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まる
ふりがな文庫
“
全
(
まる
)” の例文
私共が
全
(
まる
)
で
共謀
(
ぐる
)
かなんぞになって居るように思われますので甚だ残念ですが、どうしてあの塔をあの高い窓から運び出したのでしょう
真珠塔の秘密
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
岡山「それで一つ眼なら
全
(
まる
)
で化物だ、こんな山の中で
猟人
(
かりゅうど
)
が居るから追掛けるぞ、そんな
姿
(
なり
)
でピョコ/\やって来るな、亭主を呼べ」
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また
全
(
まる
)
で馬、驢、駱駝を
烹
(
に
)
用いて、ギリシア人が、かほどの美饌を知らぬを
愍
(
あわれ
)
んだから、どの国で馬肉を食ったって構わぬはずだと。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
全
(
まる
)
でお
爺
(
ぢい
)
さんが穏かに孫を訓すやうな態度なので、三人とも『まづまづ退校は免れたな』と思つて、漸く安らかな気持になつていつた。
浜尾新先生
(新字旧仮名)
/
辰野隆
(著)
おれは
全
(
まる
)
三日苦しみ通しだものを。
明日
(
あす
)
は四日目、それから五日目、六日目……死神は何処に
居
(
お
)
る? 来てくれ! 早く引取ってくれ!
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
▼ もっと見る
父親が没してから
全
(
まる
)
十年、
生死
(
いきじに
)
の海のうやつらやの高波に揺られ揺られて
辛
(
かろう
)
じて
泳出
(
およぎいだ
)
した官海もやはり波風の静まる間がないことゆえ
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「まア、
貴嬢
(
あなた
)
、飛んでも無いこと
仰
(
おつ
)
しやいます、此上貴嬢が退会でもなさろものなら、教会は
全
(
まる
)
で
闇
(
やみ
)
ですよ、篠田さんの御退会で——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「
妾
(
わたし
)
亜米利加の旗を見ると胸が悪くなつてよ。星だの
条
(
すぢ
)
だの、けばけばしいつたら有りやしない、
全
(
まる
)
で
有平糖のお菓子
(
チエツカベリイ・キヤンデイ
)
のやうよ。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「さやうでございますよ、
年紀
(
としごろ
)
四十ばかりの
蒙茸
(
むしやくしや
)
と
髭髯
(
ひげ
)
の
生
(
は
)
えた、
身材
(
せい
)
の高い、
剛
(
こは
)
い顔の、
全
(
まる
)
で壮士みたやうな
風体
(
ふうてい
)
をしてお
在
(
いで
)
でした」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「そうですとも! 理想は
則
(
すなわ
)
ち実際の
附属物
(
つきもの
)
なんだ!
馬鈴薯
(
いも
)
も
全
(
まる
)
きり無いと困る、しかし馬鈴薯ばかりじゃア全く閉口する!」
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
文学に対する態度もまた
随
(
したが
)
って以前とは全く違って、一生の使命とするというような意気込も理想や抱負も
全
(
まる
)
で
失
(
な
)
くなっていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
殊に、其の餌つき方が、初め数秒間は、緩く引いて、それから、
徐
(
しず
)
かにすうツと餌を引いてく。其の美妙さは、
全
(
まる
)
で詩趣です。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
嘗
(
かつ
)
て十三歳の春から十八歳の春まで
全
(
まる
)
五年間の自分の生命といふものは、実に此巨人の永遠なる生命の一小部分であつたのだ。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
作者のつくつた真、又は作者の好んで入つて行つた真である。わるくすると、読者は
全
(
まる
)
つきり思ひもかけない作者の別天地につれて行かれる。
小説新論
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
隣席の紳士は、
吃驚
(
びつくり
)
したやうな表情をして、私の顔を正面から見つめて居た。私が何事をしやべつて居るのか、意味が
全
(
まる
)
で解らなかつたのである。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
処女とか貞操とか云ふことを
全
(
まる
)
で無視する事である。さういふ事もないとは限られぬ。またそれが悪くも何ともない事だと云ふことも考へ得られる。
貞操に就いての雑感
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
どう云う訳だか分らないが、今度は此部屋の様子が
全
(
まる
)
