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刺戟
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しげき
ふりがな文庫
“
刺戟
(
しげき
)” の例文
光波の震動が網膜を
刺戟
(
しげき
)
するのは純粋に運動の原理によるのであろう。絵画に於けるトオンの感じも、気がついてみれば触覚である。
触覚の世界
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
堯
(
たかし
)
は金魚の仔でもつまむようにしてそれを土管の口へ持って行くのである。彼は血の痰を見てももうなんの
刺戟
(
しげき
)
でもなくなっていた。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
十月の下旬になると、周囲がいかにも華やかな、
刺戟
(
しげき
)
の多い気分になって、書斎の中に静かに落ちついていることができなくなった。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
あれほど希望に全身を
刺戟
(
しげき
)
されてゐた
處女作
(
しよぢよさく
)
はとうとう一枚も書き上らないままに、
苫小牧
(
とまこまい
)
滯在
(
たいざい
)
の一月ほどは空しく過ぎてしまつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
日露戦争に於ける日本の大勝利に依って
刺戟
(
しげき
)
されて得たこの周さんの発見は、あのひとの医学救国の思想に深い
蹉跌
(
さてつ
)
を与え、やがて
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
僕は東京へ帰ってからの気分を想像して、あるいは
刺戟
(
しげき
)
を眼の前に控えた鎌倉にいるよりもかえって
焦躁
(
いら
)
つきはしまいかと心配した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
つまり表通りや新道路の繁華な
刺戟
(
しげき
)
に疲れた人々が、時々、刺戟を
外
(
は
)
ずして気分を転換する為めに
紛
(
まぎ
)
れ込むようなちょっとした街筋——
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それに
何時
(
いつ
)
の間にか慣れてしまったせいか、静かにしているときの主人より、凶暴なときの児太郎がかれの
総
(
すべ
)
てを
刺戟
(
しげき
)
したからである。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
加之女の匂……しつこい油の匂とごツちやになツたやうな一種動物性の匂が、何かの
機
(
はづみ
)
に輕く鼻を
刺戟
(
しげき
)
する。其にもまた心が動く。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
御覽
(
ごらん
)
なさい、
世界
(
せかい
)
の
始
(
はじめ
)
から、
今日
(
こんにち
)
に
至
(
いた
)
るまで、
益〻
(
ます/\
)
進歩
(
しんぽ
)
して
行
(
ゆ
)
くものは
生存競爭
(
せいぞんきやうさう
)
、
疼痛
(
とうつう
)
の
感覺
(
かんかく
)
、
刺戟
(
しげき
)
に
對
(
たい
)
する
反應
(
はんおう
)
の
力
(
ちから
)
などでせう。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
これが又恐竜のいらだたしい神経をよけい
刺戟
(
しげき
)
したらしい。モレロの体は、フランソアより、二倍も三倍もの後方へほうり飛ばされた。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それで懐が淋しくなって来ると、静かな郊外にある、兄の知合いの家に引っ込んで、
刺戟
(
しげき
)
に疲れた頭を休めたり、仕事に
耽
(
ふけ
)
ったりした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まだ重態であることを自覚していないらしい病人の神経を
刺戟
(
しげき
)
するより、こう云う風に直接
打
(
ぶ
)
つかってしまった方がよいであろうこと
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
幸作夫婦が始めようとする新しい生活、ドシドシやって来る鉄道、どれもこれもお種の
懊悩
(
なやま
)
しい神経を
刺戟
(
しげき
)
しないものは無かった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
理窟
(
りくつ
)
を申していると際限もありません、が、私が
此処
(
ここ
)
で
申上
(
もうしあ
)
げ
度
(
た
)
いのは、夢は従来の心理学者が発表したような、簡単な睡眠中の
刺戟
(
しげき
)
や
奇談クラブ〔戦後版〕:14 第四次元の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
淋しいままに、私は二三度、そんな遊びもやって見ました。しかし、その様ななまぬるい
刺戟
(
しげき
)
が、どうして私を満足させてくれましょう。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
むしろ
悪
(
あく
)
どい
刺戟
(
しげき
