患者くわんじや)” の例文
下宿げしゆくには書物しよもつたゞさつ『千八百八十一年度ねんどヴインナ大學病院だいがくびやうゐん最近さいきん處方しよはう』とだいするもので、かれ患者くわんじやところときにはかなられをたづさへる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
だが、入院にふゐんするとしても、誰一人たれひとり入院料にふゐんれうなどを持合もちあはしてゐるはずがないので、施療せれう患者くわんじやあつか病院びやうゐんれるより仕方しかたがなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
卯平うへい患者くわんじやの一にんでさうしておしないへなやんでた。おしなはゝ懇切こんせつ介抱かいはうからかれすくはれた。かれはどうしても瀕死ひんし女房にようばうかたはら病躯びやうくはこぶことが出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
醫者いしやまた自分じぶんもちひたねむぐすり比較的ひかくてきあたらしいもので、學理上がくりじやう睡眠劑すゐみんざいやう有害いうがいでないことや、またその効目きゝめ患者くわんじや體質たいしつつて、程度ていど大變たいへん相違さうゐのあることなどをかたつてかへつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして朽ちかゝつた家々のランプのかげから、死にひんした虎列拉コレラ患者くわんじやは恐ろしさうに蒲團をひいだし、ただぢつとうすあかりのうちに色えてゆく五色花火のしたゝりに疲れた瞳を集める。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
なるべく患者くわんじやおどろかさないやうにね
泣いてゐたりき、隣の患者くわんじや
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ありましたれど赤子あかごせるものがないとかきませば平常つねこゝろ承知しようちがならずとほして針仕事はりしごとるものふたつかはしましたと得意顏とくいがほ物語ものがたとくかげなるこそよけれとかきゝしがあやしのことよとうたがむね相談さうだんせばやのこゝろえぬ花子はなこさま/″\の患者くわんじやはなし昨日きのふ往診みまひ同朋町どうぼうちやうとやらしやとけばつゆたがはぬ樣子やうすなりそれほどまでには
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一つフロツクコートで患者くわんじやけ、食事しよくじもし、きやくにもく。しかれはかれ吝嗇りんしよくなるのではなく、扮裝なりなどにはまつた無頓着むとんぢやくなのにるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから事務所じむしよつていままでゐたんですが、施療せれう村役場むらやくば證明書しようめいしよのない患者くわんじやには絶對ぜつたいにできない規定きていだといふんです。だから十ぶん入院料にふゐんれう前金ぜんきん即時そくじをさめろといふんです。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
ちひさい折鞄をりかばんわきけて、落付おちつはらつた態度たいどで、慢性病まんせいびやう患者くわんじやでもあつかやうゆつくりした診察しんさつをした。そのせまらない顏色かほいろはたてゐた所爲せゐか、わく/\した宗助そうすけむねやうやをさまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
病院びやうゐんのが患者くわんじや恐怖おそれ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
また患者くわんじやあし依然いぜんとしてもんにはえぬ。あさからひるまでる四十にん患者くわんじやに、奈何どうして確實かくじつ扶助たすけあたへることが出來できやう、故意こいならずとも虚僞きよぎしつゝあるのだ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)