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咬
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か
ふりがな文庫
“
咬
(
か
)” の例文
もちろん人間に
咬
(
か
)
みつく余裕はなかったが、それでも時々起ちあがって、自分のゆく先の邪魔になる人々をその強い手で
殴
(
はた
)
き倒した。
半七捕物帳:29 熊の死骸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
百姓たちは、
棗
(
なつめ
)
を採って
咬
(
か
)
んだり、草を煮て、草汁を飲んでしのいだり、もうその草も枯れてくると枯草の根や、土まで喰ってみた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はそんな時、幼少の折犬に
咬
(
か
)
まれて、その犬を殺すために、長い
槍
(
やり
)
を提げて飛出して行つた老父の姿を思ひ出したりするのであつた。
風呂桶
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
吾ともなく興の起るのがすでに
嬉
(
うれ
)
しい、その興を
捉
(
とら
)
えて横に
咬
(
か
)
み
竪
(
たて
)
に
砕
(
くだ
)
いて、これを句なり詩なりに仕立上げる順序過程がまた嬉しい。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼が舌を
咬
(
か
)
みしめて、三百四十円と書かれた小切手を目にした時、彼女の顔は明かに微笑むともつかず、かすかに歪められていた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
▼ もっと見る
富岡は、自分の淋しさを
咬
(
か
)
む気持ちであつた。何一つ、押しつける事なく、この女に自然な死の道づれになつて貰ひたい気持ちだつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
ハンカチイフもて抑へければ、絹の白きに
柘榴
(
ざくろ
)
の
花弁
(
はなびら
)
の如く附きたるに、貴婦人は
懐鏡
(
ふところかがみ
)
取出
(
とりいだ
)
して、
咬
(
か
)
むことの過ぎし
故
(
ゆゑ
)
ぞと知りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「殖えられて
溜
(
た
)
まるものか」と、犬塚は
叱
(
しか
)
るように云って、特別に厚く切ってあるらしい
沢庵
(
たくあん
)
を、白い、鋭い前歯で
咬
(
か
)
み切った。
食堂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
人間を傷つけるに
兇器
(
きょうき
)
にこと
欠
(
か
)
いたのかはしらぬが、歯をもって
咬
(
か
)
み殺すとは何ごとであるか。まるで
獣
(
けもの
)
のような殺し方である。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
黒犬に
腿
(
もも
)
を
咬
(
か
)
まれて驚いたなどという下らない夢を見る人は、
窹
(
さ
)
めていても、
蚤
(
のみ
)
に
猪
(
い
)
の目を
螫
(
さ
)
されて騒ぐくらいの下らない人なのである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
荒い海と
嶮
(
けは
)
しい山とが激しく
咬
(
か
)
み合つて、その間で人間が微小にしかし賢明に生きて居る一小市街の傍を、大きな急流の川が
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
その歯と歯の間に
咬
(
か
)
み合せてあるのは、恐らく綿なのでしょう、柔かくはあっても、腐りかかった皮膚のそれとは違うのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
日本人が煙草を
咬
(
か
)
み、巻煙草を吹かして、西洋人が
煙管
(
きせる
)
を用うることあらば、「日本人は器械の術に乏しくしていまだ煙管の発明もあらず」
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
会津の枯木山の方から流れ出て、男鹿へ注ぐ湯西川は、
相貌
(
そうぼう
)
甚だ複雑である。
激湍
(
げきたん
)
岩を
咬
(
か
)
んで、白泡
宙空
(
ちゅうくう
)
に散るさま、ほんとうに夏なお寒い。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そうすると、その親父が「これは病死ではない。某家の外道が来たって
咬
(
か
)
み殺したのであるから、葬式を行うことはできぬ」
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
丑五郎は馬に食いつかれながらも馬の腿の肉を
咬
(
か
)
み取ったという
気象
(
きしょう
)
っ
張
(
ぱ
)
り、この故に
馬食
(
うまくら
)
いという
綽名
(
あだな
)
がついていました。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ヒョイとそいつへ
咬
(
か
)
み着くのだが、一度に喰いちぎって来ることもあれば、ちぎったついでに主人の口の周りを
嬉
(
うれ
)
しそうに
舐
(
な
)
め廻すこともあり
