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口説
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くど
ふりがな文庫
“
口説
(
くど
)” の例文
「まさにその通り、ありゃ女房の虎の子にしていた、お袋の形見だよ。何べん
口説
(
くど
)
いても、あればかりは質に入れさせなかった品で」
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お通夜や又何やかや
用達
(
ようたし
)
の道々などで、私は高木の妹から、彼が甚だ好色漢で、宿屋へ泊れば女中を
口説
(
くど
)
く、或時バーの女に
惚
(
ほ
)
れ
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
でありますから、私も眼の前にお幸を突きつけられて、その兄から代って
口説
(
くど
)
かれましては女難なぞを思うことができなかったのです。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
おげんはそこに父でも居るようにして、独りでかき
口説
(
くど
)
いた。狂死した父をあわれむ心は、
眼前
(
めのまえ
)
に見るものを余計に恐ろしくした。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
たとえば、かの「忠臣蔵」の七段目で、おかるの
口説
(
くど
)
きに“
勿体
(
もったい
)
ないが
父
(
とと
)
さんは、
非業
(
ひごう
)
の最期もお年の上”というのは穏かでない。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
それで親爺は、『手助けをするつもりで、行って来てくれ』と、イワンを
口説
(
くど
)
いているところだが、二、三日はかかる用事なんだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
(どうしても、沢井を
口説
(
くど
)
き落さねばならぬ、利を喰わすに物惜しみすな。条件は望み次第とし、何でもかでも、説きつけてこい)
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今まで米友を見かけて
口説
(
くど
)
いていた眼と口とが、忙がわしく前方へ活動をして、面の色さしまで変ったのは挙動が
甚
(
はなは
)
だ不審です。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
口説
(
くど
)
かれると、見境いなく、誰の言う事でもすぐきくのが、あの女の病いでもありまた徳でもあり、そのためにとうとう生命をなくした。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「ところであねごはおどしっぷりがいいや。どっちみちあねごと二人っきりだ。今度の旅行は楽しみさ。
口説
(
くど
)
くかな、その辺で」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は最後に母から
口説
(
くど
)
かれた時、卒業の上、どうとも解決するから、それまで待って
呉
(
く
)
れろと母に頼んでおいたのだそうである。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
澄見はなほも押し返し、いろいろ
口説
(
くど
)
き立て候へども、一向に御承引遊ばされず、遂に澄見の妙案も水の泡と消え果て申し候。
糸女覚え書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
美しい一人の青年の諸侯に
口説
(
くど
)
かれて木陰で接吻をする。
其
(
それ
)
を偶然来掛つたモリエエルが
瞥見
(
べつけん
)
した。恋に落ちた若い
男女
(
なんによ
)
は林の奥へ逃げた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
綺麗に家に帰りしが、これよりせっ/\と足近く笹屋に通い、金びら切って
口説
(
くど
)
きつけ、遂に
彼
(
か
)
の女と怪しい中になりました。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女房のお初が、利平の
枕許
(
まくらもと
)
でしきりと、
口説
(
くど
)
きたてる。利平が、争議団に頭を割られてから、お初はモウスッカリ、
怖気
(
おじけ
)
づいてしまっている。
眼
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
……蛇塚の眷族はみんな
女体
(
にょたい
)
だそうだから、ひょっとすると、こりゃあ、色っぽい話になるかも知れないぞ。ひとつ、とっつかまえて、
口説
(
くど
)
くか
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
紅殻
(
べにがら
)
塗りの
框
(
かまち
)
を見せた二重の上で
定規
(
じょうぎ
)
を枕に
炬燵
(
こたつ
)
に足を入れながら、おさんの
口説
(
くど
)
きをじっと聞き入っている間の治兵衛。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ナライ
小碓皇子
(
おうすおうじ
)
の故智を
倣
(
なら
)
い、花恥ずかしき美女に化けて往くと、ノンテオクたちまち
惚
(
ほ
)
れて思いのありたけ
掻
