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憑
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よ
ふりがな文庫
“
憑
(
よ
)” の例文
抽斎は師迷庵の校刻した
六朝本
(
りくちょうぼん
)
の如きは、
何時
(
なんどき
)
でも
毎葉
(
まいよう
)
毎行
(
まいこう
)
の文字の配置に至るまで、
空
(
くう
)
に
憑
(
よ
)
って思い浮べることが出来たのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
銀杏を撫で石壇を攀ぢ御前に一禮したる後瑞垣に
憑
(
よ
)
りて見下ろせば數百株の古梅ややさかりを過ぎて散りがてなるも哀れなり。
鎌倉一見の記
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
木像、
神
(
しん
)
あるなり。神なけれども霊あって来り
憑
(
よ
)
る。山深く、里
幽
(
ゆう
)
に、堂宇
廃頽
(
はいたい
)
して、いよいよ活けるがごとくしかるなり。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これを思えば、君に
憑
(
よ
)
って話すなかれ封侯のこと。一将功成って万骨枯る、とシナ古代の詩人が詠じたるもはなはだ道理あることを覚うるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
作者は
空
(
くう
)
に
憑
(
よ
)
りて想ひ得しなるべく、又まことに空に憑りて想ひ得たりとせんかた、
藍本
(
らんぽん
)
ありとせんよりめでたからん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
いやしくも
憑
(
よ
)
るべきの原則あらば半片の故紙も以て勅撰の国史を抹殺するに憚からず。何ぞ一ヶの武蔵坊弁慶をや。
史論の流行
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
(著)
「おおかたお前の体面に関わるような不始末でもすると思ってるんだろう。それよりか、もう少しおれに
憑
(
よ
)
りかかって安心していたらいいじゃないか」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
篇
(
へん
)
『
飾馬考
(
かざりうまかんがへ
)
』『
驊騮全書
(
くわりうぜんしよ
)
』『
武器考證
(
ぶきかうしよう
)
』『
馬術全書
(
ばじゆつぜんしよ
)
』『
鞍鐙之辯
(
くらあぶみのべん
)
』『
春日神馬繪圖及解
(
かすがしんばゑづおよびげ
)
』『
太平記
(
たいへいき
)
』
及
(
およ
)
び
巣林子
(
さうりんし
)
の
諸作
(
しよさく
)
に
憑
(
よ
)
る
所
(
ところ
)
多
(
おほ
)
し
敢
(
あへ
)
て
出所
(
しゆつしよ
)
を
明
(
あきらか
)
にす
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
僕はカッフェーの卓子に
憑
(
よ
)
って目には当世婦女の風俗を観、心には前代名家の文章を想い起すや、
喟然
(
きぜん
)
としてわが文藻の乏しきを悲しまなければならない。
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
博士は高い立派な椅子を与えられ、これに
憑
(
よ
)
りかかってやや
暫
(
しばら
)
く待っておられると、やがて開廷の時刻となり、判事らは各自の定めの席へと出て来たのである。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
それを焚けば精気が溶けて散じ、再び
聚
(
あつ
)
まることが出来なくなる。また何か
憑
(
よ
)
る所があれば妖をなす。それを焚けば憑る所をうしなう。それが物理の自然である。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その執念を晴らそうとして、変遷推移する世代から、犠牲の座に据えられた第一人者を選んで、いつでも
憑
(
よ
)
りつき乗りうつる。迢空さんはそういっているのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
されば富貴のみちは仏家にのみその
理
(
ことわり
)
をつくして、儒門の教は
八九
荒唐
(
くわうたう
)
なりとやせん。
九〇
霊
(
かみ
)
も仏の教にこそ
九一
憑
(
よ
)
らせ給ふらめ。
九二
否
(
いな
)
ならば
詳
(
つばら
)
にのべさせ給へ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
班固
(
はんこ
)
の『
白虎通
(
びゃっこつう
)
』にいわく猴は
候
(
こう
)
なり、人の食を設け機を伏するを見れば高きに