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「あんなことを言っている、あたいだって一生懸命に噛みついたら、おじさまの痩せた頬のにくなんか、
咬
(
か
)
みとるわよ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
与吉だった。隻眼で、こわい傷のある左膳とかいう侍の首だった。それが四方八方から今にも
咬
(
か
)
みつきそうに自分をめざして揺れ集まってくる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかし、彼らが庭園の傍まで来かかったとき、五人の使部は、最早や死体となって土に
咬
(
か
)
みついたまま横たわっていた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
甲州
(
こうしゅう
)
街道
(
かいどう
)
に獅子毛天狗顔をした意地悪い犬が居た。坊ちゃんの白を
一方
(
ひとかた
)
ならず妬み憎んで、顔さえ合わすと直ぐ
咬
(
か
)
んだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
眼も、鼻も、口も、りっぱで、大きくて、ゴヤの絵にある
西班牙
(
スペイン
)
の踊り子のような顔をしています。
皓
(
しろ
)
い歯で真っ赤な花を
咬
(
か
)
んでいる、あんな感じ。
キャラコさん:08 月光曲
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
或
(
あ
)
る時は、ごはんの代りに
甘薯
(
いも
)
を食べたり、貰つた
栗
(
くり
)
をゆでて、純子ちやんにはやはらかく
咬
(
か
)
んで、口うつしに食べさしたりしたこともありました。
母の日
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
どういう人がこのハブに
咬
(
か
)
まれるかと
聴
(
き
)
いて見ると、主としてウマツリ(お祭)の日に休まず働いていた者が、咬まれるというのは意外な話である。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
忽
(
たちま
)
ち
親
(
したし
)
み、忽ち
疎
(
うとん
)
ずるのが君の
習
(
ならい
)
で、
咬
(
か
)
み合せた歯をめったに開かず、真心を人の腹中に置くのが僕の性分であった。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
海蛇の牙に大毒あるが、水蛇は人を
咬
(
か
)
むも無害と、『大英百科全書』十一版二十五巻に見えるが、十二巻にはアフリカに大毒の水蛇ありと載せ居る。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
嫉妬
(
しつと
)
が彼を捉へた、彼を刺したのである。しかしその刺㦸は健康によいものであつた。
咬
(
か
)
み
耗
(
へ
)
らす憂鬱の牙から彼を離して、休息させるものであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
下等動物に見るがごとき
咬
(
か
)
み合い殺し合うような残酷なことはなくなってしまう、今日人類に生存競争のなお絶えぬのはいまだ人類が不完全なるゆえであって
人類の生存競争
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
前部を折り曲げたカラーの間の
咽喉笛
(
のどぶえ
)
に、何ものかの
咬
(
か
)
みついた歯の
痕
(
あと
)
がはっきりついて居たからである。
謎の咬傷
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
野獣のような盗伐者は、思慮分別もなく、
牙
(
きば
)
を
咬
(
か
)
んで躍りかかり、惨殺して後を
晦
(
くら
)
ましてしまうのである。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
なぜなら、その山には
蝮
(
まむし
)
がいて、時々人を
咬
(
か
)
むので……鎌や、棒切れや、拾った栗を入れる袋なども用意するのだった。そして私はいそいそと家を出るのだった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
昔モーセがイスラエル民族を率いて曠野の旅を続けていた途中、罪を犯した多くの民が蛇に
咬
(
か
)
まれた時、モーセは銅をもって蛇を造りこれを
杆
(
さお
)
の上に載せておいた。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
重右衛門は殆ど情に堪へないといふ風で
潮
(
うしほ
)
の如く
漲
(
みなぎ
)
つて来る涙を辛うじて下唇を
咬
(
か
)
みつゝ押へて居た。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
ふとした不注意から熱帯産の毒蜘蛛に
咬
(
か
)
まれて、奇怪きわまるうわ言をしゃべりつづけながら瀕死の状態で病院にかつぎこまれ、一週間ばかり昏酔状態をつづけたのち
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
賊を避けて
彭衙
(
ほうが
)
の道を走る杜甫は、「痴女飢えて我を
咬
(
か
)
む」稚児をいだいて、泥濘の道に悩む。
詩人への註文
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
...
