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下賤
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げせん
ふりがな文庫
“
下賤
(
げせん
)” の例文
盛綱は、おかしがって語ったが、頼朝は、それは
不愍
(
ふびん
)
なことだ、
下賤
(
げせん
)
の者を
虐
(
しいた
)
げたと聞えては、頼朝が生涯の
汚名
(
おめい
)
というものである。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大衆のうちでももっとも
下賤
(
げせん
)
なものの足もとに踏みつけられなければならないということを教えるためだと人は思わないだろうか。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
信仰しないということは、風儀の悪い
下賤
(
げせん
)
な階級のことどもだった。宗教上の義務を怠ることは、彼らの社会には許されなかった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
弱きを滅す強き者の
下賤
(
げせん
)
にして無礼野蛮なる事を証明すると共に、滅される弱き者のいかほど上品で美麗であるかを証明するのみである。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのため壺屋出来の在来のものは、
下賤
(
げせん
)
な人たちの用いる雑器に過ぎないとされ、島の人たちは好んで本土の焼物を輸入する。
現在の日本民窯
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
▼ もっと見る
そして妙なことには新参者には比較的軽い務めを与えられたが、非常に立派な修行を積んだ僧には比較的うるさい
下賤
(
げせん
)
な仕事が課せられた。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
いつものことだが、主君越前守の
下賤
(
げせん
)
に通ずる
徹眼
(
てつがん
)
、その強記にいまさらのごとくおどろいた大作、恐縮して顔を伏せたまま
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼ら二人は、もし或る焔が偶然その心を温むることがあるとしても、またたやすく凶悪になるごとき
下賤
(
げせん
)
な性質の者であった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私どもは驚きます。「私どもが神の子? この無力無能、
汚穢
(
おえ
)
下賤
(
げせん
)
の私どもが神の子? そんなことはありようはずがない」
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
……
剥
(
む
)
かれたのは彼のほうさ、彼のほうがちょろまかされたんだ、あの
下賤
(
げせん
)
な狐づらの女悪魔め、……だがきみ、なあきみ
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さもなくば、あなたこそ、いやな噂を
種
(
たね
)
に王をおどかし、無理矢理オフィリヤを僕の妃に押しつけようとする卑劣
下賤
(
げせん
)
の魂胆なのだ。きたない、きたない。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私は自分の周圍に聞え、見える總てのものゝ無智、貧困、
下賤
(
げせん
)
さに心弱くも驚かされた。しかしこのやうな感情の爲めに餘りひどく自分自身を憎み嫌ふな。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
かてて加えて諸国より続々と上ってまいる東西両陣の
足軽
(
あしがる
)
と申せば、昼は合戦、夜は押込みを習いとする
輩
(
やから
)
ばかり、その荒々しい人相といい
下賤
(
げせん
)
な言葉つきと云い
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
枕元
(
まくらもと
)
で人が何か云うと、話をしなくっちあ生きていられないおしゃべりほど情ない
下賤
(
げせん
)
なものはあるまいと思った。眼を開いて
本棚
(
ほんだな
)
を見渡すと書物がぎっしり詰っている。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
清くて読み奉らるる時には、
上
(
かみ
)
は
梵天帝釈
(
ぼんてんたいしゃく
)
より
下
(
しも
)
は
恒河沙
(
こうがしゃ
)
の諸仏菩薩まで、
悉
(
ことごと
)
く
聴聞
(
ちょうもん
)
せらるるものでござる。よって翁は
下賤
(
げせん
)
の悲しさに、
御身
(
おんみ
)
近うまいる事もかない申さぬ。
道祖問答
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そしてまたおかしがりたいためにすべて人生一般の対照物をその
冷嘲
(
れいちょう
)
の
的
(
まと
)
となりうる
下賤
(
げせん
)
な階級まで引きずり降ろさずにおかないのだから、相手が不快がるのは無理はない。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
下賤
(
げせん
)
の者にこの
災
(
わざわい
)
が多いというのは統計の結果でもないから問題にならないが、しかし下賤の者の総数が高貴な者の総数より多いとすれば、それだけでもこの事は当然である。
化け物の進化
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
召使には違ひないし、至つて
下賤
(
げせん
)
の生れだから、急のことにはむづかしいが、いづれ假親でも立てて、若君樣の嫁御寮にもといふ話もあつたくらゐだ——いや、これは内證だ。
