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あおむけ
ふりがな文庫
“
仰向
(
あおむけ
)” の例文
離すと、
可
(
い
)
いことに、あたり近所の、
我朝
(
わがちょう
)
の
姉様
(
あねさま
)
を
仰向
(
あおむけ
)
に
抱込
(
だきこ
)
んで、
引
(
ひっ
)
くりかへりさうで
危
(
あぶな
)
いから、不気味らしくも手からは落さず……
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
大尉はそこでもう大の字に
仰向
(
あおむけ
)
に寝ころがってしまって、そうして、空の爆音にむかってさかんに何やら悪口をいっていました。
貨幣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
修善寺
(
しゅぜんじ
)
にいる間は
仰向
(
あおむけ
)
に寝たままよく俳句を作っては、それを日記の中に
記
(
つ
)
け
込
(
こ
)
んだ。時々は面倒な
平仄
(
ひょうそく
)
を合わして漢詩さえ作って見た。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鶏の料理は
是非
(
ぜひ
)
とも鶏の割き方を覚えなければなりません。今あの料理人が三百目ほどの
雄鶏
(
おんどり
)
を
俎板
(
まないた
)
の上へ
仰向
(
あおむけ
)
に置きました。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
口惜
(
くやし
)
くって
堪
(
たま
)
らないからおあさの足へかじり付きますと、ポーンと
蹴
(
け
)
られたから
仰向
(
あおむけ
)
に
顛倒
(
ひっくりかえ
)
ると、
頬片
(
ほっぺた
)
を二つ
三
(
み
)
つ
打
(
ぶ
)
ちました。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
今日も
仰向
(
あおむけ
)
になつたまゝ胸の上に指を組み合はして天井を見つめたまゝ何おもふともなしに一日は暮れてしまつた。
日記より
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
格之介のやせた細長い身体が、雑木の幹の間でくるくる回ったかと思うと、
仰向
(
あおむけ
)
ざまに倒れたまま、動かなかった。
乱世
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
マラーはしばらくの間眉をひそめて聞耳を立てていたが、
仰向
(
あおむけ
)
に浴漕に浸っているままで大声に情婦を呼びたてる。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
妹の七代は
仰向
(
あおむけ
)
に長くなったまま振向いた。十八九であろうか。キリキリとした目鼻立ち、肉付きである。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
枕の上に
仰向
(
あおむけ
)
に投げ出されて、首のまわりをしめつけてくる
獰猛
(
どうもう
)
な圧縮に息をつまらしてる顔……刻々に落ちくぼんでゆく
顔貌
(
がんぼう
)
……ポンプにでも吸われるように
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
卑弥呼は反耶の力に従って静かに
仰向
(
あおむけ
)
に返ると、涙に濡れた頬に白い羽毛をたからせたまま彼を見た。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかし、あまりにも軽快な生気に満ちているので、長い間つづけてじっとしていることが出来ず、すぐに、ほっそりとした四本の脚を上にあげて、
仰向
(
あおむけ
)
にころがりました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
今茲
(
いまここ
)
へ来て何を考えたって役には立たない。未だ雨も降らないのに、出水を心配するなどは
猶更
(
なおさら
)
無駄な話だ。こう思いつつ何も考えない事にして、
仰向
(
あおむけ
)
に踏んぞりかえった。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
今日も雨が降るので人は来ず
仰向
(
あおむけ
)
になつてぼんやりと天井を見てゐると、
張子
(
はりこ
)
の亀もぶら下つてゐる、
芒
(
すすき
)
の穂の
木兎
(
みみずく
)
もぶら下つてゐる、
駝鳥
(
だちょう
)
の卵の黒いのもぶら下つてゐる
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
馬は立ち上がり、後方におどり、
仰向
(
あおむけ
)
に倒れ、空中に四足をはねまわし、騎兵を振り落とし押しつぶした。もはや退却の方法はない。全縦隊は既に発射された弾丸に等しかった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
今、下になって、さも疲れたように枝に掴まって、ぐったりとしている眼の柔和な鳥をば、雌鳥だと思った。雄鳥は、今、巣の下に
仰向
(
あおむけ
)
になって、なにやらを巣の中に押し入れている。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
成るほど一台の
緑色
(
りょくしょく
)
に塗られた新型のクウペが、
玩具
(
おもちゃ
)
のように二丈ばかりもある岩磯の下に転げ込み、
仰向
(
あおむけ
)
にひっくりかえって、血かガソリンか、其処らの岩肌には点々と汚点が飛んでい
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
伯爵は大きな
呼吸
(
いき
)
をついていた。主翁は握りしめていた
