)” の例文
旧字:
私などは中学を途中でして、二松学舎、成立学舎などに通い、それから予科に入ったのであるから、非常に迂路まわりみちをしたことになる。
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主人の飼っている Jeanジャン という大犬が吠えそうにしてして、鼻をくんくんと鳴らす。竹が障子を開けて何か言う声がする。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いや。そんな事はせ。おれはこれでも並の人間とは違う積りだ。並の人間にするような事はしたくない。己には何もかも分かっている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
さう。今朝は食べたく無い。それよりは客を下の座敷へ通して、一寸待たして置いて下さい——今、直に斯部屋を片付けるから。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「冷麦でございますか、はい、はい」と、茶屋の主翁ていしゅは茶を汲もうとしていたのをして、冷麦をかまえ、それを皿に載せて持って来た。
一緒に歩く亡霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
選ぶほど大事なものはないと考えさせられました。そこで、めッたに針売りはされないぞと、ついつい、三年も経ってしまったので——
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ。それはさうでございますが、旦那様、あなたがせと仰やれば、致しません。()。薔薇を切つて参りませうか。」
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
骨牌かるた、茶屋狂ひ、碁将棋よりは面白いでせう。其れ等の道楽は、飽きてすといふこともあるですが、釣には、それが無いのですもの。』
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
学校を途中でして帰ってきた兄は、家の庭に研究所を建ててほとんど終日それにこもっていた。兄は歌津子と結婚した。そして幸福であった。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
本とうに動物が可あいそうなら植物を喰べたり殺したりするのもたまえ。動物と植物とを殺すのをやめるためにまず水と食塩だけみ給え。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
新「おしよ、しにたい/\って気がひけるじゃアないか、ちっとは看病する身になって御覧、なんだってそんなに死度いのだえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何、安田やすだ炭鉱たんこうへかゝってたんですがね。エ、二里ばかり、あ、あの山のかげになってます。エ、最早しちゃったんです」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ばかりではなく、結局は飯さえ食えなくなったんだと、それが一体どんな奴のためだと、思うと私はさなかったのです。
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「どうも困るな、こんな取着とりつ身上しんしょうで、そんな贅沢ぜいたく真似まねなんかされちゃ……。何だか知んねえが、その引物ひきものとかいう物をそうじゃねえか。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
さうして、男性に対する貴女の危険な戯れを、今日限りしていたゞきたいと思ふのです。それが青木君の死に対する貴女のせめてもの償ひです。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そのうち次第に意志が一方に傾いて来て、とう/\出掛けるのをして、悪魔のするが儘になつてまる事にした。
『君はもうしてくれ給へ、身体からだがまだ真実ほんとうになつてないんだから、よしてくれ給へ。君、君、いけませんよ。』
戸の外まで (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『いつかおつしやつた様に雑誌を満百号限りおし遊せな。それは貴方あなたに取つても私に取つても残念ですけれど。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
己れはお前が居なくなつたら少しも面白い事は無くなつてしまふのだからそんなやな戯言じようだんしにしておくれ、ゑゑつまらない事を言ふ人だとかしらをふるに
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
継母かあさんはあのとおり真向な、念々刻々の働き者だからいい人だと思うけれど、何しろあの毒舌にはかなわん。あれだけはしてくれるといいと思うがなあ。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
雪、虚勢はせ。なあ、貴さまと、拙者、あの一剋いっこくの一松斎の門では、一つ鍋の飯を食うたことがあるのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ああありがたい、茶袋だと此方こちで一本というところを反対あべこべにもうせと云いますわ、ああ好い心持になりました、歌いたくなりましたな、歌えるかとは情ない
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
おりながらとめどもなしに笑ってすことができなかった。そして、やっと足が地にとどきそうになってから、手を滑らして堕ちた。それと一緒に笑いもやんだ。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
十二年つて殿様をしてうちへ帰つた時、お父さんと、おつ母さんとにこれを御土産になさい。
