供養くよう)” の例文
四月二十日、故人の命日に当るので、静子は仏参ぶっさんをしたのち、夕刻から親戚や故人と親しかった人々を招いて、仏の供養くようを営んだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それはもう秋風の立ち始めました頃、長尾ながお律師様りっしさま嵯峨さが阿弥陀堂あみだどうを御建てになって、その供養くようをなすった時の事でございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その次が仏堂を普請ふしんするとかあるいは仏陀ぶっだ供養くようする。そのために随分金が沢山かかる。そういうようなところに多く用いられて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
まことに老女らしい淡々たるユウモアではあるが、ともかくも盆の供養くようの踊のような、哀調でなかったことはまず注意せられる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その影を見まわすと、或る者は、石を積んで塔を作り、或る者は鎧のちぎれや兜の鉢金はちがねなどを寄せ、花を折って、供養くようしていた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女房は立ちどまって挨拶して、誰にたのまれてその鰻を放すのだと訊いたので、おやじは煙草屋の平吉の供養くようのためであると正直に話した。
放し鰻 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
但し最後に前論士は釈尊の終りに受けられた供養くようが豚肉であるという、何という間違まちがいであるか豚肉ではないきのこの一種である。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
供養くよう卒塔婆そとばを寺僧にたのまむとてを通ぜしに寺僧出で来りてわが面を熟視する事良久しばらくにして、わが家小石川にありし頃の事を思起したりとて
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
南側の方には食用がえるを飼う池があり、北側の方には、衝突事故で死んだ人々の供養くようのために、まだ真新しい、大きな石の国道地蔵が立っているばかり。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
死後、いつまでも、お墓がなかった遠藤清子きよこのために、お友達たちがそれをした日の、供養くようのあつまりだった。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
われ、法力によつて、呉家の悪因縁を断つ事を得たり。すなはち此灰を仏像に納めて三界の万霊と共に供養くようし、自身は俗体となつて、此家に婿となり、勝果しょうか
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あまごいをするのには、むらひとたちは、おとことなく、おんなとなく、おてらあつまって、供養くようをしなければなりません。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「わたくしめも、それからあとのあなた様の夜歩きも、百日のおん供養くようだというふうに拝していました。」
玉章 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
よく身投みなげがあるので其たもと供養くよう卒塔婆そとばが立って居る玉川上水の橋を渡って、田圃に下り、また坂を上って松友しょうゆうの杉林の間を行く。此処の杉林は見ものである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
父の名も朱字にりつけた、それも父の希望であって、どうせ立てるならばおれの生きてるうちにとのことであったが、いよいよでき上がって供養くようをしたときに
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
年とった女中はそれから、もう一ぺんひっ返して、大旦那の御仏前ごぶつぜん供養くように胡弓を弾くことをすすめた。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
道成寺で、再度の鐘建立が行われ、その供養くようを、白拍子の花子はなこという者が拝みに来る。これは、実のところ、清姫であって、寺僧は、女人禁制を理由として、拒む。
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
この坤竜とともどもに小野塚家の当主とうしゅ弥生殿の前にそろえて出すのは、弥生どの……というよりも、左膳の刃におたおれになった鉄斎先生への何よりの供養くよう——義理だ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昔、融禅師ゆうぜんじがまだ牛頭山ごずさんの北巌にんでいた時には、色々の鳥が花をふくんで供養くようしたが、四祖大師しそだいしに参じてから鳥が花を啣んで来なくなったという話を聞いたことがある。
愚禿親鸞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
「ヘエ、なんなと訊いておくんなさい。仏様にはとんだ供養くようだ、どんなことでも白状するぜ」
終戦のちょっとまえに帰った善法寺さんは、帰るとすぐ供養くようにきてくれたが、今また、つづけて八津のためにおきょうをあげてもらうことになるなど、どうして考えられたろう。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
親父おやじも俳諧は好きでした。自分の生きているうちに翁塚の一つも建てて置きたいと、口癖のようにそう言っていました。まあ、あの親父の供養くようにと思って、わたしもこんなことを
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あなたは義姉ねえさんの志をついで、あの先生に再び日の目を見せて上げたい、それが死んだ義姉さんへの供養くようと思っておいでになる志はよくわかりますけれども、それをする時には
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「は、折角ながら——。それゆえおよろしくばその御眉間疵にひと供養くよう——。いえ御退屈凌ぎにはまたとないところがござりますゆえ、およろしくば御案内致しまするでござります」
目がめて、夜が明けてるのに、汁のけむも、漬物のにおいも、いっこう連想に乗って来ないからは、行きなり放題に、今日は今日の命を取り留めて、その日その日の魂の供養くようをする呑気屋のんきや