憑
(
よ
)
って四望す、
候
(
うかがう
)
に善きものなり、猴好んで面を
拭
(
ぬぐ
)
うて
沐
(
もく
)
するごとき故に沐猴という。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかして、古来幽霊のその形を現し、
狐狸
(
こり
)
の人に
憑
(
よ
)
るがごときは、みな遊魂の作用に帰せり。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
一夜
時頼
(
ときより
)
、
更
(
かう
)
闌
(
た
)
けて尚ほ眠りもせず、意中の
幻影
(
まぼろし
)
を追ひながら、爲す事もなく茫然として机に
憑
(
よ
)
り居しが、越し方、行末の事、
端
(
はし
)
なく胸に浮び、今の我身の有樣に引き
比
(
くら
)
べて
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「
自己
(
セルフ
)
」といふ柱に
憑
(
よ
)
りかゝりて、われ安し、われ楽しと喜悦するものゝ心は、常に枯木なり、花は
茲
(
こゝ
)
に咲かず、実は茲に熟せず。情は一種の電気なり、之あるが故に人は能く活動す。
「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
一日
昧爽
(
まいそう
)
、
櫛沐
(
しつもく
)
ニ
方
(
あた
)
リ、打門ノ声甚ダ急ナルヲ聞キ、楼欄ニ
憑
(
よ
)
ツテ
之
(
これ
)
ヲ観ルニ、客アリ。
清癯
(
せいく
)
鶴ノ如シ。戸ニ当リテ立ツ。スミヤカニ
倒屣
(
とうし
)
シテ之ヲ迎フ。既ニシテ門ニ入リ名刺ヲ出ダス。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
然り余は今は自己の善行に
憑
(
よ
)
らずして十字架上に現われたる神の小羊の贖罪に頼めり、この信仰こそ余が神の子供たるの証拠な
り
(
ママ
)
、キリストを十字に附けしものは
悉皆
(
しっかい
)
悪人無神論者なりしか
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
それは近親の女性の一人を
択
(
えら
)
んで、死者の霊をそれに
憑
(
よ
)
らしめ、その女が一定の方式によって、或る期間泉の水を浴びて
精進
(
しょうじん
)
をすると、死者は始めて天の庭に上ることができると信ぜられていた。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「汝はなんすれぞ斯くの如く
空
(
くう
)
に
憑
(
よ
)
って人の清白を汚す」
孔乙己
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
その医学生に
憑
(
よ
)
り付くという随分ゾットする小説である。
教育の目的
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
紫檀の机に
憑
(
よ
)
りかかり
したゆく水
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
憑
(
よ
)
りては移る
風病
(
ふうびやう
)
ぞ。
ねたみ
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
拭取りながら椅子に
憑
(
よ
)
り「唯だ大変とばかりでは分らぬが手掛でも有たのか(大)エ手掛、手掛は最初の事です最う
悉皆
(
すっかり
)
分りました
実
(
まこと
)
の罪人が—何町何番地の何の誰と云う事まで」荻沢は怪しみて「何うして分った(大)理学的論理的で分りました
而
(
しか
)
も非常な罪人です実に大事件です」
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
木像
(
もくざう
)
、
神
(
しん
)
あるなり。
神
(
しん
)
なけれども
霊
(
れい
)
あつて
来
(
きた
)
り
憑
(
よ
)
る。
山深
(
やまふか
)
く、
里
(
さと
)
幽
(
ゆう
)
に、
堂宇
(
だうう
)
廃頽
(
はいたい
)
して、
愈
(
いよ/\
)
活
(
い
)
けるが
如
(
ごと
)
く
然
(
しか
)
る
也
(
なり
)
。
甲冑堂
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
で、今頃は
其
(
そ
)
の窓も容赦なく
取毀
(
とりこわ
)
されて、
継母
(
ままはは
)
の執念も
其
(
そ
)
の
憑
(
よ
)
る所を失ったであろうか。
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鬼神のこれに
憑
(
よ
)
りて生ずるものならば、いかなる人ありてこれを行うも、鬼神の力よりその要するところの成績を示すべき理なれども、知識、学問あるものにはその
験
(
しるし
)