亜米利加
(
あめりか
)
の医者は鰻の血清を取って蝮蛇に
咬
(
か
)
まれた人の毒を療治するそうだが好結果らしいというね」大原「そんな
大毒
(
だいどく
)
なものを今まで人間が平気で食べていてよく中毒を ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
殴
(
なぐ
)
り合う…… se donner du tabac(煙草をかぎ合う——十七世紀)—→ se chiquer la gueule(
頤
(
あご
)
を
咬
(
か
)
み合う——十九世紀)
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
敵味方の衆寡はあだかも
蟷螂
(
とうろう
)
の
車轍
(
しゃてつ
)
に当る如く、
蚊子
(
ぶんし
)
の鉄牛を
咬
(
か
)
むが如きものがあります。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
日本の
守宮
(
やもり
)
と違つて人を
咬
(
か
)
む恐れは無いが、飲料が好きなので飲みさした牛乳や
珈琲
(
カフエエ
)
を天井から落ちて来て吸ふ事が常にある
相
(
さう
)
だ。
守宮
(
やもり
)
は
市
(
し
)
の場末の家にも
沢山
(
たくさん
)
に
這
(
は
)
つて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
大部分は聞いていなかった。こめかみと
顎
(
あご
)
の骨を動かしながら、「するめ」を
咬
(
か
)
んでいた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そういう思想の底には、分析の、極度の分析の、機械的な楽しみ、思想そのものを
咬
(
か
)
み砕かんとする、一種の動物的な欲求、あたかも
蛆虫
(
うじむし
)
のような本能、があるばかりだった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と謙三郎の叫びたるは、足や
咬
(
か
)
まれし、手やかけられし、犬の
毒牙
(
どくが
)
にかかれるならずや。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あの虫で。——きっと、ウィル旦那はあの黄金虫に頭のどっかを
咬
(
か
)
まれたんでがす」
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
アルサスの小さな町から狂犬に
咬
(
か
)
まれたという九歳の子供が母親に伴なわれてパリに出て来て、その母親からパストゥールに治療を
懇請
(
こんせい
)
したという偶然の機会がめぐって来ました。
ルイ・パストゥール
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
「
叔
(
おじ
)
さん、わたしゃお前に二つ三つ
咬
(
か
)
みついてやらなければ気が済まない」これにはわたしも全くおどかされてしまったが、あの牙ムキ出しの青ッ
面
(
つら
)
が何だかしらんが皆笑い出した。
狂人日記
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
兄の無念を思いやって、歯を
咬
(
か
)
み鳴らす時も、
嫂
(
あによめ
)
の面影は、やっぱり優しい人にうつる。竜之助を憎み
悪
(
にく
)
む心が火のように燃えても、お浜を慕わしく哀れに思う心は消えないのです。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蛇は忽ち鎌首を
擡
(
もた
)
げて、直芳を
咬
(
か
)
むべく向って来た。それを急いで矢立で打った。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
嘆きのピエロ夫妻の様な位置には、大抵の人達は、一生に一度もなり
憎
(
にく
)
い事である。まして虎に
咬
(
か
)
みつかれる様な事は、自分自分の一生を考へてみた所、
一寸
(
ちよつと
)
ありさうもないではないか。
拊掌談
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
峻が語を聴きながら豆を
咬
(
か
)
んでいると、裏口で音がして信子が帰って来た。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
象の曲芸は碁盤乗りや乱杭渡りが主芸、虎は屈強の若者と真剣の相撲、檻の中ではあるが猛然と立ち上って人間と組打ちは、観客も驚いたが実は八百長、それでも最初は数カ所
咬
(
か
)
みつかれた。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
咬
漢検1級
部首:⼝
9画
“咬”を含む語句
咬付
歯咬
咬緊
咬殺
咬鳴
齒咬
鼠咬症
飯咬
閑人免進悪狗咬人
生咬
獅子咬典膳
獅子咬
獅咬火鉢
獅咬
引咬
咬𠺕吧
咬閃
咬破
咬砕
咬楊子
...