先輩せんぱい)” の例文
いわんやわが九百年前の先輩せんぱい『今昔物語』のごときはその当時にありてすでに今は昔の話なりしに反しこれはこれ目前の出来事なり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
青年にこの弱点あることは青年自身も承知しょうちしている。承知しているゆえ、いわゆる先輩せんぱいの意見をたたき、職業を選定せんとするのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もちろん、先輩せんぱいが同じような仕事をしているので、新顔に灸所きゅうしょ灸所は教えてくれるのであるが、そのせいばかりとは思われない。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
そのことをおはなしするのには、いま一人ひとり赤人あかひと先輩せんぱいとも、先生せんせいともいはなければならない、柿本人麿かきのもとのひとまろのことをまをさねばなりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
船で知り合った、中学の先輩せんぱい、Kさんからの親切な激励状げきれいじょうだったのです。再び、表の芝生にでた、ぼくの顔は蒼褪あおざめていたかも知れません。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
見るとその三四の郵便物の中の一番上になっている一封の文字は、先輩せんぱい某氏ぼうしふでであることは明らかであった。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何者なにものにもと意味いみ世評せひやうとか、先輩せんぱいせつとか、女學校ぢよがくかう校長かうちやう意見いけんとか、さういふ他人たにん批判ひはんふのである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なるほど、紫紺しこん職人しょくにんはみなんでしまった。生薬屋のおやじもんだと。そうしてみるとさしあたり、紫紺についての先輩せんぱいは、今では山男だけというわけだ。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ところが不運ふうんにも、その日の午後は、ある先輩せんぱいの家で、マージャンを決行する約束があった。困ったなと思うが、四人の中の一人として欠けるわけに行かない。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
「どうして? それはかまわんさ。本人が塾生を希望しているし、また、君が助手だからといって、大河を先輩せんぱいとして尊敬できないという理由もないだろう。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
わたしいまわたし少年時代せうねんじだいことおもひだす。明治めいぢ十九ねんわたしはじめて九しうから東京とうきやう遊學いうがくときわたし友人いうじん先輩せんぱい學生間がくせいかんに、よくういふはなしのあつたことおぼえてゐる。
平次の謙遜けんそんな調子に氣をよくして、淺吉は先輩せんぱいらしく本堂の奧に頑張りました。其處から居流れて、弟子世話人達十五六人、平次と八五郎はそれを挾んで左右に控へます。
打石斧だせきふの一ばんおほかつたのは、深大寺しんだいじである。此所こゝでは先輩せんぱいが、矢張やはり打石斧だせきふ澤山たくさん採集さいしふした。
「こいつをらく切拔きりぬけないぢや東京とうきやうめないよ。」と、よく下宿げしゆく先輩せんぱいつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
諸君! もしこの世に、先輩せんぱいというものがあって後進の路をひらいてくれなかったら、人生はいかに暗黒なものとなるであろう。それと同時に、ぼくらもやがて先輩となるときがくる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
正吉しょうきちは、つとめるようになってから、こんな場所ばしょへは、先輩せんぱいにつれられたり、また社員しゃいんたちときたことがあるけれど、小原おばら高橋たかはしも、きわめてまれなことだけに、はなし合間あいまに、あたまげて
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
この人は我楽多文庫がらくたぶんこだいころすでに入社してたのであるが、文庫ぶんこには書いた物を出さなかつた、俳諧はいかい社中しやちう先輩せんぱいであつたから、たはむれ宗匠そうせうんでた、神田かんだ五十稲荷ごとふいなりうらんで
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分じぶん自分じぶん仕事しごとをしてたくてならない矢先やさきへ、おなくわ出身しゆつしんで、小規模せうきぼながら專有せんいう工場こうば月島邊つきじまへんてゝ、獨立どくりつ經營けいえいをやつてゐる先輩せんぱい出逢であつたのがえんとなつて、その先輩せんぱい相談さうだんうへ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
糟谷かすやはその夕刻ゆうこく上京して、先輩せんぱい時重博士ときしげはくしをたずねて希望きぼう依頼いらいした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この二人ふたり先輩せんぱいうた手本てほんにして、だん/\自分じぶん本領ほんりようしてたのが、さきべた山部赤人やまべのあかひとなのです。このひとうたでは、特別とくべつ名高なだかいものとして
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
前述のごとき場合には、僕はつねに親はもちろん、その他親類、親友なりもしくは土地の先輩せんぱいにしてよく当人の性質をわきまえる人に相談せよと返事する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そしてまたこのの主人に対して先輩せんぱいたる情愛と貫禄かんろくとをもって臨んでいる綽々しゃくしゃくとして余裕よゆうある態度は、いかにもここの細君をしてその来訪をもとめさせただけのことは有る。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それに家柄いえがらも相当で、上層社会に知人が多く、士官学校の同期生や先輩せんぱいで将官級になった人たちでも、かれには一目いちもくおいているといったふうがあり、また政変の時などには
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
監督かんとくに廻って来た総監督の西博士が、コオチャアの黒井さんに、「みんな、坂本君位、身体があれば大したものだなア」とめて下さるのを聞くと、いつもクルウの先輩せんぱい連からは
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
沓脱くつぬぎのあたりを見廻して居る平次に、瀧五郎は先輩せんぱいらしく聲を掛けます。
「それはたしかに、あなたは僕の先輩せんぱいさ。けれどもそれがどうしたの。」
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このころ先輩せんぱいに、名高なだか西行法師さいぎようほうしといふひとがあります。御存ごぞんじのとほり、世捨よすびととして一風いつぷうかはつた、しづかな、さびしいうたつくつたといはれてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
僕の十歳代の時を顧みると年長者なり、先輩せんぱいなり、親切に指導する者ははなはだ少なかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その点では諸君の先輩せんぱいだとさえいえないのだから、まして諸君の指導者でもなければ、命令者でもない。そういうことを私に期待していては、ここの生活は成り立つ見込みこみがない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
さすがに先輩せんぱいたちも感にたえたか、ぼくはいつもの叱言こごと一つさえ、きませんでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
斯うなると、先輩せんぱい三輪の萬七も、錢形平次の調べの助手に廻る外はありません。萬七ではまるで見當もつかないのに、若い平次は、この複雜極まる殺しを、手際よくキビキビ裁いて行くのです。
平次は先輩せんぱいの萬七に對しては、何時でもんな調子でした。