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しょて
ふりがな文庫
“
初手
(
しょて
)” の例文
揉むには当らぬ。お前の事は
初手
(
しょて
)
からいわば私が
酔興
(
すいきょう
)
でこうして
隠
(
かくま
)
って上げているの故、余計な
気兼
(
きがね
)
をせずと安心していなさるがいい。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私の方は
初手
(
しょて
)
からの他人だが、七兵衛の方はお前様にお近づきがある、その上もう一人の盲目の剣術の先生、あれが大変なもので
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そうすると私は人を誤解しないとも限らない。その上恐るべき過失を犯す覚悟を、
初手
(
しょて
)
から仮定して、かからなければならない。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無論彼が白状せずともこのラジウムの力で、彼の身体の上に遠からずして
潰瘍
(
かいよう
)
が現われるだろうことを私は
初手
(
しょて
)
から勘定に入れていたのだった。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが庄次郎の眼をひく妓はいなかった。——あれほど
初手
(
しょて
)
は
忌
(
いま
)
わしい女だったお蔦に
優
(
まさ
)
る女が、今の眼には見当たらない。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
貞固と東堂とは、共に留守居の
物頭
(
ものがしら
)
を兼ねていた。物頭は詳しくは
初手
(
しょて
)
足軽頭
(
あしがるがしら
)
といって、藩の諸兵の首領である。留守居も物頭も
独礼
(
どくれい
)
の格式である。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
やはり、
初手
(
しょて
)
から彫刻師の刀にかけ、彫刻師自身の意匠で型を彫ってもらいたいのだが、一つ勘考して頂きたい。
幕末維新懐古談:40 貿易品の型彫りをしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
貴様が
初手
(
しょて
)
から清水山へ行く料簡もなし、またなんにもうしろ暗いことがねえなら、初めから黙っている筈だ。
半七捕物帳:43 柳原堤の女
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
初手
(
しょて
)
は黙っておったとすれば——? 越州察するところ、こりゃ単に役人にまぎらわしき風体のものであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何
(
な
)
ぜかといえば、この宿場の猫背の馭者は、まだその日、誰も手をつけない蒸し立ての饅頭に
初手
(
しょて
)
をつけるということが、それほどの
潔癖
(
けっぺき
)
から長い年月の間
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
煩わせば姉さんにしかられまするは
初手
(
しょて
)
の口
青皇
(
せいこう
)
令を
司
(
つかさ
)
どれば厭でも開く
鉢
(
はち
)
の梅殺生禁断の制礼がかえって漁者の惑いを募らせ曳く網のたび重なれば
阿漕浦
(
あこぎがうら
)
に真珠を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
彼も若い頃は
一廉
(
ひとかど
)
の愛煙家であったに違いない。少し
喫
(
の
)
み過ぎたと気が附いて、止めようとして、
初手
(
しょて
)
は誰でもする代用品を使ってごまかした。それではいけない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
落ちると、片端から一ツ一ツ、順々にまた並べて、
初手
(
しょて
)
からフッと吹いて、カタリといわせる。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
勝って笑えるのは僕の方なんだ。僕はこの事件では
初手
(
しょて
)
から
上手
(
うわて
)
に出ているんだ。僕はもう君たちが蝿ほども
怖
(
こわ
)
かあない。さあ、僕を殺すとも生かすとも、好きなようにしてくれ給え。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「マア一口……。」と言って、
初手
(
しょて
)
に甘ッたるい
屠蘇
(
とそ
)
を飲まされた。それから黒塗りの膳が運ばれた。膳には仕出し屋から取ったらしい赤い刺身や椀や、
鯔
(
いな
)
の塩焼きなどがならべてあった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
初手
(
しょて
)
からいってる
通
(
とお
)
り、おめえやお
袋
(
ふくろ
)
の
臍
(
へそ
)
くりから、
引
(
ひ
)
っ
張
(
ぱ
)
り
出
(
だ
)
そうたァいやァしねえや。
狙
(
ねら
)
いをつけたなあの
若旦那
(
わかだんな
)
、
橘屋
(
たちばなや
)
の
徳太郎
(
とくたろう
)
というでくの
棒
(
ぼう
)
よ。ふふふふ。
何
(
な
)
んの
雑作
(
ぞうさ
)
もありァしねえ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
これで盆の上の仕事でも巧者になれば、
初手