(
か
)
き
口説
(
くど
)
く。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
これは声帯の充血を一時的に散らすので、長い効能は無いが、女でも
口説
(
くど
)
かうといふものはその三十分前にこれを注射して見るのも面白からう。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
口説
(
くど
)
いてみたってはじまらない。どうしても探し出さなければならない性質のものだから、徹夜してその事業に着手した。出帆前夜のことである。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
早い話が玄関先で女を
口説
(
くど
)
いているようなものだからである。それと、この路地の小さな袋路地であることが、私の気持を冷淡にしたのであろう。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
やすやすと
口説
(
くど
)
き落した手柄話や、奥山へドライヴをした話などが事新しく思い出されて、行きずりの
儚
(
はかな
)
くもあわただしい関係だの、名前も苗字も
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
三晩續けて
徹夜
(
よどほし
)
に踊つても、猶踊り足らなくて、雨でも降れば格別、大抵二十日盆が過ぎるまでは、太鼓の音に村中の老人達が寢つかれぬと
口説
(
くど
)
く。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
次の日も又次の日も、私は誰にも言はないからと
狡
(
ずる
)
い前置をして
口説
(
くど
)
いたすゑ、やつと白状させた。私はほく/\と得たり顔して急ぎ佐伯に告げた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
このような
喧騒
(
けんそう
)
を
極
(
きわ
)
めた中でも、彼の箱の一隅で、喇叭はイレーネの肩に手をかけ、何事か一心不乱のさまで彼女の耳にかき
口説
(
くど
)
いてやまなかった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
中学生の頃から
誘惑
(
ゆうわく
)
が多くて、十七の歳女専の生徒から
口説
(
くど
)
かれて、とうとうその生徒を妊娠させたので、学校は放校処分になり、家からも勘当された。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
だが、お
前
(
めえ
)
は、源三郎をだしぬいて、この女を
口説
(
くど
)
きにかかったじゃアねえか。おらアそれが気にくわねんだっ!
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
我が家に帰りつくと妓王は又さめざめと涙を流しながら、こんな生き恥をさらしているより死んだ方がよっぽど良いと母の膝によりすがって、かき
口説
(
くど
)
く。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
だが、お初ッて奴も、いい加減な茶人だなあ——見す見す泥棒と見ぬかれているのを知りながら、こわおもてで
口説
(
くど
)
くなんて、ちっとばかしだらしがねえ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
人々
(
ひとびと
)
は、
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
で、
昼寝
(
ひるね
)
でもしようと
思
(
おも
)
っているやさきなものですから、
頭
(
あたま
)
を
枕
(
まくら
)
からあげて
口説
(
くど
)
きました。
泣きんぼうの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼はそれを、或はすかし、或はおどし、色々に骨折って、三十分ばかりの間も、口を
酸
(
すっぱ
)
くして
口説
(
くど
)
いた上、とうとう、半ば威圧的に、彼女を
肯
(
うなずか
)
せて了いました。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして手を振り廻しながら何やら盛んに掻き
口説
(
くど
)
いてから、どっさり空箱を懐の中から掴み出し、それと引換えにありったけを買ってへらへらわらいつつ出て来た。
親方コブセ
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
先奥様
(
せんおくさま
)
がおいでになったらとかき
口説
(
くど
)
いて泣きたりしも、浪子はいそいそとしてわが
家
(
や
)
の
門
(
かど
)
を
出
(
い
)
でぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「うまく言ッてるぜ。淋しかろうと思ッてじゃアなかろう、平田を
口説
(
くど
)
いて鉢を
喰
(
く
)
ッたんだろう。ははははは。いい気味だ。おれの言う
言
(
こと
)
を、聞かなかッた
罰
(
ばち
)
だぜ」
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
「叔母さん叔母さん、お勢さんを
放飼
(
はなしがい
)
はいけないよ。今も人を
捉
(
つかま
)
えて
口説
(
くど
)
いて口説いて困らせ抜いた」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
