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伽
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とぎ
ふりがな文庫
“
伽
(
とぎ
)” の例文
お女中がたは何と申してもお口が軽うござりますから、お
伽
(
とぎ
)
に上っておりますと、いろ/\のことを聞き出すついでがござりました。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私は病人のお
伽
(
とぎ
)
をする積りで、根気よく待っていると、やがて、彼はパッチリと目を開いた。その瞳が喜ばしげな光を放っている。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
毎晩
籤引
(
くじびき
)
で、夜の
伽
(
とぎ
)
をする妾をきめると言ふことになつてゐるが、近頃は若い妾のお袖を可愛がり、お吉を追つ拂つて、日が暮れるとお袖を
銭形平次捕物控:290 影法師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
日本一
(
にっぽんいち
)
の無法な
奴等
(
やつら
)
、かた/″\殿様のお
伽
(
とぎ
)
なればと言つて、
綾錦
(
あやにしき
)
の
粧
(
よそおい
)
をさせ、
白足袋
(
しろたび
)
まで
穿
(
は
)
かせた上、
犠牲
(
いけにえ
)
に上げたとやら。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてその花形の人、神崎の苦ミ走った容貌と外出の騎馬姿は、お
伽
(
とぎ
)
話の中の
騎士
(
ナイト
)
のようにぼくら子供の眼には映じて、ひどく印象的だった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
その、光の絣模様のようにつらなっている美しい風景が、金五郎を、お
伽
(
とぎ
)
の国に入りこんだような、幻想的な気持にさせた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
高齢の人には、心のおけないお
伽
(
とぎ
)
坊主ですこしは慰めにもなったのであろう、
何処
(
どこ
)
へゆくにもお
供
(
とも
)
をさせられるのだった。
旧聞日本橋:20 西川小りん
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「柳沢侯は数寄のお方で、お眼にとまる者は必ずお部屋にお入れなされ、やがて将軍家の
伽
(
とぎ
)
におすすめなさる、ということではございませんか」
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それからね、二階のお嬢様がモシどこかへ出たがっても、お出し申さないように。そうそう、勢ちゃんが病気なら、勢ちゃんをお
伽
(
とぎ
)
によこそう」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お
伽
(
とぎ
)
の世界にでもあるような幽幻神秘の宝物庫が、私の眼前に展開されて、見て行く私の眼を奪い計り知られぬその価値に私は思わず溜息をした。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一方の『牡丹燈記』が
浅井了意
(
あさいりょうい
)
の『お
伽
(
とぎ
)
ぼうこ』や、
円朝
(
えんちょう
)
の『牡丹燈籠』に取り入れられているのは、どなたも
能
(
よ
)
く御存じのことでございましょう。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
宝物といえば、このお
伽
(
とぎ
)
の国の水晶よりも、もっと珍しい貴重な芸術品も降って来る。それは六角の柱の上と下とに、六花の花型が咲いた結晶である。
自然の恵み:――少国民のための新しい雪の話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
するとある年のなたら(
降誕祭
(
クリスマス
)
)の
夜
(
よ
)
、
悪魔
(
あくま
)
は何人かの役人と一しょに、突然
孫七
(
まごしち
)
の
家
(
いえ
)
へはいって来た。孫七の家には大きな
囲炉裡
(
いろり
)
に「お
伽
(
とぎ
)
の
焚
(
た
)
き
物
(
もの
)
」
おぎん
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
虹猫もすつかり満足して、一週間、雲のお宮にゐて、それから自分のお
伽
(
とぎ
)
の国へ帰りました。そのゝち、何事が起つたかは、又この次にお話しませう。
虹猫の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
いわばただ筋書
許
(
ばか
)
りを面白く感じますのです、つまりお
伽
(
とぎ
)
的に面白みを感ずるのでありました、それで少し文学的とか詩的とか真面目な意味から視ると
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
村中での美しい娘を選んで、それを夜の
伽
(
とぎ
)
に
侍
(
じ
)
せしめようとするが、決してこれと親しく語り合うてはならぬ。
丹那山の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
それから、あの共産党の中川さまを、お
伽
(
とぎ
)
におすすめ致しましたのも、ほかならぬ私めが仕事で御座いまする。
ココナットの実
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
小才覚があるので、若殿様時代のお
伽
(
とぎ
)
には相応していたが、物の大体を見ることにおいてはおよばぬところがあって、とかく
苛察
(
かさつ
)
に傾きたがる男であった。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
船員がやってきてハッチの蓋を揚げ、不意に明るい日影がさっと差し込むと、お
伽
(
とぎ
)
話で聞くような声でチュウチュウと鳴き、船底を駆けあるくものがある。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
この前書によって
按
(
あん
)
ずるに、二人が突然やって来たので、いささかもてなしのため、夜話の
伽
(
とぎ
)
にするような意味で、かき餅でも焼こうといったのであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そうすれば、きみはまるでお
伽
(
とぎ
)
の都市に来たのかと思うでしょう。広い
敷石
(
しきいし
)
のあいだには草が
生
(
は
)
えています。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「その上に、又、わたしのようなものの、つれづれの
伽
(
とぎ
)
までたのまれて、さぞ、心苦しゅうありましょうな」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
お
伽
(
とぎ
)
の世界をねらう平和な獣だけの理想の天地。宮様がお通りになるからと云って、一日じゅう障子を閉ざして息を殺していなければならぬ私は階級なのだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
幅の廣い段々を二段上つてずつと見渡してみて、私はお
伽
(
とぎ
)
の國を一目
覗
(
のぞ
)
いたやうな氣がした。それ程その向うの光景は、新參の私の眼には輝やかしいものだつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