(
しょて
)
はあらかた投げてかかる。
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
初手
(
しょて
)
はおいらア正直だからきていに思うた。後家とおつだという
噂
(
うわさ
)
があるのに。
敵手
(
あいかた
)
がちがっているのはへんだなと思っているとの。花時分たアちがって人通りもすくねえだろう。スルト野郎め。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
けれどもあなたは
初手
(
しょて
)
からわたしに疑いをお持ちになって、木村にもいろいろ御忠告なさった
方
(
かた
)
ですもの、木村にどんな事をいっておやりになろうともわたしにはねっから不服はありませんことよ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
飛びかふて
初手
(
しょて
)
の蝶々
紛
(
まぎ
)
れけり
嘯山
(
しょうざん
)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
しかしこれは
初手
(
しょて
)
にどてらの方で自分の食いたくないものを、むしゃむしゃ食って見せて、自分の食慾を誘致した結果が
与
(
あずか
)
って力あるようだ。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
凡
(
およ
)
そはひとしきものにて、おのれなども幾たび戦場を踏みても、
初手
(
しょて
)
ばかりは、身の慄へを如何ともとどめ難くおぼえ候ふ
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
初手
(
しょて
)
の晩の泊りには、瓦っかけをしこたま
掴
(
つか
)
ませられちゃいやして、いやはや、その名誉回復と心得て、二度目に出かけてみやしたが、用心いよいよ堅固
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
初手
(
しょて
)
は随分この女ならば末の末までもと、のぼせ上るが常なるを、さうと見て取るや否や、この男殺すも
活
(
いか
)
すも勝手次第と我儘の
仕放題
(
しほうだい
)
しはじめるは女なり。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
一足飛びに
上手
(
じょうず
)
になって、
初手
(
しょて
)
から立派に踊りが出来ればとにかく、こんなことを毎晩見せられたり、やがては自分もこんな腰附き手附きをして
変梃
(
へんてこ
)
極まる仕草をしなければならんとは
幕末維新懐古談:20 遊芸には縁のなかったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
初手
(
しょて
)
の烏もともに、
就中
(
なかんずく
)
、
後
(
あと
)
なる三羽の烏は、足も地に着かざるまで
跳梁
(
ちょうりょう
)
す。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これで盆の上の仕事でも巧者になれば
初手
(
しょて
)
はあらかた投げてかかる。
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
そうすればおれの方でも弁解もしようし、説明もしようけれども、
初手
(
しょて
)
から根のない
苦情
(
くじょう
)
じゃ手のつけようがないじゃないか
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
気が
迸
(
ほとばし
)
る。天才の鋭さを持つ。けれど、そこに何らの懸け引きがない。新九郎は
初手
(
しょて
)
の斬り込みに、案の定、たちまち精根を疲らしてしまった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おれの
初手
(
しょて
)
の嬶は、あいつは今どうなっていやがるかなあ、嫁入前に男をこしらえて、お土産つきで来るような奴だから、娘時分には、男も一人や二人じゃなかったろう、どうせ
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何事も
宿世
(
しゅくせ
)
の因縁なりかし。
初手
(
しょて
)
は唯かりそめの
契
(
ちぎり
)
も
年
(
とし
)
経
(
へ
)
ぬれば人にいはれぬ深きわけ重なりてまことの涙さそはるる事も
出
(
い
)
で
来
(
き
)
ぬるなり。これらをや迷の夢と悟りし人はいふなるべし。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
すべて物は一番
初手
(
しょて
)
に見たことが一番深く頭に残っているものと思われます。
幕末維新懐古談:66 奈良見物に行ったことのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
……
初手
(
しょて
)
から覚悟じゃありませんか、ねえ。内証だって夫婦ですもの。私、苦労が
楽
(
たのし
)
みよ。月も雪もありゃしません。(
四辺
(
あたり
)
を
眗
(
みまわ
)
す)ちょいとお花見をして
行
(
ゆ
)
きましょうよ。……誰も居ない。
湯島の境内
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「何にも云える人じゃないよ。相談相手に出来るくらいなら、
初手
(
しょて
)
からこうしないでもほかにいくらも
遣口
(
やりくち
)