小紐
(
こひも
)
の輪を両手に
拡
(
ひろ
)
げて、背の高い伯爵の
後
(
うしろ
)
から投げかけた。紐はふわと伯爵の体にかかった。と、同時に伯爵の体は
仰向
(
あおむけ
)
に倒れた。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
分娩のすんだトシエは、細くなって、晴れやかに笑いながら、
仰向
(
あおむけ
)
に横たわっていた。ボロ切れと、脱脂綿に包まれた子供は、軟かく、細い、黒い髪がはえて、無気味につめたくなっていた。
浮動する地価
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
好
(
よ
)
し一つ頭を
捻向
(
ねじむ
)
けて
四下
(
そこら
)
の
光景
(
ようす
)
を視てやろう。それには丁度
先刻
(
さっき
)
しがた眼を覚して例の
小草
(
おぐさ
)
を
倒
(
さかしま
)
に
這降
(
はいおり
)
る蟻を視た時、
起揚
(
おきあが
)
ろうとして
仰向
(
あおむけ
)
に
倒
(
こ
)
けて、
伏臥
(
うつぶし
)
にはならなかったから、勝手が
好
(
い
)
い。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
味噌屋の御主人が、もう
俺
(
おれ
)
が来るずらと思って待ってござるじゃろうに、と
仰向
(
あおむけ
)
に寝ている木之助は、
枕元
(
まくらもと
)
に
坐
(
すわ
)
って看病している大きい娘にそう言っては、壁にかかっている胡弓の方を見たのである。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
死体は
仰向
(
あおむけ
)
に
横
(
よこた
)
えて、顔の上には帽子が被せてあった。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それでも
堪
(
た
)
えられなかったので、安静に身を
横
(
よこた
)
うべき医師からの注意に
背
(
そむ
)
いて、
仰向
(
あおむけ
)
の
位地
(
いち
)
から右を下に寝返ろうと試みた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「それ、これで。」と年増が解きて投与うる
扱帯
(
しごき
)
にて老婦人の眼をぐるぐる巻にし、
仰向
(
あおむけ
)
に突転ばして、「姉御、荷造が出来た。」といえば
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
おまけに腹がへって、どうにも足がすすまなくなって、
洞庭湖畔
(
どうていこはん
)
の
呉王廟
(
ごおうびょう
)
の廊下に
這
(
は
)
い上って、ごろりと
仰向
(
あおむけ
)
に寝ころび
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私
(
わたくし
)
どものように膝を重ねて坐り、ヒョイと触っても
仰向
(
あおむけ
)
にひッくりかえるような危い形は余り
好
(
よ
)
く有りません、又御婦人の寝相は至って大切なもので
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
でもとにかくそう思うと私はもう
後
(
うしろ
)
も向かずに無我夢中で岸の方を向いて泳ぎ出しました。力が無くなりそうになると
仰向
(
あおむけ
)
に水の上に
臥
(
ね
)
て
暫
(
しば
)
らく
気息
(
いき
)
をつきました。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あるいはまた
仰向
(
あおむけ
)
に寝転んで、雲の飛ぶのを眺めた。雲は、牛や、巨人や、帽子や、婆さんや、広々とした景色など、いろんな形に見えた。彼はそれらの雲とひそかに話をした。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
今度はきっと風変りの顔が見えるだろうと見て居たけれど火の形が変なためか一向何も現れぬ。やや暫くすると何やら少し出て来た。段々明らかになって来ると
仰向
(
あおむけ
)
に寐た人の横顔らしい。
ランプの影
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
ガタンと物凄い音がして椅子が
仰向
(
あおむけ
)
にひっくりかえった。
蝱の囁き:――肺病の唄――
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
婦人は
苦
(
あっ
)
と
身悶
(
みもだ
)
えして、
仰向
(
あおむけ
)
に
踏反返
(
ふんぞりかえ
)
り、苦痛の中にも人の深切を喜びて、
莞爾
(
にっこり
)
と笑める顔に、吉造魂飛び、身体
溶解
(
とろ
)
け、
団栗眼
(
どんぐりまなこ
)
を糸より細めて
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして
布団
(
ふとん
)
の上に
仰向
(
あおむけ
)
になったまま、この二つの
小
(
ち
)
さい位牌を、眼に見えない
因果
(
いんが
)
の糸を長く引いて互に結びつけた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
次男は、また
仰向
(
あおむけ
)
に寝て蒲団を胸まで掛けて眼をつぶり、あれこれ考え、くるしんでいる態である。やがて、ひどくもったい振ったおごそかな声で
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
仲間
(
ちゅうげん
)
は
仰向
(
あおむけ
)
になって見ると驚きました。
傍
(
かたわ
)
らに一
本揷
(
ぽんさし
)
の品格の
好
(
い
)
い男が
佇
(
たゝず
)
んで居るから少し
怯
(
おく
)
