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抽斎は師迷庵の校刻した六朝本りくちょうぼんの如きは、何時なんどきでも毎葉まいよう毎行まいこうの文字の配置に至るまで、くうって思い浮べることが出来たのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
銀杏を撫で石壇を攀ぢ御前に一禮したる後瑞垣にりて見下ろせば數百株の古梅ややさかりを過ぎて散りがてなるも哀れなり。
鎌倉一見の記 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
木像、しんあるなり。神なけれども霊あって来りる。山深く、里ゆうに、堂宇廃頽はいたいして、いよいよ活けるがごとくしかるなり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これを思えば、君にって話すなかれ封侯のこと。一将功成って万骨枯る、とシナ古代の詩人が詠じたるもはなはだ道理あることを覚うるなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
作者はくうりて想ひ得しなるべく、又まことに空に憑りて想ひ得たりとせんかた、藍本らんぽんありとせんよりめでたからん。
いやしくもるべきの原則あらば半片の故紙も以て勅撰の国史を抹殺するに憚からず。何ぞ一ヶの武蔵坊弁慶をや。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
「おおかたお前の体面に関わるような不始末でもすると思ってるんだろう。それよりか、もう少しおれにりかかって安心していたらいいじゃないか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
このへん飾馬考かざりうまかんがへ』『驊騮全書くわりうぜんしよ』『武器考證ぶきかうしよう』『馬術全書ばじゆつぜんしよ』『鞍鐙之辯くらあぶみのべん』『春日神馬繪圖及解かすがしんばゑづおよびげ』『太平記たいへいきおよ巣林子さうりんし諸作しよさくところおほあへ出所しゆつしよあきらかにす
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
僕はカッフェーの卓子にって目には当世婦女の風俗を観、心には前代名家の文章を想い起すや、喟然きぜんとしてわが文藻の乏しきを悲しまなければならない。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
博士は高い立派な椅子を与えられ、これにりかかってややしばらく待っておられると、やがて開廷の時刻となり、判事らは各自の定めの席へと出て来たのである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
それを焚けば精気が溶けて散じ、再びあつまることが出来なくなる。また何かる所があれば妖をなす。それを焚けば憑る所をうしなう。それが物理の自然である。
その執念を晴らそうとして、変遷推移する世代から、犠牲の座に据えられた第一人者を選んで、いつでもりつき乗りうつる。迢空さんはそういっているのである。
されば富貴のみちは仏家にのみそのことわりをつくして、儒門の教は八九荒唐くわうたうなりとやせん。九〇かみも仏の教にこそ九一らせ給ふらめ。九二いなならばつばらにのべさせ給へ。
班固はんこの『白虎通びゃっこつう』にいわく猴はこうなり、人の食を設け機を伏するを見れば高きにって四望す、うかがうに善きものなり、猴好んで面をぬぐうてもくするごとき故に沐猴という。
しかして、古来幽霊のその形を現し、狐狸こりの人にるがごときは、みな遊魂の作用に帰せり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
一夜時頼ときよりかうけて尚ほ眠りもせず、意中の幻影まぼろしを追ひながら、爲す事もなく茫然として机にり居しが、越し方、行末の事、はしなく胸に浮び、今の我身の有樣に引きくらべて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
自己セルフ」といふ柱にりかゝりて、われ安し、われ楽しと喜悦するものゝ心は、常に枯木なり、花はこゝに咲かず、実は茲に熟せず。情は一種の電気なり、之あるが故に人は能く活動す。
一日昧爽まいそう櫛沐しつもくあたリ、打門ノ声甚ダ急ナルヲ聞キ、楼欄ニツテこれヲ観ルニ、客アリ。清癯せいく鶴ノ如シ。戸ニ当リテ立ツ。スミヤカニ倒屣とうしシテ之ヲ迎フ。既ニシテ門ニ入リ名刺ヲ出ダス。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
然り余は今は自己の善行にらずして十字架上に現われたる神の小羊の贖罪に頼めり、この信仰こそ余が神の子供たるの証拠なママ、キリストを十字に附けしものは悉皆しっかい悪人無神論者なりしか
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
それは近親の女性の一人をえらんで、死者の霊をそれにらしめ、その女が一定の方式によって、或る期間泉の水を浴びて精進しょうじんをすると、死者は始めて天の庭に上ることができると信ぜられていた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「汝はなんすれぞ斯くの如くくうって人の清白を汚す」
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