『鼻』に
嫌気
(
いやき
)
がさしていた山口を誘い、彼の親友、岡田と大体の計画をきめてから、ぼくは先ず神崎、森の同感を得、次に関タッチイを
口説
(
くど
)
きに小日向に上りました。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
わしゃ、おん年十六歳のときその後家を
口説
(
くど
)
いたことがあるが、それ以来、自分から思い立って仕かけたことはなに一つありゃせん。天下国家のためだか知らんがのう。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
カント・デックは前からチャンと研究して、あっしを
口説
(
くど
)
き落す手を
考
(
かんげ
)
えていたらしいんですね。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そしてメァリーも一緒になつて、ジョンは二人を
口説
(
くど
)
いて、こんなことに二人共同意させるやうなことは、決してしなかつたらうと云つた。彼は答へた、もの靜かに——
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
かつて、あるテキヤに
口説
(
くど
)
かれたことがあつたが、そして、もう少しのところで誘惑されて了ふところであつたが、彼女は思ひとどまつて次のやうに言訳をした程である。
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
そして、月を見つ酒を酌みつしながら、私は白骨から連れて來た老爺を
口説
(
くど
)
き落して案内させ、
終
(
つひ
)
にその翌日一時諦めてゐた燒嶽登山を遂行することになつたのであつた。
樹木とその葉:35 火山をめぐる温泉
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
……
何
(
なに
)
を
何
(
ど
)
う
考
(
かんが
)
へたか、いづれ
周章
(
あわ
)
てた
紛
(
まぎ
)
れであらうが、
神田
(
かんだ
)
の
從姉
(
いとこ
)
——
松本
(
まつもと
)
の
長
(
ながし
)
の
姉
(
あね
)
を
口説
(
くど
)
いて、
實
(
じつ
)
は
名古屋
(
なごや
)
ゆきに
着
(
き
)
てゐた
琉球
(
りうきう
)
だつて、
月賦
(
げつぷ
)
の
約束
(
やくそく
)
で、その
從姉
(
いとこ
)
の
顏
(
かほ
)
で
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「うき人を又
口説
(
くど
)
き見む秋の暮」「君と我うそに
惚
(
ほ
)
ればや秋の暮」というような句は、一見この単調を破り去ったようで、実は心底の寂しさを紛らそうとする声に外ならぬ。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
安江では手におえぬとみて文吉を
口説
(
くど
)
こうというのであろうか。安江は意地悪く笑い出し
雑居家族
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
ここで
逢
(
あ
)
ったが百
年目
(
ねんめ
)
と、とっ
捕
(
つか
)
まえて
口説
(
くど
)
こうッたって、そうは
問屋
(
とんや
)
でおろしませんや。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
ちょうど、あとになっていろんな女を
口説
(
くど
)
いた時と、まるっきり同じだったわけです。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
ことにお千代は極端に同情し母にも
口説
(
くど
)
き自分の夫にも口説きしてひそかに
慰藉
(
いしゃ
)
の法を講じた。自ら進んで省作との間に文通も取り次ぎ、時には二人を
逢
(
あ
)
わせる工夫もしてやった。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
夫の膝を右の手で揺り動かしつ
掻
(
か
)
き
口説
(
くど
)
けど、
先刻
(
さき
)
より無言の仏となりし十兵衛何ともなお言わず、
再度
(
ふたたび
)
三度かきくどけど
黙黙
(
むっくり
)
としてなお言わざりしが、やがて
垂
(
た
)
れたる
首
(
こうべ
)
を
抬
(
もた
)
げ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「あんたがあんまりおとなしいものだからよ。
口説
(
くど
)
いたのよ。ここのうちの青熊が」
百喩経
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「何云ってるのだ、今まで俺を
口説
(
くど
)
いて、待合へ往こうとか何とか云ってた癖に」
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“口説(クドキ)”の解説
クドキ(くどき)は、浄瑠璃や歌舞伎のクライマックスで俳優と浄瑠璃とで演じる個所。「口説き」ともいう。元来は平曲や謡曲あるいは説経節で登場人物の悲しみを歌う演出であったものが、近世以降各種の口承文芸の演出も加わり多様化した。
(出典:Wikipedia)
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
説
常用漢字
小4
部首:⾔
14画
“口説”で始まる語句
口説落
口説立
口説節