)
に富んだ、
生
(
なま
)
なましい色彩ばかりである。彼はその晩も膳の前に、
一掴
(
ひとつか
)
みの
海髪
(
うご
)
を枕にしためじの
刺身
(
さしみ
)
を見守っていた。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
長屋のそこ
此処
(
ここ
)
で煮炊きをする匂いや、
泥溝
(
どぶ
)
や、ごみ溜の
刺戟
(
しげき
)
的な匂いが漂っていて、平五は空腹を感じると同時に、胸がむかむかした。
末っ子
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この心に
翻弄
(
ほんろう
)
せられるのを、末造は愉快な
刺戟
(
しげき
)
として感ずるのである。それにお玉は横着になると共に、次第に少しずつじだらくになる。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
学者の研究意欲を
刺戟
(
しげき
)
するものがどれほど潜んでいるか知れぬと思うのでありますが、聞くところによれば、わずか十五、六歳の少年五
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一方には文芸協会その他の新劇団が
簇出
(
そうしゅつ
)
して、競って新脚本を上演して、外部から彼らを
刺戟
(
しげき
)
したのも無論あずかって力がある。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ヘヘヘ、うう! (苦しそうに唸る。唸り声で、しかし、無理に自分自身を
刺戟
(
しげき
)
して)スッパイそうだなあ? 食ったという
奴
(
やつ
)
がいるんだ。
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
そんな言葉の仕組だけで、お互がお互を
刺戟
(
しげき
)
し、お互に感激し、そして人間は人間の観念を確かめ合い、人間は人間の観念を生産してゆく。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼女自身にとつては全く性的衝動なしに
為
(
な
)
し
遂
(
と
)
げられたこの偶発事件は、彼女を肉体的にではなしに、精神的にのみ
刺戟
(
しげき
)
したかの様であつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
競争心を
刺戟
(
しげき
)
したのは車争いという小さいことにすぎないが、それがどれほど大きな恨みになっているかを左大臣家の人は想像もしなかった。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
これはきっとこの雑草の中に何か特別な
香
(
かお
)
りを発するものがあって、それが彼の記憶を
刺戟
(
しげき
)
するのかも知れないぞと思った。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
官能的な
刺戟
(
しげき
)
が全身を浸し、変態的な
愉悦
(
ゆえつ
)
にさえ駆られて、狂奮が、胸の血をわくわくと沸き立たせるのを感じるのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
罎
(
びん
)
の
底
(
そこ
)
になつた
醤油
(
しやうゆ
)
は一
番
(
ばん
)
の
醤油粕
(
しやうゆかす
)
で
造
(
つく
)
り
込
(
こ
)
んだ
安物
(
やすもの
)
で、
鹽
(
しほ
)
の
辛
(
から
)
い
味
(
あぢ
)
が
舌
(
した
)
を
刺戟
(
しげき
)
するばかりでなく、
苦味
(
にがみ
)
さへ
加
(
くは
)
はつて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
このように自然と人事とを見、感じ、考え、生きた人の誠実で刻銘な記録は世界の人間の絶えざる反省と
刺戟
(
しげき
)
と慰めとの源であらねばならない。
森の生活――ウォールデン――:01 訳者の言葉
(新字新仮名)
/
神吉三郎
(著)
このように自然と人事とを見、感じ、考え、生きた人の誠実で刻銘な記録は世界の人間の絶えざる反省と
刺戟
(
しげき
)
と慰めとの源であらねばならない。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
その音が興奮した神経をおびただしく
刺戟
(
しげき
)
するので、幾度かそれを直してみたが、どうしても鳴る、カタカタと鳴る。もう
厭
(
いや
)
になってしまった。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
この一言は予にとっては感謝すべき
刺戟
(
しげき
)
であった。又聞きであるからもちろん趣旨を間違えているかも知れぬが、自分はこの言葉をこう解した。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
即ち日本の文明——明治の維新と共に世界的競争に堪え得らるるに至った国運の発展——日本今日の勃興こそ支那民族に対する一大
刺戟
(
しげき
)
となり
日支親善策如何:――我輩の日支親善論
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
それは何物が
刺戟
(
しげき
)
を与えるのか解らない
唐突
(
とうとつ
)
な微笑で、水面へ浮び上った泡のように直ぐ消えて平静になる微笑であった。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「いき」な味とは、味覚の上に、例えば「きのめ」や