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
……高貴なお方は高貴なお方同士で、
下賤
(
げせん
)
な人間は下賤な人間同士で、嫁取り婿取りをなさいましたほうが、事なかれ主義という点で、よろしいようでございますよ。ハッハッハッ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
秋田藩にてもかゝる事あり。元禄の頃仙北
稲沢
(
いなさわ
)
村の盲人が伝へし『不思議物語』にも多く見え、
下賤
(
げせん
)
の者には別して拘引さるゝ者多し。近くは石井某が下男は、四五度もさそはれけり。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
もちろん、お客も町人
下賤
(
げせん
)
の小切れ買いではない。城中お出入りの坊主衆、大奥仕えの腰元お
局
(
つぼね
)
、あるいはまたお旗本の内室といったような身分
由緒
(
ゆいしょ
)
のいかめしいお歴々ばかりなのです。
右門捕物帖:34 首つり五人男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
今は
菟原
(
うばら
)
ノ
薄男
(
すすきお
)
とまで
下賤
(
げせん
)
な人のように世間で呼ばれるようになった
右馬
(
うま
)
の
頭
(
かみ
)
とても、そういう生絹のあどけなくも鋭いのぞみを見るともう生絹を京にやるよりほかに愛しようとてもなかった。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
其
(
その
)
お
書
(
か
)
き
捨
(
す
)
ての
反古
(
ほご
)
にても
身
(
み
)
に
添
(
そ
)
へて
持
(
も
)
たば
本望
(
ほんまう
)
なるべく、
切
(
せ
)
めて一
筆
(
ふで
)
の
拜見
(
はいけん
)
が
願
(
ねが
)
ひたきなり、されども
斯
(
か
)
く
下賤
(
げせん
)
の
我
(
わ
)
れ、いか
樣
(
やう
)
に
思
(
おも
)
ふとも
及
(
およ
)
びなき
事
(
こと
)
にて、
無禮
(
ぶれい
)
ものとお
叱
(
しか
)
りを
受
(
う
)
ければ
夫
(
それ
)
まで
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
下賤
(
げせん
)
な下劣な、三文の値打ちもない男! 人間の皮を
被
(
かぶ
)
った犬畜生にも劣る男! 先王の血を引きながら自分のみが王族たり得なかったことが、この男にとっては寝ても
醒
(
さ
)
めても忘れ得ぬ無念さ
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
メルキオルは彼に
下賤
(
げせん
)
な趣味があるのだと言っていた。ジャン・ミシェル老人は彼がゴットフリートを慕ってるのを
妬
(
ねた
)
んでいた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
下根の凡夫であり、
下賤
(
げせん
)
の絵であるから、自分で高き位につく力とてはない。だがかかる事情にあればこそ、救いが誓われているのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
……といえば、笑うであろうが、そもそも自分は
下賤
(
げせん
)
の生れで、青少年のむかしより、深窓の花には、ひとつの
憧憬
(
あこがれ
)
をもっていたものじゃ。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして外からながめたところによれば、彼は既に長い以前から謹直の
僕
(
しもべ
)
となっていた。かかる正と善との発動は
下賤
(
げせん
)
な性格者にはあり得べからざることである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
読者諸君は「おそめ」に
於
(
お
)
ける
下賤
(
げせん
)
な卑しい会話を辛抱して下すった、ついでにこの思わせぶりな夜道の出来事をも、根問い抜きに受入れて頂けるものと信ずる。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かてて加へて諸国より続々と上つてまゐる東西両陣の
足軽
(
あしがる
)
と申せば、昼は合戦、夜は押込みを習ひとする
輩
(
やから
)
ばかり、その荒々しい人相といひ
下賤
(
げせん
)
な言葉つきと云ひ
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
一方は
下賤
(
げせん
)
から身を起して、人品あがらず、それこそ猿面の
痩
(
や
)
せた小男で、学問も何も無くて、そのくせ豪放
絢爛
(
けんらん
)
たる建築美術を
興
(
おこ
)
して桃山時代の栄華を現出させた人だが
庭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いかに人間が
下賤
(
げせん
)
であろうとも、またいかに無教育であろうとも、時としてその人の口から、涙がこぼれるほどありがたい、そうして少しも取り
繕
(
つくろ
)
わない、至純至精の感情が
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その上にまた
下賤
(
げせん
)
のものが脚部を露出して歩く機会が多いとすればなおさらの事である。
化け物の進化
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
茶道の影響は貴人の優雅な
閨房
(
けいぼう
)
にも、
下賤
(
げせん
)
の者の住み家にも行き渡ってきた。わが田夫は花を生けることを知り、わが野人も山水を
愛
(
め
)
でるに至った。俗に「あの男は
茶気
(
ちゃき
)
がない」という。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