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
結い了う頃は最う午砲ドンだけれど、お昼はおなかくちくて食べられない。「あたししてよ」、という。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
お勢はその後踊りの師匠をして、お町を葬った寺の花屋の株を買い取りました。美しく清らかな花屋のおかみがしばらくの間江戸の評判だった事はいうまでもありません。
大正三年秋の彼岸ひがんに、わたくしは久しくしていた六阿弥陀詣ろくあみだもうでを試みたことがあった。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
漸々ぜんぜん話し込んでみると元来傾向が同じであったものだから犬猿どころか存外ぞんがい話が合うので、喧嘩はそう、むしろ一緒にやろうじゃないかという訳になって、爾後じご大分心易くなった。
比喩ひゆして露骨に申しますが、僕はこれぞという理想を奉ずることも出来ず、それならって俗に和して肉慾をみたして以て我生足れりとすることも出来ないのです、出来ないのです
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
最初からけちがついたことが、縁喜商売だけに一層伯父の心を腐らし、今では最う余り気乗りがしてない様だつた。都合によれば、してもいゝといふやうな口吻を洩らすことさへあつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
それでも菜穂子は、晴れた日などには、秋からの日課の散歩をさなかった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
大原君、チュウチュウ音をさせるのと舌打をするのはどうぞしてくれ給え。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「本郷の××女学校に二年まで行っていましたけれど、都合があってしたんです。」と言うから、じゃ何うして斯様こんな処に来ている……と訊いたら、斯うしておっかさんを養っていると言う。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
窮屈きゅうくつな侍稼業をスッパリして、わたくしは、あなた様と御一緒に元の町人に帰り、面白おかしく呑気のんきに暮らして——その、再び手を取り合って泣く日を楽しみに、喬さま、園絵は、園絵も
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
振返ると、まだそこに、掃掛けてしたように、あおきが黒く散々ちりぢりである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに雨に濡れて骨牌の色刷の絵までがにじんでぼやけて来た。無論相手の破落戸はそれには困らない。どうせ骨牌を裏から見て知っているからである。しかしきょうはもうす気になっていた。
酔客よつぱらひを相手にしたつて仕方が無えだ! さつせい、廃さつせい!」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
『南米に? そんな事で学校もしたんだな。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
し給えよ。僕は窮屈な事は真っ平だ。
... 長い奴が、寒いもんだから御互にとぐろのきくらをやってかたまっていましたね」「もうそんな御話しはしになさいよ。厭らしい」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「君、いろんな言草いいぐさしてくれたまえ。君が友人として僕をいたわってくれた段は実に感謝する。それが好意というものだろう。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
其程熱心に成つて居るものを強ひてし給へとも言はれんし、折角の厚意を無にしたくないと思つて、それで一緒に歩いたやうな訳さ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
説法さえして貰われれば、僕も謗法ぼうほうはしない。だがね、君、独身生活を攻撃することは廃さないよ。箕村みのむらの処なんぞへ行くと、お肴が違う。
独身 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
△「まア何うしたんだ、勝もあんまり大人気ねえじゃねえか、熊の悪口わるくちは知ッてながら、せッてえば、くだらねえ喧嘩するが外見みえじゃアあるめえ」
そうして、男性に対する貴女の危険な戯れを、今日限りしていたゞきたいと思うのです。それが青木君の死に対する貴女のせめてものつぐないです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ほんとに、お前さんは臆病だよ」女房は笑うのをして真顔になり、「さ、御飯ごはんを早くおあがりよ」
黄灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
猫の話で思い出したが、わしは明治四十二年の春、塩釜しおがまの宿で牡蠣かきを食った時から菜食さいしょくした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
心配はしゃアナ。心配てえものは智慧袋ちえぶくろちぢみ目のしわだとヨ、何にもなりゃあしねえわ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「やめるがいい。もう従来の陰の骨折りはすことだ。わかったか。これからは鎌倉表の厳命どおり、帝以下をきびしく囲って、配所の守備を、かりそめにも手かげんするな」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何故なぜさうなのでせう。玉川の方でもちゝは一年りでして居たのだつたのにね。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)