れて居ました。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼は自分の小さな寝床に
仰向
(
あおむけ
)
に寝ている。彼は天井に踊る光の線を眺める。それは尽くることなき楽しみである。にわかに彼は声高く笑う。聞く者の心を喜ばせる子供の善良な笑い。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
向
(
むこう
)
に見える高い宿屋の
物干
(
ものほし
)
に
真裸
(
まっぱだか
)
の男が二人出て、
日盛
(
ひざかり
)
を事ともせず、
欄干
(
らんかん
)
の上を
危
(
あぶ
)
なく渡ったり、または細長い横木の上にわざと
仰向
(
あおむけ
)
に寝たりして
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仰向
(
あおむけ
)
に寝たらば楽になるかと思うと、
疝気
(
せんき
)
が痛くなったりしていけませんから、廊下へ出て
躍
(
おど
)
ったら
宜
(
よ
)
かろうというように、実に人は苦の初めを楽しむと云って
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
時彦ははじめのごとく顔の半ばに夜具を
被
(
かつ
)
ぎ、
仰向
(
あおむけ
)
に寝て天井を眺めたるまま、
此方
(
こなた
)
を見向かんともなさずして、いとも
静
(
しずか
)
に、
冷
(
ひやや
)
かに、着物の袖も動かさざりき。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
授業中の校舎全体、しんとしている。私は廊下の窓から、校庭のほうを
眺
(
なが
)
め、周さんの姿を見つけた。周さんは、校庭の山桜の樹の下に、
仰向
(
あおむけ
)
に寝そべっている。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しばらくすると、彼は虫のそばにはらばいに寝転んで、じっと眺めた。もう魔法使の役目を忘れてしまって、そのあわれな虫を
仰向
(
あおむけ
)
にひっくり返しては、それがもがき苦しむのに笑い興じた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私はそれを脱ぐのが面倒だから、そのまま
仰向
(
あおむけ
)
に寝て、手を胸の上で組み合せたなり黙って
天井
(
てんじょう
)
を見つめていた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ごろりと
仰向
(
あおむけ
)
に河原に寝ころんだ。「同じ事ですよ。その針でも、一二匹釣れました。」嘘を言った。
令嬢アユ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すわやと見る目の前の、鷲の翼は
四辺
(
あたり
)
を暗くした中に、娘の白い
膚
(
はだえ
)
を包んで、はたと
仰向
(
あおむけ
)
に
僵
(
たお
)
れた。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一足
(
ひとあし
)
二足
(
ふたあし
)
後へ下ると
傍
(
そば
)
の
粘土
(
ねばつち
)
に片足踏みかけたから危ういかな
仰向
(
あおむけ
)
にお繼が粘土の上へ倒れる所を、得たりと又市が
振冠
(
ふりかぶ
)
って
一打
(
ひとうち
)
に切ろうとする時大勢の見物の
顔色
(
がんしょく
)
が変って
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
肱掛椅子
(
ひじかけいす
)
に
仰向
(
あおむけ
)
によりかかり、いつまでもできあがらない仕事を膝の上にのせ、自分自身の考えに
微笑
(
ほほえ
)
んでいた——なぜなら、どんな書物であろうと、その奥底に彼女が見出すところのものは
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
津田はそれなり手術台に
上
(
のぼ
)
って
仰向
(
あおむけ
)
に寝た。冷たい防水布がじかに皮膚に触れた時、彼は思わず
冷
(
ひや
)
りとした。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ちらと少女のほうを見ると、少女は落ちついて、以前のとおりに、ふたりの老夫婦のあいだにひっそりしゃがんで、ひたと守られ、顔を
仰向
(
あおむけ
)
にして全然の無表情であった。
美少女
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その時はこの
時雨榎
(
しぐれえのき
)
の枝の両股になってる処に、
仰向
(
あおむけ
)
に寝転んでいて、烏の
脛
(
あし
)
を
捕
(
つかま
)
えた。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眼を
瞑
(
ねむ
)
って居ながらも時々細目に開いて、
態
(
わざ
)
とムニャ/\と云いながら、足をバタァリと遣る
次手
(
ついで
)
にグルリと
寝転
(
ねがえ
)
りを打ち、
仰向
(
あおむけ
)
に成って、横目でジイとお瀧の方へ見当を附けると
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
おれは正気に返って、はっと思う途端に、おれの鼻の先にある生徒の足を
引
(
ひ
)
っ
攫
(
つか
)
んで、力任せにぐいと引いたら、そいつは、どたりと
仰向
(
あおむけ
)
に倒れた。ざまを見ろ。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
仰
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“仰向”で始まる語句
仰向反
仰向様