ドガ及ツールーヅ・ロートレックが当時自然主義の文学の感化を受けその画題を
史乗
(
しじょう
)
の人物神仙に求めず、女工
軽業師
(
かるわざし
)
洗濯女
(
せんたくおんな
)
等専ら
下賤
(
げせん
)
なる
巴里
(
パリー
)
市井
(
しせい
)
の生活に求めんと
力
(
つと
)
めつつあるの時
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お江野は
下賤
(
げせん
)
に育つた女ですが、心掛は兎も角不思議に
賢
(
かしこ
)
い
性
(
たち
)
で、二千五百石取の奧樣に直しても少しも可笑しくはない女です。
繼子
(
まゝこ
)
の吉彌にもよく、内外の噂はそんなに惡くありません。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
民情に通じ、
下賤
(
げせん
)
を
究
(
きわ
)
めることをもって奉行職の一必要事と
観
(
かん
)
じている越前守は、お役の暇を見てよくこうして江戸の巷を
漫然
(
まんぜん
)
と散策することを心がけてもいたし、また
好
(
この
)
んでもいたのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
これは、これは、御叮嚀な
御挨拶
(
ごあいさつ
)
で、
下賤
(
げせん
)
な
私
(
わたくし
)
どもの申し上げます話を、一々双紙へ書いてやろうと
仰有
(
おっしゃ
)
います——そればかりでも、私の身にとりまして、どのくらい恐多いかわかりません。
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
端金
(
はした
)
にはあらざりけんを、
六三
(
ろくさ
)
此金
(
これ
)
に
眼
(
め
)
も
止
(
とヾ
)
めず、
重々
(
ぢゆう/\
)
の
大罪
(
だいざい
)
頸
(
くび
)
と
仰
(
おふ
)
せらるヽとも
恨
(
う
)
らみは
無
(
な
)
きを、
情
(
なさけ
)
のお
詞
(
ことば
)
身
(
み
)
に
徹
(
てつ
)
しぬとて
男一匹
(
をとこいつぴき
)
美事
(
みごと
)
なきしが、さても
下賤
(
げせん
)
に
根
(
ね
)
を
持
(
も
)
てば、
戀
(
こひ
)
を
金
(
かね
)
ゆゑするとや
思
(
おぼ
)
す
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
著名なる“天皇側近の三房”の一人
宣房
(
のぶふさ
)
の
嫡
(
ちゃく
)
、中納言藤房のまえでは、勅ならずとも、はるか
下賤
(
げせん
)
な
地下人
(
じげにん
)
だった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
禁中におかせられてさえかくばかりの御艱難をしのばせられるおりから、
下賤
(
げせん
)
のわれらが酒肴の吟味などとは……口にするだに恥じなければならぬことでございました。
日本婦道記:尾花川
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それからまた、無用なものは何一つ存在していないこと、もっとも
下賤
(
げせん
)
なものも劇の筋書きのうちに一つの役目をもってること、などを私は見てとることを覚えました。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いまの無礼の
雑言
(
ぞうごん
)
だけでも充分に、免職、
入牢
(
にゅうろう
)
の罪に
価
(
あた
)
いします。けがらわしい
下賤
(
げせん
)
の臆測は、わしの最も憎むところのものだ。ポローニヤス、建設は永く、崩壊は一瞬だね。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
下賤
(
げせん
)
で育ったにしては、妙に
臈
(
ろう
)
たけた賢い女です。
銭形平次捕物控:148 彦徳の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「かりにも、曹丞相ほどなお方が、汝ごとき
下賤
(
げせん
)
の
蛮夫
(
ばんぷ
)
と、なんで戦いを交えようか。もう一度生れ直してこい」
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしては、フランスを
蚕食
(
さんしょく
)
してるそれらの
下賤
(
げせん
)
な奴らによって、フランスを批判している。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「生きている者はごまかされても、死んだ者のたましいはごまかされないぞ、
下賤
(
げせん
)
な
売女
(
ばいた
)
を囲っていながら、こんな殊勝らしい法要をしてみせる、死んだ姉の眼には見とおしだぞ、恥を知れ益村安宅」
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「だまれ、
下賤
(
げせん
)
の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「この百姓めが」といえば
侮蔑
(
ぶべつ
)
の代名詞になるように変ってしまったのと同じで、職人という名称も、元は決して、
下賤
(
げせん
)
の
業
(
わざ
)
の呼び名ではなかったのである。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は兄の心を傷つけてやろうとつとめ、ますます
下賤
(
げせん
)
なことを述べたてた。クリストフはたけりたつまいと一生懸命に我慢した。がついに悪口の意味がわかると、かっと
逆
(
のぼ
)
せてしまった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
賤
漢検準1級
部首:⾙
15画
“下賤”で始まる語句
下賤廃残
下賤破敗