その医学生にり付くという随分ゾットする小説である。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
紫檀の机にりかかり
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
りては移る風病ふうびやうぞ。
ねたみ (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
拭取りながら椅子にり「唯だ大変とばかりでは分らぬが手掛でも有たのか(大)エ手掛、手掛は最初の事です最う悉皆すっかり分りましたまことの罪人が—何町何番地の何の誰と云う事まで」荻沢は怪しみて「何うして分った(大)理学的論理的で分りましたしかも非常な罪人です実に大事件です」
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
木像もくざうしんあるなり。しんなけれどもれいあつてきたる。山深やまふかく、さとゆうに、堂宇だうう廃頽はいたいして、いよ/\けるがごとしかなり
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、今頃はの窓も容赦なく取毀とりこわされて、継母ままははの執念もる所を失ったであろうか。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鬼神のこれにりて生ずるものならば、いかなる人ありてこれを行うも、鬼神の力よりその要するところの成績を示すべき理なれども、知識、学問あるものにはそのしるしなく、無知
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
礮台を品海に築けば則ち曰く、「疇昔ちゅうせきの戯談呆堞ぼうちょうる、当今の急務元戎げんじゅうにあり」と。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
隅田河口は年々陸地を拡げて品川沖はほとんど埋れ尽さんとす。されど最新の式にりて第四回の改築を行ひたる東京湾は桟橋くしの歯の如く並びて、林の如き帆檣はんしょう安房上総あわかずさの山を隠したり。
四百年後の東京 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
会稽余姚かいけいよようの人銭祐せんゆう、夜屋後に出で、虎の取るところとる、十八日すなわち自ら還り、説くに虎初め取る時、一官府に至り、一人几にるを見る、形貌壮偉、侍従四十人、いいて曰く
博士は赭顔鶴髪しゃがんかくはつ、例の制服を着けて平然判事席の椅子にっておられるので、且つ驚き且つ怪しみ、何故ここにおられるぞと尋ねると、博士は云々の次第と答えて、更に驚いた様子も見えない。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
栄次郎は妹の力にって勘当を免れ、暫く謹慎して大門をくぐらずにいた。そのひまに司を田舎大尽いなかだいじんが受け出した。栄次郎は鬱症うつしょうになった。忠兵衛は心弱くも、人に栄次郎を吉原へ連れてかせた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
隣の女の肩にわざとり掛りあるいはひそかに肩の後または尻の方へ手を廻して抱くとも抱かぬともつかぬ変な事をするものあり。女の前に立ちて両足の間に女の膝を入れて時々締めにかかる奴あり。
猥褻独問答 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あなた以外にあたしはりかかり所のない女なんですから。あなたにはずされると、あたしはそれぎり倒れてしまわなければならない心細い女なんですから。だからどうぞ安心しろと云って下さい。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たう開元年中かいげんねんちうこととぞ。戸部郡こぶぐん令史れいし妻室さいしつにしてさいあり。たま/\鬼魅きみところとなりて、疾病やまひきやうせるがごとく、醫療いれうつくすといへどもこれ如何いかんともすべからず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さらに疑いを起こしてこれを考うるに、その動くも、その傾くも、鬼神のこれにりて生ずるところなりというも、知識、学問のあるものにはその験なく、無知、不学のものにはその験あり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
わが、唐木からきの机にりてぽかんとした心裡しんりの状態はまさにこれである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さきにすでに示すごとく、世間、コックリに配するに狐狗狸の語を用うるをもって、人その語を聞きてただちに狐狸の霊の来たりるものと想定し、その名称すでに予期意向を促すの傾向あり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
しかれども、これあえて鬼神の所為にあらず、狐狸のるにあらず、電気作用にもあらず、有意作用にもあらず、別に道理上証明すべき種々の事情ありて、無意自然に回転、上下するに至るなり。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)