なく、無知
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
礮台を品海に築けば則ち曰く、「
疇昔
(
ちゅうせき
)
の戯談
呆堞
(
ぼうちょう
)
に
憑
(
よ
)
る、当今の急務
元戎
(
げんじゅう
)
にあり」と。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
隅田河口は年々陸地を拡げて品川沖は
殆
(
ほとん
)
ど埋れ尽さんとす。されど最新の式に
憑
(
よ
)
りて第四回の改築を行ひたる東京湾は桟橋
櫛
(
くし
)
の歯の如く並びて、林の如き
帆檣
(
はんしょう
)
安房上総
(
あわかずさ
)
の山を隠したり。
四百年後の東京
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
〈
会稽余姚
(
かいけいよよう
)
の人
銭祐
(
せんゆう
)
、夜屋後に出で、虎の取るところと
為
(
な
)
る、十八日すなわち自ら還り、説くに虎初め取る時、一官府に至り、一人几に
憑
(
よ
)
るを見る、形貌壮偉、侍従四十人、いいて曰く
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
博士は
赭顔鶴髪
(
しゃがんかくはつ
)
、例の制服を着けて平然判事席の椅子に
憑
(
よ
)
っておられるので、且つ驚き且つ怪しみ、何故ここにおられるぞと尋ねると、博士は云々の次第と答えて、更に驚いた様子も見えない。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
栄次郎は妹の力に
憑
(
よ
)
って勘当を免れ、暫く謹慎して大門を
潜
(
くぐ
)
らずにいた。その
隙
(
ひま
)
に司を
田舎大尽
(
いなかだいじん
)
が受け出した。栄次郎は
鬱症
(
うつしょう
)
になった。忠兵衛は心弱くも、人に栄次郎を吉原へ連れて
往
(
ゆ
)
かせた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
隣の女の肩にわざと
憑
(
よ
)
り掛りあるいは
窃
(
ひそか
)
に肩の後または尻の方へ手を廻して抱くとも抱かぬともつかぬ変な事をするものあり。女の前に立ちて両足の間に女の膝を入れて時々締めにかかる奴あり。
猥褻独問答
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
あなた以外にあたしは
憑
(
よ
)
りかかり所のない女なんですから。あなたに
外
(
はず
)
されると、あたしはそれぎり倒れてしまわなければならない心細い女なんですから。だからどうぞ安心しろと云って下さい。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唐
(
たう
)
の
開元年中
(
かいげんねんちう
)
の
事
(
こと
)
とぞ。
戸部郡
(
こぶぐん
)
の
令史
(
れいし
)
が
妻室
(
さいしつ
)
、
美
(
び
)
にして
才
(
さい
)
あり。たま/\
鬼魅
(
きみ
)
の
憑
(
よ
)
る
處
(
ところ
)
となりて、
疾病
(
やまひ
)
狂
(
きやう
)
せるが
如
(
ごと
)
く、
醫療
(
いれう
)
手
(
て
)
を
盡
(
つく
)
すといへども
此
(
これ
)
を
如何
(
いかん
)
ともすべからず。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
さらに疑いを起こしてこれを考うるに、その動くも、その傾くも、鬼神のこれに
憑
(
よ
)
りて生ずるところなりというも、知識、学問のあるものにはその験なく、無知、不学のものにはその験あり。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
わが、
唐木
(
からき
)
の机に
憑
(
よ
)
りてぽかんとした
心裡
(
しんり
)
の状態は
正
(
まさ
)
にこれである。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さきにすでに示すごとく、世間、コックリに配するに狐狗狸の語を用うるをもって、人その語を聞きてただちに狐狸の霊の来たり
憑
(
よ
)
るものと想定し、その名称すでに予期意向を促すの傾向あり。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
しかれども、これあえて鬼神の所為にあらず、狐狸の
憑
(
よ
)
るにあらず、電気作用にもあらず、有意作用にもあらず、別に道理上証明すべき種々の事情ありて、無意自然に回転、上下するに至るなり。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
憑
漢検1級
部首:⼼
16画
“憑”を含む語句
憑依
神憑
狐憑
取憑
憑拠
信憑
憑着
憑入
憑司
憑物
乗憑
憑付
天狗憑
信憑性
憑神
憑移
憑頼
憑體
憑殺
憑魔
...