トップ
>
夢寐
>
むび
ふりがな文庫
“
夢寐
(
むび
)” の例文
徳を
布
(
し
)
き、情になずませることを、
夢寐
(
むび
)
にも忘れずにあったということは、単なる征夷将軍の武威一徹とは大いに異なるものがある。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その景常に
夢寐
(
むび
)
の間にありて、更に心に忘るゝ事能はず、貴君にして若し山水の志あらば、斷然行きて遊ばん事を勸めずんばあらず
日光山の奥
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
母君の
御息所
(
みやすどころ
)
の霊が宙宇にさまよって、どんな苦しみを経験しておいでになることかとは中宮の
夢寐
(
むび
)
にもお忘れになれないことで
源氏物語:38 鈴虫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「およそ
人心
(
じんしん
)
の
裏
(
うち
)
絶
(
た
)
えて
無
(
な
)
きのこと、
夢寐
(
むび
)
に
形
(
あらわ
)
れず、
昔人
(
せきじん
)
謂
(
い
)
う、
男
(
おとこ
)
、
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
むを
夢
(
ゆめ
)
みず、
女
(
おんな
)
、
妻
(
さい
)
を
娶
(
めと
)
るを
夢
(
ゆめ
)
みず、この
言
(
げん
)
良
(
まこと
)
に
然
(
しか
)
り」
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
綱宗の
夢寐
(
むび
)
の間に
想
(
おもひ
)
を
馳
(
は
)
せた亀千代は、万治三年から寛文八年二月まで浜屋敷にゐた。此年の二月の火事に、浜屋敷は
愛宕下
(
あたごした
)
の上屋敷と共に焼けた。
椙原品
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
夢寐
(
むび
)
にも忘れなかつた其人の前に、丑松は今偶然にも腰掛けたのである。壮年の発達に驚いたやうな目付をして、
可懐
(
なつか
)
しさうに
是方
(
こちら
)
を眺めたは、蓮太郎。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
われは平生
夢寐
(
むび
)
の間に往來する所の情の、終に散じ終に
銷
(
せう
)
すること此飛泉と同じきを想ひて、忽ち歌ひ起していはく。人生の
急湍
(
きふたん
)
は
須臾
(
しゆゆ
)
も留まることなし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
夢寐
(
むび
)
にもその面影を忘るることができないでいたのに、ここへ来て、初めて正真のお玉を見ることができた。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夢寐
(
むび
)
にも、思いつづけて来たとはいえ、御恩命を拝してから二十一年の歳月を経たことは、誠に畏れ多く相すまぬ次第ではございますが、はからずも、その間
画筆に生きる五十年:――皇太后陛下御下命画に二十一年間の精進をこめて上納――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
南洲も亦曰ふ、天下
眞
(
しん
)
に
畏
(
おそ
)
る可き者なし、
唯
(
たゞ
)
畏る可き者は東湖一人のみと。二子の言、
夢寐
(
むび
)
相
感
(
かん
)
ずる者か。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
思ひ設けざる事に當り、一點動搖せず、安然として其事を斷ずるところにおいて、平日やしなふ處の膽力を長ずべし、常に
夢寐
(
むび
)
の間において我膽を探討すべきなり。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
それから妙に大滝が頭の中に残っていて企業の方と
絡
(
から
)
みついた。成功者は
夢寐
(
むび
)
にも金儲けを忘れない。彼処を一つと思いつくと同時に、水源の山中村が胸に浮んだ。
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
計らずもその
夢寐
(
むび
)
に忘れざる姿を見たりし彼が思は
幾計
(
いかばかり
)
なりけんよ。
饑
(
う
)
ゑたる者の
貪
(
むさぼ
)
り
食
(
くら
)
ふらんやうに、彼はその一目にして
四年
(
よとせ
)
の求むるところを求めんとしたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
夢寐
(
むび
)
の間にも此の語を吐くは如何に思い決して居るかが分る、殊に「皆なの為」の一言は実に秀子の今の辛い境遇を説明して余り有るのだ、其の身に懸る二重の汚名が
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
途中三回の暴風にあひ、難航をつゞけて、
夢寐
(
むび
)
にも忘れかねた日本の島影を初めて認めることが出来たのは十月三日のことであつた。種ヶ島であつたらうと云はれてゐる。
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
俤は
夢寐
(
むび
)