事に慣れた
伽
(
とぎ
)
が一人附いて行くから心細い事はないなどと励ます様に云いました、其の伽とは監獄の病院で大場連斎の手下に成って秀子の脱獄を助けた老看護婦で
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
夜長の
伽
(
とぎ
)
に売りあるく生業、これも都にフッツリ影を留めずなって、名物かりん糖の中に交れるを買って見るなど、今は恋にも喰意地がついてまわるとは情ない限りだ。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
温室にさいた珍しい花、世界各地からきた珍しい品物、お
伽
(
とぎ
)
ばなしのような美しい店です。
街の少年
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
このお
伽
(
とぎ
)
ばなしのような出来事も、お前が立派に成長したときには、たのしい伝説の一つになるであろう。お前はそのはなしをお前の母と姉からもっと、こまごまときくがいい。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
とろとろと夢まどやかなお
伽
(
とぎ
)
の国にはいったのが、いま申しあげたその四ツ下がり——
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
おっしゃらずに、奥さんは、お一人で淋しがっていらっしゃいますから、今晩、お
伽
(
とぎ
)
を
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
かつて私のうちにただ一部あった草双紙はこうして亡き母のお
伽
(
とぎ
)
に行ってしまった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
きたフランスの女王様とね、そいから赤い
頬
(
ほっ
)
ぺをした白いジョーカーと、そいから、お
伽
(
とぎ
)
ばなしの御本と、そいから、なんだっけそいから、ピアノ、そいから、キュピー、そいから……
クリスマスの贈物
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
伽
(
とぎ
)
の野は長く駒の
形付
(
かたちつき
)
たる石ありといふ
駒形明神
(
こまかたみやうじん
)
の坂も過ぎ
鹽灘
(
しほなだ
)
へこそ着にけれ
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
押
(
おさ
)
ゆる
涙
(
なみだ
)
袖
(
そで
)
に
置
(
お
)
きてモシと
止
(
と
)
めれば
振拂
(
ふりはら
)
ふ
羽織
(
はおり
)
のすそエヽ
何
(
なに
)
さるゝ
邪魔
(
じやま
)
くさし
我
(
われ
)
はお
前
(
まへ
)
さまの
手遊
(
てあそび
)
ならずお
伽
(
とぎ
)
になるは
嬉
(
うれ
)
しからず
其方
(
そなた
)
は
大家
(
たいけ
)
の
娘御
(
むすめご
)
暇
(
ひま
)
もあるべしその
日暮
(
ひぐら
)
しの
身
(
み
)
は
時間
(
じかん
)
もを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
わら小屋にねていたのを村の青年たちに叩き起されて、白野老人の家につれて行かれたときのことや、田添夫人に見送られて筑後川を下った時のことが、お
伽
(
とぎ
)
の世界のように思いおこされた。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「そりゃ、前者は芸術品で、後者は通俗も通俗、幼稚なお
伽
(
とぎ
)
話
(
ばなし
)
じゃないか」
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それが、通夜の
伽
(
とぎ
)
の話に父の後妻がわたくしに語ったところに依ると
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
先生の仕事のもう
揚
(
あが
)
っている笹村は、
慌忙
(
あわただ
)
しいような心持で、自分の創作に執りかかっていた筆をおいて、時々先生の様子を見に行った。
衆
(
みんな
)
は交替に、寂しい病室に夜のお
伽
(
とぎ
)
をすることになっていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
有島氏はなるべく解り易いやうにお
伽
(
とぎ
)
ばなしの口調で話し出した。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
御飯焚
(
ごはんたき
)
でもお小間使いでも、お寝間の
伽
(
とぎ
)
でも仕ようという訳だ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
年上のヒルミ夫人のお
伽
(
とぎ
)
をするようになったのである。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
闇
(
やみ
)
の夜にぼそぼそお
伽
(
とぎ
)
ばなしをしたばかりで
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
「お
伽
(
とぎ
)
します」
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「むむ、くどいの、あとは魔界のものじゃ。雪女となっての、三つ目入道、大入道の、酌なと
伽
(
とぎ
)
なとしょうぞいの。わはは、」
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夜は夜とて、
酒肴
(
しゅこう
)
の善美、土地の名物、
鄙
(
ひな
)
びた郷土の舞曲など、数々のお
伽
(
とぎ
)
。そして宿殿の外には、夜空も焦がす
大篝火
(
おおかがりび
)
を諸所に焚きつらね
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東野南次の待っている、香ぐわしい幽里子、——あのお
伽
(
とぎ
)
の国の王女のような、恋の麗人は消息を絶ってしまいました。
奇談クラブ〔戦後版〕:05 代作恋文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「少しは察して頂戴な——お前さんのような優男をお
伽
(
とぎ
)
にして、このながながし夜を一人ならず明かしてみたい、弁慶と小町は馬鹿だと言いました」
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
伊緒は父のこころがよくわかるので、一
刻
(
とき
)
ほど遺骸の
伽
(
とぎ
)
をしただけで、かたみの品を抱いて雪のなかを帰って来た。
日本婦道記:春三たび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうして子供達と一緒にお
伽
(
とぎ
)
噺の世界をさまよっている内に、彼は
益々
(
ますます
)
上機嫌になって来るのだった。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
巨大な銀河の帯は光を密集させて、南北に走り、手をあげて払えば落ちそうに、近々と、見えた。一瞬、金五郎は、お
伽
(
とぎ
)
の国に来たような、夢幻的な気持になった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
伽
漢検準1級
部首:⼈
7画
“伽”を含む語句
伽噺
瑜伽
伽藍
迦陵頻伽
伽羅油
伽羅
僧伽
伽話
大伽藍
閼伽桶
御伽
七堂伽藍
倶梨伽羅紋々
僧伽梨
伽羅枕
御伽婢子
伽婢子
摩睺羅伽
伽陵頻伽
唵阿牟伽
...