなの愛がこの小さな動物にそそがれるためだともいう。どうかすると隠居は、おまんや下女たちの見ていないところで、人知れずこの黒猫に
拳固
(
げんこ
)
を見舞うことがある。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「メリヤスの新しいシャツが一枚あれば」波田は「どのくらい暖かいだろうなあ」と思いながら油と
垢
(
あか
)
とでガワガワになったズボンのポケットの中で、
拳固
(
げんこ
)
を力一杯で握り固めたり、延ばしたりした。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
拳
常用漢字
中学
部首:⼿
10画
固
常用漢字
小4
部首:⼞
8画
“拳”で始まる語句
拳
拳銃
拳骨
拳闘
拳法
拳大
拳下
拳闘家
拳突
拳石