の間にも忘れられず、もう一度姿を見たいと思う感情をとめることが出来ない。中年の所為としては不面目極まるが、終日、窓に倚って橋のほうばかり眺めていた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
思いがけなき所にて思いがけなき君の姿を見申
候
(
そうろう
)
。たとい装いを変え給うとも、三年このかた
夢寐
(
むび
)
にも忘れぬ
御面影
(
おんおもかげ
)
を、いかで見逃し候べき。
妾
(
わらわ
)
は始めより頭巾の女の君なる事を承知
仕
(
つかまつり
)
候。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
是等の作品の抒情詩的甘露味はかの化政度の通人などの
夢寐
(
むび
)
にも到り得る境地ではない。彼等は年代を数へれば、「わが稚名を君はおぼゆや」と歌つた芭蕉と、僅か百年を隔つるのに過ぎぬ。
芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかも兄妹揃っていかなる悪因縁ぞ! 太子は
厭
(
いと
)
い抜いていられるにもかかわらず、このキャゼリン・ジャルディン嬢の胸からは兄を成敗した美貌な年少太子の
俤
(
おもかげ
)
が
夢寐
(
むび
)
にも消え去らず、今夏
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この俊爽なる法官は実に渠が
三年
(
みとせ
)
の間
夢寐
(
むび
)
も忘れざりし欣さんならずや。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夢寐
(
むび
)
にも忘れなかった
郷里
(
くに
)
もとに、二年ぶりで、云わば心ときめかして帰って来た彼らは、そこで暮した二三カ月のうちに、今度はあのイシカリの
曠
(
むな
)
しい野を
燬
(
や
)
けつくような思いで考えていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
夢寐
(
むび
)
の
間
(
ま
)
も忘れずと
云
(
い
)
へどわするるに似たらずやとまた歎けりこころ
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
咲二の——
夢寐
(
むび
)
にも忘られない咲二の声が彼女の耳元で叫んだ。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
凡兆らもまた
夢寐
(
むび
)
にだも見ざりしところなり。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
夢寐
(
むび
)
のまも忘れ居らず、常に、臣等を勉め励まし、ただ御奉公一途に専心いたしおりましたに、不測の不調法、残念至極にござります。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
人
(
ひと
)
を
知
(
し
)
るは
難
(
かた
)
くして
易
(
やす
)
く、
自
(
みずか
)
ら
知
(
し
)
るは
易
(
やす
)
くして
難
(
かた
)
し、
但
(
ただ
)
し
当
(
まさ
)
にこれを
夢寐
(
むび
)
に
徴
(
ちょう
)
し
以
(
もっ
)
て
自
(
みずか
)
ら
知
(
し
)
るべし、
夢寐
(
むび
)
自
(
みずか
)
ら
欺
(
あざむ
)
く
能
(
あた
)
わず」と。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
あゝ深山窮谷の中、誰かかゝる靈境のあるを思はんや。誰かかゝる風景のあるを思はんや。照尊院の主僧の
夢寐
(
むび
)
忘るゝ能はずといへるまことに故あり。
日光山の奥
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
抽斎は
時々
(
じじ
)
譫語
(
せんご
)
した。これを聞くに、
夢寐
(
むび
)
の
間
(
あいだ
)
に『医心方』を
校合
(
きょうごう
)
しているものの如くであった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
五十五日の船旅の後で、彼は
夢寐
(
むび
)
にも忘れることの出来ない土を踏んだ。そうして自分の子供の側まで帰って来て見ると、未だ未だ彼は眼に見えない
牢屋
(
ろうや
)
の中に自分を見つけた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
有事の時に至り、十に八九は
履行
(
りかう
)
せらるゝものなり。事に當り率爾に思慮することは、譬へば臥床
夢寐
(
むび
)
の中、奇策妙案を得るが如きも、明朝起床の時に至れば、無用の妄想に類すること多し。
遺訓
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
〔譯〕
意
(
い
)
の
誠否
(
せいひ
)
は、須らく
夢寐
(
むび
)
中
(
ちゆう
)
の事に於て之を
驗
(
けん
)
すべし。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
我が
夢寐
(
むび
)
の
間
(
あひだ
)
に忘るゝことなかりしララなりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
また支麦輩の
夢寐
(
むび
)