で変ってるであろうと、私は一人で固く決め込んでいたのだが、私の感じは当っていなかった。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
何しろもう七十近い齢で八年の間あの天草で
全
(
まる
)
で無人島同様な所に乞食のやうな生活をして、僅かな信者を作り乍らかくれてをられたのですからね。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
其
(
その
)
時分の私は
外
(
ほか
)
にお友達があることは
全
(
まる
)
で知らないやうに、学校の遊び時間には加賀田さんとばかり遊んで居ました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
授業を終えて教室を出ようとした私は、すぐに子供たちにつかまって、
全
(
まる
)
で鳩飼いじいさんのようになるのだった。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
それは
全
(
まる
)
で私といふ人間を非常に永い間友達にもつてゐたやうに、隱し立てをしない開け放したものを見せてゐた。
蒼白き巣窟
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
やはり其月の妾のような形で
全
(
まる
)
二年も腰をすえているうちに、其月の焼餅がだんだん激しくなって来て、時によると随分手あらい
折檻
(
せっかん
)
をすることもある。
半七捕物帳:36 冬の金魚
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「看護婦に聞きました。ちょうど十日間ばかり、
全
(
まる
)
ッきり人事不省で、驚きました。いつの間にか、もう、七月の
中旬
(
なかば
)
だそうで。」と
瞑
(
ねむ
)
ったままで云う。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
切ったのも
全
(
まる
)
で知らん。ほかにあるに違いない。俺は暗闇を幸に悪事をする奴を懲らしめるために、毎年下山して来ておるが、どうも去年のだけは見当がつかぬ
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
やがてストーン氏は静かに両眼を見開いたが、その青い
瞳
(
め
)
の中には今までと
全
(
まる
)
で違った容易ならぬ光りが満ちていた。相手が尋常の女でない事を悟ったらしい。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ウイリイは、この羽根はただ森の中に落ちていたのを拾ったのですから、そういう王女がどこにお
出
(
い
)
でだか、私は
全
(
まる
)
でしらないのですと、ありのままを申し上げました。
黄金鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
道理でつい此間
埠頭場
(
はとば
)
で彼等を迎へた時に比べると
全
(
まる
)
で趣きが変つてゐた——と滝本は気づいた。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
貌全体が
全
(
まる
)
で毛だらけであつたが、その癖眉毛がまるつきり無いので、ひどく怪しげであつた。
間木老人
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
「
全
(
まる
)
一日寝過ごして、次の晩の夜更けまで眠っていたなんて、そんな事はある筈がない。だが、何か太陽に異変でも起って、これが
午
(
ひる
)
の十二時だと云う筈もあるまいて!」
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
「上町の旦那はん、……八千代はん、えらうおまんな。この夏
全
(
まる
)
で休んではりましたんやな。……もう出てはりますさうやけど、お金もたんと出來ましたんやろかいな。」
鱧の皮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
いえ、
全
(
まる
)
っきり
異
(
ちが
)
ってますわ。何しろうす暗いのと、
上気
(
じょうき
)
していたのとで、はっきり見ることも出来ませんでしたが、わたしの見た女の方は束髪だった様に覚えています。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
辰男は
全
(
まる
)
で他郷を見渡してゐるやうで方角も取れなかつた。萬國史で見た西洋の天子の冠のやうな形をした小さい島が入江から眞近い所にあるのに、今始めて氣がついた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
既に死骸が其筋の目に留り其方が殺したと云う沢山の証拠が有る其方に於いて覚え有う、と詰寄る検査官の言葉を聞て驚いたの驚か無いのと云て
全
(
まる
)
で度胸を失ッて仕舞ました
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
またある人々は家や耕地を
全
(
まる
)
で見忘れたかの様に見捨ててしまって山の中に入り込んで暮らしたりしていた。山の方がまだまだ木の実等の食物があったからであろうと思われる。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
従来の
因習