柚
(
ゆず
)
の嗅覚や、
山椒
(
さんしょ
)
や
山葵
(
わさび
)
の触覚のようなものの加わった、
刺戟
(
しげき
)
の強い、複雑なものである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
それに
刺戟
(
しげき
)
せられて玄白も大いに医学を究めようとし、しかしそのためにはオランダの医学を知る必要があると感じて
杉田玄白
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
それが肉体の変化の直接の影響であるか、あるいは精神的変化が外界の
刺戟
(
しげき
)
に誘発されてそれがある程度まで肉体に反応しているのだか分らない。
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
俳句の
翻訳
(
ほんやく
)
を試みてそれを毎月の雑誌に載せ、せめて季ということに親しまそうと試みましたが、モロッコに居るフランス人がそれに
刺戟
(
しげき
)
されて
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
しかも、その遺伝した病癖が、
今朝
(
けさ
)
みたような「足の夢」に
刺戟
(
しげき
)
されて、極度に大きく夢遊し現われるような事があったら、それこそ大変である。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「勧進帳」その他が、明治天皇陛下、
皇后宮
(
あきのみや
)
、皇太后の宮と、天覧につづき
台覧
(
たいらん
)
になったことは、劇界ばかりではない、諸芸の
刺戟
(
しげき
)
になったのだ。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
或る時は私は外界の
刺戟
(
しげき
)
をそのままに受け入れて、反省もなく生活している。或る時は外界の刺戟に対して反射的に意識を動かして生活している。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
学者や芸術家と
異
(
ちが
)
って、政治家、教育家、社会改良家、新聞雑誌記者などの生活は、天才の新思想に
刺戟
(
しげき
)
せられて常に驚異に全身を若返らせながら
鏡心灯語 抄
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
雨情の碑のあるあたりの岸に、引上げられた藻が積んであって、そのそばを通ると、藻の匂いが鼻を
刺戟
(
しげき
)
する。私はことしはじめて浮藻の花を見た。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そしてその手紙のなかにある教養的な、君でなくては書けない、美にまで解かされた理智的空気に触れることは僕にとってよい
刺戟
(
しげき
)
でもあるのです。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
かつてなかったけばけばしい姿が無遠慮に現される。この
刺戟
(
しげき
)
への求めが俗悪に陥らなかった場合があろうか。私は罪なき器を呪うことができない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
言い換えると、彼は発明された偶然、強いて作られた運命に心を砕こうとするのである。恐怖或いは不安によって希望を
刺戟
(
しげき
)
しようとするのである。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
したがって人間の気息なるものは、天地に影響いたします。で気息さえととのっておれば、少しも天地を
刺戟
(
しげき
)
しません。きわめて自然に忍び込めます
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『人身生理学』は中学校程度の教科書としては
甚
(
はなは
)
だくわしいもので、そのころ知識欲の
熾
(
さかん
)
であった私の心を
刺戟
(
しげき
)
したのみでなく、その文章はたとえば
呉秀三先生
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
肉が営養があるというわけではないので、食慾を
刺戟
(
しげき
)
するのは肉が一番だから、肉で喰うのが一番飯が余計喰える。
鴎外博士の追憶
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
しかしながら友人の誤解と
難詰
(
なんきつ
)
はヨブの思想を
刺戟
(
しげき
)
し、神を知らんとする熱情を益々高めし
故
(
ゆえ
)
、かえって彼を光明に向って導く原動力となるのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
“刺戟”の意味
《名詞》
刺 戟(しげき 「刺激」に「同音の漢字による書きかえ」がなされる)
触覚や視覚などの感覚を引き起こすこと。神経を興奮させること。内臓器官の働きを活発にさせること。
感情や興味をかき立てること。あるいは、平穏な状態をかき乱すこと。ある行動をするきっかけとなること。また、その原因。
行動や思考を活発にさせること。また、その原因。
(出典:Wiktionary)
刺
常用漢字
中学
部首:⼑
8画
戟
漢検準1級
部首:⼽
12画
“刺戟”で始まる語句
刺戟性
刺戟的
刺戟剤
刺戟強