にも知らざるところなり。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「とんでもない。愚痴をこぼしたわけではないよ。それどころか、そなたの父、
蔡
(
さい
)
大臣のお引立ては、
夢寐
(
むび
)
の間にも、忘れてはおらん」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
凡兆らもまた
夢寐
(
むび
)
にだも見ざりし所なり。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
いかなる難事が重なろうと、中原進出の大策は、
夢寐
(
むび
)
の
間
(
ま
)
も忘れることなき孔明の一念だった。そのことなくしては孔明もない。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また支麦輩の
夢寐
(
むび
)
にも知らざる所なり。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
恋をしようと、一個の
美
(
よ
)
い鎧具足を註文しようと、彼等のあいだには常に、
夢寐
(
むび
)
の間にも、「
明日
(
あす
)
は知れないいのち」という人生観があった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「熟睡中で知らなかったものは仕方がない。ただこの後は、
夢寐
(
むび
)
の間といえども、士道を忘れぬよう、一そう猛稽古をせよ」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不肖、信長の陣代として、変に備うる者どもは、まだ
夢寐
(
むび
)
の間も、この具足わらじすら脱いでは寝てもおられぬのでござる。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お役には立つまいと存じまするが、浪人こそいたせ、旧家の御恩は、
夢寐
(
むび
)
にも忘れては居りませぬ。この体を、何とぞおつかい願いたいのでござる。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
坂本以来、
夢寐
(
むび
)
の間も、光春が心ひそかに
惧
(
おそ
)
れていたものは、実に、光秀がいつか自己に敗れて、この言をなすのではあるまいかという予感であった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、竹童が
締
(
し
)
めたおされたのも
目撃
(
もくげき
)
したし、その
魁異
(
かいい
)
な
妖人
(
ようじん
)
のすがたは、
夢寐
(
むび
)
にも
忘
(
わす
)
れていない
仇敵
(
きゅうてき
)
である。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その待ちに待っている唐草銀五郎が、すでに、
禅定寺
(
ぜんじょうじ
)
峠の土になっているとは、
夢寐
(
むび
)
にも知らぬのであった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうして寝ているまも、おれは今日まで出会って来た
無慙
(
むざん
)
な人間の
断末
(
だんまつ
)
の
形相
(
ぎょうそう
)
やわめき声が、ともすれば
夢寐
(
むび
)
にまでつきまとって、寝ざめのよかった朝とてない。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
われわれ侍の端くれも、重臣も、御主君はもとより、
夢寐
(
むび
)
の間も、一尺の国土たりと、守り防ぎは忘れぬが……国の興亡は、実はお城にあるわけじゃないからな。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
劉皇叔
(
りゅうこうしゅく
)
とこの方とは、桃園に義をむすんで、天下の清掃を志し、以来百戦の中にも、百難のあいだにも、疑うとか
反
(
そむ
)
くなどということは、
夢寐
(
むび
)
にも知らぬ仲である。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夢寐
(
むび
)
の間にも鐘巻自斎の名を念頭に描いて、血の出るような修行をつづけていること一年余月、やっと、道場の床へ月に三、四度は上ることができるまでになった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
われ先帝より
孤
(
みなしご
)
を託すの
遺詔
(
いしょう
)
を
畏
(
かしこ
)
み、魏と
倶
(
とも
)
に天を
戴
(
いただ
)
かず、年来、暖衣を退け、飽食を知らず、
夢寐
(
むび
)
にも兵馬を磨きて
熄
(
や
)
まざるものは、ただただ反国の逆賊を
誅滅
(
ちゅうめつ
)
し
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
解けない提案にぶつかると、それの解けきれるまでは
夢寐
(
むび
)
の
間
(
あいだ
)
にも忘れ得ないのが彼の常であった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“夢寐”の意味
《名詞》
夢 寐(むび)
眠って夢を見ること。また、その間。
《動詞》
眠って夢を見る。
(出典:Wiktionary)
夢
常用漢字
小5
部首:⼣
13画
寐
漢検1級
部首:⼧
12画
“夢”で始まる語句
夢
夢中
夢現
夢幻
夢心地
夢想
夢路
夢殿
夢見
夢魔