(
しきたり
)
もないので、
全
(
まる
)
で徳義を省みないというような事に成りがちである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
寛一さん、商売と学校は
全
(
まる
)
っきり違うよ。
俺
(
わし
)
のような横文字も
碌々
(
ろくろく
)
に読めない者でも組合の
頭取
(
とうどり
)
が相応勤まって行く。金儲けは又別さ。融通が利いて堅ければ宜い。その上に学問があれば尚お結構だ。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「そこですよ。あいつは約手で振出が誰で、裏書が誰でと云ふ条件ならと云ふので承知したんです。それが変更することになると、
全
(
まる
)
で違つた話になると云ふんです。それはきつとさう云ふに極つてゐるんです。」
瘢痕
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
本の体裁と云い紙質と云い初版とは
全
(
まる
)
で較べものにならず、殊に初版にある美しい挿絵が再版には全然欠けているのが頗る気に入った。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
対
(
こた
)
うる者はなかったから予が答えたは、まず日月出でて
爝火
(
しゃっか
)
息
(
や
)
まずと支那でいうのが西洋の「日は火を消す」と
全
(
まる
)
反対
(
あべこべ
)
で面白い。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
全
(
まる
)
で
淑女
(
レディ
)
の
扮装
(
いでたち
)
だ。
就中
(
なかんづく
)
今日は
冶
(
めか
)
してをつたが、
何処
(
どこ
)
か
旨
(
うま
)
い口でもあると見える。
那奴
(
あいつ
)
に
搾
(
しぼ
)
られちや
克
(
かな
)
はん、あれが本当の真綿で首だらう
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
殊に呼吸器病を直すには、沖釣に越す薬無いと、
鱚庵老
(
きすあんろう
)
の話しでしたが、実際さうでせう。空気中のオゾンの含量が、
全
(
まる
)
で違ツてるですもの。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
「何の証拠もないのに、
全
(
まる
)
で保険金目的で放火したような事を云うのは怪しからん。第一当夜僕は家に居ないじゃないか」
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
父は祖母とは
全
(
まる
)
で違っていた。
如何
(
どう
)
して此人の腹に
此様
(
こん
)
な人がと怪しまれる程の好人物で、
面
(
かお
)
も
薩張
(
さっぱ
)
り似ていなかった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
嘗て十三歳の春から十八歳の春まで
全
(
まる
)
五年間の自分の生命といふものは、實に此巨人の永遠なる一小部分であつたのだ。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
全
(
まる
)
でお
咄
(
はなし
)
にならんサ。外債募集だの鉄道国有だのと一つの問題を五年も六年も担ぎ廻る先生の揃つてる経済界だもの。
青年実業家
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
「そうです、それで僕の
総
(
すべ
)
ての希望が悉く水の
泡
(
あわ
)
となって了いました」と岡本の言葉が未だ終らぬうち近藤は左の如く言った、それが
全
(
まる
)
で演説口調
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「さうよ! 貴方は馬鹿ね! 妾があの赤毛の犬をあんなに可愛がつて見せたのは一体何の為めだつたかつて事が貴方には
全
(
まる
)
で分らなかつたのね!」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
志「萩原君、君を嬢様が
先刻
(
さっき
)
から
熟々
(
しけ/″\
)
と見ておりますよ、梅の花を見る
態
(
ふり
)
をしていても、眼の
球
(
たま
)
は
全
(
まる
)
で
此方
(
こちら
)
を見ているよ、今日は
頓
(
とん
)
と君に蹴られたね」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「どう
仕
(
つかまつ
)
りまして。」給仕は
弾機細工
(
ばねざいく
)
のやうに頭を下げた。「さし上げませうにも
全
(
まる
)
で品が手に
入
(
い
)
りませんので。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼の眼は、
全
(
まる
)
で外を見ることが能きなくなっていた。彼は、瞑っても、開けても、その眼で、糜れた臓腑を見た。
労働者の居ない船
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
全
常用漢字
小3
部首:⼊
6画
“全”を含む語句
全然
全体
完全
健全
全快
全身
全速力
全部
全體
全濡
大英百科全書
安全
全力
全裸
全治
安全弁
全々
全貌
全豹
全焼
...