はあらあね」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「……おお、程昱か。呉の堅陣に対して打つ手がない。
初手
(
しょて
)
の戦も、彼の攻勢に、味方はようやく防いだのみだ」
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
初手
(
しょて
)
は若い男ばかりに利いたが、だんだん
老人
(
としより
)
にも及ぼして、後には
婦人
(
おんな
)
の病人もこれで
復
(
なお
)
る、復らぬまでも
苦痛
(
いたみ
)
が薄らぐ、
根太
(
ねぶと
)
の
膿
(
うみ
)
を切って出すさえ、
錆
(
さ
)
びた小刀で
引裂
(
ひっさ
)
く医者殿が腕前じゃ
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ズブの
初手
(
しょて
)
を教育するつもりで、初手の初手からひとつ——いま言ったその盆ゴザというのは、いったいどんなゴザなんだ、バクチ打ち特有のゴザが別製に編ましてあるのか、いや、まだそのさきに
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「手前も御同様、やっとこれで
安堵
(
あんど
)
致しました。何事によらず根もない世上の噂というやつほどいまいましいものは御座りません。
初手
(
しょて
)
からこうと知っていればこんなに
痩
(
や
)
せるほど心配は致しません。」
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、義貞は
初手
(
しょて
)
の苦戦にかんがみて、大部隊の偵察や、また三浦義勝などの投降部隊に先導させて、多摩の南岸へわたり、その日、関戸の宿に陣取った。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「奥さんは
初手
(
しょて
)
から私に未練があるものとして、きめてかかっていらっしゃるから、そうおっしゃるんでしょう」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、それは天気模様で、まあ分る。けれども、今時分、
扇子
(
おうぎ
)
は余りお儀式過ぎる。……踊の
稽古
(
けいこ
)
の
帰途
(
かえり
)
なら、相応したのがあろうものを、
初手
(
しょて
)
から素性のおかしいのが、これで
愈々
(
いよいよ
)
不思議になった。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
初手
(
しょて
)
に流してしまうなんぞは、お話になりません
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
つまり
初手
(
しょて
)
から
玉砕
(
ぎょくさい
)
を期していたものとしか見えず、正行の
大童
(
おおわらわ
)
なすがたを中心に、一とき、わあッと、どよみを揚げた武者どもの叫びは、
喊声
(
かんせい
)
というよりも
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
取られようにも
瞞
(
かた
)
られようにも、名誉も財産もないんだから
初手
(
しょて
)
から見込の立たない
代物
(
しろもの
)
である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おい
皆
(
みんな
)
聞かつし、
初手
(
しょて
)
はな、
支那人
(
チャンチャン
)
の金満が
流丸
(
ながれだま
)
を
啖
(
くら
)
つて
路傍
(
みちばた
)
に
僵
(
たお
)
れてゐたのを、中隊長様が可愛想だつてえんで、お手当をなすつてよ、
此奴
(
こいつ
)
にその家まで送らしてお
遣
(
や
)
んなすつたのがはじまりだ。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「だって、まず
初手
(
しょて
)
からして、
差撥
(
さはつ
)
(
獄吏
(
ごくり
)
)や
監察
(
かんさつ
)
に、ごあいさつの
銀子
(
ぎんす
)
をお供えしねえと、これだぜ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし
初手
(
しょて
)
から勝利者の余裕が附着している彼女には、黙っていても大した不足はなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
死んだ兄貴の典馬のひき合わせだろうよ——おれも
初手
(
しょて
)
はそんな気はみじんも抱いていなかったのだ。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おおぜい寄ると、めいめいが自分の存在を主張しようとして、ややともすれば
異
(
い
)
をたてる。それでなければ、自分の存在を閑却された心持ちになって、
初手
(
しょて
)
から冷淡にかまえる。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いいえ、この清吉だって、
初手
(
しょて
)
からそれくらいな事は、感づいていないわけじゃなかったんで」
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“初手”の意味
《名詞》
将棋や囲碁で、最初の手。
最初。初め。
(出典:Wiktionary)
初
常用漢字
小4
部首:⼑
7画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“初”で始まる語句
初
初心
初々
初夏
初春
初陣
初秋
初午
初旬
初更