安達あだち)” の例文
目下もくか日本大使館の安達あだちみね一郎氏が引受けて東京へ帰つて居るが、翁は東京の有島氏とも協議して便宜に取計らふやう予に依頼された。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
自分の級に英語を教えていた、安達あだち先生と云う若い教師が、インフルエンザから来た急性肺炎はいえんで冬期休業の間に物故ぶっこしてしまった。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大体福島県は紙漉の村が多いのでありまして、岩代いわしろの国では伊達だて山舟生やまふにゅう安達あだち郡のかみおよびしもの川崎村や耶麻やま熱塩あつしお村の日中にっちゅう
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
前刻さっきも前刻、絵馬の中に、白い女の裸身はだかみを仰向けにくくりつけ、膨れた腹を裂いています、安達あだちヶ原の孤家ひとつやの、ものすごいのを見ますとね。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただしそれにもまた別のいい伝えはあるので、私はそのことを次ぎにお話して、もうおしまいにします。(相生集。福島県安達あだち郡塩沢村)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
見渡す限りというのも大仰だが、広い墓地です。大小の墓石が雑然として、なんとなく安達あだちはらの一角へでも迷い込んだような気持がする。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし天女と安達あだちヶ原の妖婆と揃って一人の少年を成しているのは別にフランケンシュタインの一族一味ではなくて、日本の現実の一端であり
ソコで御馳走は何かと云うと、豚の子の丸煮が出た。是れにもきもつぶした。如何どうだ、マア呆返あきれかえったな、丸で安達あだちはらに行たようなけだと、う思うた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
旅の見世物師が來て、安達あだちはらだの、鍋島の猫騷動などを映して見せ、それでいくらかの木戸錢を取りました。
この、安達あだちはらならぬ一つ家の土間に、似合しからぬ五梃の駕籠がきちんと、並べておろしてあるのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
明けて文治ぶんじ二年の一月末には、静も母も、鎌倉幕府の罪人として、安達あだちしんろう清経きよつねやしきに預けられていた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古賀は顴骨かんこつの張った、四角な、あから顔の大男である。安達あだちという美少年に特別な保護を加えている処から、服装から何から、誰が見ても硬派中の鏘々そうそうたるものである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むかし、京都きょうとから諸国修行しょこくしゅぎょうに出たぼうさんが、白河しらかわせきえて奥州おうしゅうはいりました。磐城国いわきのくに福島ふくしまちか安達あだちはらというはらにかかりますと、みじかあきの日がとっぷりれました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
……ところが見てはいけないと云われるとイヨイヨ見たくてたまらなくなるのが『安達あだちはら』以来の人情だもんだから、呉青秀の子孫のうちにコッソリと、弥勒様の首を引き抜いて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「オイ、飯を食わせろ」と叫ぶと、安達あだちはらの鬼婆然たる婆さん、皺首しわくびを伸ばして
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「その節も申上げましたが、あなたのお屋敷には安達あだちさんというお武家が住んでいらしったのでございますが、そのお方は脱走して、越後口で討死をなすったということでございます。」
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おなじやうに吹通ふきとおしの、裏は、川筋を一つ向うに、夜中は尾長猿おながざるが、キツキと鳴き、カラ/\カラと安達あだちはら鳴子なるこのやうな、黄金蛇こがねへびの声がする。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
奥州へ来て、ところがらだけに、安達あだちの一つ家といったような気分だな。もう鬼婆あも出まいが、こうしていると、まだ何か一幕ありそうな気がしてならぬ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
山賊とか安達あだちヶ原の婆アかなんかが宿屋を内職にしてそんなことをやってるワケじゃなくて、帝都の裏玄関、レッキとした新宿の駅前マーケットの公然たる性格だから
なんでも安達あだちはら黒塚くろづかにはおにんでいて人をってうそうだなどという、たびあいだにふと小耳こみみにはさんだうわさをきゅうおもすと、体中からだじゅう毛穴けあながぞっと一つようにおもいました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
先供さきどもには北條、梶原、三浦、畠山、あとおさへには土肥どひ安達あだち……なほ數々の大小名が平家の殘黨に備ふる用心もござらう、諸國に威勢を示すためでもござらう、いづれも甲冑よろひかぶと爽かに扮裝いでたつて
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
岩代安達あだち郡玉井村大字玉ノ井字悪太原
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おなじやうに吹通ふきとほしの、うらは、川筋かはすぢひとむかうに、夜中よなか尾長猿をながざるが、キツキとき、カラ/\カラと安達あだちはら鳴子なるこのやうな、黄金蛇こがねへびこゑがする。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「どこへ行くって、こんな安達あだちはらに毛のはえたようなところへ来て、どこへ行きようもないじゃないか。歌川一馬のうちへ行くにきまっているさ。君はそうじゃないのか」
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「ははあ、あれが安達あだちはら鬼婆おにばばあだ、よく見ておけよ、孫八」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
……皿小鉢を洗うだけでも、いい加減な水行みずぎょうの処へ持って来て、亭主の肌襦袢はだじゅばんから、安達あだちヶ原で血をめた婆々ばばあ鼻拭はなふきの洗濯までさせられる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……うばの形相は、絵に描いた安達あだちヶ原と思うのに、くびには、狼のきばやら、狐の目やら、いたちの足やら、つなぎ合せた長数珠ながじゅず三重みえきながらの指図でござった。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
われらはげしき大都会だいとくわい色彩しきさいながむるもの、奥州辺おうしうへん物語ものがたりみ、婦人ふじん想像さうざうするに、大方おほかた安達あだちはら婆々ばゞおもひ、もつぺ穿きたるあねえをおもひ、こんふんどし媽々かゝあをおもふ。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われらこのはげしき大都会の色彩をながむるもの、奥州辺の物語を読み、その地の婦人を想像するに、大方は安達あだちヶ原の婆々ばばあを想い、もっぺ穿きたるあねえをおもい、紺のふんどし媽々かかあをおもう。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々、あの辺で今まで見た事の無い婆様ばあさんに逢うものがございますが、何でも安達あだちが原の一ツ婆々ばばという、それはそれは凄い人体にんていだそうで、これは多分山猫の妖精ばけものだろうという風説うわさでな。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芳年よしとしの月百姿の中の、安達あだちヶ原、縦絵二枚続にまいつづき孤家ひとつやで、店さきには遠慮をするはず、別の絵を上被うわっぱりに伏せ込んで、窓の柱に掛けてあったのが、暴風雨あらしで帯を引裂いたようにめくれたんですね。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「え、安達あだちヶ原ですか。」
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)