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その晩は鶴見の供養くようを受けて一宿して、翌日は早々に九州へ立って行った。
“浅草寺縁起えんぎニ曰ク往昔土師臣真中知檜前内茂成ト宮戸川ニ出漁シテ聖観世音ノ尊像ヲ網中ニ得驚喜措ク能ハズ草堂ニ安置シ礼拝供養くようシタリ。コノ地ハ実ニ其ノ遺跡ニシテ浅草寺草創ノ浄域ナリ。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
そのかみの悪性あくしよう男なきてをり女供養くようと泣きてをるなり
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
これは何も自分たちが読むという目的よりは功徳くどくのためすなわち仏陀に供養くようすると同一の敬礼をもって供養するためであります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「この盃は、三河守の一念にたいし、供養くようのため、そちの家へくれるものじゃ。父をかがみに、父に劣らぬ、よいさむらいになれよ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに供養くようをしてよろこばせて返す必要があったとともに、家々の常の火・常のかまどを用いて、その食物をこしらえたくなかった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その御仏みほとけの前の庭には、礼盤らいばんを中にはさみながら、見るもまばゆい宝蓋の下に、講師読師とくしの高座がございましたが、供養くようの式に連っている何十人かの僧どもも
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あのてらかねをつこうじゃないか。」と、こういうのです。あまごいのは、むらじゅうのおとこも、おんなも、仕事しごとやすんでおてらへおまいりをして、さかんな供養くようをしました。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かつは亡きお師匠さんへの供養くようでもあると思って承諾したような訳であること、だから今度を外すと、もうこいさんの舞を見る機会もないであろうこと、そんな事情で
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若しうまく行けば、親戚のろうばの供養くようにもなることだし、また社に対しても非常な手柄だからね
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしわかあまさんは、眼鏡めがねをかけたかお真剣しんけん表情ひょうじょうをうかべて、「いいえ、自分じぶんからだかして、爆弾ばくだんとなってしまうかねですから、どうしても供養くようをしてやりとうござんす。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「お前の尺八は供養くようになるのか。——もっともあの晩は大層うまかったというが」
遂に夜な/\恐しき夢に襲はれ候やうに相なり候間、せめて罪滅つみほろぼしにと、慶蔵の墓のみならず、往年溜池ためいけにて絞殺しめころし候浄光寺の所化しょけ得念とくねんが墓をも、立派に建て、厚く供養くようは致し候へども
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
色界しきかい、無色界の二つの世界には、その怒りというものが無く、ただ欲界散乱のところにのみ、その怒りがあるのだそうでございます……千劫の間、積みたくわえた布施ふせも、供養くようも、善行も
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あんまり泣くとかえって供養くようにならない。それよりあとの始末が大事ですよ。こうなっちゃ、是非甲野さんにいてもらうより仕方がないんだから、その気になってやらないと、あなたが困るばかりだ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あなたのような清浄の僧に供養くようすると私共の罪業が消滅して大いに福禄を増すことになるからぜひ受けてくれろ」という。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ある時馬が柴橋から落ちて死んだから馬ころばし、その馬の供養くよう馬頭観世音ばとうかんぜおんをまつると観音岩、そこに行者ぎょうじゃでもいれば行者谷というような名が附く。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ただ、末ながく、お倖せであれ、よいお子をもうけて、八雲様は、恩師五郎左衛門先生へ、又、三郎進殿は、厳父越前守どのへの御供養くようをあそばされい。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世尊せそんさえ成道じょうどうされる時には、牧牛ぼくぎゅう女難陀婆羅むすめなんだばらの、乳糜にゅうび供養くようを受けられたではないか? もしあの時空腹のまま、畢波羅樹下ひっぱらじゅかに坐っていられたら、第六天の魔王波旬はじゅん
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうちに、この時分じぶん年寄としよりたちは、みんなんでしまいました。そして、わかひとたちの時代じだいになったとき、かねつきどう修繕しゅうぜんして、供養くようをし、おおぜいの人々ひとびとかねうごかしました。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天竺てんじく阿闍世王あじゃせおうが、百斛ひゃっこくの油を焚いて釈尊を供養くよう致しました時、それを見た貧しい婆さんは、二銭だけ油を買って釈尊に供養を致しました、貧しい婆さんの心は善かったものでございますから
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
せめて供養くようでもして貰ったらと言った心持で
または親の孝(ウヤンコウ)とも考祖祭(ホウスマトゥイ)とも呼ばるる祖霊供養くようであって、是は一年に両度、正月または麦の収穫の後にもその祭をする島があり
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
わしのために、月々の供養くようなどよしてくれ。頼朝と戦え。それがおまえ達の再生だ。また、わしへの供養だ。……頼朝の首をわしの墓前に供えろ。……頼朝の首をだ……
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おうさまはくなられたきさき供養くようのために、おおきなかねることになされました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)